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【友達】舞子ちゃんと茶巾カイボウ【セフレ】

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「舞子ちゃんと茶巾とカイボウ」
 松本君が中学一年生の時に行われていたカイボウは、今思えば悲惨なものでした。
 カイボウとは、服を無理矢理脱がせたり、脱がせたあとに性器を観察する事です。しかし、松本君のクラスでは、単に脱がせるだけではなく、その子にオナニーさせて射精までさせるというひどいものでした。これは松本君が知ってるだけでかなりの人が被害にあっていたそうです。
 場所は、放課後の教室です。女子が全員帰り、教室に仲の良い男子だけになると、その時始まるのです。普通なら、みんなの前でオナニーなんて絶対断るとお思いでしょう。しかし、松本君のクラスでは、断るとみんなに押さえつけられて、あるやつ(竹内君としておきます)に、しごかれてしまうのです。それが怖いので、射精した人も何人かいるのです。実は、その竹内も命令されて射精した一人です。彼はちょっと殴るふりをして脅せば何でもやるのです。
 しかし、平気でやるやつもいて、クラスには目立ちたがり屋のちょっとつっぱったやつなどがいて、そいつなどは平気でしていました。しかし、彼は射精しなかなったので、一番つっぱったやつがみんなに命令して、みんなに押さえつけさせました。そして彼もまた竹内君にしごかれていました。そいつは、出してしまって、出したのは初めてだなんて言っていました。おそらく、こういう体験を見て、しごき方を覚えたやつとか多かったと思います。
 実は松本君自身、竹内君にされた事があります。信じられないでしょうが、はっきり言って、普通のセックスでは味わえない気持ち良さだったそうです。今や大人になった松本君には好きな彼女がいて、その子とセックスしているそうですが、あの時の快感の度合いにはとうてい及ばなかったそうです。子供の頃、電気按摩がくすぐったいけど、非常に気持ち良い感じがありましたが、あれと同じ種類だと行っています。
 大体、半分くらいのやつは、そうしてしごかれて出してしまいましたと思いますが、出さなかったやつは、下半身裸で廊下を隅から隅まで走らされる刑をされていました。これは、空いている教室が多かったため、できた事でしょうが、かなりのスリルがあって、露出の快感があったそうです。
 こういう事をしていたのですが、やがてカイボウの事を女子の一部にも話すようになったそうです。そして、クラスでもかわいい子(舞子としておきます)に見に行かないように誘ったら、舞子がカイボウを見に来ました。
 その時、されたのが誰なのかは忘れてしまったそうですが、舞子に見せるやるために、射精した方がいいという事で、一度射精したやつが選ばれました。しかし、そいつは嫌がって、やりません。当然でしょう。中学一年ともなれば、女子の前で裸になるだけでも恥ずかしいのに、ましてやオナニーなんて、同性にだって絶対見せたくないものです。彼は断っていたそうですが、結局、みんなが脱がせーと叫んで、舞子の見ている前で、服を脱がしてしまいました。
 その子は、泣きそうになりながらも、竹内君の手慣れた手つきに必死に耐えていましたが、やっぱり射精させられていました。
 舞子は驚き、喜んでいました。すると、今度は舞子がオナニーをするように言われました。ちょっとだけで良いからと頼むと、舞子はみんなの前で一瞬だけ服の上から、あそこをさするような仕草をしてみせました。
 舞子にとっては軽い冗談のつもりだったのでしょう。しかし、それが男たちに火をつけてしまいました。男たちは最後までやれと言いながら、勢いで彼女のスカートと白の下着を脱がせてしまったのです。舞子は大声で叫んでいたそうですが、ほかの生徒はみんな帰ってしまっています。もちろん舞子は必死になって脱がされないようにパンツを掴んでいたそうですが、そういうのを脱がす事に、みんなは慣れていたのです。
 今までもふざけて女子のパンツを下ろそうとしたり、スカートを茶巾などにしていましたが、それはあくまでふざけてしているだけで、本当に脱がせたりしません。茶巾にされた女の子がさわいだり、脱がされそうになった子がさわぐのが面白かっただけなんです。
 しかし今回は違いました。そうなったのは竹内君の責任が大きいと松本君は考えています。もし脱がせられないと、竹内君があとでつっぱり君に責められていましたから、竹内君が多分一番強く下着を引っ張ったのだろうと推測しているそうです。
 それはともかく、みんなの前にさらけ出された舞子のあそこは、とてもきれいなピンク色で、まだ毛ははえていませんでした。男子全員が、思わず唾を飲み込みました。松本君も、あまりの刺激に頭がぼーっとしてきたそうですが、ほかの男子も同じだったのではないでしょうか。

 臭いも独特の臭いがあったそうです。どのような臭いかは説明しにくいのですが、とにかく興奮させるような、それでいて鼻を刺激しているような臭いだったそうです。
 しかし、勢いで脱がせたのは良いけど、つっぱりでさえ怖くて舞子のあそこをさわれません。何となく後で大変な事になると、誰もがわかっていたようでした。
 ところがその場に一人だけ、そういった事がわからないやつがいました。竹内君です。普通の男なら中学生にもなれば、他人のチン○はさわりたくないものですが、竹内君は平気でさわっていました。竹内君はそういうやつだったのです。
 そして竹内君がさわってしまったのです。どうするのかわからないので、竹内君は適当にさわってるだけでしたが、それを見ているだけでも興奮ものだったそうです。
 やがて、つっぱりが指示して、襞のめくってみろとか、突起をいじってみろとか、お○んこの穴を探せなどと言っていました。竹内君は一生懸命、襞をめくって見せたり、穴をさがしたりしていました。実は、女の子の穴が二つある事も、この時に知ったそうです。舞子も騒ぐのをやめ、静かになっていました。きっと生け贄にされていた気分だったのではないかと思います。そのあと、「舞子は小便をちびった」と誰かがバカにしていましたが、もしかすると彼女は濡れていたのかもしれません。
 それから舞子が泣きそうになったので、すぐやめて、みんなで謝りました。
 その体験があまりにもすごくて、それからは舞子に言いつけられるのではないかと、学校に来るのが本当に怖かったそうです。
 しかし、一週間もすると、怖くなくなったそうです。もう安心したのでしょう。そして土曜日、舞子ちゃんは二度目の生け贄になったそうです。この時は、その場にいた何人かにフェラチオさせられたのです。みんなの前でち○ちんを出すのは恥ずかしいので、つっぱりに命令された人がさせられました。
 実は松本君もその人で、これが最高に気持ち良かったそうです。今まで一番気持ちよかった体験だと言っていました。舞子ちゃんの舌が亀頭をなめたり、強く吸ったりすると、腰がぬけたような感じになり、漏れるように射精したそうです。
 大人になった松本君は、風俗などにも行きましたが、未だにあの時の気持ちよさは味わえないのだそうです。
(舞子ちゃんと茶巾とカイボウ  おしまい)
 
(後書き)
ある人が言うのには、
「子供の頃の電気按摩は気持ち良い」
だそうです。子供の頃にかけられた電気按摩は本当に気持ち良かったけど、大人になって同じ事をされても気持ち良くないそうです。あの時の敏感さを取り戻せたら、もっとセックスも気持ち良いのでしょうか。


【友達】縄かけ【セフレ】

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縄掛け その1

偶然のひとつめは、隣の課にいる課長補佐の出向人事。
ロクに仕事もできないくせにセクハラ行為をくりかえす彼はOL全員の嫌われ者で、
その彼の出向を聞かされた私たちは意趣返しとばかり送別会を一次で切り上げ、別で
飲みなおして鬱憤晴らしをしたのだ。
偶然のふたつめは、幸崎さんが風邪で休んでいたこと。
同じ課で合コン好きな彼女はわりとお酒に強く、私と後輩の中野啓子が一緒になって
泥酔してもそれとなくストッパー役になってくれる。いつものように彼女を含めた3
人組だったら、あの店には寄らなかっただろう。
偶然の三つめは、給料日直後の週末で、二人とも開放感に満ちていたこと。
飲み会のあと、さらにはしごした記憶もあるが定かではない。いたるところに転がる
酔っぱらいにまぎれ、中野さんも私もすっかりデキ上がっていたのだ。だから、うち
に泊まりたがってついてきた中野さんが駅前で急に繁華街の一角に入っていったとき
も、私はとくに疑問を感じなかったのだ。

「早紀さん、ここですよー」
「なにが?」
雑居ビルの4階。“hedonism”と飾り文字入りのプレートが下がった扁平なドアの前
で聞きかえすと、ぽぅっと目をうるませて中野さんは笑った。
「彼が教えてくれたんですけど、雑誌に載っていたんですよ、ここー」
「だぁから、なにが?」
思えば、中野さんの彼氏の『性癖』をすぐに思い出せなかった私がうかつだった。
焦れて変な口調になる私に流し目をくれ、彼女が囁く。
「女の子にオススメの、SMバーなんです」
とろけた私の脳が、言葉の意味を理解するまで一泊の間があった。
「オーナーが女性の方で、女性が入りやすいようにできてるんです。雑誌にも載って
いましたよ。ちょっとしたアバンチュール、ね、入ってみません?」
「‥‥んー、どうしたもんか」
素面なら、断っていたと思う。いくらリアルなSMに心惹かれるとはいえ、なにかの
はずみで私のSM趣味が‥‥セルフボンテージの嗜好がバレてしまうおそれは充分に
あったからだ。
「ね、早紀さんだって、興味ないわけじゃないでしょ? SMプレイ」
「な、なんでよぉ」
ムキになって反発しかけたとたん、カラダの底がじくりと疼く。
夏休み中の、あのケモノの拘束具の失敗以来、私はセルフボンテージを中断していた。
禁止された甘い快楽の衝動が、ちろりと下をのぞかせて私を誘惑する。
ひさしく自らに禁じてきた、甘い快楽のひととき。
脳裏に浮かんだ誘惑のイメージを自制できないほど、その日の私は酔っていたから。
今後こういう店に一人でくることはまずない。そう思ってしまったから。
だから。
「‥‥そうね。少しだけ」
「ふふ、やったぁ。早紀さんノリノリ」
「なによぉ」
少しでも素面なら状況の危うさに気づいていただろう。
初めて拘束具を送りつけられ、いやおうなくセルフボンテージにのめりこんでいった
時と状況があまりに似ていることに。
自分でコントロールできぬまま状況に流される危うさに。
それさえ思いつかず、二人で酔った顔を見合わせ、エロ親父のような笑みを浮かべて
ドアを開ける。
じっさい、あの日の私はまさにマゾの本能に導かれていた。
その一歩が、初めて緊縛を裸身に施され、調教されてしまうきっかけだったのだから。
              ‥‥‥‥‥‥‥‥
セルフボンテージにはまっている私自身、SMには退廃的でいかがわしいイメージを
持っている。だからバー“hedonism”に入った私は、軽い肩すかしをくらった。
「あ、なんかオシャレ‥‥」
同じ思いなのか中野さんがつぶやく。
思いのほか狭い店内にふさわしく、内装はシックで落ちついている。けばだつ漆喰を
わざと塗りつめた壁が洞窟めいた雰囲気をかもしだし、カウンターやブースをしきる
鉄の柵は、どこか西部劇の酒場めいた叙情にみちていた。
入口で荷物と上衣、携帯をあずけ、番号札をうけとった。手首にまくタイプのものだ。
「あら、いらっしゃい。おふたりとも、初めて?」
「あ、はい」
低めのストゥールに腰かけると、二人いる女性バーテンの片方が話しかけてきた。黒
光りするレザーを着こなしている。カウンターの背後をおおう一面の鏡に、緊張ぎみ
の私たちの顔とすらりと伸びた彼女の背が映りこんでいた。
「ちょうど良かったわ。今、ショーの合間なの。じき始まるから」
「ショー、ですか」
SMショーがどんなものか、ネットの知識からおぼろなイメージばかりがわきあがる。
淫らがましい想像を追い払い、カクテルを注文しつつ慎重に聞きかえすと、かすかに
淫靡な親密さをたたえて彼女はうなずいた。
「ええ。あなたたちも、そういうのに興味アリで来たんでしょう?」
その視線に誘われ、一段高くなった奥のスペースに気づく。磔柱や鎖がじゃらじゃら
下がった舞台を想像していたが、じっさいは椅子が一脚置かれているだけだ。ただ、
観客と舞台はあまりにも近い。ここで誰かが、これからSMの責めを受けるのだ‥‥
とくんと、胸の下で心臓が波だつ。
「本物のSMプレイってキレイなものよ。堪能して行ってね」
「‥‥」
返事をかえす前に、バーテンはカウンターの向こうに移動してしまった。常連らしい
男性客がしきりに彼女に話題を振っている。
出されたカクテルを舐めながら、私たちはおずおずと店内を見まわした。いちゃつく
カップルが二組、ブースの背もたれによりかかって腕を組んでいる四人組の女性たち。
あとは、初老の男性がカウンターの向こうでバーテンと話している。
私も中野さんも、帰宅時のOLらしくあっさりしたトップスとパンツを合わせていた。
それが溶け込むぐらい他の客もノーマルな服装だ。SMバーだからボンテージという
ものでもないらしい。
「わりと普通ですね。本当はちょっと怖かったんですよ」
「‥‥ん?」
なにか違和感を感じて客をもう一度観察しようと思ったとき、中野さんがカウンター
の下でぎゅっと私の手を握ってきた。手のひらが軽く汗ばんでいる。
「私をダシに使ったでしょ」
睨んでやると、彼女はちろりと舌を出した。
「ご明察。でも、本当は早紀さん、SMに興味あるだろうって前から思ってたんです」
「え、どうして」
酔いのせいか舌がもつれ、口ごもった。
焦りながら何かを反論しかける。その時、照明がすっと暗くなった。
柔らかなスポットのあたる舞台には一人。さっきの年配の女性バーテンだ。細いムチ
を手にした姿は、バーテンの時と一転して艶やかな威圧感をにじませるドミナだった。
ちらりと、その怜悧な瞳と視線がからむ。
「わぁ‥‥」
中野さんが興奮した声を上げる横で、気づかれないよう生唾を飲みくだす。
舞台には彼女一人きりだ。彼女がご主人さま役らしい。だとしたら奴隷はどこ‥‥?
次の瞬間、私はギョッとした。
彼女がこちらを手招きし、ついで舞台から降りて歩いてきたのだ。
ま、まさか私たちが?
思わず身を引く私たちの横をすり抜け、彼女は優雅な足取りで背後のブースに向かう。
そして。
「どう? 本気で縄打たれちゃった感想は‥‥子猫ちゃん」
奴隷をあやす口調で話しかけ、女性客の一人をくいっと立たせて外に引き出したのだ。
そう、 後ろ手の、縄尻を、つかんで・・・・・・・・・・・・・。
              ‥‥‥‥‥‥‥‥
目を見張ったまま、声も出せずに私たち二人は見入っていた。
どうみても大学生くらいにしか見えないその若い子は、整った顔を深々とうつむけ、
半開きの唇から乱れた呼吸をもらしている。ぴちっと曲線を強調するデニムジーンズ
が似合う彼女は、さっきから両手を背中に組み、浅く腰かけていた。
‥‥ジャケットに袖を通さず、わざわざ肩から羽織って。
それが違和感の原因だった。暖かな室内で上衣を預けず、なぜ肩に羽織っていたのか。
彼女は、自分の意志で羽織っていたのではない。
腕を通すことができないように、後ろ手に縛られていたのだ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
おそらく、上半身の縄目を隠すためと、より羞恥心をあおるために。
「‥‥」
「うふふ、暑くもないのにトップスが汗で肌に張りついちゃってるわ」
立ち上がらせた若い子に視線が集中したのを見てとって、バーテンが服を直すふりを
しながら胸元に走る縄をくっと引く。とたんに彼女はイヤイヤとかぶりをふり、上半
身をひくりとすくませた。
そして‥‥私たちは、聞いてしまったのだ。
ギシ、とも、ギチチッともつかぬ、狂おしい麻縄のきしむ音を。
ほとんど皆が息をのんで、この予想外のやりとりを見つめていたのだろう。縄鳴りの
軋みは湖面に広がる波紋のように、店内のすみずみまで響いた。
「‥‥!!」
気づいたとき、私は口を手で覆っていた。熱を帯びた肌がちりちりむず痒く、意識が
カラダに追いついていかない。急速なほてりが体の芯からわいてくる。
な、なんだ‥‥なんだろう、これは。
釘付けになる視線の先は、はだけられたジャケットの前からチラチラのぞく二本の縄。
女の子の縛めは、トップスにくっきりシワを寄せ、オッパイのラインが持つつややか
な丸みをあらわにしてしまっていた。
「早紀さん‥‥」
低く囁かれ、さらにギョッとして凍りついてしまう。頬ばかりが熱をおび、中野さん
と目を合わせられない。不自然に彼女に横顔を向けたまま、中野さんの声にこもった
火照りが、酔った私をますます混乱させていた。
なんて‥‥いやらしい。
なんて‥‥なんて、エッチで、気持ちよさげなんだろう‥‥
そのときの私は、心の中にわきあがった狂おしい渇きを押さえこむのに精一杯だった。
心細げな中野さんの声が、さらに私の動揺を誘う。
「さ、舞台に行くわよ、子猫ちゃん」
「‥‥」
黙ったままコクンと頷く若い子を文字通り引っ立て、女性バーテンはゆっくり舞台へ
戻っていく。わきを通りしな、ちらっと愉快そうな瞳が私を射て、それがひどく私を
うろたえさせ、苛立たしい気分にかりたてた。
落ちつかないのに座っているしかない。そのクセ舞台に目を奪われてしまう‥‥
奴隷をあやすバーテンの声は低くビターな響きをたたえていた。
「‥‥エッチな子ね」
「感じてたの?」
「縄をきしませて、イイのよね、それ。分かるわ」
「そのカラダじゃ抵抗できないものね。私の好きにできるのよ、子猫ちゃん」
舞台から人に話しかける音量ではない。
奴隷と女王様が親密に囁きあう睦みごと。そのくらいの声なのに、鋭くなった聴覚が
二人の会話を、いや、バーテンの言葉嬲りをすべて拾いだしてしまうのだ。
ひとこと、ひとことがいたたまれない。
人前で辱められるみじめさ、それ以上に全身を這いまわるなまなましい縄目の衝撃、
そして凝視する灼けるような視線の数々。
違う。私は彼女じゃないのに。
なんで、こんなに見入ってしまっているのだろう。
彼女が辱められるたび、ズキズキとカラダの芯が切なく疼いてしまうのだろう。
「さ、いやらしい緊縛ぶりをじっくり眺めてもらうわ。嬉しいわね?」
「あ‥‥ま、待っ‥‥」
ジャケットをはぎとったバーテンは、ぎくりと跳ねた女の子の腰を押さえ、後ろ手の
手首をつかんでずいと押しだした。自然と縛られた子は背をそらし、オッパイを見せ
つけるような格好になってしまう。後ろ手に縛られているので、背を丸めるのがむず
かしいのだ。
「胸、張っちゃって。そんなにみてもらいたいの。充血してるものね」
うつむいたままの子は小さく、うン、とか、あぁ、とか呻くぐらいがやっとらしい。
服を着たままで、胸の上下と両腕に二本ずつ縄が食い込んでいるだけなのに‥‥
それは、たとえようもなくエロティックなのだ。
おぼつかない足取りの彼女の縄尻を、バーテンが天井を走るバーの一つに結んで爪先
だちにする。こつこつと響くローヒールは、快感のバロメーターであるかのようだ。
「力を抜くと宙づりになってつらいわよ。いいわね」
「‥‥」
そういうと、バーテンは彼女の背後に回りこみ、柔らかく全身に指を這わせだした。
揉みしだいたり、意図的に感じさせる風ではない。むしろ、ソフトに焦らす動きだ。
感じさせるところ、熱のこもったところ、ギュッと縄に締めつけられて跳ねるところ
‥‥欲しい刺激からは意図的にずらしつつ、バーテンの手はしかし女の子のカラダを
じんわりと責めたてていく。
「ンッ‥‥」
じきに、彼女は口から熱い喘ぎをこぼしだした。それでも懸命に歯を食いしばる。
足に力が入り、ひく、ひくんと背が反り返るのを見ながら、バーテンは彼女の耳もと
でそっと囁きかけている。吐息とともに何を吹き込まれているのか、そのたび、彼女
の表情が悩ましくゆがみ、眉がひそめられるのだ。
「いいのよ‥‥身をまかせて」
そんな言葉が聞こえたような気がする。
そうして‥‥
長く、濃密な愛撫の果て、不意に女の子が激しく震えた。
一度きり、大きく全身を逆海老につっぱらせて、白く無防備なのどをさらけだし‥‥
「‥‥っく」
鳥肌立つような快楽の吐息を最後に、その身ががくりと脱力して吊り下がった。
後ろ手の縄尻に支えられ、バーテンの胸に顔をうずめるようにして‥‥
すうっと明かりが元に戻り、私は大きく息を吐いた。
カウンターの下で膝がかたかた揺れている。緊張と、どうしようもない負荷のせいで
貧乏ゆすりが止まらないのだ。
「み、見入っちゃいましたよ、私‥‥」
「‥‥うん」
中野さんに肩を触られ、ビクッとカラダが震えかけた。
われを忘れてしまうほどの濃密な体験。
まるで、あの女の子と一緒になって、私までがSMを体験してしまったかのように。
ネットや雑誌を通してSMの知識は知っていたし、人より詳しいと自信も持っていた。
けれど、イメージと現実がいかに違うものか、いかにリアルなショーがインパクトを
持っているのか、私は思い知らされたのだ。
縄を解かれぬまま、女の子がふらふらとブースに戻っていく。その息づかいを背中で
意識しつつ、私は強いてカクテルに目を向けていた。傾いた心のギアをニュートラル
に戻そうとでもいうかのように。
しばらくして、バーテンがこっちに戻ってきた。心なしか嬉しげだ。
私たちの反応をうかがいながらニコリとほほえむ。
「どう? こういうの、気に入った?」
「‥‥」
黙ったまま、私たちは小さくうなずく。
ショーの間、時折こちらを射るように走るバーテンの視線が私を動揺させてはいたが、
たしかにショーは魅惑的で、裸も見せないのに充分いやらしかった。
ひりつく喉にカクテルの残りを流しこみ、身のうちに溜まった熱気を冷やそうとする。
ひんやりした感触とうらはらに、酔いが鈍く神経をむしばんでくるようだ。
ゾクッとおなじみの痺れをおぼえ、両手でカラダを抱いた。
不思議な‥‥気分だ。
からからにひりつく衝動が、胸元のすぐそこまで迫り上がってきている。
人前で辱められ、嬲られ、それすら快楽にすり変えられる奴隷のうらやましさ。
私も、あんな風にしてもらえたら‥‥
縛り上げられ、内にひめたマゾの悦びをむさぼれたなら‥‥
常日頃、人前では見せないように押さえつけた衝動が、今にも喉もとから湧きあがり
そうなのだ。理性と誘惑の綱渡り。その危うささえ私は楽しんでしまっていた。
「さて。さっきはショーの寸前で、忙しかったから言えずにいたんだけどね」
口を開いたバーテンに、私たちは顔を向ける。
そして、凍りついた。
「あなたたちのどちらか、あんな風に縛らせてもらうわ。どっちにするか決めて」

縄掛け その2

どちらかが縛られないといけない‥‥って、まさか!?
不覚にも、ギクリとした私は腰を浮かせかけていた。中野さんと肘がぶつかり、2人
して小兎のようにおびえてしまう。
「あら」
私たちのうろたえぶりに、女性バーテンは目をみはった。意外に年なのか、目尻には
小さなシワが刻まれていた。
「別にムリヤリ何かするつもりはないわ。さっきの子たちだって、ほら」
うながされるまま、さっき舞台に出た女の子のいるブースに目を走らせ‥‥あやうく
私はあっと声をあげかけていた。
あの子だけだと思っていたマゾヒスティックな緊縛が、全員の身に施されていたのだ。
キッチリ後ろ手に折りたたまれ、あるいは気をつけの姿勢で太ももと手首を革枷でつ
ながれ、拘束具や高手小手に食い込む縄目に彩られて‥‥
セルフボンテージの経験があるからこそ分かる。4人とも決して自力では抜け出せぬ
完璧な拘束を施されていた。恥ずかしげに身をよじる4つの緊縛姿はあまりに扇情的
で、呟きかけた台詞は掠れ、喉がゴクリとなった。
「う、ウソ‥‥」
「別にさっきの子も、むりやり私が舞台に連れだしたわけじゃないわ。ちゃんと彼女
の承諾を得て、彼女の希望にしたがって軽いSMプレイを体験してもらっただけ」
そんな‥‥
わざわざ自分からさらし者に‥‥?
もうワケが分からなかった。動悸が乱れ、床がかしいでいるような気分だ。彼女たち
は本当に自分から縛られたがったのか。バーテンがウソをついていて、私たちもこの
まま騙され、縛られてしまうのだろうか。
さからう私自身の手が背中にねじられ、縄に括られて、抜け出せなくなっていく‥‥
先走った妄想に、意味もなく自分の手をきゅっとつかんでしまう。
「もしかして、うちのサービスを知らずに来たの? わりと有名なはずだけど」
「え?」
「睨まなくても大丈夫。つまり、縛られた女の子はチャージ料がただ、グループ全員
が縛られた場合さらにワンドリンク無料。SMを気軽に体験できるサービスなのよ。
雑誌にも載っているわ」
はっと上げた顔がよほどこわばっていたのか、女性バーテンは苦笑した。その言葉が、
パニックで真っ白だった頭にしみとおっていった。
‥‥そういうことか。
つまり、誰かさんの事前調査・説明不足。
一瞬の気まずい間をへて、私は横に座る中野さんをジロリと見つめた。
「わ。は、あはは、イヤだな早紀さん、カオ怖っ」
「怖いじゃないでしょー!!」
抑圧されていた緊張と恐怖がどっと吐きだされ、思わず声を高くしてなじってしまう。
黙っていたバーテンは、やがて微笑とともに割って入った。
「で、どうするの? 二人とも‥‥する?」
「‥‥」
「見たでしょ? 私の縄さばきはプロの、本格的なSMの縛りだから。気持ち良くし
てあげるわ。初心者でも、上級者でも」
嫣然たる笑み。
ふたたび、ドクンと大きく鼓動が弾むのを私は感じていた。
一気にまわってきた酔いと興奮とが、甘やかな誘惑を加速していく。初めての緊縛を
体験できる機会が、すぐ目の前にあるのだ。
なによりあの子がショーに志願していたことが、疑いない事実を明らかにしていた。
他人に見られる羞恥心を上わまるほど、視線さえ忘れて本気でイッてしまうほど‥‥
バーテンの緊縛は気持ちイイものなのだ。
カウンターの下で、中野さんがぎゅっと私の手を握ってくる。
まるで二人が恋人かなにかのように、甘くうるんだ瞳で、私の同意を待つかのように。
ちろりと、バーテンの唇から舌がのぞいたように思えた。
              ‥‥‥‥‥‥‥‥
カウンターを離れ、さりげないバーテンの誘導でSMバーの奥へと向かう。壁ぎわに
拘束具がおかれた一角もあり、吊り下がる手錠や革の首枷に震える指で触れたりした。
ドキドキと恥ずかしいぐらい胸が高鳴っている。
従業員ドアの脇の小部屋に入ると、そこはさっきのステージの裏手らしかった。部屋
のあちこちにビザールな衣装やメイク道具、SMの器具が積まれている。
「縛られる過程は、人目に見られないほうがいいでしょう?」
「ひゃっ」
おそるおそる革の衣装をつまんでいた私は、別室から入ってきたバーテンに声をかけ
られて飛び上がった。中野さんが代わりに応対する。
「でもなんか、妖しいお店ですね。本当の意味で」
「あら失礼な。SMを身近に感じてもらうためにバーを始めたようなものだから」
「どういう意味です?」
「私は昔SM嬢やっていたのよ。風俗でも、プライベートでも」
驚きと納得の色を同時に浮かべた私たちに目をやり、バーテンは首をかしげた。
「それで、決めたのかしら」
「‥‥はい」
中野さんと私、どちらが縛られるか。
ドクンとひときわ跳ね上がる心臓を押さえ、中野さんに流し目を向ける。
話の流れから言えば、彼氏とのSM経験のある中野さんが縛られるのが自然だった。
なのに、なぜか理不尽に感じてしまう。恥ずかしくて志願できないのに、物欲しげに
バーテンの声がかかるのを待ち焦がれている自分がいるのだ。
本当は、私だって‥‥
「わ、私‥‥ですかぁ? ですよねぇ。やっぱり、誘ったの私ですし」
うぅぅと哀しげに呟きつつ、中野さんはしっかり快楽に期待して耳たぶを染めていた。
おずおずと進みでたきゃしゃな体をさっとバーテンが捉え、あっという間にその手を
背中にねじりあげる。
「キャッ」
「あら。やっぱりあなた経験者ね。じゃ遠慮はしないわよ」
後ろ手に手首を組まされて従順に首を垂れた中野さんの仕草から悟ったのだろう。手
にした二つ折りの紺のロープが、するすると彼女の手首を絡めとった。たちまち手首を
縛りあげ、二の腕をくびれさせて胸の上下にきりきり絡みついていく。
「ンッ」
中野さんの瞳がすうと細まる。まぎれもない愉悦の光がその奥で踊っていた。
会社の誰もが知らない、欲情にとろけた彼女の顔つき。
切なさと、被虐のうるみと、自由を奪われる悦びが、彼女の躯をなまめかしくオンナ
の肉づきに変えていく。それは目で見てとれるほどの、あまりに鮮やかな変化だった。
ギシ、ギシッと音を立てて、中野さんの体を鮮やかな紺の縄が彩っていく。
トップスの上から縛めが這い回るたび、彼女の躯は跳ねた。
ときおり喉を鳴らし、食い込んだ縄のキツさを悦ぶかのように腰を弾ませて。
パンツの股下を裂くかのように、縦に股縄さえも通されて。
「ふふ、あなたのご主人様、縄はそんな上手じゃないのね。私のと、どちらが好き?」
「ふ、ふぅぅ‥‥こっちの方が、ずっと‥‥ンァァ」
いたたまれない。
立っている手の置きどころがなく、無意味に腕を組んだり服のシワをつまんでしまう。
本気で‥‥この子、私がいることさえ忘れるほど、本気で感じちゃっている。
よがりかけて、喘いでいるんだ。
愛撫されるわけでもなく縛られるだけなのに、そんなに違うもの‥‥?
「違うわよ」
「‥‥!!」
バーテンのまなざしが、いつのまにか私をからめとっていた。
「女の子のカラダは繊細なの。本当にきちんと縛ってあげれば、Mッ気のある子なら
それだけでイッてしまったりするのよ‥‥彼女のようにね」
中野さんの縄尻をつっと絞ると、高手小手に彼女を括った全身の縄がギシリと鳴った。
股縄のコブが、しわのよった下半身の奥にいやらしくうずまっている。
ピィン、と指で縄の根元を弾く。
「んぁ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ッッッッッ!」
声なきアクメの嬌声。
見る者の目にそれはそう映った。
息を詰まらせ、吐息の塊をはきだす中野さんが大きく足をもつれさせる。バーテンが
縄尻をつかんでぐっと支えると、再び縄に感じさせられたのか中野さんは目をとろん
と溶かしてむせぶように呼吸を弾ませた。
「‥‥こんな感じよ。幸せよね、縄だけでイカされちゃうのって」
「ふぁ、はぁい」
ぼんやりうつろに彼女が答える。意識は明らかに、揺り戻す快楽をむさぼっていた。
両手で自分のカラダを抱く。
‥‥こんな風にされたい。本気で、今すぐに。
かって感じたことのない強烈な欲求に耐えた。このバーテンは鋭すぎる。中野さんの
前でこの人に縛られたら、きっとセルフボンテージの性癖から何からすべて知られて
しまうに違いない。けれど身のうちからこみあげる感触は深く、ともすれば感じると
ころに指が伸びてしまいそうなのだ。
クタクタっと力の抜けた中野さんを手の中であやしながらバーテンが続けた。
「で、どうするの?」
「‥‥」
「せっかくだから、縛ってあげるわよ。あなたも。こっちにおいでなさい」
ドクン、と大きく心臓が弾む。
縛ってあげる‥‥その言葉の、なんと魅惑的な甘美なことか。
「あ、イイです、私は、そのぉ」
瞬間的に拒絶をしてしまい、直後に後悔した。
本当にそれでいいのか。何のためにバーテンの申し出を了承したのか。
そう、ほんのちょっとだけ、体験したりできないだろうか。
バーテンは答えず、探るような私の瞳を見つめ返す。鋭すぎるドミナのまなざしで。
「あ。あのぉ」
息詰まるような沈黙に耐えられなくなり、私は意味もなく口を開いていた。
「や、その、えっと‥‥そういえば、バーの名前の”HEDNISM”ってどんな意味です?」
「快楽主義者」
中野さんの縄尻をキュキュッとしごきながら、バーテンは、片頬だけで笑みを作った。
「私たちに・・・・、ぴったりでしょ?」
「わ、分からないですけど」
共犯者めいた笑みに、心がぐらぐらと動く。本性を悟られたくない。なのに、私の中
にいるマゾの部分はいじめてもらいたがっている。相反する二つの気持ちが、激しく
葛藤しているのだ。
「いいのよ。SMに興味が無ければうちには来ないでしょう? せっかくのひととき
ぐらい、アバンチュールを楽しんでもらいたいの。ね」
「本当に、それだけ、ですね」
慎重に言葉を選んで投げかけた。
「ん?」
「ただ縛るだけですよね? 余計なコトや、それ以上は、何も、言わないですね」
「‥‥」
今度、探るような目をしたのはバーテンだった。
ややあって、言う。
「いいわ。何も言わない。何もしない。縛るだけ。今みたいなこともしない」
コクリと頷き、私はおじけづく膝に力を入れて歩み寄った。
「さぁ、行くわよ」
首輪からのびる紐をちょんとひっぱって、バーテンがほほえむ。
分かっている。これがちょっとした大人のお遊び、ゲームなんだから‥‥割りきって
何度も自分に言い聞かせているはずなのに、私の頬はカァッと熱く火照りだしていた。
後ろめたい、じくりとした感覚。
カラダのうちから湧きだすような、奇妙な甘いぬめり。
「‥‥‥‥‥‥」
「なぁに?」
「いえ。なんでもないです」
バーテンから目をそらし、私はちりちりと唇を噛んで。
これは‥‥ひょっとして、バーテンに口答えした罰、なのだろうか。
むしろ燻る物足りなさ。
カラダを這いまわる縛めは、あまりにも単純で、感じるツボを外してあった。胸の前
でファーつきの手錠が両手にかけられ、ゆるいリードで首輪と結ばれたきり。
たしかに全身は火照っているけど、その感触は行き所をなくしてムズムズ疼くばかり。
隣でふらふら床を踏みしめる中野さんを見つめる。
目にもあでやかな高手小手の縄化粧。背中高くまで後ろ手を吊られ、あの姿では上体
は身じろぎも苦しいに違いない。それがどんな感覚なのか、私には分からない。
なんて、意地の悪いバーテンなんだろう。絶対わざとだ。
『放置責め』‥‥そんな言葉さえ、酔った頭に浮かんでくるぐらいなのだから。
「ねぇ、SMには興味あるんだっけ」
「ありますよ。じゃなきゃ来ません、こんなトコに」
どうしたって恨めしげな顔が出てしまう私を見やり、バーテンはくつくつ笑っていた。
すっかり呆けた中野さんを座らせ、次に私のストゥールを引いたところで小さく耳打
ちする。
「そうよね。なら、覚えておいて」
「‥‥なにを」
「次は、一人でいらっしゃい。サービスしてあげるから」
「!!」
目を見開く私のうなじをそっとあやすように撫で、彼女は身を引いた。かわりに中野
さんが、快楽と酔いの回った瞳でバーテンに尋ねかける。
「でも、どうしてこんなに拘束具持っているんですかー? 第一、お酒をこぼされて
汚されたりしたら大変でしょう?」
「うちはバーだけじゃなくてSMショップも経営しているの。すぐ下の階よ」
「そうなんだ~」
「だから、うちのバーを気に入ってSMに興味を持ったら、下の階のSMショップで
彼氏とのプレイ用に気に入った物を買ったりしてもらうのよ」
「へぇ~。私も、買おうかなぁ‥‥」
ちろちろと、奇妙な感覚がカラダを駆け抜けていく。
ときおり、この年季の入った女性バーテンが私にだけ投げかける視線がどんな意味の
ものなのか。その時は、まだ分かっていなかった。
              ‥‥‥‥‥‥‥‥
目覚めたとき、私と同じシーツにくるまって中野さんがすうすう寝息をたてていた。
ツクンと痛んだ二日酔いの頭が昨夜の記憶を思いだす。
そうだった‥‥
パジャマも着ず、下着姿で寝こけている彼女の肌に指を這わせる。ほっそりした手首
に生々しく残った緊縛のあと。アザになったまだらの縄目。なぜ彼女だけがバーテン
に選ばれ、私の縛めはあんなにもおざなりだったのだろう。
むらむらと嫉妬にも似た激しい感情にかられ、痕のついた手首を強く握りしめる。
「‥‥襲います? 私を」
いつのまにか薄目を開けた中野さんが、私を見あげていた。甘く煙る瞳の奥には昨夜
の残滓が見てとれた。指先がゆっくり私の掌をくすぐり、指と指とをからませあう。
「そうね、たまには食べちゃおうかしら。後輩を」
「怖~~い」
「それか後輩の彼氏を」
「早紀さんマニアック~~」
「‥‥それ、どの口が言うの。あれだけ昨夜は盛り上がっておいて」
軽口を叩き合って、私たちは起きあがった。休日の遅い朝食を手分けして用意する。
勝手知ったる他人の家のコーヒーメーカーをセットしながら、中野さんはちらと婀娜
っぽい瞳を投げてきた。
「昨日は意外でした。早紀さん、もっとSMに興味あると思っていたんですけれど」
「あら。どうして?」
そういえば、この子は昨日もそんなことを言っていた‥‥
不意に訪れた緊張を顔に出さぬよう、つとめて普通に訊ね返した。セルフボンテージ
の秘密は誰にも知られるわけには行かない。なのに彼女もあのバーテンも、私のSM
めいた部分に気づいていた。なぜだろう。
「う~ん。早紀さんは、彼とのSM体験談を真摯に聞いてくれる数少ない人だから」
「‥‥それだけ?」
私は吹き出した。中野さんがぷっとむくれる。
「啓子ちゃんのアレは、正直グチの体裁を借りた甘々な話ばかりじゃない」
「どうせ私のは彼氏のノロケです。分かってますって。でも」
言葉を切り、宙に目をさまよわせる。
「SMの話を聞くとき、いつも早紀さんの瞳は潤んでいる気がします。そのせいかも」
「そう」
「きっと早紀さんなら、私と同じように感じてくれるって、つい思っちゃうんです」
油断がならないと思った。頭でなく感覚で彼女は感じ取っているのだ。
ふと、あることに気づいてゾクッと背筋がしびれる。
まさか‥‥
今度は一人で来てねと囁いたバーテンは、私が自分の性癖を隠していると気がついて
あんなことを言ったのだろうか。昨日のあれも、わざと私を焦らしてもう一度バーに
来させるための罠だとしたら。
「あの、早紀さん。スクランブルエッグ、火を通しすぎじゃ」
中野さんに指摘され、ぼうっとしていた私はあわててフライパンに意識を戻した。
              ‥‥‥‥‥‥‥‥
上司の目を盗んで給湯室で一息ついていると、中野さんが入ってきた。お盆を出して
3時のお茶の準備を始めたので、私も手伝う。
雑談のさなか、ふと彼女がいたずらめいた目を向けてきた。
「そういえば、この間会った彼が、うわさの水谷碌郎(ろくろう)クンでしょう?」
「噂ってなによ。失敬な」
「あら、たしか以前、早紀さんから相談してきたはずですけれど?」
ぐ、と返答に詰まる。
週末のあの朝、マンションを出しなに会ったのが、隣の907号室に住む水谷君だった。
軽くあいさつした程度だがそれだけで彼女はピンと来たらしい。
「イイ感じの男の子じゃないですか。早紀さんって、男性選びのセンスいいです」
「ちょ、もっと小さな声でお願い」
たしなめつつも、彼のことを後輩OLに褒められ、顔がゆるむのを抑えられなかった。
中野啓子はおとなしそうに見えて、その実かなり男性の批評眼は厳しいのだ。
「一見優しそうで、だけどクールな芯もありそう。私の彼氏に似てる雰囲気ですよ」
「あら、あなたの彼ってあんな感じなの」
うんうんと真面目にうなずき、湯飲みにお茶をそそぎながら中野さんは目を向けた。
「意外と、ああいうタイプがSM好きなんですよ、早紀さん」
仕事に戻ってからも、彼女の言葉がリフレインしていた。
いや、それだけじゃない。正確には、あの週末の晩に訪れた、SMバー”HEDNISM”の
こともだ。次の週末に3連休を控えたここ数日は、仕事もこなしている間もついつい
あの日のバーテンとの会話を思い出していた。
——次は、一人でいらっしゃい。サービスしてあげるから——
あの、明らかな誘いの台詞。
彼女はたしかに、私の秘めたM性について何かを嗅ぎ取っていた。それを同僚の中野
さんに対して隠していることも。考えれば考えるほど、そこには危険な匂いがした。
おそらく、あのバーテンは彼氏やご主人様のいる相手には手を出してこないのだろう。
だが、もしSMに溺れた女性が、マスターを持たぬ一人身の奴隷だと知られたら‥‥
彼女はバーテンの毒牙に捕らえられ、二度と戻ってこれないのではないか。
奴隷として快楽漬けにされ、捕らわれて。
「もう一度。ひとりで‥‥か」
思わず一人言が唇までのぼりかけ、そこでふっと‥‥
まさに、唐突に、悪魔の計画が頭に浮かんだ。
場所柄も忘れ、瞬間、その思いつきだけで軽いアクメをおぼえてしまうほどに。
            ‥‥‥‥‥‥‥‥
コツ・コツ‥‥
夜の繁華街を歩くローヒールの足音が、おそれと不安にわなないている。
押し寄せてくる秋の冷気にあらがって、コートの襟をおさえるように私は歩いていた。
長らく抑えつけてきた、自縛への希求。
たゆたゆとあふれだす欲望をじっと我慢する行為すら、なおさら私の理性をかき乱す。
3連休初日の夜は意外なほど人が少なかった。大型連休でもないかぎり、最近は家に
こもってゆったり休日を過ごす人間が多いらしい。
「‥‥」
そう。久しぶりのハードなセルフボンテージの舞台には、まさにおあつらえだった。
あの老練なバーテンがどう出てくるか、いくつもの可能性を検討する。
私はマゾでもサドでもなかった。セルフボンテージのもたらす絶望の味に、ひりつく
焦燥に魅せられたSM好きのOLに過ぎない。そのことを、あのバーテンに知られる
わけにはいかなかった。
ある意味、今まででもっとも困難なプレイではないだろうか。
「‥‥」
ずく、ずくっと心がうずきだす。
ジクリジクリ滲みだす被虐的な気分に、後戻りできない一点に向かけて集束していく。
内に秘めた、いやらしいマゾの心を持つ私という奴隷を所有できるのはただ一人きり。
他ならぬ、サディスティックな私自身の意志だけなのだから。
繁華街の裏手を通り、ビルの前で一度立ち止まる。
時間は夜の11時。
そう悪い時間ではない。なかで時間をつぶし、人気のない深夜になるまで待つのだ。
もう一度、カラダの芯で渦巻き、どろりと下腹部に溶けていく感じを噛みしめる。
すでに私の脳裏は、無謀とも思えるあの思いつきをあきらめる選択肢があることさえ
忘れていた。
そうして、あのSMバー”Hednism”へと足を向ける。
「いらっしゃいませ‥‥あら、あなたは」
「お招きに応じて、一人で来ました」
カウンターに座り、ほどなく現われたあの年上の女性バーテンににこりと微笑む。
バーの入りは4割といったところだった。前回同様すでに何人かは全身を拘束されて
未知なる感触にブルブル身を震わせている。
汗がじっとりとコートの内側を伝うのを感じながら、私はバーテンに話しかけた。
「たしか、SMショップもあるんですよね。あなたに見せていただきたいのだけど」
バーテンが、私をじっと見つめた。
相変わらず深いドミナの瞳。ちりちり身を焦がされる錯覚を感じつつ、見つめ返す。
ふふっと笑う。それを合図に、バーテンは立ち上がった。後を追う。
店の一番奥のドアを開け、むきだしの外階段を下りて一階下へ。
やはり従業員用の通路を抜けた先が店だった。思っていた以上に柔らかいイメージで
統一され、飾り棚に黒光りする革の腕輪やコルセット、ボールギャグやらチェーン、
もちろん様々な色の縄の束も用意されている。
「で?」
とんと、背中から手を置かれた。その手がびくりと震える。やはり、気づかれたのだ。
「‥‥どういう、つもりかしら。しかも私を指名して」
「難しい事じゃありません」
前を向いたまま、縄の束を手で触って感触をたしかめつつ私は答えた。全身鏡の前に
立ち、ゆっくりとコートの前をはだけていく。
「このロープで‥‥必要なだけ買いますから‥‥私のカラダを縛ってください」
「‥‥」
音もなくコートが落ち、くるぶしにからみつく。
ローヒールを履いたきり。ただそれだけの姿で、汗ばんだ裸身をさらして、私は囁く。
「もちろん、いい加減じゃなくて。本物のマゾ奴隷として。絶対にほどけないように。
私一人きりでは決して縄抜けできない縛り方で」
ドミナの瞳が炯々と輝き、片手を背中にねじりあげられた。
うっと息を詰まらせながら、なおも告げる。
「‥‥それが、ご主人様からの、その‥‥命令、なんです‥‥‥‥」
縄掛け その3

セルフボンテージを試した経験のある人なら、誰でもまず憧れるのが後ろ手の縛りだ。
後ろ手の緊縛。
みるからに淫靡で無力な、高手小手の縄目。
あらゆる自縛の中、ほぼ自力では不可能とされるのが縄を使う日本独自の緊縛だった。
いやらしく裸身をむしばみ、後ろ手にかっちり自由を奪いつくす緊縛は、どうしても
もう一人分の手がなければ完成しない。
一度でいい。あのスリルを味わい、ひりつく焦燥感、目も眩むばかりの愉悦を存分に
噛みしめることができたら、どんなに気持ちイイだろうか。
プロの手による縄掛けを体験したい。そのキツさ、残酷さ、絶望感に酔いしれたい。
あの晩、バーテンは私の瞳にそうした被虐の色を見てとり、わざと焦らしたのだろう。
確実に獲物をからめとるため、そうしたのだ。
けれど、バーテンの言いなりになるつもりはなかった。私はご主人様など欲しくない。
私の主は私自身。深い愉悦を味わうために自縛を楽しむ。それが私のスタイルだ。
なら、彼女をセルフボンテージの道具として・・・・・・・・・・・・・・利用したらどうだろう?
おそらく、かって誰も想像しなかっただろう、危うく妖しい思いつき。
自らを拘束し、縄抜けできるかどうか限界のスリルに溺れる衝動をセルフボンテージ
と呼ぶなら、発作的な私のこの行為は何なのだろう。
バーテンにウソはついていない。
ご主人様という単語を口にし、露出の命令でも受けてきたフリをする。事実、調教の
命令を出したのはもう一人の私自身だ。
けれど‥‥その結果、どんな縛めを施されても、私に拒否する自由はないのだ。
バーテンの鮮やかな縄さばきを知っているだけに、こうして敢えて彼女を挑発した私
が、本気になったプロの縄目から抜けだせる可能性は限りなくゼロだ。一応縄抜けの
初歩を本でかじった程度の私が、バーテンの緊縛にあらがえるだろうか。
焦燥と陶酔が入りまじり、カラダは小刻みに痙攣していた。
確実に失敗する自縛。それは、セルフボンテージではない。耽美で愚かな破滅願望だ。
たくらみを見抜かれ、本物の奴隷にされてしまうおそれさえある。無謀な遊戯だ。
それでも、私は‥‥
ポタリ。
沈黙を破ったのは、濡れそぼった私の女のとばりから床にしたたったオツユだった。
年季の入った表情に奇妙な色が浮かぶ。
「裸で縛られてきなさいって命令? ふぅん、変わっているわね」
「自分でほどけないように縛られて、その格好で戻ってきなさいって命令なんです」
「そう。メール調教みたいな感じかしら。でも、違うようね」
鋭い疑念のまなざしを受けながら、とっさにすらすらと言葉がでたのは上出来だった。
だが、老練なバーテンの瞳は、見透かすように私を射抜いていた。
不安にかられるひとときが、じわじわとすぎていく。
「‥‥で、NGは何?」
「え?」
一瞬きょとんとした。それだけでバーテンの視線が圧力を増し、ひやりとする。とて
も重要なことを聞かれている感じ‥‥なのに、私はまるで分かっていないのだ。
「NGプレイよ。ご主人様に何も言われていないの?」
「あっ」
バーテンの意図するところに気がついてはっとした。NGプレイ‥‥つまりこの場合、
ご主人様に禁止された行為のことだ。うかつだった。ご主人様の命令なら、禁止事項
もあってしかるべきだった。
バーテンは黙って返答を待っていた。焦りつつ、必死になって頭をフル回転させる。
なんだ、なんだろう‥‥
されたくない行為‥‥それは‥‥
「男性との絡み、ピアッシング、針などの拷問系のプレイ‥‥あと、お浣腸も、です」
思いついて最後をつけくわえた。
「ふぅん、ハードなのはアウト。ということは純粋な緊縛派なのかしら‥‥にしては、
あなたの姿、妙なのよね」
「なにがですか」
「縄の痕、まるでついていないじゃない」
ぎくりとする。
「ふ、普段はあとをつけないように革の拘束なんです。それで、その」
「うふふ、まぁいいわ。確認するけど、それでNGは全部ね。わざわざ私を指名して
くれたのだから、このバーでは私の言いなりになってもらうわ。いいわね」
怯えつつこくりと頷く。
そう。このバーにいる間は縄抜けなどおぼつかない。バーテンの可愛がられるだけの、
マゾ奴隷に堕とされて、そう扱われることだろう。
じくりと、カラダの芯が熱くただれ、濡れそぼっていく。
たまらなく、疼いて‥‥
「あらあらぁ、怖がらないで。大丈夫、ちゃんと良くしてあげるから。それとも」
「‥‥」
「疚しいなにかでも、隠しているのかしら。ねぇ」
婉然と微笑んだバーテンは、私の手をひねったまま背中に回りこみ、くいっと中指を
まげて私のクレヴァスを爪であやした。
ちゅぷんと、耳を覆いたくなるような汁音が弾ける。
「期待感でいっぱい、言葉も出ないのね。いいわ、遊んであげる‥‥子猫ちゃん」
首をくいっと背後に傾けさせられ‥‥
そのまま、私は燃えあがったドミナに深く唇を奪われていた。
              ‥‥‥‥‥‥‥‥
40代か、あるいは50代に入ろうとしているところか‥‥
こうして間近で見ないと分からないほどの小皺がバーテンの顔を彩っている。年季の
入ったその表情が女王様の威厳をかもしだし、私は目を奪われていた。
「ンッ‥‥ンンッ」
「‥‥」
深く唇を交わし、侵入してきた舌に前歯をくすぐられる。
懸命に閉じた歯をあっさり崩され、私の口腔はザラリとした感触に犯されていった。
初めての女性とのキスに呆然となった私の両手首を、唇を休めることなくバーテンが
後ろ手にねじりあげていく。
あいま、あいまの息継ぎにあわせ、唇を甘く噛まれて刺激にしびれてしまう。
「んッ、反応いいわ‥‥どんな縛りがいい? 後ろ手でも、鉄砲でも、合掌縛りでも」
「ふぁぁ、その‥‥‥‥‥‥後ろ手で、ぜひ」
「そう。エッチな子。そんなに後ろ手が好きなのね。マゾなんだ」
恥ずかしいことを口走ったと気づき、首まで赤くなった。意識がぼんやりして自分を
コントロールできなかった。カラダも脱力してしまい、ぐったりバーテンにしなだれ
かかっている状況だ。
心のどこかがマズいと警鐘を鳴らしていた。しかし理由に気づくより早く、ザラつく
二つ折りの麻縄の感触が重ねられた手首に吸いついてきた。ぴくりとふりむきかける
が、口を封じるバーテンの唇からとろとろと唾液を流し込まれ、反応できない。
「ふぅ‥‥いい? 拳を握っておいてね」
私の表情の変化を見つめるバーテンの瞳が、にいっと愉悦に微笑む。
次の瞬間、痛みに腰が跳ねていた。
手首の一番細い部分をとらえた縄が、二巻きしてギュギギ‥‥と食い入ってきたのだ。
あがく指を握りこまれたまま一度しっかり縄留めされ、さらに何重にも手首の周囲を
固めては念入りに縄掛けされていく。
(ウソ‥‥こんな、手首だけで念の入った縛り方を、どうして‥‥)
動揺に背筋が引き攣り、おののいた。
普通の縛りと違う。SMサイトや雑誌の写真でも、手首一つでここまで縄を打たれて
いる女性などみたことなかった。鈍い痺れが握った指先まで届く。明らかに、これは
私が縄抜けできないようにするための緊縛なのだ。
「ふぐ、ん、んくっ」
跳ねまわる私の裸身をしっかり抱き寄せ、縛りあげられた後ろ手の縄尻をつかんで、
バーテンがぐいっと容赦なく吊り上げた。肩や肘が悲鳴をあげ、絡みつく舌に言葉を
奪われてディープキスの奥にくぐもった息が詰まっていく。二の腕の外側から乳房の
上を通された縄がふたたび背中に戻って縄留めされると、もはや私は吊り上げられた
後ろ手を揺することもできなくなっていた。
バーテンが、やっと唇を開放した。ふぅっと深呼吸しかけ、狂おしい感触に息を呑む。
「簡単だけどね。これだけでもう縄抜けなんかできないの」
「ん、んく‥‥苦しい、です」
「当然よ。私を挑発した罰よ、奴隷ちゃん。胸が圧迫されて呼吸が浅いのよね」
問いかけられ、大きく胸を波打たせていた私は、声もなくコクリと頷く。
たった一本のロープを使っただけで、私のカラダは奇跡のように自由を奪われていた。
俗に高手小手と呼ばれる手首を吊り上げた縛りのせいで、腕を動かせない。指を開く
だけで、キリリと縄が食い込んでくるのが感じられた。
「ねぇ。どうして指を握らせたか知っている? えっと、早紀ちゃんだったかしら」
「いえ‥‥分からない、です」
嬉しそうに微笑み、できばえを確かめたバーテンが近寄ってきた。軽くひしゃげた胸
をふにふにと繊細にいじられ、思わず切なそうに喉を鳴らしてしまう。
「合気道で言う”朝顔の小手”。指を広げるとほんの少し前腕が太くなるの。縄抜け
の基本よ。だから拳を作らせて、一番細い手首に縄掛けしたの。ココに」
「‥‥!!」
バーテンのほっそりした指が、高手小手の手首を緊めあげる縄目をそっとなぞった。
鬱血させるほどきつく肌を這いまわる麻縄のライン。そこを嬲られ、緊縛の残酷さを
あえて実感させられる屈辱に、カラダの芯がグツグツと溶けていく。
嫌がったとしても、この姿で逃げ場などないのだ。
「これでもう、早紀ちゃんは絶対に、縄抜けなんかできないわ。注文どうり。あんな
コトいわれるから、少しムキになって虐めてみたのよ? 緩めてあげないから」
少し、残酷そうに。
そう言って、バーテンはくすくすと無邪気に笑った。
本来の歳をまるで感じさせない、威風ただようドミナの笑い声。
その台詞に反応もできないまま、裸身をミシミシ締めつける縄の激しさ、息苦しさに、
私はひたすら喘ぐほかなかった。喘ぎつつ、震えるカラダや手首を小刻みに揺すらず
にいられない。無意味な煩悶が苦痛を招くと分かっていても、身じろぎが止まらない
のだ。まるで、かさぶたを掻きたくて狂いそうになるのと同じ。
分かってはいた。
多分、私は縄酔いしてしまうだろうと。
セルフボンテージにのめりこむような女性は、少なからずM性を秘めている。だから
自由を奪われたという惨めさや無力感に溺れきってしまうのだ。
「ん、ッッ」
バーテンに知られるのが嫌で、唇を噛む。
等身大の鏡に映ったカラダは、裸の胸の上を一本の縄が横断しているだけの姿だった。
縄をたるませない目的の絞り縄さえ噛まされてない。プロの縄目というだけの、あっ
というまに完成したシンプルな緊縛にすぎない。
それが‥‥それが、こんなに、カラダをおかしくさせてしまうなんて。
「‥‥」
「どう、泣きそう? 泣いたって駄目よ。これはオシオキなんだか‥‥」
縄尻をつかんだバーテンが声をかけ‥‥そこで止まった。
容赦ない凝視に耐えきれず、目をつぶる。いや、嫌ァ‥‥全部、知られちゃう‥‥
「掘り出し物ね、あなた」
「!」
ずくんと、背筋をなまなましい疼きが貫いた。
耳の裏でささやいたバーテンが、耳たぶを柔らかに噛んだのだ。のけぞったカラダを
抱きとめられ、なおもバーテンが楽しげに囁いてくる。
「あなた、初心者みたいにカラダはこちこちなのに、しっかり縄酔いしているのね。
気持ちイイんでしょう? 我慢しないで。好きなだけ啼いて、私に喘ぎ声を聞かせて」
「くぅ‥‥ぅぅぅ」
「もっと綺麗に縛ってあげるから目も開けて。いいのよ、リラックスなさい‥‥」
あぁ‥‥
叶わない。この時、私は痛切にそう感じていた。
調教慣れしたテクニックとしゃべりかた。甘く優しくささやきながら、彼女の両手は
私を背中から抱きしめ、躯のあちこちを焦らすようにさわってくるのだ。
自縛経験の有無なんて関係ない。こんなにもプロの手管が圧倒的で、心乱されるもの
だったなんて。もう、抑制もきかなかった。ただひたすらに、この人の前でムチャク
チャに乱れてしまいたかった。
最後の最後まで、何もかもゆだねてイカせて欲しい‥‥
でも‥‥そうなったら‥‥
「こ、怖い‥‥」
「どうして?」
「‥‥命令を無視して、本当に、意識が、飛んじゃいそうな、気がして‥‥」
「それの何がいけないの。ね、目を開けてよ、子猫ちゃん」
耐えがたいほどジリジリとバーテンの片手がわき腹を伝い、下腹部へ向かっていた。
同時に乳房を下からすくい、はらんだ熱と汗ばむ量感を愉しむように掌で転がされる。
もはや目をつぶっている方が苦しかった。
不自由なカラダのせいか五感が鋭敏になり、じわじわ這っていく指の動きをなまめか
しいばかりに素肌で感じとってしまうのだ。
でも、目を開けたら、きっとそこにはいやらしく呆けた私の顔がある‥‥
「あなたのご主人様のことは、バーの外に出てから思いだしなさい。第一、そうじゃ
ないと私に失礼でしょう? 仕事の時間を割いてこんなに尽くしてあげているのに」
「ひンっ‥‥あ、あっ、いぁぁッ、そこは‥‥」
骨盤のあたりをまあぐっていた指がふっと離れる。そして、次の瞬間。
ツプリと音を立て、びしょびしょに熱いお汁の漲ったクレヴァスの花弁を押し開いた
バーテンの指が1本、根元までみっしり下腹部に埋まっていた。
「やぁ、らめぇぇ‥‥」
あのとき、何を叫んだのか、覚えていない。
ただ、思わず見開いた瞳の先に、茹で上がった顔を振りたくる私自身の卑猥な表情が
飛び込んできて‥‥あとはどうしようもなく、浅く苦しいアクメが押し寄せてきた。
目の前が真っ白になる。意識が一瞬遠のきかけて、なのに気を失わないほどの、絶妙
なもどかしい刺激の狂おしさに翻弄されていく。
息つぐ間もなく断続的な快楽が全身を揺らし、キリキリ裸身を身悶えさせて‥‥‥‥
全身でむさぼらないとどうしようもなくて、悲鳴がこぼれて‥‥
「ちょっとあなた喘ぎがうるさいわ。これでも咥えていい子にしてなさい」
「や、待っ‥‥ふぐッぅ」
それすら口実に利用され、鮮やかなボールギャグが私の唇を割って押し込まれていた。
ちょうど咥えこんだ口の中がパンパンに張りつめるサイズだ。思わず噛みしめた歯が
ボールギャグにあたり、閉じきることができない。
「んク‥‥かふっ」
「ふふ、奴隷らしくなってきたわ。そうやって素直に言うことをききなさい。ここに
いる間は私がご主人様なの。そういう約束、さっきしたものね?」
あごをつままれ、再び鏡越しに返答を迫られる。
なんて‥‥憐れなんだろう‥‥
こんな姿で、高手小手に縛られて、私に逆らえるはずなどないのだ。
悩ましく眉をひそめつつ、バーテンにいたぶられる自分自身に私の目は釘付けだった。
奴隷の惨めさに酔いしれつつ、コックリと頷く。バーテンの顔がほころぶのを見て、
なぜだか心がどきりとした。新たな麻縄の束を彼女がほぐしだす。
もっと縛ってもらえるのだ‥‥
それがセルフボンテージを困難にする物だと理解していながら、一度縄の味に溺れた
カラダは理性とうらはらに悦びで跳ねてしまう。
「よしよし。いい子。じゃ、もっと縛ってあげるから。待っていて」
「ん」
もう一度従順に頷く私の頭を、バーテンが優しくなでる。鏡に映った姿はまさに信頼
しあった女王様と奴隷そのものだ。
背後でどこかのドアが開いた。物音に一瞬きょとんとなり、はっと冷汗がにじみだす。
‥‥誰かが入ってきた!?
ここはたしかSMショップのはず。まさか‥‥
そんな‥‥お客に、浅ましい奴隷の格好を、見られてしまう!!
ギョッとして全身がこわばり、無意識に私はその場から逃げかけていた。
手首に激しく縄が食い込み、弓なりに背がのけぞってしまう。
かすかに怯えつつふりむくと、縄尻をひったてたバーテンが静かに私を睨んでいた。
「何をしているの。どこへ逃げるつもり‥‥?」
「かふっ、ふぅぅ‥‥」
「見られて感じる淫乱なマゾのクセに、従業員には会いたくないの。身勝手な娘ね」
バーテンを怒らせてしまったらしい。淡々と色のない口調に、かえって身がすくんだ。
違うの、勘違いして、お願い‥‥すがりつく哀願の視線も彼女には届かない。ボール
ギャグに言葉を奪われ、誤解を正すこともできないのだ。
近くの陳列棚に近づいたバーテンは、緊縛の縄尻を一番高いところの柱に結わいた。
自然とカラダを引きずられ、棚のすぐわきで爪先立ってしまう。
「いいというまで待っていなさい。分かった?」
「‥‥ふぅぅ」
がっくりとうなだれ、小さく頷くのを見届けてバーテンは扉の向こうに消えた。沈黙
の下りた店内に、くぐもった私の息づかいだけが響いている。
私‥‥私は、どうしたらいいんだろう‥‥
ふるふると身を揺すった途端、高々と吊り上げられた後ろ手の縄目がギュチチと軋む。
深々と咥えさせられた猿轡がわが身の情けなさを再認識させ、非現実的な今の状況を
身をもって思い知らせていた。
いやらしく、浅ましく、絶望的な緊縛を施されてしまった私。
セルフボンテージの道具にバーテンを利用するつもりが、いつのまにか完全に彼女の
奴隷として扱われ、あまつさえこうして緊縛姿で放置されてしまっているのだ。
もし今お客が入ってきたら、私はどう目に映るだろう。
誰もいないSMショップの店内にポツンと拘束された裸の女性。
だらだらボールギャグから涎をたれ流し、丸出しの股間はびっしょり愛液まみれで。
都合よく発情したマゾ奴隷がいたら、その場で犯されたり、しないのだろうか?
襲われても、このカラダでは助けも呼べない‥‥
冷たい恐怖が背中をはしり、縛められた裸身がいやな感触にきしんだ。濡れそぼって
いた下腹部から、波の引くように疼きがさめていく。
今すぐ縄を解かなければ‥‥
「んグっ」
身じろいだ瞬間、手首の痛みに呻きを漏らした。少しでも手首を下げようとすると、
それだけで痛みが走る。縄を解くのは不可能だ。せめて縄尻をほどいて棚のわきから
移動したいけれど、頭より高い位置で結わえられていて手の出しようもないのだ。
あらためて戦慄がカラダを震わせる。
この姿がいかに無防備で、いかに無力な存在なのか。
どうしたらいいのだろう‥‥
カチリと背後で響く音に、弾かれたように私は振り返った。棚の影で誰だか見えない。
「私よ、落ち着きなさい。そんなに怯えないの」
「‥‥」
バーテンの言葉に、トリハダだった肌が徐々に静まっていく。
だがあらわれたバーテンの背後を見て、私は驚きのあまり硬直していた。
同じように火照った肌、縄の食い込みでひしゃげたカラダ、目隠しに革の口枷‥‥
「今日のSMショーに出る子なの、彼女。あなたの先輩に当たるわね」
「ンッッ!!」
耳は聞こえているのだろうか。見えない第三者の存在に気づいて、彼女が身をよじる。
その姿‥‥私の前にいたのは、私よ同じように縛られた女の子だった。
ペットさながらに首輪から伸びるリードを引かれ、足元をふらつかせている。
「この子に奉仕してあげなさい。快感を与えてあげるのよ」
「‥‥くぅ?」
つかのま、私は混乱しかけた。
縛られて、口枷もされて、手も口も自由につかえないのに‥‥?
息苦しいボールギャグを圧迫された舌でつつき、何もできないとバーテンに強調して
みせる。苦笑したバーテンは私のあごを指でつまみ、語りかけた。
「やり方は自由でいいの。この子は刺激に飢えているから、感じさせてあげて。その
間に、私があなたのカラダを」
片方の手に持っていた縄の束を私の素肌に這わせながら、
「ここも、ここも、ココにも‥‥みっちり縄を這わせて、感じさせてあげるわ」
「ひっ‥‥ン!」
「分かったわね。さ、初めて」
さっきと同じように私の背後にまわったバーテンが二つ折りの縄をしごいている。
奴隷同士の虐めあい‥‥そんなことを強要されるなんて‥‥
おののきで、カラダがブルリとよじれた。
縄掛け その4

目をみはった私の前に、瑞々しく汗にまみれた柔らかな肢体があった。
黒布で目隠しされ、思わず唾を飲み込んでしまうほど淫蕩な縛めに裸身を跳ねさせ、
気配でしか感じられない私の存在におののいている姿‥‥
ボールギャグを噛みしめた唇から吐息がこぼれる。
羞じらいに色づく少女の体は合わせ鏡そのものだった。後ろ手に、小ぶりの乳房に、
胸へと食い込み双乳の谷間をすくう首縄‥‥残酷な縄掛けは見れば見るほど羞恥心を
あおり、裸身を熱く焦がしていく。
吊り上げられた手首が、ひりひり被虐の予感によじれていた。
見せつけられた奴隷の姿態は、これから私が施される調教の風景を暗示しているのだ。
じきに私も、同じ拘束に彩られ、同じ快楽に喘がされるのだ。
「さ、緊縛好きな奴隷同士、不自由なカラダで虐めあうの。いいわね」
「ひぅぅ!!」
「ん、んふァ‥‥!!」
無造作にお尻の肉をつかまれた私はよろけ、少女のウェストに頬を押しつけていた。
不意の感触におどろき、ボールギャグごしに啼き声を交わしてしまう。
と、私の縄尻に新たな縄を結びつつ下腹部をまさぐっていたバーテンが首をかしげた。
「あら。ひょっとして、さっきの放置が怖くてエッチな気分が醒めちゃった?」
「‥‥」
無言で、バーテンを怒らせないよう小さく頷く。
驚くことに、彼女は申しわけなさそうな顔を見せ、私にわびてみせた。
「そっか。この店は11時閉店なの。説明不足だったわ。ゴメンなさいね、子猫ちゃん」
「‥‥ン」
「その分、いっぱい虐めてあげるから。女の子同士はイヤじゃないんでしょう? ね。
もう一度とろとろにオツユがあふれだすまで縛ってあげる」
「!!」
意地の悪いセリフに、とくんと動悸が乱れかける。
縛めが苛烈になればなるほど、施された身は絶望的な縄抜けを強いられることになる。
なのに、肌にからみつく縄のたわみを愛しく感じたのはなぜなのか。
奴隷に対しても気さくで、それでいて真摯に向きあおうとする女性バーテンの印象は、
私の中で確実に変わりだしていた。
‥‥そう、この人の奴隷になら堕とされても構わない、そう思いはじめるくらいには。

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

(自由を奪われたまま、目の前の少女を責めなければならないなんて‥‥)
女性同士での裸のからみあいを強制されながら、私のカラダは倒錯した悦びに痙攣し
ていた。恥ずかしいのに、惨めなのに、そのせいで興奮してしまう。拒否できないの
は、この身が囚われの奴隷だという何よりの証だから。
そっと頬を肌にすりよせ、淡いタッチで焦らしつつ目隠しされた奴隷の顔を見あげる。
「ン‥‥ンッ」
甘く息をつく彼女は少女といっても良いきゃしゃな体格ながら、しなやかにくびれた
腰つきと量感のあるお尻のラインに淫蕩な雰囲気を匂わせていた。全身には青い縄が
這いまわり、鮮やかな亀甲縛りとなって若々しい肌を彩っている。ウェストで斜めに
交錯した縄目は、一直線に股間へともぐりこんでいた。
‥‥うらやましい。
ちらりと、嫉妬にも似た思考が走り抜けた。
残酷な緊縛にもかかわらず、彼女は全身でしっとりメスの匂いを発散させていたのだ。
私の表情をみてか、バーテンが片頬に笑みを作った。
「そうだ。虐めあって、負けた方には相応のオシオキをしようかしら。分かった?」
「!」
「‥‥!」
縛られ、存分にカラダを火照らされて嬲られた上、お仕置きまでされてしまう‥‥
それがどんなものかは分からないが、ハッと顔をこわばらせた少女の表情でバーテン
の苛烈さが分かった。そんなお仕置きを、未熟な私が受けたらどうなってしまうのか。
——負けたら、お終りだ。
一瞬の思考に背を押され、私は先に食らいつく勢いで少女の体に顔をうずめていた。
小柄な緊縛姿がギシギシと縄を軋ませて弓なりにのけぞりかかる。
「ふっ、ン‥‥!!」
小柄な少女の声はハスキーで高く、聞くものをゾクリとさせる。
見たところ女子高生なのだろうか。いかにも幼い感じのカラダが快楽にたわんでいる。
鼻先で彼女のおなかをくすぐり、さらさらと柔らかく焦らす。大きく反応した少女は、
かろうじて声を洩らすのを耐えたようだった。
奴隷同士の嬲りあい。負けたくない。ちろりと、サディスティックな炎が心に灯る。
「さ、ちょっと胸を張ってね、子猫ちゃん」
バーテンの手で後ろ手に新たな縄目を打たれつつ、私はやみくもに下半身をよじらせ、
口腔を埋めつくすボールギャグを歯の裏で噛みしめて、濡れた表面をちゅるちゅると
少女の肌に這わせていった。
下からじわじわと。乳房へ、少しづつ迫っていく。
粘つくヨダレの痕が、淫猥なかゆみを少女の肌に刻んでいく。
「目隠しの分、先輩にもハンデあげないと、ね」
「ン、くぅぅ」
ギュッと乳房をバーテンに握りこまれ、たまらず私は呻いていた。
新米の奴隷をよがらせ感じさせようと、バーテンの縄掛けはバージスラインから乳房
をくびりだし、桜色に羞じらうオッパイをぴちぴち弾きだす。疼痛めいた衝撃をなお
もこらえ、お尻を揺すった私は懸命に目の前の瑞々しいカラダを嬲っていった。
へっぴり腰で逃げかかった少女の背が陳列棚にガタンとぶつかる。
「ふぅ、んぁン」
少女の口から切なげな嬌声がこぼれる。
触れるか触れないかのもどかしい焦らしが効いているのだろうか。亀甲縛りの裸身を
みちみちくねらせ、少女は砕けそうな膝でどうにか立っていた。目隠しと革の口枷の
下で、頬が爛れんばかりに上気している。股間にギッシリともぐりこんだ股縄は、し
とどな雫に濡れそぼっていた。陥落寸前なのだ。
一方、嗜虐的なバーテンの入念な手管で縛り上げられていく私のカラダもまた、投網
で打ち上げられた魚のようにひくひくとのたうっていた。喘ぎを噛み殺すのがやっと。
ビンカンな乳房はもちろん、上腕の柔らかい肉がくびれるほど縄目は肌をむしばみ、
ずしりと後ろ手の上から重い物を背負わされたような窮屈さがゾクゾクとマゾの陶酔
をかきたてていく。
はためには私も少女と変わらぬくらい肌を火照らせ、カラダを昂ぶらせているだろう。
だが、明らかに有利なのは私だった。
目隠しのせいで、少女は私のカラダをうまく責められないのだ。このままオッパイの
寸前まで舐めあげ、間を置いていきなり乳首を虐めてやれば‥‥
「ふぅ、ふぅぅ」
「ン、ひふぅ‥‥」
肩と肩を預けあい、発情しきった囚われの奴隷2匹が沸きあがる悦びに喘ぎつづける。
どうにか身を引き剥がし、少女のバージスラインを鼻でくすぐって‥‥
固く縛められた手首の縄尻がギシリと引き絞られた。
「ひぁぁッ!」
ギュチチッと縄目が啼き、はしたない声をあげて私はのけぞってしまう。
責めるべき少女を見失った私はふらつき、ほとばしった快感を必死になって抑えこむ。
それが、決定的な隙になった。
「後輩の方がうわてね。ほら、あの子。奴隷の先輩なのに、すっかり感じちゃって」
「‥‥ィうっ!!」
聞こえよがしのバーテンの揶揄を耳にして抗議の声を上げた少女の反発は、ギョッと
するほどの勢いだった。
ギクシャクと腰を弾ませ、まるで挑みかかるように不自由な上体をねじって、私の方
に倒れこんできたのだから。そして、謀ったかのようにそのタイミングで、
「だから、もう少しハンデ上げようかしら。例えば——」
「‥‥‥‥‥‥‥‥ッッッ!!!!」
めじ、っと。
したたった卑猥な水音が、私の下半身からだと気づくのに、
音を立ててめり込んだのは、
物欲しげにぬらつく女の肉層に、はしたなくほころびたクレヴァスに埋まったのが、
ふと、空白になった意識のなか、
バーテンの台詞だけがうつろに響き‥‥
「——股縄も、あの子と同じように味あわせてあげないとね」
急速に、逆回転した世界が襲いかかってきた。
下半身を裂きあげる勢いでお股のヒダ深くへビチビチッと股縄が食い込まされ、ゴリ
ゴリした結び目のコブに、クレヴァスとアナル、包皮の下のクリトリスを3点同時に
揉み潰されてしまったことに気がついて。
充血しきった下半身が、ぷっくり左右に分断され、梳き上げられて‥‥
とろりと溶けていた下腹部を、ミッチリと股縄で裂かれてしまったのだと知って‥‥
忌まわしい衝撃に神経を灼かれ、自由を奪われたカラダが弾んでしまう。
「クッ、くふ、おぶぅッッッ!」
口から泡を吹きかけ、ガクリと腰を砕けさせたところに少女の裸身が密着してきた。
なし崩しにそそり勃った乳首を、ぐりぐりと固い革の口枷に揉み潰していく。
オッパイとオッパイをなすりつけあい、絡まりあった汗みずくの裸身に火照らされ、
刺激で腫れあがったうなじに熱い吐息を吹きかけられて‥‥
「いぁン、ひぃン‥‥‥‥ッッ」
ボールギャグの奥で浅ましい嬌声にのどを詰まらせて。
愉悦の深さに、ボタボタッと透明なしずくを床にほとばしらせて。
バーテンの手で股縄をギリギリたぐりこまれ、深々と食い込ませて縄留めされながら、
私は自分でも気づかないうち完全に、完膚なきまでに、イッてしまっていた。
全身が性感帯になったかのよう。
ふわふわ踏みしめる足取りが、何度もぶりかえす絶頂の余韻に弾んでよろめくのだ。
「うふふ、残念でした子猫ちゃん。お仕置き決定よ?」
「ぃお、ひぃ、ィォォ‥‥」
奴隷の少女と女性バーテンにサンドイッチにされながら、私は立っている余力もなく、
めくるめく昂ぶりと残酷な縄に身をゆだねて緊縛姿を震わせているほかなかった。

               ‥‥‥‥‥‥‥‥

バーテンの、しなやかな指が肌の上を這いまわっていく。
縛めの緩みやほつれを直し、ところどころ意地悪く性感帯をぴいんと爪弾きながら、
絶望のふちに沈みこんだ私の感度を楽しげにチェックしているのだ。
「怜菜、あなたも手伝いなさい」
「‥‥ンク」
いまだピクピクと絶頂の余韻に震えているオッパイに、目隠しを解かれた少女が胸を
よせてきた。ほのかな嫌悪感を見せた私を面白がってか、逆に小ぶりの乳房を近々と
くっつけ、お互い刺激に飢えて尖ったままの乳首をツンツンとつつく。
「ん、んんぅぅ!」
いやらしい肉体の交歓に不自由なカラダがよじれ、倒錯した快楽の波に呑まれてゆく。
逆らっても、悶えても抵抗できない、とめどない被虐の快感が意志を薄らがせるのだ。
『お仕置き』とは何をされるのか。
セルフボンテージからの縄抜けは、どこまで絶望的なものになっていくのだろうか。
冷や汗まみれの焦燥感さえ、ケモノじみた熱い疼きにかき消されていく。
「よし、これで完成」
「ファ‥‥ンッ、んンンン!!」
「どう? “絶対縄抜けできない”緊縛が、ご主人様のオーダーだったわよね」
背後に回ったバーテンが縄尻をキュッと引き絞る。とたん、すべての緊縛がゆとりを
失い、キリキリ肌に咬みついてきた。柔らかな躯を握りつぶす圧倒的な網さながらに。
手首の先は鬱血してしまい、すでに感覚もない。
このまま縛られつづけたら私はどうなってしまうのだろう。
裸身が引き攣れてチリチリ痛いのに、それさえ焦りにも似た疚しい疼きになってゆく。
血行が止まって、指先が麻痺してしまったら‥‥
二度と、自力で縄抜けできないカラダにされてしまうのか‥‥
本能的な恐怖に突き上げられ、私はわけもなく上体をきしらせてあらがった。だが、
束ねられた後ろ手をくねらせ、身悶えれば悶えるほど、すべての動きは縄を伝わって
股間をギシギシ虐めぬく卑猥な振動になってしまうのだ。
「ふッ! お、くふッ、カハ‥‥」
あらためて包皮を剥かれたクリトリスに今は股縄が直接当たり、気も狂いそうになる。
甘い息を乱れさせてもがく私を、バーテンがゆっくり立たせた。
「うふふ、縄の感触を愉しんでいるのね。じゃ、あなたの格好をみせてあげるから」
等身大の鏡の前に連れて行かれ、顔をつままれて無理やりのぞきこまされる。
‥‥いや、本当は、少し違う。
形だけ顔をそむけつつ、それでも私は自分のカラダを眺めずにはいられなかったのだ。
おそらく二度とない、憧れの緊縛を身にまとった自分自身を。
「‥‥キレイよ。やっぱりあなた縄が似合う。ね? 好きなだけ悶えていいの」
「‥‥」
下腹部がキュウウッと収縮し、ワレメに埋もれた縄のこぶを激しくむさぼっていた。
残酷、というレベルでさえない。
まるで見たこともない、発情したインラン雌奴隷が鏡から私を見つめ返していたのだ。
普段着さながらにしっとり縄を肌になじませた緊縛姿は同じ女性の性的衝動さえ煽り
たて、うるむ瞳ばかりか肌全体が慫慂とした奴隷の雰囲気をただよわせる。
恥ずかしいくらい勃起した乳首も、いじましくうねるヒップラインもすべて私のもの。
この爛れたカラダにムチを叩きいれてやりたい。一体、どんな声で鳴くだろうか‥‥
そう思わせる上質の奴隷が、私自身だなんて‥‥
ナルシズムともマゾヒズムともつかぬ昂ぶりが裸身を溶かしていく。
日頃セルフボンテージにまみれ、快楽に溺れている時でもここまで卑猥なマゾ奴隷に
なりきったことがあっただろうか。
上気した裸身を彩るのは、亀甲縛りとはまた違う、梱包めいた巧緻な縛り。
背中高く吊られた手首から伸びる縄は二の腕を上下で緊めあげ、むっちり熱をはらむ
たわわな乳房を浅ましく梳き上げながら、ウェストで何度か交差して一気に股間へと
もぐりこんでいる。
留め縄で絞られた縄は首から胸の谷間をV字に締め、さらに首の後ろから左右の二の
腕へと伸びてより強くカラダと両腕とを緊めあげていた。ランドセルを背負わされた
ような息苦しい圧迫のせいかカラダが前かがみになってしまう。
手首をラクにしようと胸を張れば双乳が激しくくびりだされ、背を丸めれば逆に高手
小手に縛られた手首がキリキリ引き攣れる、無残な責めそのものの縄掛けなのだ。
「目が離せないでしょう? 自分の似合いぶりに」
鏡の中で身じろぐ奴隷の背後から手が伸び、苛烈な縄目に弾ける乳房をねっとり変形
するまで揉み込んでいく。たまらない刺激に私が喉を鳴らせば、鏡の向こうでは緊縛
奴隷がひいひいうなじを反らせて乱れきっているのだ。
たまらない。
自由を奪われたカラダを嬲り尽くされ、しかも無力なその様子を鏡で見せつけられる。
浅ましい疚しささえもボールギャグに阻まれ、奇妙な喘ぎにすりかわってしまって。
イッたばかりのカラダが、息をつぐ間もなく遙かな高みへ昇らされていく。
ウェストのくびれをなぞりながら、バーテンが低く囁いた。
「奴隷市場で競りにかけちゃおうかしら。あなた、絶対売れ残らないからおしまいね。
普通の生活、捨ててみる?」
「ひぅ‥‥ッ」
「戸籍も失って、一生快楽をむさぼるだけの人生。短命らしいわね、専属奴隷って」
ウソ‥‥
そんな、そんなのイヤ‥‥
でも、私、抵抗できないのに‥‥このままじゃ‥‥
苦悶のシワを眉によせ、必死でバーテンの愛撫に抵抗して身をよじる。
「フフ、あはは。ウソウソ、そんなの日本にあると思って? 冗談よ、子猫ちゃん」
真剣な表情をふっとゆるめたバーテンは、でも感じたでしょ、と笑いながらオッパイ
をたぷたぷすくい、すっと身を離した。
支えを失った躯が膝まづきかけ、ピンと宙吊りになる。いつのまにか、バーテンが先
に縄尻を天井に結んでいたらしい。
「さて、じゃ怜菜、あとはこの子の面倒見ておいてね」
「え、私が、ですかぁ~?」
桃源郷をさまよう意識に、口枷を外された奴隷少女とバーテンの会話が聞こえてくる。
少女の喋りは意外なほど軽く、場の雰囲気から浮いていた。
「そうよ。時間まで彼女で楽しんでいいから。ただし、絶対にイかせないように」
「‥‥ふふ、それは楽しそうですね、ご主人さま」
回りこんだ少女が、小ぶりの乳房を私の二の腕に押しつけてくる。
たわむれめいた仕草とだが逆に、私を見る少女の視線はあまりにも冷ややかだった。
‥‥まるで、
‥‥そう、嫉妬に狂った女のような。
「じゃあね、子猫ちゃん。あとでお仕置きしてから、ご主人様の元に返してあげるわ」
コツコツと足音を立て、バーテンが去っていく。扉が開き、やがて静寂が下りた。
広いスペースに、緊縛された奴隷が2人きり、取り残されて。
誰も‥‥監視する者も、止める者も、もういない。
私の調教は忙しいバーテンからこの子に委譲されたらしく、軽い喋り方の少女は上気
したカラダをなよなよとよじらせ、けれど瞳は醒めきったままで顔を近づけてくる。
「なぁに。アンタ、ご主人さまじゃないとイヤだっていうの?」
「ン、ん、んンゥゥ‥‥!!」
「ご主人様の手を煩わすまでもないわ。私がイカせてあげるから‥‥」
亀甲縛りの裸身をぶるりと愉悦に痙攣させ、少女の柔らかな肉体が迫ってきた。逃げ
ようとしたカラダが天井の縄に引き戻され、残酷な縄目が発情した肢体をギュチッと
くびりだす。
乳房を絞られて悲鳴をあげた私のカラダを陳列棚に押しつけ、少女が密着してきた。
「ンァ!」
「‥‥ヤァァン」
指先の焦らしとはまるで違う、なまなましい肌と肌との重ねあい。
ヒリヒリ疼く裸身はむくもりをむさぼり、汗ばんだ人肌にぴっちり吸いついてしまう。
擦れあう肌の艶めかしさに嬌声はこぼれ、私たちは不自由なカラダをくねらせあった。
いびつにくびりだされた4つの乳房がたわみ、ひしゃげ、ぐにぐに揉み潰しあう。
高手小手に括られた手首が、ツゥッっと引き攣っていた。
顔から火を噴きたいほどの羞ずかしさ‥‥
縛りあげられているカラダでは、どうしたってえっちな部分をすりつけあって互いを
責め、慰めあうほかない。女性同士のからみに私が抱く軽い嫌悪感を知って、少女は
あえて私を挑発するようにいやらしく肌を絡めてくるのだ。
しかも彼女は、息を弾ませながら言葉責めでも浅ましく興奮させようと私を虐めだす。
「なによ、嫌がってるふりして、カラダは濡れ濡れじゃないの」
「‥‥!!」
オッパイ同士ぐにぐに揉みあいながらの台詞に、頬が紅潮するのが分かった。生意気
な台詞にやりかえそうにも、パンパンに膨れるボールギャグを咥えこまされた口枷の
下からはダラダラ滴るヨダレに吐息がまじるばかり。
汗まみれの上半身を引き剥がそうと身悶えれば、巧緻な股縄がドロリと下半身を溶か
していく。物欲しげに股縄を咀嚼するクレヴァスからあふれだした女の雫はべっとり
内股を汚し、言葉責めのままに密着した少女の足をも濡らしていた。
「なによ、文句があるなら言ってみなさいよ」
「かふ、フッ‥‥かはッッ‥‥ン」
「なぁに、呻いてばっか。図星で言い返せないでしょ? 縛りあげられて、おんなじ
奴隷に虐められて、おま○こビショビショのヘンタイ奴隷だものね」
「くぅ‥‥ッ!!」
「ご主人さまが調教する必要ないわ。アンタなんか最低、奴隷の下の奴隷なんだから
私が飼ってあげる。今から私のペットよ。誓いなさい、さぁ!」
こっちが喋れないのをいいことに、敵意もあらわに奴隷の少女は私を辱めていった。
自らも発情した頬を赤らめ、快楽をむさぼりながら少女がせせら笑う。
きつくガードする閉じた太ももに自分の足をわりこませようとし、ムリだと分かるや
首を傾けて私の胸に、顔を、うずめ‥‥
「ひぁァ、ッン」
なまなましい感触に息がつまり、喘ぎはきれぎれになった。
閉じた太ももごと自分の濡れたお股を押し当てながら、少女が胸の谷間に舌を這わせ
はじめたのだ。指とは比べ物にならない、甘美で狂おしい刺激がカラダを震わせる。
さっきの賭けとは状況が逆転していた。
ボールギャグを嵌められ、吊られ、壁際に押しこまれて逃げ場もない。
淫らがましい緊縛をまとう同じ奴隷相手からのいたぶりさえ、今の私は受け入れるし
かないのだ。絶望が、チリチリと体の芯を爛れた被虐の諦めでみたしていく。
「バカな女‥‥あんたなんか、あの人の5番目にも入れないわ」
しかも愛撫を続けつつ、少女は嫉妬の目で私を睨むのだ。
なにか、なにか変‥‥
この子怖い‥‥あのバーテンと全然違う‥‥
私の瞳に浮かんだ色を見てとったのか彼女は首をかしげた。
「まさか、知らないで奴隷になった? あの人は私も含めてたくさんの奴隷を持って
いるのよ。この私だって一番じゃないのに‥‥あんたみたいな新人が」
再び、ゾクリと舐め上げる刺激が乳房を充血させていく。
嫉妬。
少女の目は、奴隷のプライドを賭けた嫉妬にたぎっていたのだ。
おそらく私とバーテンのやりとりなど知らず、見たまま新しい奴隷だと誤解したのか。
「ふぅんンッンン」
乳首にしゃぶりつかれ、鼻から苦しい悲鳴をあげてしまう。
ふっとゆるんだお股の間に少女の足が強引に割り込み、下腹部がふれあった。うずく
クレヴァスを相手の太ももになすりつけ、足を動かして強引に昂ぶらせようとする。
濡れそぼった股縄が相手の脚に刺激されてグリグリよじれ、甘美な衝動に鼻から息を
洩らして二匹の牝はよがりあっていた。
自由を奪われた女同士の、奴隷同士の妖しい戦い。
もつれあうカラダをぐにぐに相手に押しつけ、混ざりあう女の芳香にむせんで悶える。
奇妙な戦慄めいたおののきが、カラダの芯にわきはじめていた。
このまま、同じ奴隷相手に負けていいのか。やすやすとイッてしまっていいのか‥‥
バーテン以外の見も知らぬ女に、自分のカラダをあしらわれていいのか‥‥
「ふふ、そろそろ観念した? 私の奴隷になるのよ、いいわね」
「‥‥」
力の抜けかけたカラダを愛撫され、必死に感じないよう意識をしめだす。
勝ったと思ったのか、壁際に寄った彼女が後ろ手で何かをいじると、私を吊っていた
縄がパラリとほどけた。くたっと床にへたりこむ私の前に屈みこみ、膝立ちで少女が
にじりよってくる。
「フフ。イかせちゃダメって話だから、寸前まで楽しませてあげ‥‥」
「!!」
ひそかにたわめた力で、私は肩から少女にぶつかっていった。
体格差を利用して小柄な少女の上にのしかかり、仰向けにおしたおす。お互い後ろ手
に縛られているのだから、これだけでアドバンテージが逆転するのだ。
「なっ、何を‥‥ヒッ」
体重をかけたまま、私は馬乗りになって反転し、少女のおなかに顔をうずめてボール
ギャグをすりつけだした。敏感だった部分をなぞられ、少女が淡い悦びの声をあげる。
そのまま下腹部へちゅるちゅると口を這わせていき‥‥
「ィァァ!」
全身がぎくりと引き攣り、逆海老にくねっていた。
いつのまにか、今度は首をもたげた少女が私の股間に顔をうずめ、舌を伸ばしてクレ
ヴァスの周囲を舐めようとしはじめたのだ。かろうじて届かない舌は、乾いた愛液で
汚れたままの内ももをぬらぬら這い、太ももの裏側を扇情的になぞっていく。
「クッ、ひく、ク‥‥」
「ヤァ、ぁあン」
いつのまにか、我を忘れた私はシックスナインの体勢で怜菜と呼ばれる少女のカラダ
を責め返していた。ひと舐めごとに下の裸身がブルリとくねり、ダイレクトな反応が
私にまで快感を伝えた。
気持ち良さそうに眉を寄せた少女は、ハスキーな声であえぎだす。
手首をギュッと握りしめ、私もまた不自由な上体を揺すりたてて快楽を味わっていた。
昂ぶった頭がパンパンになっていて、何をしていたのか、何をすべきかも分からない。
ただ一つだけ、この快感を、刺激をもっとむさぼっていきたい‥‥
ソコ、その辺がすごく感じて‥‥
だから、私と同じように、うん、そこをせめて欲しいから‥‥
コンコン
壁をノックする音は、あまりにも間近で聞こえてきた。
「‥‥!!」
ギクッとカラダが硬直し、おおずおず振り向く。
やはり、立っていたのは苦笑顔のバーテンだった。まさに昇りつめる寸前だった裸身が
ご主人様の姿におののき、ガクンとブレーキがかかってしまう。イキそこなった辛さで
苦悶の呻きがあふれた。
下半身はこんなに濡れて、こんなに弾んでもう少しで届きそうなのに‥‥
体中が灼けついて気が狂いそう‥‥
「なんだかね、夢中になってるから声をかけづらかったわ」
「‥‥!!」
たっぷり揶揄の入った台詞までかけられ、耳の裏まで真っ赤に染まっていく。
「ホントあなたは面白いのね、子猫ちゃん。生粋のマゾのようでいて、おどろくほど
Sの性格も持っているなんて。ますます謎だわ」
冷やりと汗があごをしたたっていく。SとMの共存‥‥それこそセルフボンテージの
条件だ。SMに長けたバーテンが、そこに気づかないはずがない。
私の目的はとっくにバレているのだろうか‥‥
だが盗み見た横顔にはなんの変化も浮かんでいなかった。
「ともかく呼びにきたのよ。子猫ちゃんのお仕置きの時間だから‥‥さぁ」
倒れていた少女ともども、革の首輪を私にはめなおしてリードで結ぶ。
奴隷に与えられる『お仕置き』の時間‥‥
言われた途端じくりと躯の芯が熟れ、はしたないオツユが股縄に吸い込まれていった。
想像するだにおそろしいはずなのに、ふぅふぅ発情し、イク寸前でお預けを食らった
私のカラダはそれさえ待ちわびているのだ。
だが‥‥
バーテンの『お仕置き』は、そんな甘い期待をふきとばすに十分だった。
忘れていたのだ、私は。なぜ奴隷の少女があれほどお仕置きを恐れていたのかを。
どれほど、厳しい行為なのかを。
「あなたをショーに出演させるのよ。お客の女の子と一緒に責めてあげるから」

 縄掛け その5

恐怖と、わななきと、こみあげる正真の焦りで意識が真っ白になっていた。
SMバーのショーに出演させられる‥‥私が?
無数の視線の前で、恥ずかしいよがりようをあますところなく見られてしまう‥‥!!
ショックで後ろ手が軋み、不自由なカラダがひとりでに跳ねあがる。
「んンーーッ、ひふゥゥ!」
だが、それだけだった。
抗議の身じろぎ、それさえほとんど形にならず、逆に焦らされきったカラダには途方
もない疼きと爛れたひりつきがこみ上げてきたのだ。
どうしようもなく絡めとられた無力な裸身。
毛穴の開ききった素肌にいくすじもの汗がにじみ、麻縄が吸いとられなかった分は雫
となって皮膚と縄とのわずかなすきまに溜まっていく。火照っててらてら輝くカラダ
は、汗という潤滑油を得てますます施された緊縛になじみ、一体化していく。
疑いなく、私のカラダは発情し、従順なマゾの緊縛奴隷としてデキあがりつつあった。
ご主人様に対する挑戦的で危うい抗議さえスリルに感じ、溺れてしまうほどに。
ふぅっと色の薄くなった瞳にオシオキの気配を感じて濡れてしまうほどに。
「ふ、ふぅぐ‥‥」
「口答えは許さないわ。あなたは奴隷。今は私の子猫ちゃんなの」
ほっそりした指先にドミナの意志をこめ、怯える私の顔をバーテンが上向かせる。
顔をそらそうとするだけで不自由な肢体はビクビク弾む。
絶望とあきらめがひたひた押し寄せ、屈服の陶酔となって心を満たしていく。
あぁ‥‥もう、逆らえないんだ‥‥
もっといじって、虐めて‥‥
おかしくなりそうなカラダに、縄の擦れるあわい感触だけじゃなく刺激を与えて‥‥
ギュチチっと音高く緊まってくる縛めが、止めようのない甘い痺れを加速させていく。
全身がわなわなと震え、意味もなくもじもじと足がもつれている。
「どうしたの。お仕置きなんだから、キツイ条件なのは当然。一番最初に、私の言う
ことに従ってもらうと約束したでしょう?」
「ふぅぅ‥‥く、くフッ」
「本気で、私に逆らうつもり?」
「‥‥ッ、うぅッ」
「NGプレイをきちんと聞いたはずよ、私は。人前でのプレイはNGになかったわ。
それともあれはいい加減を並べただけかしら。そういうウソを、私は許さないわ」
「‥‥」
「最初の約束は守る。舞台の上ではあなたを守るわ。それでも私を信用できない?」
信頼関係の基本を壊すような行為は許さない。
切々と語る女性バーテンの正論さえ、私の耳には入っていなかった。
ご主人様にいじめられることが、言葉でなぶられ、脅され、迫られることが‥‥
もう、こんな間接的な責めさえも感じてしまうほど、私は昂ぶって、イキきれない
もどかしさに苦しんでいるのだ。
「‥‥なんだ。あなた、わざと私を挑発していたのね。構って欲しくて」
そして。この老練なドミナが、私の思惑に気づかぬはずもなく。
「うふふ。予想以上に発情しちゃってる」
「‥‥ン、く」
「オッパイが苦しい? ムズムズする? 触って欲しい?」
伸ばされた手が尖りきった乳首からあと少しのところにかざされるのを目の当たりに
して、こねるように宙を揺れる手にリズムをあわせて‥‥
私の胸は勝手にグラインドしてしまうのだ。
「して欲しいのね。でも今はダメよ、あなたの一番苦しいところで一番きつくイカせ
てあげる、それが罰というものじゃないかしら」
さっと手がのけられるのを苦しい思いで私は眺め、お預けのカラダをふぅふぅ波打た
せているしかないのだ。
そんな私に冷ややかな笑みを投げかけ、首輪のリードを握ってバーテンは二匹の奴隷
を連れ出した。行き先はむろん奴隷の最後の理性をひきはがす場所、ステージだ。
そして、自分の快楽にかまけていた私には人目のある場所に引き出される意味など、
気づいていなかったのだ。
‥‥そこに、初めからいやらしく周到に用意された偶然の罠があるなどとは。

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

開け放った裏口のドアから、身もよじれそうな寒気が吹き込んできた。
コートが手放せない季節の夜、それもビルの谷間の外階段に全裸で連れ出されていく。
いや、ただ全裸より恥ずかしい状況なのだと私は浅ましい現実を噛みしめる。
みっちり縄掛けされた上半身は完全に溶けきり、一匹の魚のようにひくひくと跳ねる
ばかり。首輪のリードは同じ不自由な姿で前を歩く怜菜という少女の首輪に、さらに
その先をバーテンが握っている。
まさに、市場に引き出されようとする家畜が今の私たちだ。
倒錯しきった現実はまぎれもない被虐の快感をそそりたて、奴隷同士の慰めあいで湯
気も立ち上るばかりに熱くなっていた肌には風の冷たささえ心地いい冷気にしか感じ
られない。
ふうふうボールギャグから涎を垂れ流し、おぼつかぬ素足でたしかめつつ踏みしめる
外階段のタラップからも、ゾクゾクと冷気は這い登ってくる。
通りの裏側にある狭いビルの谷間。人に見られるはずなどないと理性で考えていても、
屋外を引き回されるいたたまれなさは一層私をとろけさせ、ジクジク責めさいなむ。
目の前で振りたてられる少女のお尻も、非現実めいて誘っていた。
安全に配慮してなのだろうが、焦らず、一歩一歩屋外の引き回しを満喫させられて、
上の階に戻った時にはすでに、乳房の表面やクレヴァスを這いまわる狂おしい爛れは
たえがたいほどになっていた。
「少し待っていなさい、二人とも」
そう言い残し、ステージの裏側にある準備の為の部屋に怜菜と2人でとりのこされる。
犬用のリードで2つの首輪をつながれた、緊縛姿の裸女が2人きり。
ともに肉ヒダの奥深くまで巧緻な股縄を食い込ませ、ふらついて立っているしかない。
あれほど絡んできた怜菜は顔を赤らめ、私を避けるように黙りこんでいた。
いやらしいほどゆっくり時間が流れていく。
洩れきこえる店内のBGMはスローなジャズ系で、それがまたいたたまれないのだ。
「ッ、んく、くぅぅゥン‥‥」
たまらず、私はその場でひくひく全身をよじり始めていた。
音を立ててプラスチックがたわむほどボールギャグをかみしめ、必死で身を揺する。
少しでも激しい刺激を、擦過痕を、肌に刻ませて慰めたい。股間をもじつかせ、股縄
の刺激で心ゆくまでイッてしまいたい。その位、私は追いつめられていたのだ。
無意識に、椅子の肘かけに目が行っていた。
コレをまたいで、直接アソコをこすりつけたら、すごい快感だろう‥‥
クレヴァスが、アナルが、キュッと収縮する。
ぞくりと背筋がよじれ、けれど、怜菜の視線が気になって実行できない。告げ口でも
されたら、オシオキがさらにひどくなりそうな気がするのだ。
首輪をつながれていて、激しい行為もできないのだ。
せいぜい私にできたのは、この身に施された緊縛を利用して不自由な自慰に没頭する
ことだけだった。後ろ手の手首をわざとギリギリ上下に弾ませ、上半身を前かがみに
したりのけ反らせたりする。そのたび高手小手の縛めが引き攣って痛みが走り、呆け
た意識はそれさえ快楽にすりかえていく。
ン‥‥なんて不自由で、情けない行為に夢中になっているんだろう‥‥
けれど、本当‥‥もう少しでイケそう‥‥
だが、しかし。
「!!」
どぉっとバーの方でいきなり歓声がわき、思いがけず私をびくりと縮こまらせていた。
無邪気な歓声が、よがっている女性の躯におよぼすおそるべき効果。
ぐぅっとせき止められた快楽は、何倍もの苦痛となって理性に襲いかかってくるのだ。
イキたいのに‥‥
カーテンの向こうの人々に気づかれてしまうのが怖くて、思いきりできない‥‥
じんわりさめていく躯がひどく恨めしい。
ふぅふぅ乱れた息を鼻から吐き、私はカーテンの先を見つめていた。
すぐ向こう側に広がるのは、ふつうの人々の世界だ。
あくまでSMに興味を抱いただけの、ほんの一時の気晴らしに訪れる女性たちの空間。
半日前までは、私もノーマルな、あちら側の住人だったのだ。
だったハズなのに‥‥
「フフ、そうね。もう戻れないし、戻る必要もないのよ、発情期の子猫ちゃん」
「ヒィッ‥‥‥‥‥‥ッッ!」
耳もとでバーテンにささやかれ、ついでカプリと柔らかい耳たぶを甘咬みされ‥‥
おそるべき勢いでトリハダが全身をあわ立て、戦慄さながらに衝撃が駆けぬけていた。
ブルブルッと震えた躯がふたたび燃えあがる。
「あなたはもう、優雅なお客様なんかじゃないわ。むりやりショーに出演させられる
惨めな奴隷ちゃん。あっちに戻りたくても戻れないのよ。逃がさないんだから」
「ふっ、う、ふ、かフッ」
「なぁに? 声を殺しちゃって。お客様に聞かせてあげましょうよ、ヨガリ声。いっ
ぱい晒し者にしてあげるわ」
揶揄しつつ、バーテンの手が反発して悶える私を自在にもてあそび、さめかけた快楽
への希求をみるみる呼び覚ましていくのだ。それでいて、淫蕩な愛撫は私がイケそう
な刺激は何一つ与えてはくれない。
うぁ‥‥ヒドイ‥‥
惨めすぎる‥‥
こんな、カラダを火照らされたり、現実に引き戻されたり‥‥
こんな辛いのはイヤ‥‥いっそ、一思いに‥‥
抵抗していた四肢がギュッとつっぱり、ふたたびバーテンにしなだれかかってしまう。
あくまで意地悪く、彼女はそこで手を止め、耳打ちした。
「あなたは怜菜のショーのあと、30分後ね。運がよければ、フフ‥‥面白いわよぉ」
「んぶっ?」
「意外な展開でね、あなたにはツライ展開よ。だから、私が戻ってくるまでに手首だ
けでも縄抜けできていたら、ショーは許してあげる」
「‥‥」
M字開脚で椅子の肘かけに縛りつけられながら、私は怯えた。
バーテンが自分から寛大な条件を出すほどの展開とは‥‥まるで想像もつかないのだ。
首輪が太く分厚いものに取り替えられ、顔の下半分を覆うレザーのフェイスマスクが
ボールギャグを咥えた私の顔に取りつけられる。バチンバチンと金具を止める響きが
して、私は首さえ自由に回せなくなった。
最後に、小さなバールローターが敏感な場所に取りつけられ、ゆるい振動を始める。
久々の待ち焦がれた刺激に、一気に意識がうつろになっていく。
「まぁ最悪、それだけ隠せば顔はバレないでしょう」
「くぅ‥‥ン、んふっフ」
「私がカーテンを開いた時、左手奥のボックス席のカップルを見ておきなさい」
謎めいた言葉を残し、ヒクヒクと刺激を享受しはじめた私にバーテンが教えさとす。
怜菜を連れ、カーテンの脇にたたずんで、もう一度ふりむく。
「あなただって、性癖隠してる知り合いの前でイカされたくはないでしょう?」
真紅のカーテンがさぁっと開け放たれ、2人がステージに出て行く。
眩いステージの照明に目が眩み、ローターのいじましさに溺れていた私はバーテンの
忠告にしたがうことができなかった。

             ‥‥‥‥‥‥‥‥

派手な音楽と照明が、カーテン越しにもきらめいて踊っていた。
ときおり怜菜のシルエットが映しだされる。どうやら両手両足を吊られているらしい。
その躯をバーテンがいじるだけでなく、何人かのお客が間近までやってきて観察して
いるようなのだ。
カーテンが揺れ、たわみ、そのたびに私は抵抗するすべのない躯をこわばらせていく。
舞台に上がった観客は、まさか奥にもう一人奴隷がいるとは思わないだろう。けれど、
アクシデントでカーテンがめくれでもしたら、完膚なきまでに自由を剥奪された私の
淫靡な姿がさらけだされてしまうのだ。
このまま何もできず私の番になってしまってもそれは同じこと。
悦楽に蕩けきった頭でどうにかバーテンの言葉を思いだし、私は手首をこじっていた。
不可能にかぎりなく近い縄抜けを試みていく。
「ンーッッ」
正確には縄抜けというもおこがましいそれは、マゾの本能にかられた無意識の反射だ。
あきらめのほとりで自らをもてあそび、縛り合わされた裸身を軋ませることで自らの
惨めさに酔いしれ、無力感を味わいつくす自慰行為にほかならない。
あらためて、バーテンの縄さばきは絶品だった。
セルフボンテージの積み重ねできたえたテクニックがほとんど意味をなさない。背中
の手首は伸ばせば指先がうなじに触れるほど高々と吊られ、もっとも細いところで縛
られたウェスト・バスト回りはへこませてたるみを作るどころか、呼吸するだけでも
ギュチチと音をあげて食い入ってくるのだから。
肝心の両腕は絞り縄の苛烈さで上体と一体化し、もはや感覚さえおぼろときている。
——これで、どうやって縄抜けしろというのだろう。
——自由という餌を鼻先にぶら下げられ、否応なく踊らされて私は調教されてゆく。
——逃がれえない縄の魔力を肌にきざまれてゆくのだ。
私にできるのは煩悩にのまれて裸身を波打たせ、今度こそアクメの感覚をつかもうと
することだけだった。股縄に挟みこまれたローターはごくごく微弱な振動しか与えて
くれないが、それでももどかしい絶頂のきっかけにはなれそうなのだ。
ぐりぐりお尻をずらし、淫らに下腹部をグラインドさせる。
「ふっ、ふっ、ふぅぅっ」
玉のような汗を額ににじませ、私は一人であがきまわっていた。
椅子に座らされ、折りたたんだ膝を左右の肘掛けに括られたM字開脚のポーズのせい
で、縄のコブをむさぼる股間はあられもなく丸見えになっている。
視線を落とした私自身のカラダはなんといやらしいことか。
束ねられた両腕を、肩を、鎖骨を這いまわる麻縄の映え具合ときたら。
たわわな双乳を根元から縛めにはじき出され、乳首をびんびんに勃たせてしまって。
その先にはお汁まみれのお股がぱっくり口を開け、股縄をむさぼっているのだ。
ひっくりかえったカエルさながらの無残な媚態。
奴隷そのもの、屈辱的なこの姿のどこがセルフボンテージだと言い張れるのだろう。
お腹から腰にかけてのラインを淫乱にひくつかせ、お股をわざと卑猥に前に突きだす。
開脚の角度が広がれば広がるほど股縄の食い込みは深くワイセツなものとなり、私を
よりなまなましく責め上げていくのだ。
ビクン、ビクン、と電撃じみた衝撃が何度かクレヴァスのふちからわきあがる。
クリトリスには絶対触れそうもない位置にあるローターが、ときおりアソコのふちに
じかに触れ、淫らなオツユをこぼさせるのだ。
果てしのない焦らし責めと、必死になってイこうとする奴隷との戦い。
もう少し‥‥イケそう‥‥
今度こそ、ン、あと、ちょっとで‥‥ソコ、擦れて、感じちゃう‥‥
「はぁッ、あぁぁァァァン!!」
ビクビクン、と脳裏になにかが弾け、かろうじて全身がひきつって。
少し遅れて浅いアクメ、絶頂の衝撃が、火照ったカラダを中から揺さぶりたててきた。
びっしょり汗をかいたお尻が椅子の上で何度も跳ねる。
「ん~~~むむむ、んくぅぅむ」
口枷を噛みしめ、かすかな幸せに酔いしれる。
長いこと求めていた高みの感覚、まだはるかな快楽の深みをのぞかせる、そのほんの
手前の絶頂‥‥それすら、渇ききった今の私には甘美な悦楽そのもので。
ぐずぐずに滾った激情がうねり、乱れ狂う。
ただれた裸身を、充血した女の芯を爪でかきむしりたいほどの疼きがトロトロ愛液を
あふれさせていく。
もう少し、もっと、まだまだ満足できない‥‥
瞳を閉じていた私は、いつのまにか舞台が終わっていることにも気がつかなかった。
「さ、出番よ」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ッ!!」
「いいわ、そのままイッていなさい。その方が楽なはず、人前でイカせてあげるから」
そ、それは、それはイヤ‥‥
きゅうっと思わず眉根が寄り、それでも抵抗など思いもよらぬほど昂ぶっていた私の
カラダは、足の縄をほどく手つきにさえ反応して喘いでしまう。
頑丈な首輪にリードをつながれ、ふらつく足取りのまま、私は怯え、許しを請うのだ。
「今さらそんな顔はダメ。ショーにでるの禁止なんて、NGにも入ってなかったわ。
自業自得のオシオキでしょう。ね?」
「いぅぅ」
正論をさとされ、私は拗ねたように口の中で呟いてしまう。
しかし、どこかで私の心が期待と確信にみちているのも事実だった。このバーテンに
なら安心して身を預けられる、人前というのがひどく切なくて情けないけれど、でも
確実に私は最後までイカせてもらえるのだ‥‥
「もう一人の奴隷ちゃんは、もうステージでスタンバイしているわ。いい? 絶対に
驚いちゃダメよ? あなたは知り合いでもなんでもない他人なんだから。そう思って」
「‥‥」
「顔の半分が隠れていれば案外分からないのよ。安心しなさい」
くりかえすバーテンの言葉は、なぜか不安を煽りたてた。
どういうことだろう。
何か、よくないことがあのステージの向こうに待っているというのか。
有無を言わさずカーテンの前に連れて行かれ、さぁっと眩い光の中に歩みでて‥‥
「‥‥!!」
「すごい‥‥この子! ハードボンテージだぁ!」
どうして気がつかなかったのか。
そもそもこのバーを紹介してくれたのは誰だったのか。
彼氏と一緒に来ようと思っている。あの時そう語ったのは、誰だったのか。
眩いステージの上で‥‥
プライベートらしく色気の漂うオフショルダーのニットにジーンズという姿で、縄を
打たれた顔にいつかと同じ興奮の色をうっすらただよわせ、自由を奪われた中野さん
が、いるはずのない同僚が、うるんだ瞳で私を見つめていた。

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

ウソ、うそよ‥‥
どうして、中野さんがここに‥‥
今にもエクスタシーを迎える寸前だった私のカラダは、悪寒そのものの身震いに苛ま
れていた。無力な手首が、絞り出された双乳が、べっとり愛液をしたたらせた股縄が、
汚辱の疚しさにふるふる痙攣しだしている。
誰にも言えない秘密。私がセルフボンテージのマニアだということ。
ノーマルを装っていたことが、裏目となって私をぎりぎりの危地に追い込んでいた。
絶対に、中野さんだけには知られてはならない‥‥
こんな形で職場の後輩に知られたら、私、もうどうしたらいいか分からない‥‥
「あらあら、うつむいちゃって。恥ずかしいの、子猫ちゃん」
「く、くふっ」
バーテンに後ろ髪をつかまれ、ぐいと客席を見させられる。ショーの為のポーズだと
分かっていても、いきなりの乱暴な仕打ちに目尻がうるみかけた。
なんて屈辱的なの‥‥
私の登場で上がった歓声は、いつか息を呑む静寂に戻っていた。
おそらく、間近で目にした新たな奴隷が演技ではなく本当に発情しているのだと多く
の人が肌で感じ取ったのだろう。
無数の視線が私をねめまわし、吸いついてくる。お股やオッパイが刺すように痛む。
視線の暴力に嬲られて、私は何もできない無力な奴隷だ。
隠す場所さえ残されていない全裸をステージ上でさらし、客の見世物にされていく。
まだひりひり余韻を帯びた下腹部がいじましく疼き、じくりとあふれだすのを感じる。
そんな私を置き去りに、バーテンは中野さんと話していた。
「こ、この人、本当にこうされたがっていたんですか?」
「ええ、そうですよ。ね、子猫ちゃん」
水を打ったがごとき店内に、2人の会話がしみわたっていく。
目を細め、動けずにいると、バーテンの瞳がすうっと色をなくしていった。
「お客さまが訊ねているの。頷くか首をふるかして答えなさい。あなたは望んでこう
なったのよね。縛られるのが大好きで、私におねだりしたんだもの」
「‥‥ン」
逃げ場はなかった。耳たぶまで紅潮するのを意識しつつ、私はコクリと頷く。
「さっきも舞台袖で、縛られたままオナニーに夢中だったものね」
「‥‥ンク」
「虐められて感じちゃうんでしょ? ペットのように扱われる方が感じるのよね」
「ァン、ン」
「恥ずかしい子。今だって、お客様に見られて濡らしているんじゃない?」
「‥‥ンクッ」
「イケナイ子だこと。しつけがなっていないのかしら」
「ひぅ、ンンーッ」
こくり、こくりと頷くたび、恥ずかしいほど私のカラダは燃え上がっていた。
バーテンの台詞一つできりきり舞わされ、ドロドロに崩れた身をよがらせてしまう。
徹底した、容赦のない嬲り責めだった。私がもはや私自身のものではなくバーテンの
ペットだと、隷属している愛奴だと、周囲と、何より私の心に認識させるための。
にやりと笑い、バーテンが私をあおるように耳の裏で囁きかけてくる。
「で、イケたのかしら? もうすっきりした?」
「‥‥」
分かっているくせに‥‥意地悪な、ご主人さま‥‥だから‥‥
瞳をギュッと閉じ、かろうじて首をフルフルと左右に振りたてる。恥ずかしい応答を
させられ、バーテンが手で撫でつける股縄からは再び淫乱な雫がしたたりだしていた。
興奮しきった中野さんの瞳が心に刺さってくる。
お願い、そんな瞳で見ないで‥‥
おかしく、また、またおかしくさせられちゃう‥‥
「すっごーい。本当のマゾっているんですねー。私なんかまだまだかも」
「フフ、あなたがこの間連れてきた職場の先輩なんか、こんなの見たら卒倒するわね」
「あはは、ですね。素っ裸でこんな緊縛されて、マゾの極致じゃないですか。あの人
わりと潔癖だから、ぜったい受けいれられない卑猥さですよ」
いたたまれなかった。
自然とカラダがよじれ、高々と括られた手首が蠢き、弾んでしまう。
熟れきった肌の熱さにたえきれず吐息が乱れる。
その絶対受け入れらない緊縛を施されてしまったのが、目の前にいる先輩自身なのだ。
嫌がるどころか従順なマゾに堕とされ、感じているのだから‥‥
またもドロリと蜜を吐いたクレヴァスに、中野さんの目が吸いついている。
瞳をうるませ、私はバーテンに必死でサインを送っていた。
お願い、もう許して‥‥
これ以上は気づかれそうで怖いの、だから‥‥
「でも意外に潔癖な人に限って淫乱なものよ。その先輩も案外、縄が似合ったりして」
「ンッ‥‥でも、たしかにこの人似てますね」
どきりとした私は、必死で顔色を変えないようにこらえていた。
バーテンに後ろから抱きしめられ、縛られたカラダに手を沿わされて腰を跳ねさせた
中野さんの表情にかすかな疑惑の色が浮かんだのだ。
「‥‥雰囲気が、先輩に」
「じゃあ、この奴隷を先輩だと思ってプレイしたら感じちゃうかもね。2人そろって
ステージの上で虐められちゃうわけだ。あなたの彼氏の前で」
「やだぁ、恥ずかしいですよぉ、そんな‥‥アハハ」
笑いに紛らわせつつ、明らかに中野さんの声音には甘い媚がまじりだしていた。背中
で手を開いたり閉じたり、しきりにモジモジしている。想像して感じているのだ。
それは、私も同じことだった。
仲の良い後輩と2人で仲良くSM調教を受けさせられる。こんな状況、あるだろうか。
しかも、どんなに感じても私は自由に喘ぎ声を出せない。ボールギャグとマスクごし
といえ、日常接している先輩の声を聞き分けられないほど中野さんは鈍感なOLでは
ないのだ。
彼女の彼氏の前で、一緒に調教されてしまうのか‥‥疚しい気分が心をひたしていく。
「さて、2人ともこのロープをまたいでもらうわ」
「は、はいっ」
「‥‥ン」
いつのまにかステージには長いロープ二本が張られ、私と中野さんはそれぞれ股間に
それをくぐらされていた。壁から壁へ張りつめたロープがたぐられると、腰の高さへ
跳ね上がったロープがギチッとお股を圧迫して奇妙な刺激をうみだす。
「ンァ」
「やぁぁ、何これ」
「俗にロープ渡りなんて言うプレイの一つよ。あっちの壁際まで歩いてもらうわ」
取りだしたムチを、バーテンはいきなり振り下ろした。
「ヒうッッ!!」
パァンと鮮烈な痛みがお尻にはじけたと思う間もなく、じわんと痺れが広がり、よろ
めいた私は思わず一歩足を踏みだしていた。ぞぶりと張りつめたロープが股間に食い
込み、股縄とクレヴァスの隙間に食い込んだ。
膝が砕けかけ、じかに体重が縄のコブを咥えたむきだしのアソコにかかってしまう。
「ンァッ、ぁぁ‥‥ッッッ」
喉の奥から、苦悶めいた甘やかな嬌声がつきあげてくる。
充血しきって焦らされていた女の秘所に、唐突に加えられた暴力的な感触。その甘美
さに、私は声もないほど感じ、のけぞってしまったのだ。
や、ヤダァ‥‥こんなので、私、感じてる‥‥
どうして‥‥
ふっと目を落とせば、まぎれもなく股縄を圧迫してロープがアソコを責め立てている。
とろりと濡れて輝くロープは、あまりにも魅惑的で、はしたない。
「ほら、どんどん行きなさい」
続けざまにムチが小気味よい音をあげ、追い立てられた私たちはあわてて歩きだした。
不自然にロープが波打ち、下からお股を激しく擦りあげてくる。ひくひく爪先だちに
なった私の格好に、バーテンがうっすら笑った。
「2人のロープは繋がっているから、暴れると相手を虐めることになるわよ」
「‥‥」
ちらりと恨めしげにバーテンを見つめ、再び足を踏みだしていく。
ひときわ卑猥で浅ましい、奴隷2人を並べてのロープわたり。
客席から幾多の好奇心に満ちた瞳に凝視されて、それは恥辱の極みそのものだった。
とうの昔にズクズクに濡れそぼったアソコは痛みもなく、ロープを食い込ませるたび
突き上げるような衝撃を私のカラダへとしみこませていく。バランスをとろうにも、
高手小手に縛り上げられたカラダは腰をひねるのも苦しいほど窮屈で、必死になって
膝に力が入れば入るほど、お股の間で跳ねたロープが暴れまわっていくのだ。
「う‥‥変な、気持ち‥‥揺らさないでぇ」
すでに瞳を遠くに飛ばし、ゆらゆら歩いていた中野さんがカラダをよじって私に訴え
かけてくる。けれど、私もまた、中野さんのリズムに悩まされ、虐めぬかれていた。
上半身を揺らして歩く彼女のリズムは、ロープをひどく上下に揺らすのだ。
「下手だよう、あなた、ちゃんと歩きなさいよ、奴隷のクセに」
「う‥‥ク、ふクッ」
縄打たれた後ろ手をパタパタ弾ませ、中野さんに糾弾される惨めさに全身がよじれた。
口枷がなかったとしても、彼女に正体を知られるわけにはいかない。私は黙って、
理不尽な彼女の非難に耐えてロープ渡りをしていくほかないのだ。
ひたすらに股間に食い入っているロープの感触は股縄ごしにグリグリよじれていた。
まるで下着の布をへだてて触りまくられているような錯角だ。汗だくの裸身はもはや
カッカと疼いてステージの明かりに照り映え、ビクビクとうごめいてしまっている。
触ることのできないカラダ‥‥間接的にアソコを嬲るこの気持ちよさ。
狂わせていく。
しだいに溶けた意識は自虐的なロープに熱中し、はしたなく腰を擦りつけだす。
声を、こえをあげちゃダメ‥‥
呻きも、あえぎも‥‥身じろぎや特徴的な反応も、何一つ彼女に見せるわけには‥‥
正体を知られてしまう、ただその一点に呪縛された私は、限界まで昂ぶっていながら、
一歩ごとにアソコを擦りつくすロープの弾力に啼かされながら、彫像のように筋肉を
つっぱらせて我慢するほかないのだから。
「うっ、ふくッ‥‥ン、ンッンッッ」
こらえていても、不自由な鼻先から断続的に喘ぎは洩れだした。
手足も自由に動かせない、声も出せない、身じろぎも怖くてできない‥‥
二重三重の重い枷が、かえって躯の芯に閉じこめられた淫靡な刺激をたわめ、めくる
めく快感の境地へと加速していくのだ。
「う、おふッ‥‥ン」
目が眩み、一歩一歩ふみだす足はさながら雲をふみしめるかのよう。
張りつめたロープは幾度となく内股を、股縄を、股間を打擲しつづける。
もっとも敏感な女のとば口にささくれ立つ股縄が吸いつき、たっぷり愛液を吸収して
柔らかに濡れそぼった肉洞を抉り、同時にアナルに縄のコブをねじこみ、クリトリス
をピンピン弾きつづけて‥‥
とうとう足が動かなくなり、私はロープ渡りの中ほどで立ちつくしてしまった。
立っているのが不思議なほどの状況。
口枷の周囲はヨダレであふれかえり、縛り上げられた後ろ手は引き攣ってぴくりとも
動かず、ただ下半身だけがマグマのようにドロドロ滾り、縄目をむさぼり食らって。
死ぬ‥‥死んじゃう‥‥
もう、限界なのに‥‥いつでもイケそうなのに‥‥
苦しい背を丸め、私は歯を噛みしめていた。
気が狂いそうなほど、パンパンに快感が胎内に張りつめているのに。
今にも浸透した皮膚からにじみ、あふれだしそうなくらいに感じてしまっているのに。
なのに、観客の視線が気になって、どうしても怖いから、最後の一線を越えることが
できない‥‥なんて‥‥
お願い‥‥です、あと一押しの刺激を、私に‥‥
哀願のまなざしですがりつこうとふりむく‥‥その視野に飛び込んだのは、高々と鞭
をふりあげたバーテンの姿だった。
「ホラッ、もたもたしないでイク! 立ち止まらず、さっさと、行きなさい!」
「ひぎぃィッ!」
凛としたドミナの声が響く。
焼きごてを押されたような激痛が炸裂し、私はつぶれた悲鳴をあげていた。
桜色に染まったお尻をひっぱたかれ、ダダッと2・3歩たたらを踏みそこなって‥‥
駆け抜けた一瞬、狂おしい歓喜が背筋を貫いていた。
ゾブリと。
まるでカラダの中から串刺しにされたような、とめどない充足感と被虐の悦びが躯の
芯からほとばしりでていく。だらだらとオツユが垂れ流しになり、ぬらついたロープ
をさらにワイセツに染めあげる。
ギョッと見やる中野さんを尻目に、私は、ぶるりとケモノのように裸身をよじらせて。
火照った肌のすみずみで噛みしめる縄目を、とめどない快楽に昇華させてしまう。
そうして。
大きく、弓なりに腰がつっぱり、あふれだした快感が意識を灼きつくしていくままに、
脱力してロープに身をもたせかけた私は、真っ白な、無の中に堕ちていった。

            ‥‥‥‥‥‥‥‥
おぼろな意識の中、バーテンに抱えられ、ズルズル裏手のどこかに運びこまれていく。
ひっきりなしにわきあがり弾けていくアクメの連続は私を肉の塊のように脱力させ、
なすがままに私はハードだった緊縛を解かれて自由を取りもどす。
わななく全身は他人のモノのようで、ふわふわ飛んでいく意識は私を完全な無気力に
陥らせている。ひく、ひっくと息がつまり、喘ぎが喉を灼き、どうしようもない他幸
感ばかりがカラダ中を包みこむ。
「あらら、イキっぱなしになってるのかしら。バイブも使わずにこんななっちゃう子
がいるなんてね‥‥本当、あなたは逸材だわ」
「ふァ、ひぁぁ」
ボールギャグの下で喋ろうとした言葉はろれつがまわらない。
調教でイカされることが、セルフボンテージとここまで快楽のステップを違えている
ものなのだ。身をもって知った経験は、無防備な幼児さながらにバーテンを信頼させ、
私を彼女の腕にゆだねていた。
優しくて、イジワルで‥‥はかりきれぬほどの絶頂を与えてくれるご主人さま。
私だけを愛し、いたわってくれるドミナ。
女性のご主人様で、何がイケナイのだろう。同じ女性同士、ここまで深い余韻を、今
も‥‥与えて‥‥くれる‥‥ッ‥‥
「キヒッ」
再びつきあげた絶頂に私はガクガクと身をよじっていた。
止まらない。
イク。またイク。まだまだイッてしまう。
こわばり、血行の乱れた手足をマッサージしながら、バーテンは私のカラダを念入り
にいじっているようだった。
「お仕置き‥‥なんだか、ごほうびだったみたいね、子猫ちゃん」
「いぅぅ」
チュルチュルと乳首を爪でなでまわされ、甘い悦びを瞳に伏せて見つめ返す。
苦笑した女性バーテンはあごをこりこりかいていた。
「ここまでなつくなんて‥‥策を弄する必要、なかったかしら?」
‥‥策?
イキっぱなしになっている体のどこかが、鈍く警戒を発する。
依然として優しい笑みのまま、バーテンはつづけた。
「あなた本当はご主人様なんていないわよね。私はそう確信しているの、子猫ちゃん」
「‥‥!」
ほんの、一瞬。
驚愕と怯えで、私の瞳は大きく開いてしまっていた。
半分以上マスクに隠された顔のゆがみを、女性バーテンはどうとったのだろうか。
単なるひっかけか、根拠があってのことか‥‥
つかめずにいるうち、再び、バーテンは柔らかく嗜虐の笑みをのぞかせた。
「だから、やっぱりね」
「‥‥」
「確実にあなたを堕とすためにも、あなたのカラダには罠を仕掛けさせてもらうわ」
抵抗など叶わぬ裸身が、ほんのひととき、びくりと揺れた。

縄掛け その6

わきあがる怯え、おののき、冷やりとした恐怖。
それすら飲み込んで、私のカラダはヒクヒク疼ききっていた。
ずっと残酷な高手小手に縛られて血の気のうせた手首を、こわばった関節を這い回る
バーテンの指はさながら妖しい催眠術のようだった。くたびれ、麻痺しきった裸身が
ペッティングにみるみる上気しなおし、半ば強制的にふたたびのオーガニズムに向け
昂ぶらされていく。
ボールギャグと革のマスクが外され、ひさしぶりに私はすべての自由を取りもどした。
ねばぁっと濃い糸を引いて、ヨダレが口からあふれだす。
むせこんだ私を支え、バーテンはささやいた。
「かわいそうな子猫ちゃん。せっかく自由になったのに、今のあなたは私の仕掛ける
罠から逃がれられないのだから」
「く‥‥くふ、カッ、ふぅぅ」
息を喘がせる私を凝視しつつ、老練な指がちゅるりと下腹部にさしこまれる。
しどけなく横たわった裸身を電撃がつらぬき、抜かれそうになった指の感触を求めて
弓なりに腰が浮き上がっていく。
脱力した腕がひきつり、思わず寝かされたシーツに爪を立ててしまうのだ。
罠‥‥
ここまでの調教ぶりを見れば、バーテンの言う罠とは絶望的なものに違いなかった。
この身に何をされるのか。いや、何の為の罠なのか。
散漫な意識は、とぎれとぎれにしかバーテンの台詞を理解しようとしない。
ようやく自由になったカラダは、皮肉にもバーテンの与えてくれる愛撫に感じきり、
今にもひどい目にあわされようとしているのに抵抗する気力さえわきあがらないのだ。
どうにか、それでも必死に理性をたもって声をかえす。
「罠って‥‥なん、ですか」
「フフ。簡単なこと。ご主人さまの命令なのにそもそも時間制限がないのがおかしい」
「時間制限?」
「わざと長い時間あなたを引きとめて様子をみたの。ご主人さまがトラブルに備えて
いるなら、すでにお店にきているか、あとから来るかするはずだと思って」
「‥‥」
「でも、あなたの反応を見ても、それらしい人はいなかったわ」
一語、一語、バーテンの推理は私を追い込んでいく。
的確にウソを見抜かれていく焦りは、なおのこと私を敏感に狂わせていた。ふるり、
ふるりと耽美な手つきに喉の奥から嬌声があふれ、みるまにイッたばかりのカラダが
汗みずくになっていく。
「じゃ、メール調教? 遠隔調教? でもそれにしては、あなたの反応はぎこちない。
なのに拘束されればしっかり感じてイッてしまう。秘めたマゾ性はかなりのもの」
「ン、くっ、ンフ」
「私の出した可能性は2つなの。あなたはSMへの好奇心を抑えられなくなった耳年
増の初心者か、あるいは‥‥」
爛れた乳房を手のひらの柔らかい部分でほぐし、乳首を転がしながらバーテンが言う。
切れ長の鋭い目を細め、犯人を追いつめる検事さながらに。
「‥‥あるいは、ご主人様をもたない自縛マニアか」
ビクリ、と背筋が跳ね、狂おしい戦慄が下腹部をグチャグチャに溶かしていた。
バーテンの手を透明なしたたりで覆いつくすほどに。

             ‥‥‥‥‥‥‥‥

やはり、すべて見抜かれていた——
慄然とする被虐の甘い破滅衝動に震えあがりながら、それでも私は苦しいウソをつき
通すほかなかった。ただの推理にすぎない。彼女に確証を与えてはならないのだ。
なぜなら。
「だからね、あなたを堕とすのは簡単なの」
ちろりと鮮やかな舌をのぞかせたバーテンの表情は今までのどれより凄惨だった。
私の頬を撫で、歌うように言う。
「絶対に自力でほどけないよう縛っちゃえばいいわけ。私の元に戻ってくるしかない
ように。どんな手段があるかは、むしろあなたの方が詳しいでしょうね」
「し、知りません」
せいいっぱいの思いで、うろたえた目をそらす。
そう。絶対に抜け出せない方法なんていくらでもある。だから私は、知らないふりを
続けつつ、自分の幸運に、運よく縄抜けできる可能性に賭けるしかない。彼女が甘く
ないことを知りつくした今では、それがはかない望みだとしても。
「前置きはこのくらいにして、縛りなおしてあげるわ。そもそものお願いだものね」
「‥‥」
ふいっと愛撫を中断したバーテンが私を引き起こし、隣の部屋に消えていく。
逃げようか。一瞬ちらと浮かんだアイデアは、すぐに現実の可能性におしつぶされた。
ローヒールさえ下の階で脱がされ、文字通りの一糸まとわぬ全裸の姿。しかも両膝は
がくがく震え、快感のうねりに翻弄されて脱力しきっている。
どこにも逃げようがない。
それ以上に、この愉悦の渦にひたってしまった心は逃れられない。
どこまで無情な仕打ちが待っているのか‥‥
後ろめたく情けないマゾの疼きが、私自身を呪縛して逃がそうとしないのだ。
わななくカラダを抱きしめているうち、縄束や拘束具を持ってバーテンが戻ってきた。
「おいで」
「‥‥はい」
もはや、どうしようもない。観念し、従容としてドミナの命令にしたがう。
二度目の縄掛けはより巧緻で独創的だった。
自分の腰を抱くようにカラダの前で両手を交差させられ、左右の手首の細いところに
縄がかけられる。二本の麻縄は体の後ろで思いきり引き絞られ、胸の下でくっついた
肘に寄せ上げられたオッパイはいやらしく迫りあがってゆく。
幾重にもウェストの周囲に巻きつき、編み上げられていく緊縛はほっそり腰をくびれ
させ、執拗に手首を左右に引っぱって自由を奪ってしまう。
鬱血するような残酷さではなく、蜘蛛の糸のように全身に吸いつく縛り‥‥
「く、ふ」
麻縄のザラリとした質感に、過敏な肌を刺激され、私は息を乱していた。
すでに腰にびっちり密着させられた手首は裏返すこともできなくなり、さらに両肘を
一つに束ねた縄目は悩ましく放射状に広がって上半身を投網の内にくるみこんでいく。
3箇所で縄留めされた二の腕は逆方向に引っぱられ、腰や肩へと連結されて。
肌という肌、関節という関節にあまさず緊縛が施されて。
当然、いびつに腕の中ではじけた双乳にもがんじがらめの縛りが根元から食い込み、
ぷっくり桜色に腫れあがらんばかりに膨れた乳房には細い縄が十字にかけられ、桃の
ように割られてしまう。
じぃんと痺れきった肌の感覚に、私はしばし声を失っていた。
「ヒッ」
「痛くない、痛くない。見た目は怖いけど、痛くないでしょう?」
あやすように呟くバーテンの言葉どおりだった。
一瞬、感覚を失った肌には徐々に血行が戻り、じわじわ耐えがたい痒みを乳房の表面
にしみわたらせていくのだ。十字に交錯した細い縄の頂点から乳首をつまみだされ、
私は息を飲んであさってを向いた自分の乳首を見やっていた。
「もう動きようがないわよね。でも、鬱血するような箇所はないはずよ。あちこちに
力を分散させているんだもの」
「こ、こんな縛り方‥‥見たこともな、ンンッッ」
バーテンに抗議しかけた躯がかすかに傾ぎ‥‥
とたん、全身を覆いつくす縄目がいっせいに軋んで啼いていた。甘やかな摩擦の調べ。
あちこちに作られた結び目がぐりぐりカラダを圧迫して、無数の手に揉みしだかれた
感触が裸身をはしりぬけたのだ。
目の前が白くなりかけ、濡れた唇に歯を立てて遠のきそうな意識をこらえぬく。
なんという‥‥こんな、気持ちイイ食い込みが、縛りが、あるなんて‥‥
ギイギイと揺れるカラダは爛れきり、表皮の全面が性感帯になってしまったかのよう。
物欲しげにぱっくり開いた女のとばりの濡れた部分に、今度こそ本物のバイブレータ
がヴィィィとこすりつけられる。
うぁ‥‥とうとう、こんな模造のオモチャで、辱めれてしまう‥‥
惨めで怯えているのに、その怖ささえたまらなくイイ‥‥
「さて。じゃお口を空けて。元通り、ボールギャグをかませて上げるから」
「え、やっ」
深い快楽に腰を揺らしていた私は、不意にバーテンにおびえ、後ずさっていた。
この縄目、箇所が全体に繋がった縄は、どうあがいても緩むきっかけすらつかめそう
にない。それなのに口までふさがれたら、ハサミを咥えて使うこともできなくなって
しまうのだ。
バーテンはうっすら、どこか計算高い笑みを浮かべた。
新たなボールギャグを私の唇に滑らせ、いやらしくいたぶってくる。なぜかたっぷり
水を含んだスポンジのボールギャグが上唇を濡らす。
「フフ、やっぱりそうよね。このまま口枷までされちゃったら、あなた程度の縄抜け
の技術じゃもう絶望的だものね。怯えるのもよく分かるわ、子猫ちゃん」
「!」
「あら違った? ご主人さまがいるなら口枷を嫌がるはずないもの。やっぱりあなた、
そうなんでしょう。白状して、私に許しを請いなさいよ。考えてあげてもいいわ」
「ゆ、許し‥‥何を、言っているんですか?」
「ムダな時間を使わせた許し。ウソの許し。未熟な技術のくせに私を挑発した許しね」
バーテンがにやりと笑う。
その見透かした表情に、なぜ怒りが先立ってしまったのか‥‥
「そ、そう思うなら嵌めたらいいじゃないですか。もったいぶってないで」
「そうね、そうするわ」
「えっ、あ‥‥うムッッ、う、ふく‥‥あぅ、ン」
間髪入れぬバーテンの返答に、ハッと気づいた時にはもう遅かった。
硬いスポンジのボールギャグがぐぅっと唇の間をくぐりぬけ、上下の歯を割って深々
と口腔に分け入ってくる。あっという間もなくふたたび口枷を噛まされた私は、唇を
呻かせ、大きなボールギャグをしっかり咥えて声を奪われていくほかない。
ヤダ、こんな‥‥じわじわと、嬲りつくす責めなんて‥‥
本当に、少しづつ無力にされていく‥‥
完璧に舌を抑えつけ口腔を占領したボールギャグの凶々しさに感じ入っているヒマも
なく、さらに元通り革マスクで鼻まで覆われ、首輪をはめられて連結されてしまった。
決して外すことのできない、顔の下半分の革拘束。
うぐ、うぐぐ‥‥必死に呻いても洩れでる喘ぎはそよ風のよう、したたりだす唾液が
またもマスクをべったり顔に吸いつけてしまうのだ。
「こっちのお口もふさぐわよ」
ふぅふぅ呼吸を弾ませる私の足元にしゃがんだバーテンは、無造作にクレヴァスへと
バイブレータを突きこんだ。
ぞぶり。
卑猥な水音が肉を穿ち、ぬらぬら蠢く肉ヒダを唐突な衝撃が抉りぬいていく。
「くぅッ、かはぁァ‥‥」
「あらあら、しっかり巻きこんで食いついちゃっているわ、あなたの中。そんなにも
オチンチンが欲しかったの。いやらしい子」
とろりと粘着質なバーテンのあおり文句さえ、意識の表面を上滑りしていく。
みっちりふさがれてしまった股間。たぎっていた肉洞の奥深くまで満たされた快感は
すさまじく、きりきり硬いスポンジの口枷に歯を立てて悲鳴を絞ってしまうほどだ。
イイ、すごい‥‥おかしく、なってしまう‥‥
縄抜けなんて、それどころじゃ‥‥マタ、またイク‥‥ッッッッ‥‥!!
股縄で抜けないよう固定されたバイブは、その真価をあらわして容赦なく私のカラダ
を攻め立ててきた。律動する機械の振動は裸身を胎内の底から揺さぶりたて、波打つ
刺激そのままに腰がうねり狂う。自分でも止めようのない仕草がさらにエクスタシー
をかきたて、芯の芯からドロドロと愛液ばかりがにじみだしてくるのだ。
ちらりと裸身に目を落とす。
たしかに、ワナというだけあってバーテンオリジナルの緊縛は執拗なものだった。
全ての結び目は背中に集まり、左右バラバラの手はひねることもできない。これでは
縄抜けなど到底できないことだろう。
でも、けれども。
少なくとも指先は自由なんだから、ハサミをつかんで、縄を切るぐらい‥‥
まだ、大丈夫だと、可能性はあると、最後に残った理性が必死に私へ訴えかけていた。
このまま、バーテンに堕とされてしまうわけにはいかない。気力をふりしぼって自ら
足を踏みしめ、緊縛された上体をよじってバーテンを睨み返す。
「さすがね。その気力、その反抗心‥‥心から調教のしがいがあるわ」
私をうながしたバーテンはバイブのリモコンを私に握らせ、部屋を後にした。
ふわふわ地を踏みしめる浮遊感はステージの上よりさらにひどくなり、彼女の支えな
しでは立っているのが難しいくらいだ。
一歩ごとに胎内を、蜜壷をびりびり灼りつかせ、抉りぬく快楽にうかされていく。
いくつか廊下を通りぬけ、外階段を下り、気づくと私はドアの前に立っていた。ロー
ヒールを履かされ、腕を通せない肩にコートをはおらされて前ボタンを一つづつ嵌め
られていく。少なくとも、全裸で放り出されるのではないらしい。
ほっとした意識に、バーテンの最後の台詞が届いた。
「これでワナの完成ね、フフ」
‥‥ワナ?
ワナ、って、なんだったっけ‥‥?
きょとんとした私の耳たぶに、囁きがつむがれていく。
「ねぇ、あなた。そのカラダで、どうやってコートのボタンを外すつもり?」
「‥‥‥‥‥‥」
さぁっと、血の気が引いていく。
前開きのコートの穴に通すタイプの大きな丸ボタン。3つすべてが外側で留められて
しまった今、コートの内側に閉じ込められた緊縛の裸身でどうすればボタンを外せば
いいのだろうか‥‥!?
ひたひた押し寄せる絶望はあまりに甘く恐ろしく、私はほとんど息をつまらせかけた。
真っ青になってふりむこうとした私の肩をつかみ、バーテンが断固として私を扉の外
に押し出していく。
「ンっ、んふ、ふぅぅぅぅ」
「さぁ行きなさい。忘れないで。今日一晩、お店の裏口は開けっ放しにしておくから」
「ンムゥゥゥーーー!」
ぽんと背中を叩かれて、たたっと前のめりの私の背後で扉が閉まる。
ふたたび静寂が戻ってきた時、私は、みるも淫蕩にデキあがったマゾの肢体をコート
にくるんで一人、3階の廊下に立ちつくしていた。

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

呆然となって自失する数秒‥‥
ひくひく収斂するアクメにおかされた意識にも現実は刷り込まれてきて‥‥
今まで何度か味わったことのある、セルフボンテージに失敗した瞬間のあの狂おしい
ばかりの衝撃と苦悩が火照りかえった裸身に襲い掛かってきた。
「ん! んンーーー、んふぅぅぅぅぅぅ!!!」
ヤダ、いやァァ‥‥
こんな、あっけない手ぎわで、無抵抗な奴隷に堕とされてしまうなんて。
セルフボンテージではどうしようもない完璧な『嵌まり』に陥ってしまうなんて‥‥
ぶるぶるっとコートの内側で上体がよじれ、無意味なあがきが腰を弾ませてますます
深く激しくバイブレーターの味わいを噛み締めさせてしまう。
居酒屋やSMバーの密集した商業ビルの廊下に緊縛されて取り残されている状況。
誰かに襲われても、抵抗はおろか悲鳴さえだせない無力そのものの裸身。
いくどとなく焦がれ、いくどとなく怯えきった、あの無残な失敗をまたも繰り返して。
しかも、今度は巧緻なドミナに嵌められ、その奴隷にされてしまったのだ‥‥
「ン、んふ、んふっふフフ」
躯ばかりがびくびくと発情し、理性の警告を無視してぞくりぞくりと昂ぶっていく。
あっという間にアクメに追い上げられて疲弊しきったカラダはもつれて壁にもたれか
かっていた。急な傾きにギュチチチっと縄鳴りが肌をむしばみつくし、無数の縄コブ
が淫靡なタッチで肌を刺激していくのだ。
「‥‥っふ、っっク、ひっ!!」
く、イク、だめ、イカされる、バイブに、バイブなんかにイカされちゃう‥‥!!
無我夢中で縛られた両手を突っ張らせ、力を込めて縄目にあらがう。
だが、身悶えれば悶えるほど縛めはきつくなるばかりだ。背中へ向けて引き絞られた
手首は微動だにせず、逆に手を押しこんでたるみを作ろうとすれば今度は二の腕の縄
が引き攣ってしまう。
巧妙な縄の連携が、私の自由をはばむのだ。
絶望のあまりあがきまわり、のたうちまわり、くぐもった喜悦の呻きを鼻からこぼし、
すべてが無意味なことにとめどない屈辱を味あわされて‥‥
ぽたりと雫のしたたる床で、ローヒールの中の親指がガクガクと固く突っぱっていた。
苦しいばかりの絶頂をやっと乗りこえ、ガクリと膝が力を失う。
いっそ、いっそこのまま、この場にへたりこんでしまえば、どんなにラクだろう。
依然として続くバイブの振動に犯されつづける裸身が芯から休息を欲しているのだ。
握らされたリモコンは停止させようにもつまみが細工されていて、一定の振動以下に
さげることができなくなっているのだ。
そう、このまま気絶して‥‥
いやダメだ。それは、それだけは、絶対にできない。
あやういところで、私ははっと理性のかけらを取り戻していた。
こんな異様な姿を誰かに見られたら、それが酔った男性だったりしたら、間違いなく
私は犯されてしまうだろう。それどころか拉致されてしまうかもしれない。
今の私は人でさえない。
自由意志を剥奪され、その身にねっとり残酷な縄掛けを施された肉の塊にすぎない。
強制的によがらされ、アソコを濡らし、気が狂うまでイキまくる調教中のマゾなのだ
から‥‥
「んむむむ」
浅ましい自己認識がまたも私を駆り立て、悩ましいエクスタシーへ突き進んでいく。
すんでの所で躯にブレーキをかけ、むせかえりながら私はずるずると身を起こした。
このままではいけない。
選択肢は二つきりだった。ビルの裏手に回って、いさぎよくバーテンの奴隷になるか。
のたうちまわってでも家に帰りつき、縄抜けの手段を探すのか。
ほんの一瞬、確実に視線はSMショップのドアに吸い寄せられていた。あの人なら、
きっと私の優しいご主人さまになってくれる。いくらでも私を虐めて、今夜みたいな
快楽をいくらでもくれるだろう。
その方が安全で、何より良いのではないのか‥‥
必死の思いで悪魔の誘惑をはねのけ、よろめいた私は壁に肩を預けながら階段を下り
はじめた。
「‥‥!!」
繁華街のざわめきがどっと押し寄せてきて、その賑やかさに不自由な身が縮みあがる。
酔っ払いの無秩序な声、ひっきりなしの車の音、そして乱雑な靴の音、音、音。
一階まで下りてきた私は凍りつき、身のすくむ思いで階段の手すりの陰からビルの外
をのぞいていた。裏通りに直接つづく扉はとざされ、縛りあげられたカラダではノブ
をまわすことができなかったのだ。
痙攣しきった膝に、つぅぅとあふれかえった愛液がしたたってくる。指ですくいとる
までもなく(むろん緊縛姿では不可能なのだが)、倒錯のシチュエーションに裸身が
かっかと熱く灼けただれていた。
激しく蜜壷をゆすぶりたてるバイブを根元まで咥え、人前を歩かないといけない‥‥
我慢すればするほど、意識をそらせばそらすほど、アソコはバイブを喰い締め、股縄
をびっしょりぬらしてしまうのだ。
おそらく、今の私は酒の匂いに満ちた通りの中でもひときわ異臭を放っているはずだ。
素っ裸の下半身をベショベショにお汁で汚し、発情しきったメスの匂いを周囲にふり
まいているに違いない。そう思うと足がすくんでしまうのだ。
もう一度、外をのぞいて出て行くタイミングを計ろうとした瞬間だった。
ブーンと聞きなれた音を立て、階段のすぐ脇にあるエレベーターが動きだしたのだ。
「!」
止まっていた4階、SMバー“hednism”のある階からみるみる下ってくる。とすれば、
まさか‥‥同僚の中野さんと彼氏もエレベーターの中に?
どっとこみあげた恐怖が、なけなしの理性に先んじて逃避行動を起こしていた。
衝動的にとびだし、震える足に鞭打って1階のエントランスを駆け抜け‥‥パァっと
視界が眩んだ瞬間、私のカラダはネオンと騒音の洪水の中に飲み込まれていた。
「ン‥‥!!」
しまった‥‥艶かしく火照った被虐のカラダを、人に見られてしまう‥‥
焦って戻ろうとする間もなくドンと誰かが背中からぶつかってきた。はっと振り返り、
あっけに取られて私を見つめる赤ら顔の中年サラリーマンと視線がぶつかってしまう。
ドクンと緊張した心臓が苦労して鼓動を刻んだ。
「なんだ、アンタ‥‥コスプレ?」
おかしいと気づかれた‥‥思わずのけぞり、よろけた拍子に私はギジッっと太ももを
強くこすり合わせていた。股縄がいやな感じにねじれ、大きく擦れあう。
その振動がストレートにクレヴァスの底へ叩きつけられて‥‥
子宮の底へキュウウッと収斂するようなエクスタシーは、まえぶれなく襲ってきた。
見ず知らずの中年男性に一部始終を眺められながら、私は、イッてしまったのだ。
浮遊感の直後、理性と同時に気を失いそうな羞恥心がこみあげてきた。
目を見開き、身を翻してあわてて小走りにその場を逃げだす。
「オイオイ、なんだありゃあ」
酔っ払いの声が、追い打ちのように背中から追いかけてくる。
ヒドい、こんなのあんまりだ‥‥
盛り場のど真ん中で、むりやりバイブに乗せ上げられ絶頂を極めてしまうなんて‥‥
革マスクからのぞく顔がみっともないくらい熱く紅潮しているのを感じながら、私は
必死になってその場から逃げ出していた。
わななく呼吸も心拍数も戻らず、震える膝で、おぼつかない足取りを刻みながら走る。
見開いた視界に映る、酔った人、人、人。
すべての視線が私を観賞しているかのようで裸身がギリギリたわみ、いたたまれない
羞恥が被虐の喜悦をなお深々と胎内で噛み締めさせていく。
「くぅ、ンッ、んんンンン‥‥!!」
ウソ、うそよ、ありえないのに、そんなインランなはずないのに‥‥
よろめき、人波をさけながら、めくるめく狂乱の波濤に飲み込まれて裸身が逆海老に
たわみ、うなじがチリチリ総毛だっていく。十字にオッパイを割っている細縄が乳首
をコリコリ揉みほぐし、ほんの薄い生地一枚をへだてて狂おしく高まっていく。
惨めな裸身が、奴隷のカラダが後戻りできぬ快楽の階段を駆け上がっていく。
イヤ、いや、嫌ぁぁァ‥‥!!
イキたくないのに、バイブが、私をおかしくしていっちゃう‥‥ッッ‥‥!
自由を奪われて、縛られて、汗まみれで‥‥イクッ‥‥っっ!
強く噛み締めたボールギャグは、口腔からほとばしる苦鳴を吸い取っていた。
かろうじて身を隠すコート一枚の下に、マゾ奴隷の熟れた肢体を隠したままで‥‥
「‥‥」
下腹部から突き上げるような絶頂に、息がとまりかける。
緊縛された裸身はギチギチ痺れ、非力な指がこちこちに突っ張ってしまっていた。
ぞくり、ぞくりと、繁華街のただなかでイキ狂った裸体が余韻にひたりきっている。
恥ずかしい‥‥
ホントの、マゾなんだ、私は‥‥
やましさと後ろめたさに心がおしひしがれ、周囲の様子をうかがうことさえできない。
ネオンに星明りをかきけされた漆黒の天を仰ぎ、私はブルブルと痙攣した内股に流れ
だす愛液のねばついた不快感をひたすら感受するほかなかった。
「‥‥‥‥」
やっとの思いで目についた裏通りにとびこみ、私はふうっと一息ついた。
ビールの空ケースやベニヤ板が立てかけられた細い路地は、とりあえずの恥ずかしい
痴態を人目から隠してくれる。
寄せては返し、ぐいぐいとカラダを引っぱっていくバイブのリズムに逆らって、私は
おそるおそる足元をたしかめ、暗い路地へと歩きはじめていた。

どのくらい経ったのか、時間の経過はひどくあやふやだ。
ただ歩きながら、どうしようもなく追いつめられてさらに二度、住宅街の街中でイカ
されてしまった記憶はぼんやりとある。電柱に身を預けて懸命に深呼吸を繰り返した
記憶、不意に人がやってたのであわてて自販機の前で立ち止まり、背を向けて口枷を
見られないようにした記憶。さらには、おののきつつ歩く道行きの、苦しいばかりの
快楽をも。
気づいた時、私はマンションの前にいた。もうろうとした、あたかも高熱で倒れた時
のような頼りない意識のままにノロノロと階段を一段ずつ踏みしめ、永遠とも思える
時間をかけて、ようやく、じわじわと遠のく自室の前にまで‥‥
へたりこみたい誘惑をこらえ、いつものようにわずかに開きっぱなしの扉にヒールの
先を押しこんでこじあける。防犯上危険きわまる行為だが、出かける前の用心が役に
たってどうにか私は部屋に転がりこんだ。
だが‥‥
(それで、私は、どうしたらいいんだろう‥‥)
コートの中でふたたびモゾモゾと上半身をくねらせ、たちまち、肌をみちみちと喰い
締める縄の魔力に侵されて絶頂への階段を一段おきに駆け上らされていく。
「ん、くぅ、ンフフフンー!!!」
こらえる間もなくぱぁぁと閃光がはじけ、ぐじっと腰が収縮して、私はくたくたその
場に横たわってしまっていた。
あまりにも残酷で、膚なき縄掛けの魔性が私を狂わせ、嫌がる絶頂へ連れ去っていく。
しかも、これほど身悶えイキまくって暴れているのに、全身の動きは半分以上コート
に吸収され、残りも固く緊まった縄目に吸われてゆるむ気配さえ感じ取れないのだ。
コートの下で手首をひねってみる。
やはり相変わらず手首は動かせず、手の甲がコートの裏地にくっついたままだ。
これでは、コートの生地ごしにハサミをつかむことさえできない‥‥
どうしたら、どうしたら良い‥‥
帰ってくればどうにかなると思っていた。けれど、これではむしろ誰の助けも借りる
ことのできない牢獄に戻ってきたようなもの‥‥
「‥‥ッ、‥‥ン、フッ」
完全な無力。手の自由のないコケシにされてしまった戦慄は、じわりと心をむしばみ
だしていた。ムダだと、体力を温存すべきだと分かっているのに、恐怖と焦りだけが
加速していき、パニック寸前の裸身をピチピチ跳ねさせてしまうのだ。
ローヒールをどうにかぬぎすて、部屋の奥へ進もうとして、そこが限界だった。
くたびれ果てたカラダに、めくるめく被虐の喜悦とふきこぼれんばかりの快感がドク
ドクと流し込まれていくのを感じながら、今度こそ私は意識を失ったのだ。
断続的な意識の中断。
それがしだいに、眠気と疲労と混濁し、その中でも私はもがき続け‥‥
つかのまの休息は、休息の意味をなさなかった。
うつらうつらと床の上で眠り、身じろぎに苦しんで目覚め、無理やりのアクメの快感
を呑まされてのたうち、ふたたび脱力して意識の遠のく、果てしのない悪循環。
浅い眠りの中、私は一夜をすごした。

             ‥‥‥‥‥‥‥‥

鈍色の気怠い夢から、ゆっくりと意識が浮上していく。
全身が痛い。
目覚めてすぐ感じたものは、ふしぶしの鈍い痛みだった。
なぜか玄関前の靴箱が視野の隅にある。ここは、一体‥‥昨夜の記憶がうっすらよみ
がえってきた。たしかSMバーに行き、初めての緊縛の味をかみしめ、そして‥‥
‥‥そして!?
「ンンーーーー!!!!」
悲鳴が、まごうことなき恐怖の悲鳴が喉の奥から絶叫となってふきあがった。
全身をみりみりと緊めあげていくおなじみの感触。すでに一晩慣れ親しんだ、縄の、
緊縛を施された感触。自由を奪われた奴隷だけがむさぼる、快楽の証。
私は、依然として、縛りあげられたままだったのだ。
パニックがみるみるわきあがる。
このまま、このままでは、本当に衰弱して、私は死んでしまう‥‥
縛られたカラダのまま立つこともできず、食事も排泄もできず、閉ざされた部屋の中
でじわじわと気が狂っていくのだ‥‥
「‥‥おふっぅ!」
ばくんと魚のように跳ねた四肢は、不意に生々しい快楽の源泉をむさぼっていた。
ひりひりだるい疼きのしこった下腹部。そこになお弱々しく動く、バイブレーターの
振動が、私の肌をざわりと粟立てたのだ。
この感触‥‥私はずっと犯されつづけて一晩を過ごし、ほとんど電池を使い果たした
バイブが未だに私を犯しぬこうと動いているのだ。
戦慄。
恐怖。
歓喜。
おののき。
果てしのない焦燥。
そして‥‥
肉の塊のように力を失った躯の芯で、つぅんと何か、火花のような快感が弾け‥‥
何度目にイったのか。
たてつづけに、夢の間も含めれば何度絶頂を迎え、体力を奪われてしまったのか。
いまや革マスクの下の口枷もだるく噛みしめているだけだった。濡れそぼったボール
ギャグの水分が蒸発し、乾燥しているはずの口の中を潤している。この特殊な口枷は
そのためのものだったのだ。
‥‥もう、私には、なんの手段も残されていない。
のろのろ起き上がり、遠い意識の中で気づいたことがそれだった。
限界だ。バーテンの奴隷になる。彼女のモノに、ペットに堕とされていく‥‥
それしか、ないんだ‥‥
知らず知らずつうと涙が頬を伝い、顔を上げた私はリビングから廊下に伸びてきた朝
の光を目にしていた。もう人目なんかかまわない、体力が少しでも戻ったらその足で
あのビルに向かうのだ。私は、私自身のために、あの人のモノになるのだから。
さしこむ曙光を影がさえぎる。
「ェ、ン」
テトラ? 呼びかけた声はマゾの喘ぎにしかならなかったが、雑種の子猫は飼い主を
見分けたようだった。いつものようにミャーと声を上げ、とことこと近づいてくる。
多分エサをおねだりしているのだろう。
しまった‥‥
この子のエサ、朝は上げられないじゃない。困ったな‥‥
私も子猫ちゃんとか呼ばれていたっけ。あのバーテンからしたらそんなものかな‥‥
「ミャーー」
かろうじて苦笑を漏らした私のコートに爪をかけ、テトラがしきりに引っかきだす。
不自由な裸身に乱暴で甘やかな刺激が加えられ、私は吐息をこぼして首をのけぞらせ
ていた。

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

「こ、子猫ちゃんじゃない‥‥そんな、大丈夫? まさか、ずっとその格好のまま?」
「‥‥」
「昨日の夜から、この夕方までずっと、苦しんでいたなんて‥‥どうして強情を」
扉をあけ、絶句したバーテンの胸に私はふらりともたれこんだ。
コートの中は暑く、絶対の支配者に抱きしめられたおののきで足はカタカタと小さな
痙攣をくりかえしている。革マスクの顔を上げると、バーテンは泣きそうな顔だった。
「ゴメン、ごめんなさい、早紀ちゃん‥‥つらかったのね」
「‥‥」
(あぁ、この人は、やっぱり、本質はいい人なんだ‥‥)
こくりと頷きつつ、あらためて私は認識していた。カラダを預けるかもしれない人、
その相手の本心を知りたかったのだ。
それが分かったから。見えたから。だから‥‥
「ゴメンなさい、バーテンさん。でも、本当に苦しかったのは事実です」
「えっ?」
老練な女性バーテンの手の中からするりと抜けだし、私はコートの前を自分で開いた・・・・・・。

テトラの、子猫特有の引っかきグセ。
初めての自縛の時にカギを弾き飛ばし、私にじゃれついてきたあの引っかきグセ‥‥
あれが私を救ったのだった。
床で転がっていた私の上によじのぼったテトラは、コートの胸ボタンをひっかきだし
たのだ。あっと気づき、わざとカラダを揺すってボタンを意識させてやると効果はて
きめんだった。
固唾をのんで見守る私の前で、子猫はどうにかコートの前を一つ開けたのだ。
あとは簡単だった。
リビングでしゃがみこみ、開いたコートの前の部分をタンスの取っ手に引っかけては
立ち上がる動作を繰り返したのだ。力任せの動作で、じきにボタンはポロリと取れ、
ようやく私は用意しておいたハサミで縄を切り、脱出できたのだった。

「そう、でも良かったわ」
詳しく説明はしなかったが、それでもバーテンは顔をほころばせ、今夜初めての客の
ためにオリジナルのカクテルを作ってくれた。
「優しいんですね、バーテンさんは。私はあなたのものにならなかったのに」
「あなたの心配をしていた私を安心させるために顔を見せてくれたんでしょう? 今
今はそれで充分」
「フフ」
微笑み返し、私もカクテルを空ける。
人に戻った安心感が、心地よい酔いに私をいざなっていた。
しばしその様子を見ていたバーテンは、何かを取りだし、つっとカウンターを滑らせ
てこちらによこした。
「ところで、見せたいものがあるのよ。他のお客が来ないうちがいいわよね」
「なんですか」
バーテンがよこしたものを手に取る。しばし、BGMだけが店内をみたした。
沈黙が空気を変えていく。
「‥‥‥」
「‥‥‥」
「ねぇ、ワナは完璧だって、私は言わなかったかしら」
バーテンは静かに微笑む。
私は答えない。
否、答えられなかった。
だって、私の目の前には、彼女のよこした写真に写っていたのは。
被写体の、いやらしい緊縛姿の‥‥
彼女の顔は。
「そうよ、これ、あなたの恥ずかしい奴隷の記録なの。NGプレイのリストに、録画
禁止はなかったものね。ビデオの動画そのものもあるわ」
‥‥うかつだった。あまりにも。
みずから相手のただなかにもぐりこむ。
そのことがどれほど危険なのか、まさしく私は理解していなかったのだ。
甘かったのは、未熟だったのは、私の方。
「勿論、このビデオをショップで売ったりするつもりはないわ。私の願いは一つきり。
何度も言ってきたわよね」
「‥‥‥‥そんなにまでして」
「うん?」
「私を奴隷にしたいんですか」
優しく、ほとんど慈愛といって構わないまなざしでバーテンは私を見た。黙っていて
も、その瞳はまぎれもない肯定の意志を秘め、私を追いつめていく。
「さて、早紀ちゃん、だったわね。私から提案があるのだけど」
「‥‥‥‥」
ただただ顔を青ざめさせ、私はバーテンの瞳から目をそらせずにいた‥‥

                                                                    
                      

【彼女】暇すぎるから今までの恋愛語る 【彼氏】

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1:名も無き被検体774号+:2013/05/11(土)01:28:42.40ID:NxA2h/PiO
現在スペック
20歳女
フリーター
160cm50kg

当時を思い出しながらだから曖昧な所は補正しながら書く。

小学校2年生の時だ。

当時、おままごとするより外で走り回る方が好きだった男勝りな私は近くの公園に行って生傷を作って毎日母親に叱られながら遊んでいた。

ある日クラスメートの男と喧嘩をした。
本当にくだらない、ただぶつかっただけとかそんな些細な理由だったと思う。
その頃は男女の隔てなんて無かったから取っ組み合いの喧嘩になって引っかいたり殴ったり蹴ったりしてお互い傷を作ってた。

それでも力は男に勝てる程無かったし運動神経なんて皆無だったから避ける事なんて出来なかった。
そんな中、相手が思いっきり私の腹に一発蹴りをかました。
当たりどころが悪かったのか、私はその場に崩れた。
うずくまって声にならない泣き声をあげながら腹をかかえて、それでも追い討ちをかけるように暴力が飛んでくるからとにかく腹だけを守るようにして丸くなった。
だんだんエスカレートしてきてうずくまってる私を相手が無理やり仰向けにした。
そのまま大きく足を上げたんだ。
その先は考えなくてもわかった、腹が踏まれると。
必死に違う所にさせようと転がろうとしても動けない。
ああ、終わったなーなんて考えたらクラスのムードメーカーかつリーダー的な存在の裕樹が止めに入った。

「まぁまぁまぁ、そんくらいにしようぜ」

不服そうな顔をしながらもすごすご席に戻る喧嘩相手。
うずくまってる私を支えるようにして裕樹は起き上がらせた。

「大丈夫か?ってお前ぶっさいくになってるぞ!」

笑いながら声をかける裕樹、これぞ王子様かと思った。
それがきっかけで裕樹の家に行ったり遊ぶ機会が増えたように思う。

それから小学校を卒業するまでずっと片思いしてた。
男女構わず人気だったから告白なんて出来なかったし、見てるだけで初恋は終わった。
裕樹は中学受験をして知らない学校に行った。
きっともっとカッコ良くなってバレンタインは凄い事になってるんだろうなーとか思ったり。

以上、一つ目終わり。
下からだんだん上がっていくよー
image1

15:名も無き被検体774号+:2013/05/11(土)02:00:50.04ID:NxA2h/PiO
中学生の頃。

学年の女の子から無視とかちょっとした暴力とか屋上に閉じ込められたりして反撃にでれず、軽ーいイジメにあっていた私は根暗で容姿もボロボロなバカ女に成り下がっていた。
友達なんていないし、給食の時担任から決められた5、6人のグループになって机をくっつけて食べなくちゃいけなかったんだけど
私だけ30cmくらい机離されてもそもそ食べるのが普通だった。
精神的に辛かったし、何よりも担任に話しても対処してくれなくて毎日泣きながらペットのハムスターに愚痴を聞いて貰ってた。

死にたい死にたい言いながら毎朝母親に叩き起こされて憂鬱になりながら学校に行き、内容がわかりもしない授業を受けて孤独な休み時間を過ごして。
生きる意味なんて無いなーってずっと思ってた。

気弱な私に対してだんだんイジメもエスカレートしていった。
女の子だけじゃなく男も加わるようになった。
体操服とかノートが男子トイレにあって見つけ出した所に変態気持ち悪い呼ばわりされたり
集団に押さえつけられてごにょごにょされそうになったりとか。
死にたかった。

そんな中、またもリーダー的存在の幸司が現れた。

でも裕樹とは違って止めに入るなんて事は無かった。
ただごにょごにょされそうな時、そいつが一言

「気持ち悪いから触らない方が良いんじゃね」

なんて言った。
同意して離れた男達にひとまず安心して一人きりになった所でまた泣いた。
誰かに見つかってまた変なことされるのは嫌だったから声を殺してずっと泣いた。

翌朝、気持ち悪いっていうのが広まったらしくとりあえず無視だけになった。
まだ暴力が無くなっただけマシだとは思ったけどやっぱり思春期だったから楽しそうにお喋りしてるクラスメートが羨ましかったし加わりたかった。

で、そこらへんから幸司のことを意識し始めたんだと思う。

よく見るとカッコイイし頭良いしスポーツも出来るし。
コミュ力もあった幸司に惹かれた。
それでも相手にされるなんて有り得なかったからチラ見して満足してた。
勉強頑張ってるなーとかポケモンの話盛り上がってるなーとか。
今までの中学生活に色が出たんだ。

ちょっとした楽しみが出てきた中、ある事件が起きた。

付き合った付き合ってない誰が誰を好きだーとかそんな話が出回るようになった頃、一人のクラスメートの女がいきなり私に話しかけたんだ

「ねぇねぇ、セックスしまくってるんでしょー?」

ポカーンと。
孤立してるのにどうやって?とか軽く冷静になってた。
そこから気持ち悪い、性病女、クズやら色んな罵声が浴びせられた。
全部嫌になった。

幸司のスペックの高さに惚れました。
告白出来ないまま卒業しました。
image2

26:名も無き被検体774号+:2013/05/11(土)02:27:02.07ID:NxA2h/PiO
高校1年生の夏くらいだったと思う。

コミュ力が無くてクラスに馴染めず、学校に行くのが嫌になった私は晴れて不登校児になった。
携帯を持つようになってからは家族にバレないように朝は普通に出て学校に電話して仮病使って毎日休んでた。
早々とそんなことになったせいで留年する可能性が高いと担任に言われたので、もうイジメが辛い理由をつけて担任に言ったらやっぱり取り合ってくれなかった。
また絶望して引きこもりになった。

そこで引きこもりの暇つぶしと言ったら言わずもがなネットだ。
当時SNSが流行ってたので早速登録してオタク仲間を作った。
腐女子というのもありたくさん友達が出来た。ネットの中だけど。
そこでとあるオフ会コミュニティーに入った。
簡単に打ち解けて仲間になることが出来たし、同じような境遇の人が沢山いるからこれだったらきっと仲良くなれる、と思ってオフ会に参加することにした。

オフ会までは毎日楽しくて仕方なかった。

オタク話に華を咲かせているといつの間にかオフ会当日になった。
幹事はKou。副幹事は私。参加者は20人に及ぶ結構大きめのオフ会になった。
最初はグダグダになりつつも楽しいオフ会になったと思う。
そのままオフ会メンバーとプライベートで遊びつつ煙草やらお酒やら始めるようになって立派なDQNになった。
夜遊びしながら居酒屋で騒いでいると、オフ会メンバーの中でも姉御的存在の新太に呼ばれた。

気持ちよく酔っ払っていたので何々ー?なんてニヤニヤしながら話を聞こうとすると、神妙な面持ちで新太はいた。
流石におかしいなって思って新太が口を開くのを待っていると

「Kouのことどう思う?」

意味がよくわからず?を頭に浮かべているとloveの意味でどうなのか、ということだった。
ホストみたいなチャラチャラした格好のKou。
久しぶりに楽しく話せる男相手。
色々重なったせいなのか私は好きになっていた。

新太が神妙→どんな気持ちか聞く→新太はKouのことが好き?
なんでゲスパーしちゃって泣きそうになった。
頼れるし可愛いし気遣いが出来る新太に勝てるはずが無い。
また失恋なのかと思うと泣きそうになった。

新太はそんな私のゲスパーを見抜いて違うメンバーが好きだから気にしないでって言った。
嬉しくて泣いた。
バカ正直にKouのこと好きだ付き合いたいって話すと新太は応援してくれると言ってくれた。
心強い味方が出来た。

そのまま何ヶ月かして私は想いを伝える事にした。
私は都内、Kouは県外に住んでるしバイトもそんなにしてなかったのでわざわざ紙に何を言うかまとめて電話で告白した。

Kouは最初っから私のことを気にかけていたらしくOKを貰った。
嬉しすぎて泣いたらずっと幸せにするからな!なんて言われて余計号泣した。

翌日に事件は起きた。

人生で一番大事ってくらい大好きなアニメタイムの時だった。
Kouから着信があり、アニメを邪魔されてもやもやしつつも電話にでると驚愕した。

「俺、新太と2人で勉強してもいい?」

何言ってんだこいつ
最初に思った。
そのまま話を聞くと、新太は年上で頭が良いしテストが近いから教えて貰いたいとのこと。
しきりに「2人で」という言葉を強調した。
ムカつきながらもそういうのが普通なのかと思って別に良いんじゃない、なんて素っ気なくするとKouは笑い始めた。

「なに?」
「嫉妬した?嫉妬した?」

やる夫の顔が頭に思い浮かんだ。
そして凄くムカついた。

そのまま罵声浴びせるとKouもムカついたのか返してきた。
お互い頭に血が上って大ゲンカ。
そのまま別れました。

たった2日の初彼氏のお話。
今思うとなんで付き合ったのか謎
image3

55:名も無き被検体774号+:2013/05/11(土)03:33:08.70ID:NxA2h/PiO
恋愛依存症になった17歳の2月。
彼氏がいない、つまらない、暇って理由で男漁りを始めた。

引っかかったのが同い年の彼男。
彼男は虚言癖があるのに話を盛って面白くするという芸当を持ち合わせてなく、つまらない奴だったけどとりあえず恋人がいるという肩書きが欲しくて付き合う事にした。

ある日、彼男の家で遊ぶ事になった。
実家だったけど彼には母親はいなく、叔母さんと父親と暮らしてるそうだ。
そのままお泊まりしようって事になって私はとりあえず彼夫のペットのマルチーズと遊んでた。
ちょっとごめん、そう言うと彼男はトイレに引きこもった。

一時間、二時間経っても出てこない。
日が暮れて月が登り、日付が変わる頃玄関が開く音がした。

「彼男ー?帰ってるのかー?」

彼男の父親だった。
一軒家の二階に彼男の部屋があり、詳しくは聞こえないけど彼男父と彼男叔母は話し込んでるようだ。
なんだか雲行きが怪しいぞーなんて呑気に思ってると彼男父が怒鳴りだした。

「彼男!何やってるんだ!出て来い!」

なんかヤバくないか?いやでも彼男に任せれば…いやいやいや、なんて思考を巡らせてると彼男叔母が申し訳なさそうに部屋に入ってきた。
ごめんねぇ…ちょっとリビングまで来てくれる…?
流石に叔母さんに言われたら仕方ない、と一緒にリビングに行くと顔に痣を作った彼男、正面にいかにも893ですねわかりますと思ってしまうような彼男父が腕組みをしながら座っていた。

そこから2時間くらいの説教。
女性をこんな時間まで帰らせずに何をやってるんだ、とか親御さんは大丈夫なのか、とか
思いやりがある良いお父様じゃないかと軽く考えたけど彼男の痣を見ると消え去った。
所々に彼男が口を挟むとうるさい!と机を殴って怖かったのを覚えている。

そのまま私は彼男の部屋で、彼男はリビングのソファで、叔母さんと彼男父は自室で寝る事になった。

翌朝彼男父が仕事に行く音に目が覚めた私は彼男を起こし、早々に帰った。
そしてそのまま一生サヨウナラ。
付き合ってから一週間くらいの出来事でした。

あとは彼男がオフ会メンバーの人と付き合ってたとか私が友達とラブホ行ったら彼男が激怒して殺しに行くとか言い始めたとか
つまんない出来事が起きたくらいで手繋いだりとかは一切しなかった。
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63:名も無き被検体774号+:2013/05/11(土)04:02:11.39ID:NxA2h/PiO
番外編姉ちゃんとの日常会話

妹「今日がっつりメイクした!」
姉「濃すぎでしょ…」
妹「…えっ」
姉「なんかチーク塗りすぎた人の目バージョンみたい」
妹 「」ゴシゴシヌリヌリ
妹「どう?」
姉「おーいいじゃん。ていうか補正早すぎwww」
妹「流石天才だろ?」
姉「うーん…」

姉「今日はリボンつけようと思う」
妹「かわいーなそのリボン」
姉「つけてみた」
妹「…なんかちがくね?」
姉「違う?」
妹「ネクタイにしてみよう」
姉「はい」
妹「えっ」
姉「えっ」
妹「…結べないの?」
姉「…結べないよ!」
妹「仕方ないなぁww」
妹「…はい、おk」
姉「……なんかちがう気がする」
妹「違うなぁ…」
姉「やっぱりリボンにしよう」

妹「ちくしょーおっぱいでけーな!」
※姉ちゃんFカップ、私Dカップ

姉「おめーも十分でかいから」
妹「ねーよwwwねーよちくしょおおお」もみもみ
姉「胸じゃなくて肩揉んでよ」
妹「はぁい…」もみもみ…

69:名も無き被検体774号+:2013/05/11(土)04:12:49.76ID:NxA2h/PiO
彼男がつまらなくて読書に励む中、あはんうふんな描写が出てきた。
うひょーうとか思いつつふと自分がまだラブホ経験したことが無い事に気付き、誰かと行こうと決心。
全くラブホ知識が無かったので女同士で行けるということを知らず、とりあえず男友達で付き合ってくれそうな人を電話帳から探す。
そこで目を付けたのがオフメン男B。
男Bは女Bと付き合ってるものの大学生だし経験者でもあるし、お金もある。
早速男Bに連絡をした。

「もしもし男B?」
「んー」
「寝起きで申し訳ないんだけど明日ラブホ行かない?」
「……はぁぁ?」
「セックスしたいとかじゃなくてラブホに行きたいの。興味本位。一切体には触らないし触らせない」
「…あー…夜からなら空いてる」
「了解」

て感じで某ラブホ街近くを待ち合わせにして軽く飲んでからいざラブホへGO。
初めてのラブホにテンション上がりすぎてゴムとかいじりまくった。
そして私はキス以上の経験が一切無かったため電マとかディルドが載ってるカタログみたいなやつで興奮しまくった。
性的な意味じゃなく。

で、カタログとか浴室とかを写メってオフメン女Cにここはどこでしょー?とかって送ったのね。
そしたら電話がかかってきてポロッと言っちゃったんだ
「男Bと来た」って。
我ながらバカすぎて言葉が出ない。
セックスセックスwwwとか言ったら電話が切れた。
頭が働かなくて意味がわからないままそのままベッドに潜り込んだ。

でも相手はやりたい盛りの大学生なんですよねー。
そのままガバーって来ました。
そして中学時代のトラウマが蘇った私、全力拒否&逃走www
荷物持って駅までダッシュしたつもりが迷子になった。
もう勘弁してくれよ…とか泣きそうになりつつ携帯でナビウォーク使った。便利だよナビウォーク。

で、相手から謝罪メールが来てこっちも謝ってちょっと距離置いた。

で、翌日女Cがちゃんとご報告してくれたらしくオフメンから罵倒罵声の嵐メール。
そこで彼男が激怒して男Bに「連れと殺しに行くからな、お前の住所わかってんだからな」と脅しメール。
急いで男Bと口裏合わせて誤解わ解こうとしたけど失敗に終わり、そのままオフメンとは縁が切れた。

90:名も無き被検体774号+:2013/05/11(土)05:19:48.29ID:NxA2h/PiO
17歳、まだじめっとした暑さが残りつつある秋の事。

オフメンとも関わりが無くなってまたぼっちになり、1からやり直すのも面倒だしまた人間関係でゴタゴタするのが嫌だった私はニートをしていた。
バイトも寝坊が多すぎてクビになり、外に出る用事もない。
家では母親と恋人がイチャイチャしてるし居場所と言ったら布団に潜ってただ暗闇を見つめている事しか出来なかった。
まともな物も口にせず、動かないおかげか飢えも無い。
ただただ水を飲んで布団に潜る、そんな日が2ヶ月続いた。
次第に体は弱っていき立つだけで膝が笑う、コンビニに行こうとするとめまいと立ちくらみが酷く、たった50mすら歩くのもままならない状態だった。

この頃両親は離婚していて私は母親についた。
母親は元々離婚したら恋人と住むつもりだったようで、1Kアパートに3人で暮らすことになっていた。
母親は恋人にゾッコンで恋人は私を性的な意味で以下略という最悪な三角関係が出来上がっていた。

そんな中、姉ちゃんが我が家に来た。
勿論母親は恋人loveなので一応歓迎しますよオーラを出しつつも最優先は恋人。
そして私を見るとなんとも言えない表情を見せた。

とりあえずもう日が暮れていたので晩御飯、ということになったが何分私は食欲が無い。
しかし姉ちゃんに変な事を思われたくなかったので無理やり詰め込んで水で胃におさめた。
結局そんな簡単に胃は受け入れてくれず、気持ち悪くなった私はバレないように便器にさようならをした。

母親と姉ちゃんは談笑しているので久しぶりに会うし2人でつもる話もあるだろうと適当な理由を言って近くの公園でボケーッとした。

30分か1時間か雲を眺めるのに飽きた頃時代に戻りそのまま就寝。
姉ちゃんの寝相が悪すぎて布団から落とされた。

翌日、姉ちゃんはバイトがあるとのことで帰る事になった。
駅まで送れとの命令が姉ちゃんから送られたので渋々準備をしてゆっくり歩いた。

「妹、ニートしてるんだって?ちょっとは働きなよ」

心苦しくなる言葉だった。
自分なりにお金が無いって焦ってたし、家賃、光熱費その他雑費を割り勘していたのでそれも母親に滞納している。
姉ちゃんが来る前にバイトの面接を15個くらい受けたが落ちていた。

スーツ着て髪もまとめているのに受からない。
話はスムーズに出来ているはずなのに落とされる。
どうしようもなかった。
それからも駅に着くまでに遠回しな罵声をくらって泣きそうになった。
頑張るとは言ったもののどう頑張れば良いのかもわからなくなっていた。

仕方なくまた某ウェブサイトの求人を見ると1つ目に留まるものがあった。
マッサージ施術の求人である。
前から姉ちゃんには肩もみの奴隷をさせられていて嫌々ながらやっていたものの、鍛えられたのか友人にも評判は良かった。
これだったらいけるんじゃないか、ダメだったらもう体を売るしかないと決心して面接を取り付けた。

ここでまた問題が出た。
面接地が渋谷だという。
109が、ハチ公がとか色々聞いたことがあるものの一度も行ったことが無かった私にはハードルが高い。
ましてや人混みである。
もう死ぬしか無いのか、いやでもこれにかけるしか無い。
色んな葛藤をしていざ面接当日。
バックレたい気持ちが大きくなりすぎて電車の中で泣きながらも渋谷に到着した。
なんだここは。人が多すぎる。本当にここでいいのか。帰りたい。帰らせて。ダメだ、負けるな。
ぐちゃぐちゃ考えながら面接地を探した。

事前に面接地の写真をグーグル先生に聞いといたおかげかすんなり見付けられた。
面接までは1時間も余裕がある。
面接地の前でずっとたたずんでいた。

次第にまた恐怖が沸いてきた。
どうしようもなく帰りたくなり、何故か姉ちゃんに電話した。
幸いにもすぐに出てくれた。

「もしもし?」
「おーどうしたん」
「面接地まで来たよ」
「おぉ、凄いじゃん」
「落ちたらどうしよ」←ここらへんで涙目になる
「大丈夫だ、落ち着け」
「もうダメだ落ちるごめんなさい」
「何言ってんの、まだ面接してないでしょうが」
「ごめんなさい」
「大丈夫だって。ちゃんと面接できたらオムライス奢ってあげるから」
「ほんと?」
「うん」

とあるファミレスのオムライスが大好物の私はすぐに釣られた。
我ながら単純だ。

そこから何故か施術者→イベントガール→派遣に路線変更されて面接に受かった。
この時の面接担当者さんは今でも尊敬してる。
短時間で全部見抜いて、私に一番合う場所を作ってくれた。

一週間もしないうちにいざ初業務。
またネガティブと逃げたい病が発生しつつもなんとかこなす。

そこで出会ったのが責任者であるK男さん。

K男さんはキャリアがあるせいか指示も教え方も全部完璧にこなした。
週一で休みがあるかないかくらいシフトを入れたせいなのか毎日K男さんと一緒にいて次第に惹かれていった。
ただ第一印象暇は最悪だった。
だるそう、目が死んでる、何よりも遠目で私を見ながらコソコソ同僚らしき人に話しかけていたので悪口か、とまたどんよりしたりもした。

半年くらい毎日のように顔を合わせてるとさすがに仲良くなった。
業務中なのに携帯をいじるのはあんまりよろしくないとは思いつつもちらほら見せてくる動画がツボになってずっと笑えた。
K男さんと一緒にいると自然に笑えたのである。

また脱線しちゃうけどこの仕事につくまで愛想笑いすらままならなくて、無表情のつもりでも顔の作りのせいか仏頂面しか出来なかったから本当に心の底から笑ったのはかなり久しぶりだった。

そしてK男さんと一緒に業務をしていたある日のこと。

初業務で陰口らしきものを話していた同僚女さんがK男さんと話しているのを目撃した。
その時苦しくなって、泣きたくもなった。
私以外と話しているのが気にくわない。
嫉妬が芽生えた瞬間だった。

そこでやっと好きなんだと自覚。
ただ、今まで付き合ったと言ってもまともな恋愛をしてこなかったからどうすればいいのかわからない。
ましてや仕事で関わる人と、K男さんとはギクシャクした仲になりたくない。
ずっと一緒にいられるならこのままが良い。
そう思ったら告白なんて出来なかった。

そんな想いをもやもやさせつつも確実にK男さんとの距離は縮まっていった。

しばらく経ったある日、私がごねまくって男先輩、私、K男さんの3人でK男さん宅で飲む事になった。
内心は男先輩クソッタレとか思ってたけどK男さんと男先輩は仲が良かったので、男先輩が来るなら…と渋々承諾してくれた。
ルンルンでお酒を選ぶ私。
つまみをカゴに突っ込む先輩。
荷物持ちのK男さん。
端から見たら変なメンバーだったと思われる。

いざK男さん宅に到着するとさっそく乾杯し、談笑を楽しみながら時間はすぎていった。

男先輩は翌日仕事なので早々に帰宅。
そして私は男女の隔てというものが小学生のままでいたので何も考えずに言ってしまった。

「K男さん明日休みですよね。泊まって良いですか?」

K男さんポカーン。
私は理由がわからずポカーン。

しどろもどろになりつつもK男さんは承諾してくれた。

お互いシャワーを浴びて就寝。
何もなかった。

その日を境に私はK男さん宅によく行くようになり、スキンシップも多くなった。
毎日楽しくて仕事も捗るし良い事ばっかりだ。
姉ちゃんに会った時も明るくなったと言われるようになり、ネガティブも逃げたい病も無くなった。
ずっと楽しい毎日が続くと思ってた。

K男さん宅に入り浸るようになってからはK男さん自ら合い鍵を渡してくれた。
凄く凄く嬉しかった。

とは言え、K男さんはベテランだから月に3、4日あるか無いか。
酷い時は1ヶ月半ずっと働きっぱなしである。
私は私でまだ新人だからK男さんがやる業務とは別のものに入るしかないし、何よりもタイミングが悪いのか受付嬢をやった時にクライアントさんからえらく気に入られてK男さんとは会う時間が減っていった。

それでも私が翌日休みの時はK男さん宅に行って食事以外の家事とかやり、K男さんが帰ってきたら肩もみという名のいちゃつきをしてた。
冗談ぽく抱き付いたりもした。

本音を言うとそのままK男さんから告白して欲しかったし、そのまま夜這いにならないかなーなんてずっと思ってた。
なんでここまでしてるのに、って当時はずっと悩んで露出多くしたり風呂上がりにバスタオル一枚で出たり色々仕掛けたのにバカ何やってんだって笑うだけで何もしてこなかった。
魅力無いのかよって沈んだ。

それでも好きなものは好きだからってK男さんが好きなもの買っといたりサプライズみたいなのもした。
K男さんはめちゃくちゃしぶとかった。
お礼を言うだけで一切何もしてこなかった。

そんな挑戦状を叩き付ける日が続く中、K男さんが私に手を伸ばしてきた。
何もしてないけどやっとK男さんが発情してくれた!と喜んだのも束の間、崖から突き落とされる。

「鍵返せ。もう泊まりに来るな」

多分泣きそうな顔をしていたと思う。
それでも泣かずにえーなんでよーwwなんて震える声で言いながら鍵を返した。
怒りよりも悲しさで何も言えずにいる私。
その日、K男さんは口を開く事は無かった。

それからと言うものの、K男さんは私をニックネームで呼んでいたのに苗字+さん付けに変わり、一緒の業務に入っても前のように笑いをかけてくれる事が一切無くなった。
たくさん考えたけど理由はわからないまま日にちだけが過ぎていく。

メールを送ろうとしたり電話もかけようとしたけど、冷たい声であしらわれるのが嫌だった。
つくづく自分自身しか考えられない脳みそだ。
そんな自分は苦笑いしつつも思考はだんだんと落ちていく。
またネガティブで卑屈な根暗の私に戻った。

それから1年が経った。
うじうじしていてもまたニートに戻って堕落人間になるのだけは嫌だったので仕事を最優先にして動くようになった。
業務も一通りこなせるようになり、K男さんのことを考える暇も無いくらい忙しくなった。
厳密には無理やり仕事を入れて貰ったんだけど。
そこから自分のスキルアップをし、後輩が出来ていく中私は一つの目標が出来た。
責任者になりたい。
失敗はするけど人より完璧に業務をこなせる自信はあるし、クライアントさんともそれなりに良い関係が築けるようにもなった。
2、3年長くやってる先輩よりも数だってこなしてるし何よりも今までの業務を全部メモしてある。
任された仕事は120%でこなして120%で終わらせる事だって出来る。
そんな自信もあるし、実際販売員になると会社での最高記録を毎回のように叩き出した。

実績も実力もそれなりにあるんだし、クライアントさんからも良い評価を貰っている。
ここいらで周りを見ても先輩より出来ているはずだから、責任者にさせてください。
上司に言うと、思いも寄らぬ言葉が返ってきた。

「でもまだ若いからねぇ…」

ここにきて年齢という壁。
どうあがいても砕けられない大きな壁だ。
それを聞くと一気にやる気が無くなってしまった。
今までの努力はなんだったのか。
結局報われないんじゃないか。
意味が無かった。
じゃあもういいや。

悔しさよりも喪失感の方が大きくなってしまい、全てを諦めてしまった。
そうすると苦情は出る、お客様から100%の満足を貰えない。
どうでもよくなった私は上司の言葉も進撃に受け止める事も無くなり、ただお金を貰うために動くだけのクズに成り下がった。

今までの数値も格段に下がっていくので上司は呆れ顔。
そんな日が続き、とうとうクビになった。
もうやめてくれるかな、今まで優しくしてくれた上司は嫌そうな表情をしながらけだるそうに言った。
なんでかわからないけど涙が出てきた。
どうでもよくなったはずなのに、なんでだろう。
今でも理由はわからないけど色々悔しかったのかなぁとは考えたりする。
一応お礼だけ言ってから会社を去った。

遊ぶ事より仕事を選んでいたおかげで幸いにも2ヶ月は何もしなくてもいいくらいの貯金はある。
久しぶりにオフ会に出て騒いだ。
前のメンバーが全くいない、その日限りの付き合いで終わるようなオフ会。
仕事のおかげでコミュ力が鍛えられたせいか、輪の中心になっていた。
飲んで吐いてまた飲んで、そのままカラオケ言って騒いで飲んで。

遊びなんて一切してなくて、やっとはしゃげたというのにも関わらずちっとも楽しくなかった。
なんでこんな事してるんだろう、なんてバカらしくなった。

途中でオフ会を切り上げていつもは電車に乗って帰る所を酔い醒ましに歩いて帰った。
ずっと仕事に生きてきた私は希望も無くなって、遊ぶのすらもつまらないとしか感じなくなってしまい、また無表情の日が続いた。

遊ぶ事は無くなったものの自宅にいるのが嫌だった私は毎日外食をするようになり、だんだんと貯金は減っていった。
仕事のことは母親に言っておらず、また金金と言われるのが嫌だったので一人暮らしを始めることにした。
とりあえず家は即座に決めてあとは働くのみ。
何をしようかな、なんて考えながら繁華街をぶらぶらしていたらふと水商売の求人貼り紙が目にとまった。
体は売らないけどただ相手を持ち上げるだけでお金が貰える商売。
これくらいなら出来るんじゃないか、とそのまま面接を取り付けてそのまま許可を貰いバイトを始めた。

久しぶりの接客が楽しくて楽しくて仕方なかった。
やっぱり人と関わるのが好きなんだなぁと実感してちまちま働いた。
洋服も可愛らしいものを着て、化粧も研究して女の子っぽくなる努力を初めてした。
そんな日を過ごしてるうちに19歳最後の月がやってきた。

あっけない10代だったなぁなんて思いながら友人とゲームをする。
スト4でまだ初心者だった私はフルボッコにされながら友人と笑いあっていた。
ダラダラとスナック菓子を食べながら談笑をしていると一通のメールが届いた。
宛名はメールアドレス。
メルマガ?登録してない人?出会い系?でも@から先が携帯会社。
なんでだろうか、そのアドレスには見覚えがある。
必死に記憶の引き出しを漁りながらメールを開いた。

「久しぶり。家に来ないか?」

K男さんだった。

久しぶりすぎていきなりすぎて、意味がわからなかった。
何言ってんのこの人。
自分から突き放したくせに。
また私を利用したいのか。
もやもやしつつも心の底では喜んでしまっていたせいかOKの文字を送信してしまった。

適当な理由をつけて友人とは別れ、一旦自宅に戻り準備をしてK男さん宅へ向かう。
電車の中でK男さんと笑い合った日、スキンシップを試みて失敗した日、色んな事を思い出した。
結局自分は傷付いて何も行動出来なかったけど。
そんな事を思っているうちにK男さん宅の最寄り駅についた。

「何か買っていくものありますか?」

昔いつもしていたメールを送ってから主婦か私は、なんて苦笑しつつもコンビニへ向かい、適当に飲み物と間食を買う。
そして懐かしく思いながらもゆっくりとK男さん宅に歩いていく。
ゆっくりと歩いてたつもりがやっぱり足取りが軽くなっていたのか、予定よりも早くK男さん宅についた。

ピンポーン。

ガチャ。

「よう」

「お久しぶりです」

多少恨んでいた部分がありながらも思ったよりも軽く挨拶が出来た。
部屋へ入るとその人独特の香りが鼻を掠め、以前のように散らかったリビングが目に入る。
何も変わってないK男さんの家だった。

「ビール飲むか?」

「今何時だと思ってるんですか」

多少暗くなってきたとは言え、辺りはまだ陽に照らされている。
確かにな、とちょっと笑ったあと一つの静寂が訪れた。
なんとなく気まずくなってしまい話題、話題、と頭を回転させる。
K男さんも同じ考えだったのかテレビをつけた。

対して興味も無いドキュメンタリーが放送されている中、2人でとりあえずテレビに目線を送る。
何分か経って番組内容が変わると、K男さんが口を開いた。

「そういえばさ」

「はい」

「お前今何してんの?結構前に仕事やめたんだろ」

噂というのは回るのが早いらしい。
たった一人、私がやめただけで一週間後には周知されていたそうだ。
私ははぐらかそうとしたものの、まぁまたいなくなるだろうと思いながら全てを話した。

やる気が無くなってダメ人間になったこと、豪遊してもつまらなかったこと、今は水商売もやっていること。
全部言うと吹っ切れてしまい、K男さんに好意があったことも伝えた。

最初は驚いていたものの、K男さんも当時は私のことが好きだったようだ。
これには私も驚いた。
そして昔を思い出して泣いてしまった。

「じゃあなんでいきなり冷たくなったんですか」

半ば怒鳴るようにして嗚咽を殺しながら言うと、K男さんはタオルを私に渡しながら言った。

「俺は俺で色々考えてたんだよ」

聞くと、やはり年齢の壁が大きかったそうだ。
当時の私は17歳でK男さんは30歳。
一回り以上も違うし、法律上夜遊びも出来ないような子供。
信頼出来る父のような存在の友人に相談をすると、あと1年は少なからず待たないとダメなんじゃないかと言われた。
それに納得はしたけど私のスキンシップが多くて抑えるのもやっと。
しかも最近露出も激しくなり、いつか襲いそうで怖くなった。
だから離れた。

K男さんはK男さんで私と同じように今の関係が崩れるのが嫌だったらしい。

それに対して私は納得はしたものの、怒りが収まらなかったので何発か平手打ちをかましておいた。
その手を押さえて引っ張り、私は体制を崩してK男さんの腕の中におさまった。

「今更だけど付き合うか」

嬉しかった。
努力が報われた。やっとずっと一緒にいられる。
なんて思ったものの、私は断った。
たかが1年離れていただけなので多少気持ちは薄れていたが、また一緒にいればすぐ好きになる。
前と同じく楽しい日が続くなら是非とも一緒に過ごしたかったが無理だった。
理由は私のトラウマ。

恋人と付き合い、やることと言えばセックス。
私はこれまで何度かセックスを試みたものの、どうしても恐怖と嫌悪感が拭えない。
怖い。助けて。触らないで。痛い。やだ。やだ。やだ。
ずっとずっとそう思い、拒絶をしてしまう。
そして酷い時には喘息が出て暫くは男性と話せない、触れない、すれ違うだけでも吐き気を催すという最悪なパターンになってしまうのだ。

どうしてもこのトラウマは消えてくれず、飛びっきり重い足枷となっていた。

K男さんからの申し出をお断りをする時、私はいつものように笑って返した。

「何言ってるんですか〜。もう気持ちなんて無いでしょ、あはは」

私が無理やりにでも軽く返したせいかK男さんもそうだよな、と笑いながら流した。
その日は今まで一緒にいなかった分を取り戻すようにお互い笑って子供のようなくだらない会話を楽しんだ。
電車の都合で早めに帰宅し、自宅に着くとカバンを放り投げて布団に突っ伏す。
どうしてもセックスが嫌だと思ってしまう自分に苛立ちと嫌悪感が募った。

そのトラウマは将来への不安にも繋がっている。
家業を継ぐということは無いものの、世間一般としてはそれなりの年齢になると結構をして主婦になり、愛しい旦那との子を生んで幸せな家庭を築き上げ、
慌ただしい育児をしつつ子供が巣立っていくのを見守る。
嬉しかったり寂しくなりつつも子供が結婚をし、また旦那との生活が始まる。
そして老後になり孫を見届けてゆったりとした生活をしながらそのまま墓に入って。
そんな事をするのが普通の人生と言われている。
そこから道を少しでも外すと邪険に扱われたり他人から一歩置かれたり。
比較的自分のやりたいことをやる私は言わずもがな邪険に扱われる。

今となってはもうどうでもいいんだけど当時心強い味方という人がいなくて精神的にはキツかった。

トラウマを抱えていてもその場面に出くわすまでは気付かないもので、確信したのはオフ会に出るようになった頃だった。
元々人間関係を築く事をしてこなかったというのもあり、最初にオフ会メンバーから肩を叩かれたり軽いハグに肩が跳ねる事があったので最初はまだ慣れてないからなんだなーと勘違いをしていた。
それから何ヶ月経ってもずっとおさまる気配が無く、だんだんと疑問に思う事が増えていった。

決定打はオフメンの一人に後ろから背中を引っ張られて抱き付かれてた時だった。
大きな叫び声と共に涙が止まらなくなった。
ちょうどオフ会の待ち合わせをしていたので数名オフメンが集まっており、通り過ぎる街中の人からも注目を浴びる。
軽々しくスキンシップをしたつもりの男Cもなにがなんだかわからない様子だった。

とりあえずオフメンの中でも親しい女Cに喫茶店に連れられる。
背中をさすって貰い、震える体をなんとか落ち着かせた。
初めは理由がわからなかったものの、女Cと話しているうちにだんだんと謎が解けていった。

そこでトラウマというものに気付き、ある程度分かった所で一旦帰宅。
女Cにはお礼、抱きついてきた男Cには謝罪メールを送り、トラウマに関してどう対処するか思考を巡らせた。

どうやって無くすのかを考えても、荒療治だけど誰かに付き合って貰い慣れるまで抱きしめて貰うというものしか思いつかなかった。
思い立ったらすぐ行動、と親しい男Dに相談を持ちかけると快く受けて貰えた。
男Dは社会人なので会う日が限られてしまうけど、逆にゆっくりと解消出来るんじゃないかと考えると心が高鳴った。

結論から言うとトラウマは余計悪化した。
最初は飲食店で手をつなぐ、ボディータッチをする等少しずつ触れる、相手からも触られるようになったものだんだんと場所が2人きりになれるような所になり、
人前で抱き付くのは流石に…という言葉を信じた私はカラオケの個室で会う事になった。

そのままじゃあ、と軽く照れながらもお願いすると男Dは肩を寄せて抱きしめてきた。
しかしながらやっぱり嫌悪感が多くなる。
ごめん一旦離れて、と言い体の密着が無くなった所でキスされた。
訳が分からず、でも体は反射的に男Dを拒絶した。
呼吸が荒くなり自然と涙が溢れ、体が震えてくる。

そんな様子に焦った男Dは私に腕を伸ばした所で宙に浮かせ、迷ったようにさまよいながらも引っ込めた。
好きだった。ごめん。
そう言うとお札を2枚机に置いて出て行った。

男Dはお互い気まずくなりそのまま疎遠になった。
異性といるだけで危ない目にあう、と体が覚えてしまい、派遣なんてやっていられなくなった。
結局無くすなんて事が出来ないまま数日間引きこもった。

派遣は内容として接客が多くなってしまうのでこのままだと普通に働く事も出来ない。
でも働かないと生活が出来ない。
自暴自棄になってもう無理やりにでも慣れるしかないな、と思いシフトを入れた。
仕事にならなかったらもういっそ死んでしまえばいい。
生きれないんだったら仕方ないんだから。
そんなことを思って出勤した。

その日の仕事内容は販売だった。
他の販売員さんやクライアントさんは運良く女性だった。
挨拶をしてから開店準備に取りかかり、いざ業務開始。
それなりに人で賑わう中、私の所へ一人のお客様がやってきた。
男性だ。
一瞬顔が強張りながらもお客様の元へ行き、商品の説明をする。
メリットとデメリットを伝えながらもお客様は商品をレジまで運んでいった。

そこからは忙しくなり、他の販売員さんと協力しながら業務をこなす。
閉店後にはヘトヘトだった。

足を引きずりながらも帰宅して業務内容と所感をノートにまとめ、倒れ込むようにして布団に横たわる。
そしてトラウマについて考えた。

仕事をしている時は多少の苦手意識はあったものの問題無く男性と喋ることが出来た。
軽い世間話も挟みつつも一定の距離感があると大丈夫なようだ。
仕事中は問題無いとして、生きる事自体には全く障害は無い。
それだったらプライベートで関わらなければ良い話だ。
どっちにしろ恋人作っても一生関わるなんて無いし、そんな事に一喜一憂したって時間の無駄だ。
そう結論づけて一旦思考を止めさせた。

そのまま時間は過ぎていき、だんだんと同僚、上司とは打ち解けて仲良くなっていった。
スキンシップさえ無ければ多少の隔てはあるものの円滑な人間関係を築く事は出来たので、自然とトラウマからも思考が逸れていった。

そして時は経ち、17歳の秋。
K男さんに出会った。

その頃にはもうトラウマなんてものは消え失せたのか、お互いにスキンシップしても問題無く接せられるようになった。
ただ恋愛はする事はなく、友達以上恋人未満の親しい間柄はいても夜を一緒に過ごす恋人なんて人はいなかった。

クリスマスとかイベント事がある時も、仕事仲間とか趣味友とリア充爆発しろー!なんて言いながら笑っていたので寂しいなんて事は無かった。
それだけで充分楽しかったし恋人がいたってなんら変わりもないだろう。
過ごす相手が変わるだけだ。
そんなつまらない思考になっていたけど、だんだんとK男さんに惹かれていってしまい自分の考えがよくわからなくなっていた。
そのまま仲良くなる、別れに悲しむ、再会をしたが、やっぱりスキンシップ以上のことを望む事はなかった。

一般的な恋人は体を交わせるのにそれが出来ない女なんて価値が無い。
それだったら付き合わない方が、K男さんには似合う人がたくさんいるんだから。

お断りしてから数日後、再度K男さんと会う事になった。
若干の気まずさはあるものの再会した時みたいに軽く言葉をかわせるだろうと呑気に考えながらK男さん宅へと向かう。
いつも通りコンビニで食べ物と飲み物を適当に買ってからK男さん宅に到着し、ダラダラしていると神妙な面持ちでK男さんが口を開いた。

「お前さぁ、今って水商売しかやってないんだよな」

「はい」

「昼って何してんの?」

「特には…ゲーセン行ったり漫画読んだりですかね」

一瞬の間ができ、K男さんは少し考える素振りをした後ニヤッと笑った。
悪巧み考えてるのかと若干眉間に皺を寄せながらも次の言葉を待った。

「もう一回派遣やるつもりは無い?」

「えっ…」

困惑しつつも話を聞くと、K男さんは現在人材派遣の正社員でお店に行って運営を行う側ではなく、お店に人を送る側をやっているとのこと。
そこの業務は私がいた派遣会社と内容はほぼ同じだし、私がいれば新人スタッフの教育も出来る時間が出来て捗るとのこと。

「でも私、前の会社でやる気が無いって理由でクビになったんですよ?苦情もあったし…」

「クライアントがいる時はやる気がある演技しとけば良い」

そういえばK男は確かにいつもそうやってた気がする。
クライアントがいない時に動画見ちゃうような人だったしな…

そして求人は出しているものの、壊滅的に人不足。
派遣会社なのに派遣出来る人がいないんじゃ仕事が回らない。
頼む、と頭を下げられてしまい乗り気ではないもののOKした。
そしてお昼はK男さんの会社でバイト、夜は水商売をするという若干ハードな毎日が始まった。

派遣の仕事は前の会社で色んな業務をしていたせいか、問題無く取り組める。
色んな重荷が無くなったせいか、前よりも簡単にこなす事が出来た。
そしてK男さんとまた毎日のように会えるし、また人生に彩りが宿った。

K男さん宅に泊まる事も何回かあり、仕事という共通点が出来た所でより一層深い関係になった。
そんな中、何回かまた付き合う付き合わないという話が出たけども結局付き合わず、だけどお互いまた冗談っぽく話ていたのでなんら問題無く仲の良い友人、という立場の関係が続いていった。
そして友達であり上司であるK男さんは確実に私の心を近付けていった。

そして運命とも言える日がやってきた。

K男さん宅でダラダラとしていると、何やらK男さんは難しい顔をしてパソコンと向き合っていた。
仕事大変そうだなーなんて考えながらもスト3を楽しんでいるとため息をついて私の隣に座り、悲痛な叫び声を上げるテレビに視線を送るK男さん。

何やら思い詰めているようだったので一旦ゲームを中断してK男さんと向き合った。
どうしたんですか、と言葉をかけると生返事がきて黙り込む。
静まった部屋でK男さんは決心したように言葉を紡いだ。

「付き合おう」

冗談で返せるような空気ではない。
私はとうとうこの日が来たか、と頭の中でどこか冷静になりつつもなんて返せば良いのか思考を巡らせた。

もしここで拒絶したら仕事がやりにくくなってしまう。
かといって受け入れたとしても体の関係は持てないし、上手く行く事なんて無い。
どうしたらいいものか、と俯いていた。
どっちにしろ私は断るつもりでいる。
K男さんだってもう子供じゃないんだから仕事に私情を持ち込むなんてことはしないだろう。
今の関係が崩れたってなんら問題は無い。
ちょっとつまんなくなるなったってまた趣味友たちと笑い合えば良い話だし。
そして私は顔を上げ、まっすぐK男さんを見た。

「ごめんなさい。出来ません。」

K男さんの表情が強張った。
そのまま拳を握りしめ、少々たじろぐ。
まさか暴力なんてないよな、流石に体力仕事やってるけど一回り体が大きいK男さんに勝てる自信なんて無いぞ…
そんな心配も杞憂に終わり、K男さんは一つため息を零してからまたパソコンと向き合った。
私もまたテレビに視線を送り、ゲーム再開。
無言のまま日が暮れた。

それからと言うものの、仕事中に多少話す事はあってもさり気なく避けられるようになった。
結局こうなるんだなーなんて失笑しながらも業務をこなし、クライアントさんと挨拶してまた次の現場に行く。
そんな日が続いた。

その頃、五月病みたいな感じで無気力な状態になって私は仕事を休みがちになった。
それでも人手不足だからという理由で頼まれると断れず、嫌々ながらも重い足取りでお店に向かう。
各お店ごとにK男さんの会社から現場責任者も派遣されるのでしょっちゅう仕事に入る私はその責任者であるG男さんと仲良くなった。

G男さんは営業をやっていた事もあり、凄く饒舌で尊敬していた。
K男さんとも仲が良く、休憩を一緒にしたりしょっちゅう飲みに行ったりすることもあった。

いつもより表情が無い事を察したG男さんは仕事終わりに飲みに誘ってくれた。
お酒が好きな私はそれを元にモチベーションを上げて業務に取りかかり、それなりの実績を残して終了。
さてじゃあどこに行きましょうか、と辺りを見回していると何やら見知った顔が近付いてくる。
愛用バックから眼鏡を取り出してよく見るとK男さんだった。

なんでいるんだよ…なんて一気にテンションががた落ちし、じゃあ行きますかと足を進める。
2人が談笑してるのを後ろでボケーッと見ながら某居酒屋に到着。
多少賑わってはいるものの、平日というのもあってかちらほらと席が空いていた。

まぁ飲んだら楽しんだもの勝ちだろうと並々と注がれたビールを半分まで飲み、つまみを口に放り投げながらおとなしくしていた。
酔いが回ってきて正常な思考が出来なくなってくる。
あぁもう色々考えんのやめよう面倒だし。
そう思ってからは2人の談笑に突っ込みを入れたりくだらない話に爆笑しながらお酒を煽った。

3人でいい感じに酔っ払うと、ぽつりとG男さんがカラオケに行きたいなぁとぼやいた。
それに乗っかってじゃあ行きましょうか、なんて言ったらよほど嬉しかったのかG男さんは鼻歌をしながら足取りを軽くした。
いざカラオケに到着し、席に座ると3人共年代層が違うせいか皆でジェネレーションギャップを感じながらも各自楽しんだ。
G男さんの振り付けに笑い、K男さんのかなり上手い歌声で余計に楽しくなった。
私が歌う曲はマイナーなせいかあんまり盛り上がらなくてちょっとだけ落ち込んだ。
これぞジェネレーションギャップ。

終電が近くなり、方向的にG男さんとはその場で別れ、K男さんと途中まで一緒に帰る事になった。
お互い酔っ払っていたのもあり話は弾み、楽しみながらも乗り換え駅に到着。
そのままお疲れ様でした、と別れようとするとK男さんはまぁまぁ、と行ってK男さん宅へと向かう電車に乗り込んだ。
もう一件はしごしようなんて言われもう吐きますよーなんて笑いながらもそのままついていく私。

K男さん宅の最寄り駅に着くと、お互いもう疲れ果ててしまっていたのでそのままK男さん宅で寝る事にした。
途中で水を飲みながらもまだ体は火照っており、深夜の風がちょうど良かった。

フラフラしながらもK男さん宅に到着して私はソファ、K男さんは布団に倒れ込む。
楽しかった余韻を噛み締めつつうとうとしているとふいにK男さんが起き上がった。

「そういやさ」

「はい」

「なんで付き合えないの?」

酔っ払って頭が回らず、まぁいっかーなんて呟きながら理由を話した。

ちょっとした事があって恋人らしい事が出来ない。
色々悩むのが嫌だ。
1人でいても楽しいから恋人なんていらない。

「あと、もしK男さんと付き合ってもまた離れられたら嫌ですしねー」

なんて笑いながら言うと、そうか、とだけ吐き出すようにK男さんは言いそのまま眠りについた。

翌朝。
ズキズキする頭と気持ち悪さに目覚めてしまい、空っぽの胃から何かが出ないかとトイレに閉じこもる。
一通りすっきりさせてから出ると、K男さんも起きていた。

のろのろと化粧をして帰る準備を整える。
そこから修羅場になった。

昨晩、K男さんはそこまで酔っ払っておらず私が断った理由について色々と考えたようだ。
寝起きが悪く、二日酔いになっている朝からなんでこんな事話さないといけないんだと若干イラつきつつもなんで恋人にならないのか、再度説明をした。

途中でそれでも食い下がらなかったので私はつい感情的になってしまった。

セックスもキスもしたくない。もう傷付くのはたくさんだ。トラウマが酷くなったらそれこそもう死ぬしかない。せっかくここまで普通に近付いたのに、また努力が水の泡になるのはごめんだ。
そもそも最初に拒絶したのはK男さんなんだからそのまま離れれば良かった話じゃないか。
こうやってまた会うようになったのも結局仕事でこき使いたかっただけなんでしょ?
まだ私を利用をしたいの?私はK男さんのそういう所が嫌いだ。
どっちにしろまた利用価値無くなったらどっかいくんでしょ。
それとも体?もう何年もやってないんだっけ。若い女がこんな所にいたらそりゃたまっちゃうよねー
そんなに利用したいなら子供でも引き取って奴隷にしたらいいんじゃないの。
K男さんなんて大っ嫌い。もう関わらないから。

泣きながら怒鳴った。
半分本当で半分嘘の気持ち。
言ってから後悔したものの、呼吸を荒くしながら荷物をまとめるとK男さんは罰が悪そうな顔をしてそのまま何も言わなかった。

仕事は入らず、水商売だけやっていた私は完全に昼夜逆転した日を送っていた。
K男さんの会社に入る前の生活に戻っただけだったので、ちらほら娯楽を楽しみつつお客様とお喋りして、お金を貰う。
そんな日々を送っている中、一つの着信が入った。

G男さんだった。
最近顔を合わせて無かったので飲みのお誘いかなーなんて思い、寝ぼけた声で携帯を耳に当てる。

「K男がいなくなった。心当たり無い?」

頭が真っ白になった。
何も言えずにいると、G男さんはそのまま続けた。

聞くと、誰よりも早く会社に来てるK男さんなのにいない。
とっくに出勤時間は過ぎて仕事用とプライベート用の携帯に連絡したものの、一切連絡が取れずにいる。
家にも行ったけどいなかった。

パニックになって何も言えずにいるとG男さんは冗談まじりに言った。

「もしかしたら死んでたりしてなぁ、ははっ」

一気に頭に血が上ってしまい冗談でもやめてください、と怒鳴ってしまった。
謝罪を受けると冷静になってきて私も謝り、ひとまず私からも連絡を取ってみるということで電話を切る。
電話帳からK男さんを見つけ出して通話ボタンを押すが、聞き慣れたアナウンスが流れるだけで繋がる事は無かった。

K男さんが行く場所。仲が良い友人。
思い浮かぶ限りに連絡をしたものの、K男さんの行方を知ってる人は一切いなかった。

G男に自分も連絡をとれなかった事を告げて色々と考える。
どこに行ったんだろうか。まさか本当に命を…
なんて考えてしまい、泣きそうになった。
悩んでる事も聞かなかったし、辛かった事も聞いたことがない。
私はK男さんを何も知らない。

それから20歳の誕生日がきた。
派遣と水商売をやりつつ、ダラけた日々を送っている。
K男さんとは連絡が取れなかったが、一方的に送れていたメールがエラーで返ってきたのでメアド変更をしてどっかで生きてると思う。
探す術が無くなったからもう出来る事は無い。

そして現在に至ります。

K男さんのことはちょくちょく思い出したりもするし、仕事の場所によってはK男さんの最寄り駅に近かったりして家まで行こうとか考えたりもする。
まだ好きなのかもしれないし、ただの情かもしれない。
それでも私の中ではもう終わった事として区切りをつけはじめてる。

出典:【画像うpあり】暇すぎるから今までの恋愛語る
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【出会い系】エッチなOLと掲示板を通じて出会った 【ビッチ】

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最初は別にエッチな性格のOLとは思ってなかった、ただ何となく掲示板で絡んだのがきっかけで
どんどん、そのOLと親密な関係になっていくわけですが…

まッ、ちょっと長くはなりますが、OLとどんな関係になったのかを見てみて下さい。

久しぶりに、昔よく使ってた掲示板サイトを覗くと、「26歳・OL、割り切った交際希望」とあった。
早速返事をすると、「ぜひお会いしたいです!」とのメールが返ってきた。
「最初はお話だけでもいいですか?」との問いかけに、いつものように「勿論いいですよ」と答えておいた。
内心はその気は全くなく、当然味見はするつもり満々であった。
 
数日後、駅前ビルで待ち合わせた。直前のメールで「申し訳ありません。
仕事の都合で1時間ほど遅れますね」と伝えてきたので「イイよ。慌てないで。ゆっくり待っていますよ」と優しく返信しておいた。
やがてグラマラスでエッチな体をオフィスの制服で身を包んだ清楚系のOLさんが近づいてきた。
そそられる体と制服に思わず自慢の極太は臨戦態勢に入った。「美奈子です、会社抜け出してきちゃいました〜」と明るい感じで声を掛けてきたので、私もためらうことなく「こういうお話しなので…部屋でゆっくり話しませんか」とすぐに誘うと「そうですね」と素直にラブホテルに付いてきた。
もうこれで味見OKと言うことである。

ベットに私は座り、美奈子は椅子に腰を掛けて向かい合いながら、付き合う上での条件を確認して、
そっとお尻に手を回し「ここにおいで」と誘うと、美奈子は一瞬ためらいを見せたものの、素直に私の膝の上に座った。
そっと抱き寄せキスをすると抵抗なく受け入れ、ディープキスに移っても自ら舌を絡めて応じてきた。
制服のブラウスのボタンを外すと、黒のレースで縁取られたブラが見え、Cカップの白い乳房が目に飛び込んできた。
それをそっと揉みしだき、すぐに乳首を探り当ててつまむと「あっ、んん…」と声を漏らした。
そのままおっぱいへの愛撫をしつつディープキスを続け、捲れあがったスカートの裾に手を忍ばせ、
太ももを押し広げると、これまたなんの抵抗もなく股を拡げ、ブラとお揃いのエッチな黒パンティがあらわになった。
美奈子のアソコの中心部にはもうシミが出来ていた。

OLの美奈子が裸になっている写真

「こんなに濡らして。イヤらしいOLさんだね」と言うと、「いやぁ〜、恥ずかしいですよぉ!」
と強く抱きついてきた。
そのまま押し倒し、パンティの上からワレメに沿って愛撫をすると「あぁ、イイ!気持ちいい!」
と声を漏らし、一段と濡れそぼってきた。スカートをまくり上げ、美奈子のパンティを取ると、
クロッチのところに粘液の盛り上がりがあり、そことサーモンピンクの淫口とが透明な糸が繋がっていた。
その淫口にも淫汁が溢れ貯まって垂れようとさえしていた。私は躊躇せずに、その淫口に吸い付き、
わざとジュルジュルと音を立てながら得意の舐め吸いを始めた。「いやぁぁぁ、汚いですよぅ!?
洗ってないのにぃ。ダメぇ!あぁ、イイ、イイ、気持ちいい!」と甲高い声を上げて、腰をグラインドさせ始めた。
美奈子のクリから淫口の周りそしてアナルまで丁寧かつ執拗に舐め吸った後、クリを舐め吸いつつ、
左手の人差し指と中指を淫穴に突き入れ、Gスポットをはじめ快感スポットへの指腹タッチ攻撃を始めると、
美奈子は悶え狂い始め「あぁ、イイ。あぁぁ、気持ちいい、はぁはぁはぁ、もっと、もっとしてぇ!」
と激しく腰を揺すり、愛液を飛び散らせて潮を吹き、右手で右の乳首を摘みクリクリト刺激を与えると、
「あぁ、ダメぇ。イクよぉ?イクよ!」と最初のアクメへと昇りつめていった。ガクガクと両足が痙攣し、
のけぞりながら余韻を楽しむ美奈子を上から眺めつつ、私は素早く服を脱ぎ捨て全裸になって、美奈子に覆い被さった。

OLの美奈子が裸になっている写真

髪を撫でながら「どう?これが欲しいかな」と私のいきり立つ極太を握らせると、
最初は力なく握っていたが「あぁ、大きい!!恥ずかしくなっちゃいますよぉ。」
と目を開き私を見つめながら握る手に力が入った。「欲しい?」と再び聞くと、
「うん」と言いつつ何度も頷いた。「脱ぎなよ」と促すと、力なく起き上がり、服を脱ぎ始めた。
手伝って脱がすと揉みし抱いたときにそのハリと弾力を感じていたが、胸は本当に崩れもなく美乳であった。
腰のくびれといい、私の大好きな張りのある大きな尻といい申し分のない体だった。
その後は69で互いの性器を舐め合い、美奈子に騎乗位で動くように言うと「着けてください…」
と小さな声で言うので、用意したコンドームを着けたが、窮屈そうなのを見て「ココ、本当に大きいよね」
と嬉しそうに言いつつ、自分で極太を掴み淫穴にあてがい腰を沈めていった。

「あぁ、きつい。この感じ、イイ!気持ちイイ!」と後はもう狂ったように腰を前後左右、
上下に打ち動かして、時折突き上げる私の突きに悲鳴を上げつつ、
何度も何度もアクメに達したのである。その後は正常位、バック、立ちバック
、座位と色々と楽しんだのは言うまでもなかった。このOLも最初からこうなることを予想してやって来ていたのである。
じゃなければ制服の下にあんな黒のイヤらしい下着はつけてこないだろう。
別れ際に「すっごくドキドキしちゃった、こんな気持ちイイSEXをしたのは久しぶり〜!」と抱きつきキスを求めてきた。
いい顔であった。美奈子が一段と可愛く見えた。

OLの美奈子が制服のままベンチで四つん這いになっている写真

その後日…美奈子と改めて挿入となったとき、「このまま入れてください。
ナマが欲しい。今日は…お願いします」と生入れを求めてきた。思う存分私の生入れを楽しませたのは言うまでもない。
「もう、ぜんぜん違う!?あぁぁぁぁあぁぁ、気持ちイイ!」と悶え狂ってくれたのは言うまでもない。
久しぶりにいい女と出会った。
最近では仕事そっちのけで、制服のままホテルでSEXをしたり、外で露出デートをしたり、
毎日抱いてとおねだりするエロいOLになっている。嬉しいことである。

出典:エッチなOLと掲示板を通じて出会った
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【友達】目覚め2【セフレ】

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先だっては突然のメールに丁寧な返事を書いてくださって、ありがとうございました。
SMに目覚めるきっかけ——
本当に人の数だけいろいろあるのですね。
サイトを見てまわるうち、まるで心の中を赤裸々に告白されている気分になりました。
多分、私も本当の意味でマゾだと思います。いくらかはここのサイトの告白にも似て、
いくらかはまるで違うもの。私の場合『見られること』がキーワードらしいのです。
理不尽に縛リ上げられ、恥ずかしい格好にされ——
隠すことのできぬカラダを必死によじらせる私は、無数の目に視姦されていって——
嬲るような、からかうような無数のまなざしに追いつめられ、昂ぶらされ——
しかもその視線は欲望に飢えた男の目でなく、どこか冷ややかな、女性の、同性の瞳。
ある意味、セックスよりもいやらしい焦らし責めを受けて。
そんなのだけでドロドロに感じさせられ、最後までいかされてしまう——
少し、変わっていますよね、私。
告白すると、私は、都内の私立女子に通っている女子高生です。
わりと有名なお嬢様系の小中高一貫ですが、ずっと共学だった私には慣れないことが

多いです。下から来た子はほとんど性について意識してなくて、私にとってはあまり
にあらわな世界というのか。
無造作な肌の露出や、女子高の校舎特有のあの甘酸っぱい空気というか。
苦手、じゃないんです。むしろ逆——ええっと。その。
つまり——
誤解をおそれずに言えば、私、女子校がだめなんです。
変ですよね。彼氏だって普通にいるって言うのに、いつだって一番いやらしい妄想の
中には、男性なんて出てこないんですから。

ところで質問です。
管理人さんは『縛りっこ』や『お仕置きゲーム』って、知っています?

                (許可を得て転載・名前その他、加筆修正済)

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

4年1組に上がってすぐの頃、クラスの女子の間で変な遊びというか罰ゲームが流行
るようになりました。
名前もそのまんま『お仕置きごっこ』。お仕置きを受ける女子はその日一日、背中で
両手を縛られちゃうんです。それもお昼休みや休憩のあいだずっと。もちろん授業中
はほどきますが、休み時間がくればまた縛られてしまいます。
休み時間中、食事も、おしゃべりも、教室の出入りもその格好でするしかないんです。
例外はトイレだけ。だから、友だちにくすぐられたり、給食を食べさせてもらったり、
抱きつかれてイタズラされたり、いろいろ恥ずかしい目に会います。
要領の悪い子が狙われやすいのか、当時の私もお仕置きばかりされる方でした。
「あ~あ、真理衣(まりい)言っちゃった~」
「言っちゃった~」
「へ、へっ? わ、私言ってない、モナカなんて言ってないってばぁ」
「由里“も仲”間に入れようよって言った」
「ヘリクツだぁー」
とかなんとか、おたおた否定しえいるうちに楽しげなクラスメイトに周りを囲まれた
私は両手を背中にまわされちゃって、そのままギュって縛られちゃうんです。道具は
たいてい体操服のハチマキとかで、重ねた手首をぐるぐる巻きにされたあとは固結び
で力まかせにギュウっと。頬が熱くなるやら、悔しいやら、手首だって痛いし、動揺
を男子に気づかれないようにするやらでせいいっぱいで——
このゲーム、3つのルールがありました。
その1、最初に宣言した上でオシオキされる子を選ぶこと。
その日の朝にNGワードを決めておいて、休み時間のおしゃべりで口を滑らせた子が
お仕置きをされます。だから、絶対安全な人なんていないんです。
その2、決して男子や先生に気づかれないこと。
もし男子に縛られていることがバレた場合、原因を作った子が次の日のお仕置き決定
です。本人のミスで気づかれたら、その子は次の日もお仕置きされちゃいます。
男子の中にも、うすぼんやり私たちの遊びに気づいている子はいるようでした。でも、
私たちは絶対、男子を仲間にまぜなかったし、何も教えなかったんです。
最後、自力で解けたらその子が次の『姫』を逆指名できること。
あ、『姫』ってのは男子に気づかれないための隠語で、オシオキされる女の子のこと
です。つまり縄抜けできたら立場逆転なわけです。
だから、休み時間中ずっと『姫』はモゾモゾして背中で手首を擦り合わせています。
逆に周囲の子は『姫』をくすぐったり、外を連れまわして『姫』が縛られた手を隠す
しかないようにしたり、いろいろと邪魔をしてきます。
イジメを連想するかもしれませんね。
でも、そういうのとは違うんです。むしろ逆。『姫』になるのは特別な扱い。
お仕置き中の子はみんなにちやほやされます。エッチないたずらをされることも多い
けど、つねに周りがその子を庇ってあげるからです。男子に気づかれたら大騒ぎされ
ますし、秘密を共有するもの同士、親密な連帯感ができていきますから。
「お外に行くよ、真理衣」
「ヤダ、ヤダったらぁ、初芽(はつめ)ちゃん」
自由を奪われている私と腕を組んでにんまりするのは、お仕置きごっこを仕切ってる
小田桐初芽(おだぎり はつめ)ちゃん。うっすらと浮かべる笑みがお嬢様チックで
ちょっと冷たそうな、私とは正反対のタイプです。私の苦手なタイプだと、クラスメ
イトはみんな知っています。
でも。
「恥ずかしいの、好きなくせに」
「‥‥」
まわりでわいわい会話している女の子をよそに、初芽ちゃんは私の耳元に口を寄せて
とろんとした声でささやくんです。横目でうかがう私にしか見せない表情、興奮して
かすかに紅潮した横顔に笑みを作って。
初芽ちゃんは、嬉しそうに、私の心を抉るように、言葉を続けます。
「真理衣も楽しもうよ、ね。今日もいっぱい虐めてあげるから、『お姫さま』を」
そして。
この甘い台詞を吹き込まれてしまうと、私はもう、なんだか自分が分からなくなって、
異様に胸の鼓動が早くなって、ただただ彼女の言いなりになってしまうんです。
かぁぁっと赤くなった顔をうつむけるのが私にはやっとで、どうにかコクリと頷いて。
勝ち誇ったように彼女は私を独り占めにして連れ出してしまいます。
なんで、こんな関係になってしまっていたのか、今でも不思議に思うことがあります。
私、初芽ちゃんには、ぜったい逆らえなかったんです。
ただ一人——
クラスの中で高飛車な空気の彼女だけが、本当は私と同じだって知っていたから。
そして、私と初芽ちゃんが『お仕置きごっこ』の草案者だったから。

             ‥‥‥‥‥‥‥‥

『お仕置きごっこ』って、あの年頃の女子にしては変わった遊びだったと思います。
そもそものきっかけは、体育の授業でした。
社会問題だった生徒の無気力に困った先生たちの試みの一環で、授業中遊んでいたり
課題のできない子が『罰符』として軽く手を縛られて見学させられたんです。これを
されるのはひどく恥ずかしいことで、みんな熱心に授業を受けました。
今だったらこんな措置、PTAで大問題になったでしょうね。差別につながる、とか。
——体育の苦手な子なんて特にそう。
当時の私は運動音痴だったので、よく、このルールに引っかかっていました。
クラスメイトがくすくす笑う中、名指しで前に連れ出され、手を結ばれる恥ずかしさ。
授業の罰は惨めなだけだし、のけ者めいてイヤですよね。
けれど、私はいつのまにか、そういう自分に変な感じを覚えるようになっていました。
この頃はまだ『お仕置きごっこ』なんてなかったのに、すでに私は見られる自分を、
恥ずかしい自分を過剰に意識するようになっていました。
そんなある日、授業で縄跳びを使った5人一組のダンスがあったんです。
私のミスのせいで放課後も私の組は居残りになり、できたら見せに来るようにと体育
館に残されました。その時の仲間の一人が、まだ親しくなかった初芽ちゃんでした。
何度も練習しましたが、私だけがミスの連発。しだいに皆のイライラがつのるなか、
まっさきに責めてきたのが初芽ちゃんでした。
「いい加減にして。次に間違ったら、真理衣だけ残して他の全員で先生に見せるから」
「そ、そんなぁ」
「真理衣、全然マジメじゃないんだもん。おんなじ所で失敗ばっか」
「私、一生懸命にやってるもん!」
「一生懸命って結果が出て初めて使うものよ。そんな言い訳サイテー」
実際、手を抜いてるわけじゃなくマジメに頑張っていたんです、だから体操着の腰に
手を当てて居丈高に文句をつけてくる初芽ちゃんの言葉はなおさら胸に刺さりました。
——だからだったのか。
「反省するつもりもないの。本当に真理衣だけバップ扱いで置き去りにしちゃうよ?」
「——すれば?」
この一言でプツンと切れた私は、つい口にしてしまったんです。
「真理衣、アンタ何言ってんの」
「小田桐さんに何が分かるの、偉そうに仕切ってサイアク。バップの方が楽だしねー」
本当に頭にきて、何もかも挑発的になっていたんですね。
居丈高に喋りちらす初芽ちゃんに腹がたって、顔を真っ赤にして言い返していました。
でも、その途端みんなの表情が変わったんです。
「ふぅん——みんな、今の聞いた?」
「聞いた。ちょっとアレだよ、そういう考え方って嫌な感じ」
「うん。真理衣がそんな風に思ってたなんて」
「だそうよ。希望通り真理衣はバップね。それも楽じゃない、恥ずかしいバップにね」
「な、なに、ちょっ、イヤァァ」
あっと思う間もなく、私のカラダはいっせいに女の子に押さえつけられていました。
あまった縄跳びが束ねられた後ろ手を痛いぐらい縛りあげて、それどころか腕やら胸
やらお腹にまでギュウギュウ縄跳びが食い込んで、体操着がよじれていって——
「足も縛らなきゃ。逃がさないように」
「真理衣なんか悪者につかまったお姫様みたい。すごいエッチな格好」
「やだぁ、やめてよぉぉ」
——縛られたカラダが軋んで、痛いくらいで、窮屈で。
——ぶわっと恐怖心さえこみあげるほど完全に手足の自由を奪われてしまって。
「うっわ、なんか本格的に仕上がってる」
「本格的ってなにのさ?」
「知らないよー、でも真理衣の見た目すごくない?」
満足げに皆が離れた時、私はもう自力じゃどうしようもないカラダにされてしました。
ただのバップじゃない。今なら分かります。後ろ手の緊縛を施されてしまったんです。
文字通り、胸に縄を這わせて、手首を引き抜こうとすると別の場所がギシって軋み、
子供の力じゃ脱出なんか不可能な、見た目さえかなりイヤらしい縛り。
ずるずる壁の鏡の前まで連れて行かれ、やっと自分の姿を見て絶句してしまいました。
「ほーら。真理衣エロすぎ。バップなんだから置き去り決定だね」
「う、ウソ、やだよぉぉ」
「じゃあね、反省しててねー」
バタバタっと走りだす彼女らにおどろいて、あわててカラダをくねらせて。
けれど、必死に上体をよじって皆を追いかけようとしても、ペタンと座り込んだ私の
足は左右別々にしっかり膝を曲げて括られちゃっていましたから。
バランスを崩してマットに頭から崩れこみ、顔を上げた時には誰もいませんでした。
一人っきりで、私はガランとした体育館に取り残されちゃったんです。
「う、ウソ」
呟くセリフが無情に響いて。
あの時の気持ち——思い出すだけで身震いします。
パニックめいた恐慌がうわぁんと心の底から湧いてきて、次の瞬間、私は全力で暴れ
だしていました。背中で縛り合わされた手首をぐいぐいひねり、上半身をピクピクと
のけぞらせて、懸命に縄抜けしようとしたんです。
けれど、全然ダメ。
カラダの動かせる場所ほとんどを弾力ある縄跳びが緊めあげていて、何もできません。
下手に身悶えると、胸の縛りから下へ伸びる縄がブルマのお股にすごく食い込んで、
結び目のコブが柔らかいところにみっちり嵌まってきちゃいます。
恥ずかしいところを刺激されるあの惨めさ。
お股の縄が本当にいやらしくて、表現できないけれど卑猥な圧迫感がすごくしました。
もがいた時に一番ビンカンに擦れるのもココで、感じたこともない微妙な感触で。
「ん——ん、ンッッ」
それでも、10分ぐらい私は半ベソで身悶えていたと思います。カラダをよじりすぎた
ものだから、体操服もブルマも汗で濡れちゃって、さらにエッチによじれてしまって。
そのうち、恥ずかしく鏡に映った自分自身を前にしているうち——
段々、カラダがおかしくなってきちゃったんです。
えっちっぽく全身にうねうねと縄跳びがまとわりついて、もがけばもがくほどカラダ
が締めつけられて苦しくて——なのにピリピリ肌が熱くしびれだして、そして、見る
からに恥ずかしい姿でいる自分自身から目が離せません。
特に、しっかりと縄跳びがブルマに食い込んでいるお股の辺りがしびれて変でした。
ムズムズする気分を噛みしめていると、しだいに肌がヒリヒリほてりだします。それ
がじんわりと、薄い膜を通したようになんだか気持ちがイイんです。
誰もいない、誰も助けてくれない体育館でもがいている事実が、ひたすらに体操服の
下で肌を熱くさせ、意識をぼうっとさせていって。
知らず知らず鼻にかかった声が、喉からこぼれだしていました。
「ン——クッ、んふ」
「あれ?」
「!!」
突然の声が、うっとりしていた私をはっと現実に引き戻しました。
いつのまにかクラスメイトが体育館に戻ってきていたんです。私を囲んでたちつくす
女の子たち。その中でも、初芽ちゃんは奇妙な目で私を見つめていました。
見られていた——あの時の、いいようのない恥ずかしさ。
こんな縛られたカラダでは反応一つ隠せないですから、赤くなって俯いてしまって。
「もう30分経ったの。分かっている?」
「う、あ——へっ、えっと」
「先生には話をつけたから、もう帰って良いそうよ」
しゃべるの初芽ちゃんだけ。クラスメイトは全員、黙って遠巻きのままです。
どこか冷ややかな、モノを見るような視線。
どうしようもなく見下ろされている感覚は私をおかしくさせ、すっかり着替えて帰り
支度の彼女らを前に縛られている事実はもどかしい疼きでカラダの芯を粟立たせます。
羞恥心でいっぱいの私のあごに、初芽ちゃんが指をかけました。
尊大で不愉快な態度なのに、逆らうことのできないカラダ。その現実にただただ意識
がくらみ、心臓がドキドキとなってしまって視線を合わせられません。
「反省した、真理衣? 次からはマジメにやってよね」
「う。うん、ご、ごめんなさい」
「どうしようかしら。縛ったまま、学校に置き去りしてもいいのよ?」
置き去り!
これだけでもカラダがおかしくなっているのに、置き去りにされちゃったら、私——
「真理衣、許して欲しいのね? 反省したのね?」
「——」
かろうじて頷く私。他の子たちがほっとしたように喋りだす瞬間、縄跳びを解くふり
をして、初芽ちゃんが私の耳たぶに耳を近づけました。
「——イケナイ子。感じてたんでしょう」
「!!」
はっと見開いた瞳で見つめ返した初芽ちゃんは大人びた妖艶な表情で、ほころぶ唇は
鮮やかな色に映えていました。
「縛られて感じちゃうんだもん、真理衣はイケナイ子なんだよ?」
『感じてしまう』という言葉の意味が分からず、なのに何か疚しい気持ちに煽られた
私は耳たぶまでカァッと火照らせてしまったことを覚えています。縄跳びを解きつつ
初芽ちゃんにあちこちカラダを撫でられて、ゾクゾク肌を走る刺激におかしくなって
しまいそうでした。
それからだったと思います。『お仕置き』ごっこがはやりだしたのは。
きっと他の女の子たちは、縛られたときの私の過剰な反応が面白かったんでしょう。
実際、縛られちゃうと強気な女の子が弱々しくなったり、急に甘えたがりになる子が
いたり、がらりと印象が変わるので面白かったのだと思います。
けっこう色んな子が「お仕置き」される中、初芽ちゃんだけはいつも虐める側でした。
頭の回転が速くてゲームでも罠に引っかからないんですね。
この時期、私はまだ初芽ちゃんが苦手でした。
『姫』として色々イタズラされる中でも、初芽ちゃんのが一番、カラダを火照らせて
しまいます。ぼんやり気持ちイイ感覚、けれどそれは得体の知れないものだったので、
私は初芽ちゃんを無意識に避けていたみたいなんです。
もやもやした快感の正体を私が知るのは、もう少し後のことでした。

               ‥‥‥‥‥‥‥‥

その日の『姫』は私で、一日中みんなに可愛がられていたのですが、体育の授業の後
放課後になって、初芽ちゃんが急に私を磔にしようと言い出したんです。
他の男子とかに見つかるのでは、とみんな口にしましたが初芽ちゃんは自信たっぷり。
みんなを説得して、体育館のすみにある肋木(ろくぼく)に私を磔にしはじめました。
「こ、怖いよ、初芽ちゃん」
「真理衣ウソばっかり。期待しているくせに」
わざとセリフであおる初芽ちゃんの指示に従って女の子たちはピンと左右に伸ばした
私の両手を横木にあてがい、手首から肘からコレでもかというぐらいにギッチリ縛り
つけていきます。手首のハチマキさえ指の届かない位置で結ばれ、その絶望感で頭が
クラクラしてきちゃうんです。
寄ってたかって磔にされて、気分はドラマの中の生贄のお姫様状態。
両足もぐいっと開かれ、床から2段も高い位置にかかとをのせたままガッチリと緊縛
されて、太ももや胸の上下も縄跳びで縛られて本当に空中に磔にされてしまいました。
目隠しされた後は、カラダをさわられたりくすぐられたり、服をまくられかけたり。
たちまちカラダが熱くなって、妙に艶っぽい声があふれちゃいます。
ひとしきりイタズラされて‥‥
気づいた時、人の気配が消えていました。
「真理衣」
「!」
初芽ちゃんだけが、私の耳もとで囁いています。
「他の子はみんな返しちゃった。私と真理衣の2人きり」
「え」
「ヤダな——そんな、怖がらないで。ひどいことしないってば」
急に私の口調に怯えがにじんだのに気づいて、初芽ちゃんはくすくす笑っています。
普段の高慢な印象とはまるで違う、普通の女の子みたいな雰囲気なんです。私の頬を
いつかのように撫でて、
「あのね——真理衣にだけは、秘密を話したいの」
「ひ、秘密って、初芽ちゃん、の?」
「うん。私と、真理衣だけの共通点。おんなじ趣味って言ってもいいかも」
喋りながら、初芽ちゃんは肋木を昇り降りして作業をしているようでした。やがて、
んっと声をあげて飛び降りた瞬間、私のお股にキュって縄が食い込んできて、喘いだ
私に初芽ちゃんの気配がにじりよってくると、ふうっと吐息が顔にかかり、目隠しが
外されて——
「私も、真理衣と同じ、なの」
その目隠しを口で咥えた初芽ちゃんが、頬を真っ赤にして私を見ていました。
あまりに間近。頬と頬がふれあう距離。
インモラルで、ひどく倒錯したイケナイ遊びが始まる予感。
見つめられた私までが理不尽なほどドキドキさせられて、彼女がずっと背中に回して
いる両手が、最上段の横木からロープが伸びて彼女の背中に消えているのが、そして
私の股縄の先がそのまま初芽ちゃんのブルマのお股に埋もれているのが、すべて気に
なってしまって。
ゆっくり、初芽ちゃんが腰をひねって半回転、くるりとターンします。
「ね。すごいでしょ」
「——ウソ」
思わず吐息をついた視線の先、そこには棒のようにそろえた後ろ手を手首と肘の上下
で何重にも固く縛られてしまった初芽ちゃんがいました。誰もいないのにどうやって、
それに、さっき私の頬を撫でた時は手が自由だったのに。
「すごいでしょ。自分で、体重かけて縛ってみたの。ドキドキするよね」
「で、でも、どうして?」
「真理衣と一緒だよ。私も、縛られるとドキドキして感じちゃうんだ、ホントは」
虐められたい側だったんだよ、なんて笑顔で言うんです。
私と同じように自由を奪われている——それだけで初芽ちゃんの姿はどこか眩しく、
えっちな大人の雰囲気がにじんでいて影響されてしまいます。
「昔から私ね、縛られてイジワルされる、そういう想像でドキドキしちゃう。だから
真理衣を縄跳びで縛った時、同じ仲間だって気づいたんだ」
「そ、そうなんだ」
「ねぇ、どう? 私も真理衣も、2人とも自力でほどけない格好だよ。どうしよっか」
「ほどけないって、え? そんな、だって初芽ちゃん自分で」
「うん。でも、段から飛び降りる時に輪っかが緊まっちゃうから、抜け出せないの」
顔を火照らせる初芽ちゃんは妖艶に腰をひねり、手首を見せてくれました。
カウボーイの投げ縄みたいに、引っぱると緊まる輪っか。
たしかにそれは、初芽ちゃんの後ろ手をぎゅうって捕まえてしまっていたんです。
つまり、彼女の姿が意味するところは——
「ど、どうしよう。私たち、ここから抜け出せないじゃない!」
「うん」
初芽ちゃんの言葉に私は震え上がりました。
びっちり磔にされてしまった私と後ろ手に自縛した初芽ちゃん。2人とも、相手の縄
をほどくことができません。私は初芽ちゃんの手首まで指が届かないし、彼女は高い
場所に磔された私の手首の縄を解けないんです。
「う、ウソ、初芽ちゃん、どうして——」
「どうする? このままずっといたら、恥ずかしい私たちの格好、全校生徒に見られ
ちゃうんだよ。もうどうしようもないんだ。ドキドキしちゃうでしょう?」
「そ、そんな——恥ずかしくて、死んじゃうよぉ」
叫びながら、彼女のセリフに私はグラリと揺さぶられてしまっていました。
ただでさえ縛られることがえっちで恥ずかしくて惨めなのに、2人してこんな格好を、
それもお股にまで縄を這わせて、いやらしいごっこ遊びでもしてるみたいな姿のまま
クラスメイト全員に、生徒にだって見られちゃう。
晒し者にされちゃう、なんて——
「やっ、いやぁぁァン」
みるみる心にこみあげてきたのは、甘美な絶望めいた、甘くとほうもない強烈な衝動。
ひたひたと全身を浸すその波はカラダをどこまでも火照らせ、体の芯に痛烈な快楽の
火を灯してしまったんです。
「もう、どうしようもないんだよ。私も真理衣も、恥ずかしいSM好きのマゾだって
知られちゃうんだから」
「そっ、そんなのダメだってば。ひどいよ、おかしくなっちゃうよ」
「真理衣も私も、みんなに虐められて、年中縛られて、イタズラされちゃうんだ」
「やだぁよぉ」
自分も顔を紅潮させ、うわずった声で初芽ちゃんが全身をギシギシ揺すりたてます。
自虐的な責めの台詞は私たち2人の意識をふらふらと陶酔させ、淫らな腰使いは短く
引き絞られた股縄を通して私のお股にもビリビリと激しい刺激を与え続けてきます。
私はきゃしゃな磔の四肢に力をたわめ、首をぶんぶん振り乱して。
初芽ちゃんは足をよろめかせ、固く緊まった後ろ手の縄尻と連結された股縄のせいで
しゃがむことも叶わず、体重のほとんどすべてでお股を虐めぬかれて。
「はっ、初芽ちゃぁぁん」
「ダメ真理衣、動かないで、腰振っちゃ、ダメェェ」
しだいしだいにオクターブの上がる嬌声は、幼いゆえに卑猥で淫らがましく響きます。
抜け出しようのない緊縛姿の少女らが奏でる輪舞。
体操服こそはだけていなかったものの、はためにはひどくインランな光景だったこと
でしょう。ぐるぐる巻きに磔された少女と、後ろ手に緊縛され吊られた少女。どちら
も縄抜けのすべを持たず、永遠に不自由な躯でもがき、悶え、汗で体操服を透けさせ、
ひくつく女の悦びに啼かされるほかないのですから。
ただただお互いの快楽にまきこまれ、翻弄され、恥ずかしいその感覚が女性としての
快感なのだとぼんやり意識させられながら、みるみる追い上げられていって。
「ッッッ、んんンンッッ」
「ま、真理衣ちゃァァ——ん、ンッ」
ぐっと息を詰まらせ、唇を噛みしめて、うなじをのけぞらせつつ昇りつめた私——
盛大に甘い悲鳴をまきちらしへっぴり腰でよろめいた初芽ちゃん——
対照的な仕草ながらも、縛り上げられた惨めな姿で、ブルマのお股を痙攣させながら
私たちは同時に幼い絶頂をきわめてしまっていたんです。
——しっかり横木に後頭部をぶつけて、たんこぶを作った私の方が損でしたけれど。

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

相手の行為によってイカされてしまった2人は、まだドキドキ心臓の脈打つ胸と胸を
ぴったりくっつけあったまま、たゆたうマゾの悦びの余韻にひたりきっていたんです。
手首を噛みしめる縛めはむしろギリギリきつくなるばかり。
緊縛を施され、体力を消耗した2つの裸身に縄抜けの余力などあるはずもなく。
「ど、どうするの。初芽ちゃん」
「どうしよう——ゴメンね、イキオイで真理衣を巻き込んじゃって」
激しい焦燥と快感にうるんだ瞳をからませる私たちを照らす夕陽が、ゆっくり傾いて
絶望の意味を私たち2人の心に刻んでいきます。
瞳はどこまでもすんでいて、皺になった初芽ちゃんの体操着とブルマの下にある肢体
はあまりにも扇情的でしたから。
なんとなく、頬がふれあい、鼻がかすめあって。
私たちは唇をふれあわせていたんです。

気づけばものすごいカミングアウトになってしまいましたね(苦笑。
あの時の体験は、今でもトラウマというか、心に刻まれている気がします。
結局、焦りに焦った初芽ちゃんと私の共同作業で、どうにか磔の片手が自由になった
のでムリヤリ縄抜けをしたのですが、全身ヘンなあざだらけになりました。
私が怒ったのはいうまでもないし、初芽ちゃんも心から反省して、それ以来、彼女と
私はひそかに仲良くなったんです。6年になってクラスが分かれ、おたがい中学受験
で忙しくなるまで、私たちの秘密の遊戯は続きました。時に『お仕置き』ごっこの形
をとって、時にお互いの家でじゃれあいながら。
それでも、あの体育館での記憶が一番あざやかで、衝撃のように残っています。
だから、でしょうね。
きっかけがこういう記憶で、しかも相手が女の子で、だからこそ。
今でもガランとした体育館にたたずむとき、ふとした体育の授業中に汗をかいて運動
しているクラスメイトに急接近された時、意味もなく色気を感じてまるで男性のよう
にドキリとしてしまうのでしょう。
どうしようもなくつやかかに感じてしまうんです。
ちなみに、今の私は体育会系のクラブに所属して、普通にこの性癖は隠しています。
それでも時折、指導してくださる先輩をまのあたりにしてドキドキしてしまったり。
もし、卑俗な百合小説さながらに迫られたり、冗談でもイタズラで縛られたりしたら、
私はどうなってしまうのか——ある意味想像するのが怖いです。
ひょっとしたら。
早々に彼氏を作ったのも、そのせいかもしれません。
一人自分を慰める甘美な妄想は、いつもあの時のことを私に思いださせてしまうから。
初めて自分の中の女を意識したとき、もっとも身近にいたのが同じ女性だったから。
ノーマルだった私は彼女に縛られ、虐められることを教わって初めて、被虐の悦びに
目覚めさせられたのですから。

——あの、無垢ゆえにいやらしい緊縛の味と、同じ女性に嬲られるカイカンに。

【友達】うたがい【セフレ】

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お盆が近いせいか、社員もまばらなオフィスはどこか空気がゆるんでいる。
窓の外には変わらぬ鈍色の街並み。
オフィスの向こう側では後輩OLが小声で私語を交わしていて(たぶん休暇の話だ)、
暇そうな課長も不機嫌そうにそちらばかり睨んでいる。
両隣の同僚は休暇中で、PCのモニタと書類の束がうまく私の姿を隠している。
誰も、私を見ていない。
「ンッ‥‥」
(あ、ダメ、声が出ちゃ‥‥)
ゾクンと四肢を犯しぬく被虐の波に鼓動が止まりかけ、私は大きく息を喘がせた。
どっと冷や汗が流れ、息を殺して肩でオフィスの様子をうかがう。
大丈夫。
まだ誰も、倒錯した私の遊戯に気づいていない。
ランダムな振動で淫らに私を責めたてるのは、浅ましく男を模したバイブレーターだ。
会社の制服の下、かすかに波打つスカートの奥にみっちり埋め込まれたソレは、細い
革紐でお股に縛りつけられ、どんなに腰をよじっても抜けないようにされているのだ。

肉の合わせ目から、愛液がにじみでる。
ヒクヒク咀嚼するクレヴァスのうるおいは、下着をはいていない今の私にとって致命
的だ。このままではあっというまにエッチなオツユがストッキングに浸透し、制服の
スカートに惨めなしみを作ることになる。
後ろ手に組んだ両手が痙攣している。
根元のスイッチを止めるだけなのに、自分の胎内に埋まったソレに触れられない焦り。
分かっている。どうにかしてこの姿から逃れないと。
なのに。
「ん、フッッ」
カチンと、聞きなれた残酷な施錠の音が、手首からじかに体の芯にまで響いてくる。
‥‥これで、本当に私は拘束されたわけだ。
「完成。もう逃げられないね、私」
そ知らぬ顔で書類に目を落とすふりをしつつ自分に呟き、私はゆっくりつっぷした。
いまや、キーボード上に置かれた小さなキーリングに私の命が委ねられているのだ。
(本当にやっちゃった‥‥私、仕事中にいけないことしてる‥‥)
うるんだ瞳で見下ろす私の、後ろ手の手首に‥‥
清楚な半そでの制服には似あわない無骨な革手錠がしっかり食い込んでいるのだ。
バックル部分に鍵までついたソレは、見ただけでマニアックな道具だとわかる淫靡な
光沢を放っている。
革と金属で織り成された、非力な女の力では絶望的な拘束具。
どうにかして机の上のキーリングで南京錠を外さない限り、私はバイブの責めからも
自縛したいやらしい姿からも二度と抜け出せないだろう。
「‥‥」
ひくりと不自由な手首が背中でくねる。
後戻りできなくなるこの一瞬、いつも突き上げる快楽でカラダがわれを見失っていく。
スリルと裏腹の快感をむさぼる、刹那的な快楽。
破廉恥な自縛を、仕事場に持ちこむ極限のスリルのすさまじさときたら‥‥
チラリ、チラリと肩越しに視線を落とすたび、とろけるような被虐の波が制服の下を
走りぬけ、子宮の底からカラダがキュウッと絞り上げられるのだ。
もし、カギを床に落としてしまったら。
もし、後ろ手錠から逃れる前に上司や同僚にこの姿を見られたら。
ほんの些細な行き違いで、すべては破滅につながるのだ。
自分で自分を追いつめていく恐怖が、ゾクゾクッとたまらない陶酔に変わっていく。
ひとしきりジクジクッとアソコが異物を食い締め、ショックめいた刺激が背筋を這い
上がった。
気持ちイイ‥‥こんな惨めなのに、追い込まれているのに。
職場で拘束されちゃってるのに‥‥バイブで、とろけさせられちゃってるのに‥‥
「あ、そ~なんだ。それでその日に」
「ちょうどツアーの申し込みに間に合ったんです。だからね‥‥」
はっと気づいた時、後輩たちのささやきはまだ続いていた。
一瞬、あまりの昂ぶりで意識が飛んでいたらしい。その事実に血の気が引いた。
急がないといけないのに、私、なんて危ういんだろう‥‥
ドクンドクンと早鐘のように心臓が跳ねまわり、下腹部だけがみっしりバイブを噛み
しめて濡れそぼっている。
肩を揺すり、私は薄れかけている理性を呼びもどした。
後ろ手に、足首に、股間に食い入る縛めをたしかめなければいけない。
「ん‥‥ンクッ」
不自由なカラダをキシキシ小さくくねらせ、私自身の施した大胆な拘束に酔いしれて
吐息をもらす。後ろ手の手錠同士をつなぐ鎖は椅子の背もたれに絡みつき、両足首も
キャスターの調節金具に固く縛りつけられて座面の裏から吊られたまま。
キャスター椅子と一体化した四肢は、もはや立ちあがる自由さえ奪われているのだ。
(まず、キーリングを‥‥)
上体を屈め、首を伸ばした私は唇をひらいてキーボードに口づける。
キーリングを歯で咥え、それを膝に落とす。その後、不自由な背中の両手をひねって
どうにかカギを手に取り、そのカギで南京錠を外す。それから革手錠をほどき、最後
に両足をほどいて、スカートがオツユまみれになる前に化粧室にかけこむ。
‥‥はっきり言って、かなり絶望的だ。
「ダメ」
小さく、ほんとにちいさく自分を叱咤する。
危うければ危ういほど、スリルを感じるほど、私のカラダは濡れてしまう。そうなっ
たらもう、自分をコントロールできないのだ。
いろづく喘ぎをひた隠し、前歯でキーリングを咥えたままそっとあごを引き戻す。
慎重に膝の上に落とさないといけない。弾んだキーリングが床に落ちたら、私は拘束
から抜けだす手段を失うのだから。腰を丸め、カギを咥えたまま顔を下げていく‥‥
「‥‥‥‥!」
と。不意に、圧力めいたものを感じてカラダが反応した。
まさか。
そんなはずはない、気づかれるはずがない。最初から、周到に時期を練っていたのに。
今日だって、目立たないように振舞っているのに。
なのに。
おそるおそる、顔を上げる。
‥‥自分のデスクから、かっと目を開いた課長が食い入るような凝視を向けていた。

横たわっていたカラダがガクンと弾む。
全力疾走の直後のように、呼吸も、鼓動も妖しく乱れきっていた。
バレてしまった‥‥全身が冷たく汗ばみ、パールホワイトの壁を睨みつづけている。
やがて、徐々に、私の意識が現実の輪郭を取りもどしてきた。
「課長‥‥私、天井‥‥ユメ‥‥?」
そう‥‥
ユメだった‥‥リアルすぎる、あんなの‥‥
悪夢だったと気づいても、なお全身の震えがとまらない。火照るカラダのあの疼きは、
まぎれもない、かっての私自身の経験の再現なのだから。
死ぬほどおののいた今のアレが、私の夢‥‥
「一人えっちの‥‥やりすぎのせい?」
広々した天井に問いかけてみる。答えなど当然ない。
静かなベットルームに、時計の針に交じって雨音が響いてきた。ザァァっと激しい音。
どうも、これに浅い眠りを破られたらしい。
ていうか、夢の中でまで、セルフボンテージしてよがってるなんて。私‥‥私って。
さりげなくネグリジェの中に手を差し入れ、そうして、やはり赤面してしまう。
反応していた私のカラダ。
無意識にもやもやが溜まっていたのかもしれないけど、それにしたって。
「‥‥あは」
誰に見せるでもなく、照れ笑い。
いい年した女が、少女のような夢を見るなんて‥‥はっきり言って恥ずかしい。
大きく寝返りをうって窓の方に向きなおると、横たわるカラダを包んだタオルケット
めがけ、にゃーと声を上げてテトラが飛び乗ってきた。ペットの子猫の瞳には、動揺
する主人の顔がどんな風に映っているのか。
「よしよし、おはよ」
「ニャー」
無邪気な子猫の顔に苦笑は深まるばかり。そして、夢と同じく空は鈍色に濁っている。
‥‥私の夏休みは、嵐からはじまった。
               ‥‥‥‥‥‥‥‥               
「ありえないよね、会社でSMなんて」
とりあえず点けたリビングのTVは、主婦向けのバラエティを流している。
お気に入りの場所らしい私の膝にじゃれかかるテトラに話しかけつつ、私はぼんやり
夢の余韻を味わっていた。慣れた小道具を手の中で転がし、もてあそぶ。
あれを‥‥あの異常な体験の意味を、私は理解している。
自分で自分を拘束し、マゾの悦びと脱出できないかもしれぬ絶望感に酔いしれる行為。
それはSMプレイの1ジャンル、いわゆるセルフボンテージだ。
一月前、アパートの前の住人、佐藤志乃さんに届いた小包が、すべての始まりだった。
私、佐藤早紀と同じ苗字‥‥小包の中からでてきた奇妙な革の衣装‥‥送られてきた
志乃さん本人の自縛シーンを映したビデオ。偶然が重なってセルフボンテージという
特殊な性癖に私は興味をもち、いつかそのしびれるような快楽に溺れてしまったのだ。
ネットを通してか、誰かに調教されていたらしい佐藤志乃さん。
あまりに耽美な姿は今も私を虜にしている。
自分自身に不自由な拘束を施し、人目にふれるリスクを犯す、そのたまらないスリル。
被虐的な陶酔に呆けつつ、必死に縄抜けの手段を試みるいじましさ。
誰に何をされても抵抗できない無力感。
そして、普通のセックスやオナニーではとうてい到達しえない、深すぎるマゾの愉悦。
けれど‥‥
セルフボンテージに嵌まる一方で、悩みもまた深まりつつあった。
「彼氏‥‥できないよね。こんな変なクセ、カラダにつけちゃったら満足できなそう」
「ミ?」
首をかしげる私につられてテトラも顔を傾ける。
会社のOL仲間はむろん、友人にも、周囲の人間にも、私は自分の性癖をひた隠して
いる。拘束されないと、縛めに酔わないと、感じることもできないカラダ。のぞんで
自分を作り変えたとは言え、やはり彼氏を作りにくいのもたしかなのだ。
「やっぱSM系の出会いとか、か‥‥でも、あれは怖いよね」
そうなのだ。
セルフボンテージにのめりこむうち、本当のご主人さまが欲しくなって奴隷になって
しまうなんて話はわりにSMの出会い系サイトでも目にする。
けど、たぶんそれは私の心の望みじゃない。
たとえば好きな人ができて私と一緒にいてくれた時、その彼氏がご主人様の顔をして
私を虐めてきたりしたら、
ちょっと目を閉じて、想像してみる‥‥けれど。
「うわ」
‥‥うん、ダメだ。なんかくつろげない。嫌な感じ。自分が自分じゃない気がする。
私にとっての自縛は、自分を安売りするものじゃない‥‥なんて言ったら、SM好き
な人間は怒るだろうか。私の中にはSもMも均等に存在しているのだ。自分を虐め、
溺れながらも見失わない。その危ういコントロールがまさに私をとらえて離さないの
だから。
それに、もし誰かに調教されるのなら、私がSMに嵌まるきっかけを作った志乃さん
のご主人さま以外は嫌だ。こっちの方が気持ちの大きな比重を占めてるかもしれない。
ふぅ。
朝から何を考えているんだろう、私は。
夢の余韻がじんじんとカラダに広がって、理性を取り戻すどころか、だんだん‥‥
「やだ‥‥なんか、したくなってきちゃった‥‥」
ボソボソと一人言。
休暇の初日から一人エッチをして過ごすなんて不健康な気がする。すごく、するけど。
ためらいがちな瞳を向けるその先には、拘束具や手錠、ボールギャグを収めた私専用
の調教道具入れがあり、私のカラダを欲している。幻想じみた、甘い誘惑。
さっきから手の中でもてあそぶソレに目を落とす。
使い込まれ、私の手首の味を覚えこんだ革手錠の光沢が、主を魅了していた。
いつものように、いつもの準備。
何度となく慣れているはずの行為なのに、心は逸り、体温がとくとくと上昇していく。
私自身のための縛めを一つ一つ用意していく、その過程自体が被虐的なのだ。
革の光沢と、金属のきらめき。
革手錠といっても警官の手錠とは形からして違う。中世の奴隷が手首にはめるような
頑丈な革の腕輪が短い鎖で繋がり、ベルトのバックル部分には勝手にはずせないよう
南京錠が取りつけられる。
悶える奴隷の汗を吸う革手錠は、小さいながらも無慈悲で、強固な牢獄なのだ。
「んぁ‥‥もう、こんなに」
ノーブラのブラウスの上からでも分かるほど、乳首がツンと勃ってきている。
今の私はだぶだぶのブラウスをハダカの上に引っかけただけ、まさに1人暮し仕様だ。
ルーズなこの格好は前の彼氏のお気に入りなんだけど、思いだすとブルーになるので
頭の隅に記憶を追いはらう。
どのみち、すぐに服なんか着れなくなっちゃうんだから‥‥
ゾク、ゾクッと走るおののき。
弱めにしたクーラーが、緊縛の予感にほてりだす肌をすうすうなでる。
服を脱ぎ捨てて裸身をさらけだし、全身にまとう拘束着を広げながらこっそり指先で
まさぐってみると、秘めやかなとばりはすでにじっとり潤いだしていた。
ベルベットのように柔らかく、危うい自縛の予感。
肌を食い締めるだろう窮屈な感触を思いだすだけで、どこもかしこも充血していく。
今日は‥‥どうやって、自分を虐めようか。
迷って、普段使うことのない麻縄の束を手にしてみた。ろうそくやムチと並んで縄を
使った緊縛はSMの代名詞の一つだろう。女性の肌を噛みしめる後ろ手の美しい緊縛
はMッ気のある子なら誰でも憧れるけど、一人きりのセルフボンテージで後ろ手縛り
はほとんどムリに近い。
それでも、縄が肌を締めあげていく淫靡さや独特の軋みは、たしかに心を震わせる。
「‥‥」
久々の縄の手ざわりに息をのみ、フローリングの床にペタンと座った。大きくお股を
開いて足首を水平に重ね合わせ、手際よく縛り上げていく。いわゆるあぐら縛りだ。
曲げた左右の膝の上下にも縄をかけ、太ももとふくらはぎが密着する体勢をとった。
思いきり裂かれたお股が、ひとしれぬ惨めさにぷっくり充血していく。
もちろん、期待にうるむクレヴァスへの責めも忘れない。
さっきの夢にも出てきた、革の固定ベルトを腰にまわした。垂直にたれるY字の細い
革紐を、お尻の方から下にまわしていく。谷間にもぐりきったところで一度手を休め、
小さな逆三角形のプラグを取りだした。
丁寧に口でしゃぶり、塗らしてからお尻の穴にあてがう。
「ん‥‥っッ」
つぷん。
お尻いじめ専用のアナルプラグが、きゅうくつな括約筋を広げつつ胎内に入ってくる。
マゾの女の子は、アヌスでも感じることがある‥‥ネットで仕入れた生半可な知識を
元に始めたお尻虐めの儀式は、いまや私をやみつきにさせていた。
ノーマルじゃない刺激とタブーが、入れてはいけない場所、感じるはずのない汚れた
場所に異物を挿入する背徳感が、たまらないのだ。
にるにると、意志に関係なく菊花が拡張されていく異物感。プラグが抜けないように
ベルトで押しこみ、お股をくぐらせていく。カラダの前でY字の部分を広げ、女の子
のとばりを左右にかきわけて革紐を食い込ませた。にちゃりと粘つく肉ヒダを奥まで
さらけだされ、恥ずかしさがカァッと肌を火照らせる。
「んあっ、ァァ‥‥」
顔を赤くしながら、私は充血した土手に埋もれる革紐をきゅうっと引っぱりあげた。
つっかかっていたお尻のプラグが根元までスポンと嵌まりこみ、くびれた部分を括約
筋が深々と咥えこむ。そのまま腰のベルトを固定してしまうのだ。
しだいに昂ぶる快感にせかされ、私は上半身にもどかしく革の拘束具を着ていった。
乳房の上下をくびり、腕とカラダを一体化させる残酷な上衣。
本来、佐藤志乃さんが着るはずだった縛めが私のカラダを這いまわる。わりと自信の
あるオッパイが革紐のせいでたぷんと大きく弾み、チリチリしたむず痒さが、拘束着
の食いこんだ肌をビンカンな奴隷のそれに作り変えていく。
最後にバイブのスイッチを入れてから濡れそぼった肉のはざまに深々と呑みこませ、
首輪から吊りさげた手錠に後ろ手を押しこんでいく。たどたどしく手錠の革ベルトを
絞りあげ、手首が抜けなくなったのをたしかめて、震える指先でバックルに南京錠を
嵌めこんだ。
カチンと澄んだ音色が、私の心をすみずみまで深く揺り動かす。
「ん、ンフゥゥッ」
完成‥‥
かってないほどハードで、ただの呼吸さえつらい自縛が私の自由を奪ってしまった。
これでもう、私は戻れない。逃げられない‥‥
自力で抜けだすしかないんだ‥‥
とっくにリング状の革の猿轡をかまされて声を失った唇が、甘い睦言をつむぎだす。
後ろ手緊縛の完璧さを感じたくて、私はギシギシと裸身を揺すりたてた。
「ンッ、くぅっン!」
とたんにミシリと裸身がひきつれ、革ベルトの痛みで全身が悲鳴をあげる。
ウソ‥‥どうして、予想より全然ヒドい、激しすぎる‥‥
首を突きだしたまま、私は焦りにかられて思わぬ呻きをあげていた。
あぐら縛りの縄尻が首輪の正面リングに短く結ばれ、もはや私は不自由な前かがみの
拘束された姿勢のまま、床を這いずることさえ不可能になってしまったのだ。
ぞくに海老縛りと呼ばれる、残酷な拷問用の緊縛。
その緊縛を自分自身に施してしまった今、下半身も両手も達磨のように軋むばかりで
なに一つ自由にならないのだ。この自縛姿から逃れるためには南京錠のカギを外し、
なんとしても後ろ手の手錠をほどかねばならない。
それが、唯一の望みなのに‥‥
今の私に、本当にソレができるのか‥‥
快感に理性が狂って、無謀なセルフボンテージに挑戦してしまったのはないのか‥‥
「にゃ、ニャニャ?」
いつになく興奮して室内をうろつきまわるテトラを見つめ、私はうっとり絶望感に酔
っていた。彼女の首輪から下がった小さなカギ。あれを取り戻さない限り、私が解放
されることはないのだ。
後ろ手のこのカラダで、一体どうすれば子猫の首から鍵を取リ戻せるというのだろう。
ブブブブ‥‥
必死に脱出プランを練る私をあざ笑って、バイブの振動はオツユをしたたらせるクレ
ヴァスをぐりぐりかき回し、残酷にも私から思考能力さえ奪いさろうとする。
あぁ‥‥
思いつきかけたアイデアがふつんと甘くとぎれ、私は淫らな吐息に溺れきっていた。
かって一度もしたことのない、ギリギリの危ういセルフボンテージ。
もはや、このステージから降りる道はない。
             ‥‥‥‥‥‥‥‥
静かに室内に響くのは、深く胎内をえぐりまわすサディスティックなローターの振動。
ふぅ、ふぅぅっと荒い呼吸が、リングギャグの輪の中からあふれでる。
「ンッ、んぐぅ」
すでに、自縛を完成させてから50分近くが経過していた。
いつもならとっくに甘い快楽をむさぼりつくし、おだやかな余韻にひたりながら手錠
の痕をさすっているぐらいの時間‥‥
緊縛されきった私の肢体は、座りこんだ場所からほんの1ミリも移動していなかった。
縛めを皮膚に食いこませたまま、自分の無力さにさいなまれたまま灼けつく焦燥感に
身を焦がすだけの、絶望しきった奴隷の終わり。
なのに容赦なくトロけきったマゾのカラダだけは、意志と無関係に昇りつめていく。
焦りが、おののきが深くなればなるほど、スリルは快楽の深みを増し、毛穴さえ開い
た裸身のすみずみまで、くまなく刺激を伝達していくのだ。
「ぐッ‥‥!」
口の奥まで咥えこんだ鉄のリングにぎりぎり歯を立てる。
何度となくわき上がる淫らなアクメを噛みしめ、共鳴しあう2本のバイブがもたらす
疼痛の激しさにだらだら涎をこぼしつつ、私は必死に汗をほとばしらせてイキそうな
カラダを押さえつけていた。
ダメ‥‥ココでイッたら、また頭がおかしくなる‥‥その前に‥‥
早くテトラから鍵を取り返さないと‥‥
「くぅ‥‥ン、ンンンっっ」
しかし。
やけになってギシ、ギシッと悶えても念入りに締めつけたベルトがゆるむわけもなく、
拘束具が軋み、あぐら縛りの縄とともに重奏を響かせるばかりだ。
縛り上げられた全身を、キリキリ苦痛めいた拘束の衝撃が走りぬけていく。どんなに
深くても、のけぞるような快感の波でも、私は海老縛りの苦しい格好ですべてを飲み
つくすしかない。
自分でコントロールできない、ムリヤリな刺激の狂おしさ。
べったりとフローリングの床にお尻を押しつけているせいで、いやでも括約筋の根元
までプラグが食い込み、前のクレヴァスに埋まったバイブと一緒に直腸を擦りあげて
しまうのだ。おぞましい器具をくわえ込んだ下半身の粘膜は、しずくをあふれさせて
ヒクヒク咀嚼を始めていく。
カーテンを開け放った窓からは、嵐の昏い街並み。
アパートの9階だけあって、周囲から私の部屋を覗けるビルはないだろう。それでも、
恥ずかしい自分を窓の外にさらけ出しているというスリルが、とめどなく熱いオツユ
をクレヴァスからあふれさせるのだ。
「んっ、んん~~~~」
ダメ、イク‥‥また、またいクッッ‥‥
高々と被虐の快楽に載せあげられ、目を見張ったまま、私は部屋の隅を凝視していた。
服のチェックに使う鏡に、今はそそけだつほど悩ましい、たゆんたゆんとオッパイを
揺らして、うるんだ瞳でSOSを訴えかける女性が映っている。どう見ても抜けだす
望みのない、完璧な拘束姿。腰をひねるたび、血の気を失いつつある後ろ手の手首が
視野に映りこみ、痛々しさをより深めている。
そして何より感じきっている証拠。
お股の下の床に、お漏らしのように広がる、透明な液体の池‥‥
ぶわっとトリハダが全身を貫いた。
これが‥‥AV女優みたいなSM狂いでよがるこの格好が、私の本当の姿なんて‥‥
ウソ、違うのに。ほんの少し、エッチな気晴らしが欲しかっただけなのに‥‥
「ぐ‥‥うぅ、うんっッンンッッ!!」
しまった‥‥思ったときにはもう遅かった。
エッチな姿を再確認したことで、理性でねじ伏せていた被虐の炎がむらむらと大きく
燃え上がったのだ。惨めで、エッチで、助かりそうもない私。恥ずかしい姿で、この
まま最後の最後までイキまくるしかないなんて‥‥
ゾクン、と律動が、子宮の底が、大きくざわめく。
ぞわぞわバイブに絡みつき、その太さを、激しい振動を、寂しさをまぎらわす挿入感
を堪能していた肉ヒダがいっせいに蠢きだし、奥へ奥へと引き込むようにバイブへと
むしゃぶりついていくる。
足の指が引き攣れそうな、とめどない衝撃と、めくるめくエクスタシーの大波‥‥
お尻が、クレヴァスが、シンクロした刺激のすべてが雪崩を打って全身を舐めつくす。
トプトプッと革紐のすきまからにじみ出るオツユの生暖かささえ気持ちが良くて。
びっしょり汗にまみれて魚のヒレのように一体化した上半身の縛めが、後ろ手に固く
食いこんでくる革手錠の吸いつきさえもがたまらなくよくて。
「ふごぉぉ!」
怒涛のような昂ぶりに押し流され、メチャクチャになった意識の中で泣きわめく。
もうイイ。もう刺激はいらない。イキたくないのに。
良すぎて、視界が真っ白で、もう充分だよ‥‥腰が抜けるほどイッたんだから‥‥
イヤァ‥‥許してェ‥‥
壊れちゃうよ、こんなの、知らなかった‥‥
よがってもよがっても、何度高みに達しても、すぐにその上をいく快楽の大波にさら
われていく恐ろしさ。尖りきった乳首から母乳でも噴きだしそうなほど、オッパイが
コリコリにしこりきって、その胸をぷるぷる震わすのが最高の快感で‥‥
あまりの拷問に、瞳からじわりと苦しみの涙が流れだす。
背中を丸め、何も出来ないままブルブルとゼリーのように拘束された裸身を痙攣させ
つづけて‥‥エクスタシーの、絶頂の頂点に上りつめた私は、さらに深い奈落の底へ
転がり落ちていく。
               ‥‥‥‥‥‥‥‥
ゆっくりと、失っていた意識が浮上してくる。
カラダがほてって熱い。それになんだろう。疲労がぎしぎし溜まっていて‥‥
「‥‥!」
そこでようやく、頭が元に戻った。
変化のない室内。乳房の先が太ももに触れるほど折りたたまれた海老縛りのカラダ。
私は、私自身の流しつくした汗とオツユ溜りのなか、固く後ろ手錠に縛められた姿勢
そのままで座りこんでいた。
と同時に、ヴィィィィンと鈍く痛烈な衝撃が咥えこんだクレヴァスから広がってくる。
前と後ろから胎内を掻きまわすバイブが、再び快感を送り込んでくるのだ。
あの、めくるめくエクスタシーのすばらしさときたら。
このままイキまくって、二度と拘束姿から抜けだせぬまま衰弱死してしまってもイイ
‥‥そんな呆けた思考さえ浮かぶほどの、甘美で残酷なマゾの愉悦。
どうしよう‥‥どうしよう、本当に拘束具がほどけない‥‥
このままじゃ、衰弱して私倒れちゃう‥‥
急速につきあげた焦りをぐいとねじ伏せ、時計に目をやる。気絶したのは5分足らず。
単調なTVの音声だけが、室内を支配している。
テトラはどこにいるの?
とっさにそれを思った。彼女の首輪につけた南京錠のカギ、あれがなくなったら私は
終わりなのだ。外に行ってしまわないように、窓などの戸じまりは念入りにしてある。
どこか他の部屋にいるはずの、あの子を見つけ出さないと。
「ンッ」
ぐいっと足に力を込め、膝をいざらせる。
なにも起きなかった。
背中を丸めたまま仏像のように固まったカラダは、濡れたフローリングの床でかすか
に揺れただけだ。やはり、どうカラダをよじらせても、移動などできるはずもない。
顔からつっぷして這いずるのは、ケガをしそうな恐怖があった。
背中高く吊りあげてしまった後ろ手錠も、自由な指が動かぬほどしびれきり、見込み
の甘さを無慈悲なカタチで突きつけてくるのだ。
やはりムリなのか、テトラが戻ってくるのを待つしか‥‥
「‥‥ッッ!」
こみあげた甘い悦びがふたたびカラダの芯に火をつけ、私は舌をならして喘いでいた。
もうダメだ、もう一度あれを味わって理性をとりもどす自信は、私にはない。
けれど次の瞬間、アイデアが頭をよぎっていた。
「‥‥ッッ」
舌を鳴らし、喉声をあげてみる。テトラを呼びよせる時、私はよく舌を鳴らしていた。
運悪く子猫が眠ったりしていなければ、きっと。
「ニャー」
「ん、んんーーッ」
ふにゃっとした顔でベットルームの方から這い出てきたテトラに、私は踊りあがった。
子猫の首にはカギが下がっている。そう。そのまま私の方に来て、その鍵を早く‥‥
ピンポーン
大きく鳴りひびくドアチャイムの音が、一人と一匹をすくませた。
「佐藤さーん、お届けものでーす」
ある事実に気づき、猿轡の下でさぁっと顔があおざめる。
致命的なミス。
スリルを増すため、私はわざと、玄関のカギをかけていなかったのだ。
凍りついたまま、息もせずに様子をうかがう。
ドアが開いていると気づけば、宅配業者は入ってくるかもしれない。玄関からは扉を
一枚はさんだだけ、首を伸ばせばリビングの私は丸見えなのだ。
チャイムが興味をひいたのか、近寄ってきていたテトラの足も止まっていた。
かりに宅配業者が部屋に入ってこなくても、開けたドアからテトラが外に出て行って
しまったら‥‥
ギシギシッと食い込む縄の痛みが、革の音が、気づかせてしまうのではと恐ろしい。
冷や汗が、前髪の貼りついた額を濡らす。
「‥‥ッッ」
息をひそめてテトラに舌打ちで呼びかけながら、私は焦りとうらはらのマゾの愉悦に
犯され、気も狂わんばかりにアクメをむさぼりつづけていた。踏み込まれたらなにを
されてもおかしくない。フェラチオ用の猿轡を嵌められて発情しきった緊縛奴隷を前
に、彼は私になにをするのだろう。
どれほど犯され、嬲られようとも、私は這って逃げることさえ叶わぬカラダなのだ。
テトラが私の鼻先で首をかしげた時、ドアノブの回る音がした。
ウソ、駄目、ドアが開けられちゃう‥‥ホントに、すべて終わっちゃう‥‥
「‥‥‥‥ッッ」
ガチャリと言う音に息をのみ、目をつぶる。
だが、聞こえてきたのは業者の驚きの声ではなく、すぐ隣に住む好青年の水谷君の声
だった。
「なんです‥‥は? ドアが? 佐藤さんの。はぁ」
「‥‥」
「あぁ、佐藤さんはさっき出かけましたよ。近所のコンビニかなにかだと思いますが」
「‥‥」
「いや、開いてるからってドア開けちゃうのはマズいなぁ‥‥おたく、どこの宅配屋
さんですか?」
苛立っているような業者と会話を交わしていたが、やがて代わりに荷物を受け取って
おくことになったらしい。荷物を受け渡す音がきこえ、そして玄関は静かになった。
「ハァ、ハァ、ハァ‥‥」
信じられないほど呼吸が乱れきっている。
ぽとぽとと、熱くたぎったオツユが太ももを伝っていく感触。ビクビクンとさざなみ
のように震えの波がくりかえし押し寄せてくる裸身。
私、2人の会話を聞きながら、何回もイッチャってた‥‥‥‥
ぞくん、ぞくんと、拘束具に食い締められた裸身がおののきをくりかえす。折りたた
まれた両足も、何重にも縄掛けされた足首さえも、痙攣がおさまらないのだ。
革手錠を嵌められ、高々と吊り上げられた無力な後ろ手がのたうち、カチャカチャと
冷たい音を奏でて背中で弾んでいる。
見られるかも‥‥犯されるかも、本当にそう思って‥‥
怖くて、絶望に溺れるのが、最高に気持ちイイなんて‥‥まだカラダが狂ってる‥‥
うあぁ‥‥来るッ、またお尻が変になるぅ‥‥
かろうじて、ほんの首の皮一枚の危うい局面で水谷君の誤解が私を救ってくれたのだ。
「みゃ?」
うっとり陶酔し、バクバク弾む動悸をかかえて浅ましく裸身をよがり狂わせる私の姿
がどう見えたのか、テトラは楽しそうに私のおっぱいにしがみついてきた。
ツプンと食い込む、肉球の下の小さなツメ。
残されていた最後の理性が薄れ、痛みがめくるめく快楽をよびさます。
絶息じみた喘ぎ声を残して、私ははしたなく、深く、長く、アクメをむさぼっていた。

このとき、私の胸に一つのうたがいが浮かんできたのだ。
              ‥‥‥‥‥‥‥‥
907号室に住んでいる大学生、水谷碌郎(みずたに ろくろう)。
隣人である彼は、朝のゴミ出しや帰宅途中によく一緒になる、すがすがしい年下の好
青年で、ゴミ出しにうるさい階下の吉野さんなどに比べたらはるかによき住人だ。
しかし‥‥思い返すと、気になることはいくつかあった。
たとえば、いまでも私は自縛しての危うい夜歩き、露出プレイを行っている。
志乃さんのプレイほどではないけど、リスクを犯せば犯すほどマゾの官能は燃え盛り、
全身がアクメにとりつかれたかのように打ち震えるのだ。人に見られ、脅され、犯さ
れたら‥‥残酷なファンタジーが私をドロドロに焦がしていく。
だからこそ、私は他人の生活パターンに敏感になっている。なのに、たいていの住人
の生活パターンが見えてきた今でも、彼だけはまるで分からないのだ。
初めての自縛も、きっかけは彼だった。冗談半分で後ろ手錠を試したときに訪問され、
冷や汗をかいて応対するなかで自縛のスリル・快感を思い知らされた記憶がある。
身近なようでいて、どこか水谷君は謎めいているのだ。
ついさっきの出来事はどうだろう。
私は朝からずっと家だったのに、『コンビニでは』と断言した水谷君が宅配業者を引
き止めてくれた。そのためだけに廊下に顔を出した彼が、かろうじて私を救ったのだ。
‥‥そんな都合のイイ話があるだろうか?
論理的じゃないし、私の発想は飛躍しすぎかもしれない。しかし。
まるで、水谷君の行動は「奴隷」を守る「ご主人さま」のように思えないだろうか?
(バカみたい。考えすぎよ)
疲れた頭で思う。思うのだけど、けれど‥‥
こうして、水谷君から渡された小包の、その中身が私の動悸を激しく煽りたてるのだ。
『佐藤さん、夏休みなんですね』
小包をわたしながら、にこやかに彼は微笑んでいた。
『今年は冷夏ですし、あまり海とか遊びに行く気分なんないすよね』
ええと答えると彼ははにかみ、雰囲気の良いバーが最近駅前にできたので、誘っても
いいかと声をかけてきたのだ。その姿は少し大胆になった自分にまごつく青年という
水谷君のイメージそのままだったのだけれども。
(分からない、私には)
以前にもこんなことがあったはずだ。きわどい自縛の直後に水谷君が小包を持ってき
て、そそのかすような背徳的な中身に釘づけになった記憶が。
どうして、こうもタイミングが良すぎるのか?
セルフボンテージにはまっていた前の住人、佐藤志乃さんあてに届く淫靡な小包。
「‥‥ケモノの、拘束具」
口にしただけでゾクゾクッと惨めったらしい快楽の予感が背筋を這いあがってきた。
膝で丸まるテトラに目をやって身震いし、逸る胸をおさえて指をのばす。
猫耳をあしらうカチューシャと一体形成になったボールギャグ。
犠牲者を四つんばいに拘束する残酷な手足の枷。
ローター入りのアナルプラグをかねた尻尾が、私を誘うかのように光沢を放つ。
中身は、奴隷を4つんばいの獣に縛り上げるための、マニアックな拘束具だったのだ。
              ‥‥‥‥‥‥‥‥
コツ、コツと足音が近づいてくる。
自縛から抜けだす手段を失い、私は四つんばいのまま、震える裸身を縮こめていた。
逃げ場もない。拘束から逃れる手段もない。なすすべもなく震えているだけ‥‥
階段を上がりきった足音が、エレベーターホールに入ってきた。
見られた‥‥
すべて終わりだ‥‥私、もう‥‥
悲鳴をあげることも出来ず、バイブの律動に身を捩じらせて耐えるだけの私。
つぅんと、甘やかな後悔が背筋を突き抜けていく。
静かに私の正面にやってきたその人影は、しかし驚きの色もなく声をかけてきた。
「‥‥‥」
その声。柔らかい声。
はじめてなのに聞き覚えがある、どこか懐かしい、待ちわびたそれは。
間違って‥‥ううん、あるいは意図的に、かって佐藤志乃さんが住んでいたアパート
にみだらな器具やビデオを送りつけてきた人物。志乃さんを調教していた、ご主人様。
きっと、このままこの人に飼われるなら。
もう逃げる必要なんて、隠す必要なんてないんだ‥‥
がばっとベットから飛び起きるのも、一瞬現実が混濁するのも昨夜と同じ。
二晩続けての、じっとりぬめる奇妙な悪夢。あまりにもリアルで生々しい、手ざわり
さえ感じられそうな夢の余韻に、不安さえ覚えて私はじっと天井を見つめていた。
すでにほの明るいカーテンの外。
これはいったい‥‥予知夢か、警告か、何かなのだろうか?
ぼんやりしているところへ、電話がかかってきた。
「高校時代にも一度、授業の一環でドラクロワ展を見に行ったことがあったわ」
「じゃ、早紀さんにとっては二度目の出会いなんですね」
電話は後輩OLの中野さんで、誘われるまま2人で美術館に行ってきた帰りだった。
表層的なつきあいの同僚ばかりが多い中、大学時代のように本当に親しくできるのは
彼女を含めた数人程度だ。
「でもいいの? せっかくのチケット、彼氏と行った方が良かったんじゃない?」
「駄目なんです。あの人、からきし芸術音痴で‥‥」
それに彼とは昨日会いましたし、そう言って目を伏せる中野さんの、むきだしの腕に
かすかなアザを見つけ、私はひそかに口元をゆるめてしまう。
「ふふっ、中野さん、また手首にアザつけて‥‥相変わらず、SM強要されるの?」
「あ、いえ‥‥違いますよー」
軽いイジワルをこめて話をふると、彼女は面白いほど赤くなった。
「その、私も少しは、いいかなって思うようになって。縛られるのだって、慣れたら
彼、優しいですし」
「あらら、ごちそうさま。一人身には切ない話題ね」
「早紀さんこそ、最近どんどんキレイになってます。実は彼氏いたりしません?」
「いたら私ものろけ返してる」
笑いつつ、ふと頭に浮かんだ水谷君の顔に、私は動揺しかけていた。
いつから恋愛がこんなに不自由なものになってきたんだろう。
ただ素直に、好きとか一緒にいたいとか、そう思うだけの恋愛ができない。良さそう
な異性がいても、まず相手の職種や年収に意識が行ってしまう。
ある意味当然だけど、OLも3年目だし先を見すえないと‥‥なんて思ってる自分が、
時々本当にうっとうしいほど重たく感じてしまうのだ。
水谷君だって、今までなら決して悪い相手じゃないはずなのに‥‥
「あ、やっぱ気になる人いるでしょう」
「え。え、えぇっ?」
のけぞって思わず後悔する。珍しく、受け身な中野さんが目を爛々と光らせていた。
この子、こんなカンがよかったっけ‥‥悔やんでも後の祭り、だ。
結局彼女に迫られて、普段と逆に水谷君のことを根掘り葉掘り聞きだされてしまった。
彼女自身の結論はシンプル、気になるならつきあってみればいい、だ。
打算や損得抜きの恋愛も良いじゃないか。アパートの隣同士ってのはあまり聞かない
けど、だからって別れる時のことまで最初から計算する恋愛はないんだから。
それだけなら彼女の言うとおり。
‥‥例の、あの小さなうたがいと疑問さえなければ。
「志乃さんのマスター‥‥」
呟いて、ベットに転がったまま天井を見上げる。
年下の彼。さわやかでちょっと虐めがいありそうな男の子。誘われて悪い気はしない。
だけど、もし彼が、私の探しているご主人様、佐藤志乃さんを調教していたマスター
だとしたら‥‥
彼は、ささやかな手違いで、私の人生を狂わせてしまった憎むべき男なのだ。
それとなく間接的にほのめかされ、そそのかされ、いつか私はどうしようもないマゾ
の奴隷にまで堕ちてしまった。セルフボンテージでどうしようもなく躯を火照らせる、
ヒワイな躯に調教され、開発されてしまったのだ。
だから、もしご主人さまに会えるなら私はなじってやりたいのだ。こんなにも人一人
を変えてしまった彼の手違いを。その残酷さを。
そして、意識もなくなるほどドロドロに、深く、ご主人さまに責められたい‥‥
「‥‥ッッ」
トクンと胸が波打ち、カラダがうずく。
ありきたりなSMのご主人様なんていらないのだ。そう‥‥あの人以外には。
水谷君がその彼なら、尽くすべき相手なら、私は今すぐにでも捧げられるだろう‥‥
だが彼が本人だと、どうやって確かめうるというのか。
推測だけを頼りに真正面から切りこんで聞くことなど、できるはずもないのだ。
堂々巡りの思考をたちきり、送られてきた小包に目をやって、うずきだす息苦しさに
私は目をつむった。
軽い興奮に寝つかれず夜食を買おうと外に出たところで、夜のこの時間には珍しく水
谷君に出会った。話を聞くと、バイトをしてるらしい。
「いつも夜にシフト入れてる友人が夏休みとってて、一週間だけ俺が入ってるんです。
しばらくは帰宅も午前の1時、2時ですよ」
「そうなんだ、頑張ってね」
お盆をひかえた帰省のこの時期、人の減ったアパートの廊下は怖いくらいに静かだ。
このさわやかな青年が、本当は私の主人様なのだろうか?
奇妙なやましさがこみあげ、目を合わせていられない。うつむいて通り過ぎようとし
たとき、彼が呼びとめた。
「お休みの間、早紀さんはどこか旅行とか行かれます?」
「ええ、あさってから、大学時代の仲間と」
国内でゆっくり避暑にでも行こうかという話がある。
そういうと、彼はゆっくり笑った。
「そうですか。じゃ、今日明日中に急いで小包の中身を味あわないとダメでしょうね」
えっ‥‥?
小包って‥‥獣の拘束具‥‥
虚をつかれて息を呑む私に、水谷君はそのまま告げた。
「『生もの、お早めに』って、貼ってあったじゃないですか‥‥小包の、中身」
あまったら、おすそ分けしてくださいよ‥‥
彼が部屋のドアを閉じた後も、私は壊れそうな動悸を抑えこむのがやっとだった。
ゾクン、ゾクンと下半身がおののいている。
あまりに意味深な言葉の意味。それが、分からぬわけなどない。

私、いま、ご主人さまに直接、命令されたのだろうか‥‥?
             ‥‥‥‥‥‥‥‥
コンビニから戻った私の呼吸はさっき以上に動悸でうわずり、なにを買ったかも分か
らないほどだった。くりかえしくりかえし、水谷君の台詞がりフレインする。
(一週間だけ、深夜のバイトを入れた‥‥)
(今日明日中に味わってみないといけないでしょう‥‥)
わざわざ予定を教えてくれた彼。この一週間はアパートの人も少なく、ちょうど自縛
した私が夜歩きする時間帯が、彼の帰宅と重なることになる。
『今日明日中に味わいなさい』‥‥命令調ともとれる、あまりに意味深な啓示。
もし彼が私のご主人さまで、私が気づいたことを知って言ったのなら。
私の、私自身の調教の成果を見せろというのなら。
‥‥つまりセルフボンテージを施した、恥ずかしい私自身を見せろということなのか。
緊縛された無力な姿の私と、ばったり出会うことを望んでいるのか。
「‥‥いけない。なに妄想してるの」
はっとわれにかえって呟く。
興奮しすぎるのは、セルフボンテージを行ううえで致命的だ。いかに酔いしれても、
最後は自力で束縛から抜けだすしかない。ムチャな自縛は怪我や事故につながりかね
ないのだ。
だいたい彼が、水谷碌郎が志乃さんをしつけたご主人さまかどうか断定できないのだ。
とはいえ、彼の一言が大きな刺激になっているのも事実だった。
普段より何倍も緊張に踊る私の心。今ならはるかにスリリングで、興奮できる自縛を
楽しめるに違いないのだ。
どのみち、送られてきた器具はいつか必ず使うのだから‥‥
「‥‥」
ゆっくり、動悸が静まっていく。いや。静まるというのは間違いだ。相変わらず高い
テンションのまま、気持ちがゆっくり波打っているのだ。
体の芯から広がり、指先のすみずみまで広がっていく甘い被虐のさざなみ。
火照る自分のカラダがいとおしいほどに、気持ちが柔らかい。
「明日。明日の、夜に」
小さく呟いて、淡いランプに照らされたリビング中央の箱を、私はそっと撫ぜた。
今までとまったく違うタイプの拘束具に、心が逸り、想像だけがあわあわと広がる。
ケモノの拘束具には、はずすための鍵がなかった。
形状記憶合金を使った、ケモノのための手枷と足枷。強靭な革を丸く手袋状に編み、
袋の口に手枷がわりの合金の輪がはまっている。
お湯につけてあたためると開き、その後常温でゆっくり元に戻る仕掛けらしい。
いわばカギのない錠前つきの、危険な拘束具なのだ。指先まですっぽり覆うこの手枷
を身につけたら、ふたたびお湯につけぬ限り、決して外すことができない。
奴隷自身にはどうしようもない不可逆性。
初めての拘束。初めての邂逅。危うい罠から、私は逃れることができるのか。
それとも‥‥
今度こそ、奴隷として、囚われてしまうのか。
目が覚めた時すでに日は高く、肌を灼く夏の日差しでベットルームを照らしていた。
ひざびさの、じっとり粘つく夏日になりそうだ。
「‥‥ッッ」
眠りとめざめの気だるい境界線で寝がえりを打ち、シーツをぎゅっと膝でからめとる。
今日、これから行うセルフボンテージのことをまどろみつつ思い、無数の泡のように
生まれては消えていく小さな期待をしみじみと噛みしめる。
「‥‥ね、テトラ」
いつの間にか、私の枕元に丸まっていた子猫に鼻を擦りつけて呟いた。
「私、お前と同じになるんだよ、今日は」

シャワーを浴び、ほてった全身を冷やしていく。
余りもので冷製パスタを作り、ブランチをすませた私は、小包の中身をじっくり点検
することにした。手枷、足枷、ボールギャグ‥‥一つづつ点検していく。
「‥‥」
金具の構造や感触を調べれば調べるほど、脈拍が速く、不自然になっていく。
これは‥‥一度のミスですべてを失う、危険な拘束具だ。
手首が肩に触れるほどきつく折りたたんだ両手と肘を筒状のアームサックで絞りあげ、
金属のリングで固定する手枷。しかも、手枷は指先までを包みこむミトンタイプの革
手袋と一体化している。
一度手を入れてしまったら形状記憶合金の枷が手首に食い入り、立ち上がれないのは
当然、指を使った作業さえできなくなる。
つまり、ふたたびお湯にひたして鉄の枷を開かないかぎり、拘束されてしまった私は
ドアのノブをつかむことさえ、いや、万が一の時に刃物で拘束具を切り裂くことさえ
不可能になるのだ。
‥‥これがどれほど危険なことか。
給湯器で調べてみたが、ひたすお湯が39度をきると枷は開ききってくれない。
たとえば、脱出のために用意したお湯を、こぼしてしまったら。
何らかの時間のロスで、お湯が冷めてしまったら。
ふせぎようのない些細なアクシデントさえ、致命的な事故につながってしまう。そう
なれば二度と、私は自力では拘束をとけなくなってしまうのだ。
そう、誰かの手でも借りない限り。
「‥‥‥‥」
‥‥
無力に打ち震え、廊下の隅で丸まっておびえる全裸の私。
水谷君が、ケモノのように自縛した惨めな私を見下ろし、汗だくのお尻を平手で撲つ。
首輪を引きずって私を連れ込み、そうして人知れず私は監禁されてしまう‥‥
私はただ、彼に飼われるだけのペットになるのだ‥‥
‥‥‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥
かくんと膝が力を失い、白昼夢がさめた。全身がじくじく疼き、わなないている。
何を‥‥なにを、期待しているの、私は、心の底で‥‥
ぽたり、と何かが手の甲にしたたる。
充分にクーラーの効いている室内で、私は玉のような汗を浮かべていた。
              ‥‥‥‥‥‥‥‥
久しぶりに夏をふりまいた夕日の残照が、のろのろとビルの谷間に沈んでいく。
空気だけはなお熱く、熱帯夜を予感させる湿り気だ。
夕食はうわのそらで、震える手で何度もフォークを取り落とした。
テトラにも異様な興奮は伝播してしまったらしく、今日はしきりに毛を逆立て、私の
膝にしがみついて離れようとしない。
ドクンドクンと乱れる脈拍。今ならまだ、やめることができる‥‥
やめようと思えば、簡単にやめられることなのだ‥‥
時計の針が、深夜に近づいていく。
まだ、まだ大丈夫。引き返せるんだから。
自分でも白々しいばかりの言葉を心に投げかけ、私は立ち上がって用意をはじめた。

鏡の前でショーツを脱ぎ、ブラウスを肩からすべらせる。
衣ずれの音を残し、一切の衣服からほてるカラダが解放された。淡いショーツのシミ
が、頬を赤くさせる。充血し、張りつめた乳房の上で、敏感な突起が尖りつつあった。
すでに、小包の中身はテーブルに広がっている。
真新しい革のつやに目を奪われつつ、私は太ももまでの長い革ブーツを両足に通した。
女王様めいているが、実は奴隷の拘束具。その証拠に、ブーツにの太ももと足首には
革の枷がついていて、脱げないように絞ることができるのだ。
「‥‥」
陶酔のせいで呼吸が乱れるのを感じながら冷たいフローリングに四つん這いとなり、
私は獣の拘束具を取りつけていった。膝を曲げ、太ももと足首の革枷を金属のバーで
連結する。バックルを施錠すると、きゅうくつな姿勢のまま下半身は自由を失った。
これで、私はもう立ち上がれない。
次は猫耳つきのボールギャグだ。舌を圧迫するサイズのボールは、口腔の奥深くまで
咥えても歯の裏に密着してしまう。ヘッドギアのように十時に交差したストラップの
水平な一本は頭の後ろで結び、もう一本は頭頂部に猫耳を貼りつけながら、あごの下
を通し、口を開くことさえできないように完璧な拘束を施した。
施錠する間も、たちまち唾液が溜まりだす。
口の中にあふれたヨダレは、やがてどうしようもなく唇を伝って垂れていくのだ。
カラダには、首輪と、いつもの革ベルトの拘束具。要所要所を絞り、オッパイを誇張
するようにベルトからはみ出させていく。
「ンッ、ン」
自由を奪われていくスリルにみたされ、はしたなく声があふれる。
濡れはじめたクレヴァスを指で押し開き、私は待ちわびるそこへバイブを咥えさせて
いった。甘くヒダが蠢く気配。這い上がってくる快感をぐっと押し殺す。
まだ溺れちゃダメ、メインはこっちなんだから‥‥
ふさふさとした尻尾つきの、小さなアナルプラグを震える手でとりあげる。したたる
愛液で濡らし、ひくひくすぼまるお尻の穴へあてがう。
ツプンと飲み込まれると、腸壁がプラグを咀嚼し、苦しいほど絡みつく感触に喘ぎが
止まらなくなった。一人遊びの惨めさが、たまらない愉悦に反転していく。なにより
獣にさせられた屈辱感が、カラダをどうしようもなく爛れさせるのだ。
尖りきった乳首にニップルクリップを噛ませてチェーンでつなぎ、バイブを固定する
革の貞操帯を履きおえた頃には私は発情しきったメスになっていた。
目の前には、お湯で温められ、口の開いた手枷。
肘を折りたたんだ両腕を、それぞれ革の袋に押しこんでベルトで縛り上げる。自由に
なるのは肩と手首から先だけ。そこに、革のミトンと一体化した手袋を嵌めるのだ。
手枷が締まれば指は完全に使えなくなり、拘束をほどけなくなる。
「‥‥」
最後の瞬間、ためらいが再びわきあがる
時間が無いのは分かっていた。始めるなら、急ぐほかない。
それでも‥‥
形状記憶合金のリングは、閉じるとバックルに相当する部分の凸凹がカチンと嵌まり、
まったき真円になる。本当にそうしたいのか。リスクが高すぎないか。今だって充分
ハードな自縛だし、カラダは甘い悦びを感じているのだ。
施錠したすべての鍵をしっかり握りしめ、心の中のやみくもな衝動を探ってみる。
なぜなのか、と。
「‥‥」
答えは簡単だった。
試さずにはいられない。被虐的な陶酔を、絶望のふちで湧き上がるアクメの激しさを、
身をもって私は知ってしまったからだ。危ういほど、快楽の深みも増すのだから。
だからこそ、私はセルフボンテージに嵌まっているのだから。
静かに、左右の手を手枷に押しこんでいく。
手首の一番細いところに合金のリングがあたるのを確かめて、私は、自分から‥‥
床に屈みこんで顔を洗面器の脇にすりつけ、用意しておいた氷水に片手を差し入れた。
いつになく意識は乱れ、カラダはいじましくバイブの動きに反応していた。
前も後ろも口さえも、すべての穴をいやらしく埋められて、私は‥‥
バチン
思いのほか大きな音がして、ビクンと裸身がひきつった。手枷のリングが細くなり、
深々と手首を喰い締めている。見下ろすリングは水をしたたらせ、継ぎめの無い金属
でびっちり接合されていた。
あまりにもいやらしく完璧な拘束に、マゾの心が波打って震えだす。
熱に浮かされ、私は残った手首も氷水につっこんだ。
ひやりと冷たい現実の感触とは裏腹に、たがが外れたかのように妄想が加速しだす。
後戻りできなくなる‥‥
これで、私は‥‥
「!!」
二度目の音は、甘く淫らなハンマーとなって私の躯をうちのめした。
またしても全身がのたうち、ひくひくとアクメによじれる。
快楽と理性のあやうい狭間で必死に自分を保つ。
溺れてしまえばそれで終わり、この困難な脱出を成功させることはできないだろう。
立ちあがる事のできないカラダ。
握りしめた拘束具のカギは、すべて手枷に閉じ込められ、取り出す事さえできない。
手枷を開くためのお湯の蛇口は、手の届かないキッチンのシンクの上だ‥‥
「ン、んぁッ‥‥」
ブルリと、火照った裸身を身震いさせる。
私自身の手で完璧な拘束を施されたカラダは、一匹のはしたない獣、そのものだった。
              ‥‥‥‥‥‥‥‥
どのくらい、呆けていたのか‥‥
フローリングにしたたったいくつもの水音が、とろけきって散漫な意識を引きもどす。
汗、ヨダレ、そしてクレヴァスからしたたるオツユ‥‥
四つん這いの格好は不自由で、まるで動けない。
肘も膝も、折り曲げたカラダは借り物のようにギシギシ軋みをあげていて、そんな中、
バイブを二本挿しにされた下腹部だけがゆるやかに律動しているのだから。
気持ちイイ。
快感を止められなくて、流されるだけで、すごいイイ‥‥
何もかもが異様なほど意識を昂ぶらせ、心の中を被虐のいろ一色に染めあげていく。
「んふ、ふァァ‥‥」
等身大の鏡に映りこんだ私みずからの裸身に見とれ、うっとり熱い息を吐きだす。
なんて貪婪で、浅ましいマゾ奴隷だろう。あどけなく色づいた唇にあんなにもボール
ギャグを頬張って、顔を醜くゆがめさせられて。あごの下のストラップに圧迫されて
喘ぎ声さえろくに出せず、だらだらヨダレまじりに虐めがいのある瞳をうるませて、
こっちを見ているんだから‥‥
これが、こんなのが、私の心が望んだ本当の私の姿なんだから‥‥
ゾクゾクッと背筋がわななき、弓なりに激しくたわんで引き攣れてしまう。それでも
私は拘束姿のまま、おぼつかない肘と膝を張り、四つん這いでこらえるしかない。
セルフボンテージは、MとSが同時に同居する、不思議なSMのありようだ。快楽に
溺れつつ、自縛した者はおのれの理性を保ちつづけて抜けださねばならない。
相反する快楽と理性の螺旋、それが私を狂わせる。
我慢させられることで、Mの悦びは何倍にも膨れあがるのだから。
想像してはいけない。感じすぎてもいけない。冷静に、すべて把握しないとダメだ。
「ンッ、ン」
今日の私、変だ。一昨日より全然カラダが感じちゃってる‥‥
もつれる意識を振りはらい、私はおそるおそる動いてみる事にした。
脱出のための手段は今日も屋外にある。どのみち、拘束具を送ってきご主人様の意図
は、私をケモノの姿にして這いずるさまを鑑賞することなのだろうから。
膝から下と肘だけを頼りに、私は自らアパートの廊下を歩いていくしかないのだ。
ギシ‥‥
おそるおそる踏みだす足は、金属のリングのせいで歩幅を稼げない。アームサックの
底にパッドが入っているとはいえ、一歩ごとに肘にかかる負担も大きく、亀のように
のろのろ歩くしかない。
「‥‥っく」
2・3歩玄関に向かいかけ、たまらず立ち止まって呻く。
ぎいぎい革鳴りの軋みをひびかせて歩くたび、たゆんたゆんとはずむ乳房の先でニッ
プルチェーンが揺れ動き、妖しい痛みと衝撃で裸身がヒクヒクのたうつ。外しようが
ないと分かっていても、充血した乳首が重みでブルブル引っぱられるたび、腰が凍り
ついてしまう。
ンァ‥‥ダメ、やっぱりつらすぎるかもしれない‥‥
立ち止まってちゃいけないのに。
四つんばいのまま廊下に出て、端に置いてきたバケツの熱湯に(もうだいぶ冷めて
そうだが)手袋をひたさなきゃいけないのに。
戦慄めいた焦りばかりが裸身をかけめぐり、じっとりカラダがうるみだす。
拘束が、抜け出せない恐怖が、気持ちイイのだ。
汗を吸ってぬらつく革は、ほんのり上気した肢体になじんですでに肌と同化している。
びっちり吸いつく空恐ろしいほどの一体感。悩ましく、ただただ狂ったように全身を
燃え上がらせてしまうのだ。
「‥‥」
ポタタッとしたたるのは、ひときわ深く緊縮しきったクレヴァスからあふれたオツユ
だった。みっしりと埋め込まれ、薄い肉をへだてて掻きまわされ、その快美感に私は
ボールギャグの下でむせぶしかない。
「あぅ、ン!?」
太ももを大きく動かせばお尻の谷間にもぐりこむ貞操帯が微妙に位置を変え、バイブ
の角度が変わってさらに濡れそぼったヒダを突き上げてくる。
断続的な悲鳴をあげながら、四つん這いでリビングを抜け、玄関に向かった。
とことこと歩くお尻をときおりファサッと尻尾の毛がなでていく。くすぐったい感触
が、ケモノの姿に堕とされたという私の現実を強く意識させた。
幾度となくわきあがる被虐の波を、ボールギャグを思いきり噛みしめてやりすごす。
こんなところでもうイッてしまったら、それこそ終わりだ。手枷だけでも外さないと。
「‥‥」
床に転がった給湯器のリモコンを蹴飛ばしかけ、よろけた。バケツに熱湯をみたした
とき、よほど焦っていたらしい。踏んで壊さぬようによけて歩いていく。
ようやく冷たい玄関の扉にもたれかかり、私は一息ついた。
玄関ドアには、スリッパをはさんで閉じないようにしてあった。拘束されてしまえば
ドアを開けることなどできない。そのための仕掛けだ。
はぁ、はぁ‥‥
ボールギャグで乱れっぱなしの呼吸をととのえ、静かに外の様子をうかがう。
扉のすきまから流れてくるむっと熱い夜気以外に、人の気配はない。そろそろ日付が
変わった頃だ。お盆のさなかだし、誰もいないだろうと思う。
あとは、決断するだけだ。
今まで試したことのないスリリングな、一子まとわぬ姿での行為を。
隠しようのない全裸で、どころか手も足も括られ、喋る自由さえないこの拘束姿で、
アパートの廊下に出て行く‥‥みずから野外露出にいどむ、最後の決断を。
心臓が、鼓動が、破れそうな勢いで脈をうっている。
「ふぅ‥‥んぅぅ‥‥」
一度出てしまえば、この鈍い歩みだ。誰かやってきても逃げたり隠れる自由さえない。
文字どおり惨めなさらし者の奴隷になる。
‥‥本当は、心のそこで、それを望んでいるのではないのか?
「ンクッ‥‥ふぅ、ふぅぅっ‥‥」
ドクンドクンと、狂ったように動悸が苦しかった。
下腹部がグリグリとバイブの振動で満たされ、太ももがビショビショに濡れそぼって
いる。気づかぬうち、軽いアクメに何度も襲われ、カラダがイッてしまっているのだ。
情けなさと同時に、この自縛のおそろしさがチリチリこころをむしばんでくる。自分
を制御できない‥‥それは、セルフボンテージでは失敗を意味するからだ。
実際、海外では陶酔の中、拘束をほどけず事故死してしまうマニアさえいるのだ‥‥
「クッ」
きりっと歯を食いしばり、妄想をぐっと押しつぶす。
私のカラダは甘くひりつき、マゾの快楽を求めている。ケモノの姿で野外に歩きだす
スリルを、刺激を。危うい妄想は、その快感を加速させるだけだから‥‥
息を殺し、周囲をうかがった。
何度もイキながら、声だけは無意識に殺していたのだろうか。両隣には気配もない。
外の様子をうかがい、そして、ゆっくり頭と肩で玄関ドアを押し開ける。
ギィィ‥‥
ねっとりした夏の空気が、裸身をひしひしと押し包む。
尻尾と首輪のリードがはさまりそうになり、両足をつっぱってぐいと扉を開いた。
段差に気をつけて踏みだした私は、冷えた廊下の感触をしみじみと噛みしめていた。
ザラリとした小さな砂や、埃で汚れたコンクリートの感触。
これが、そう。
本当に私は、ケモノの姿でアパートの廊下にいるのだ‥‥
見あげてみると、部屋のドアが呆れるほど高く、遠い。まるで、幼い子供の視点だ。
あるいはペットの。
目を落とし、拘束具の首輪からたれたリードに目をやる。
これを手にするご主人さまが私にいてくれたなら‥‥
「ンク‥‥ンッ」
甘やかな被虐の思いが、疲労の残る下腹部をたちまちカァァッと燃え上がらせる。
パタンと扉がとじる。その音を合図に‥‥
じくじくっとしたたる雫に目元を赤らめ、私は一歩一歩、歩きだした。
お尻を振りたて、肘と膝で弱々しく歩く。自然と首は下がり、汚れた廊下ばかりを
眺めてしまう。視界のせいか心細く、絶望感でアソコがビリビリ感じきっている。
今の私はもう人じゃない。発情した、いやらしいペットそのものだ。
乳首を噛むチェーンは、さしずめ牛の首に下げるカウベルのような感じだろうか。
「くふッッ、かはァ‥‥」
もどかしいほどカラダは爛れ、のたうつ快楽が喘ぎとなって殺到する。
私の部屋が908号室、廊下の端は910号室の先だ。二部屋きりだけど、人がいるかも
しれない部屋の扉の前を、私は横切っていかないといけないのだ。
各部屋とも、玄関ドアと一緒に窓がついている。
暑い熱帯夜のこと、クーラーを惜しむ住人が、窓を開いて自然の風を求めでもして
いたら‥‥
おびえた目で窓を見あげ、ビクッとしながら拘束された手足を動かす。
「ンンッッ」
必死になってボールギャグを噛みしめ、猫耳を震わせて、私はのどからほとばしる
呻きをかみ殺していた。残酷なボールギャグのせいでまだしも声は抑えられている。
とはいえ、あごの下を通るストラップは私の惨めさをあおりたてていた。いかにも、
ケモノに噛ませるための道具。馬がはみを噛まされているかのように、私のカラダ
も容易に操れるだろう。
この姿では、なにをされたって、抵抗などムダなのだ。
ゆっくりと‥‥
おそろしくもどかしい速度で、廊下の端に置かれたバケツが近づく。
不意に私は、時間が気になった。あの瞬間、玄関前でイッていた私はどれほどムダ
な時間をついやしたのか。遅すぎて、バケツのお湯が39度を切ってしまったら‥‥
「んぐ‥‥ッッ!!」
今や、たとえようもない切迫感と、嫌な予感が不自由な身を駆り立てていた。夢の
なかで私は絶望し、逃げ場を失っていた。まさか、あの二の舞が‥‥
ズキズキと手足を疲労させ、もつれさせてバケツに近づく。
そう‥‥
あとは、この中のお湯に‥‥
ようやく、バケツにたどり着いた。お湯に手枷をひたし、じっと待つ。
何も、起きなかった。
              ‥‥‥‥‥‥‥‥
ほっとゆるみかけていた意識。
これで外せるという安堵感、同時に、ジクジク裸身を疼かせる、物足りないような
もったいないような残念な気持ち‥‥
異変に気づいたのは、もう5分近くもお湯に手枷をひたしたかと思う頃だった。
手首の拘束が、まるで楽にならない。
固く食い込んだまま、リングの端をピタリと閉じたままなのだ。
‥‥遅すぎたの、私は‥‥?
ヒヤッとしたそれは、うたがいようのない直感だった。
ぶわっと湧きあがる焦りと衝動を、かろうじて胸の奥に押しもどす。
大丈夫だ。
だからこそ、用心のためドアにスリッパをはさんで、失敗した時でも戻れるように
してあったんだから。家に戻れば給湯器だって風呂場だってある。どうにか‥‥
そこで気づいた。
私‥‥ドアの閉まる音を、たしかに聞いていなかっただろうか?
ギョッとして振り返る。この場所からでは遠すぎた。
もはやひりつく実感となって全身を鳥肌立たせる感触に追われ、私はもつれながら
四つん這いで自分の部屋に戻っていく。はさんであったスリッパがのぞいていれば、
このカラダでもどうにか割って入れるのだ‥‥
‥‥だが。
ドアはぴたりと閉まっていた。不自由な手ではノブを回せない。
真実の恐慌が、パニックが私の心を飲みつくすまで、たっぷり3秒近くかかった。
完全な『嵌まり』‥‥
私は、抜けだす手段を失ったのだ。
最初に訪れたのは、真っ白な衝撃。そびえたつ無慈悲な鉄扉をみつめるばかりで。
‥‥絶望は、あとから深く、音もなくやってきた。
ほんの数時間前に‥‥
あるいは昨日、獣の拘束具を試そうと思ったときに‥‥
いや、もっと前、奇妙な夢に飛び起きた、夏休みの始まりのあの朝に‥‥
私の無意識は、この無残なセルフボンテージの失敗を夢見て知っていたというのか。
あとはただ他人の目にさらされ、辱められるしかない、浅はかな興奮に舞い上がった
惨めな自縛のなれの果てを。
「ふっ‥‥ふぅっッ‥‥」
全身が凍りついて、身動きさえできない。
尻尾のプラグにアナルを犯され、お尻を振りたてながら裸身をひくつかせているだけ。
両手両足の自由を完璧に奪われた、いやらしい牝犬の拘束姿。いつ、誰に見られても
言いわけできない倒錯したマゾ奴隷の、艶姿がこれなのだ。
ねっとり重みをはらんだ乳房の先が、痛いほどにそそり立ってクリップに食い込む。
オッパイを絞りつくす革の拘束具は汗を吸って裸身になじみきり、わずかな身じろぎ
すら甘い疼痛にすりかえてギリギリ食い込んでくる。
「っふぅ、グ‥‥んむッッッ」
無残に噛みならすボールギャグさえいやらしくヨダレにむせかえり、糸を引いている。
ウソ‥‥嘘よ、こんなの。
冗談なら、夢ならさめて欲しいのに‥‥
必死になって首を揺すり、拘束された腕を不自由に手枷の中でのたうたせてあらがう。
アパートの廊下に這いつくばったまま、何をすべきかも、どうすべきかも分からない。
この瞬間もなお、発情しきった汗みずくのカラダは一人よがり狂ってしまうのだ。
声もなく、めくるめく被虐の怒涛が真っ白になるまで意識を吹き飛ばし、エクスタシ
ーの極みへと裸身を持ち上げていく。
二度と味わうことのないだろう甘美な絶望の味を噛みしめ、完膚なきまでに残酷な現
実で、私を打ちのめして‥‥
断続的に意識がとぎれ、快楽をむさぼって白濁し、ふたたびふっと鮮明に戻ってくる。
どうしよう‥‥
縛られたままで、私、どこへもいけない‥‥
気づけば、私はすがりつくように隣の907号室の扉に身をすり寄せていた。
まるで扉ごしに甘えれば、水谷君が私を助けてくれるかのように。ご主人さまの顔を
作って出てきた彼が私を抱きしめ、守ってくれるかのように。
‥‥バカ。すぐに思いだす。水谷君はバイト中なのだ。無人の部屋の前で、私は何を
錯乱してしまっているのだろう。
「うぅぅぅぅ‥‥」
やましかった。浅はかな欲望に溺れて自制を失った、自分自身が。
安全なセルフボンテージの手段はいくらでもあった‥‥なのに、私はもっとも危うく、
リスクのある行為を選び、なるべくして失敗したのだ。
四つんばいの裸身がもつれ、びっちりアームサックで固められた肘がズルリと滑った。
顔から床に突っ込みかけ、必死でカラダを泳がせる。
ゾブンと、甘くキツい衝撃が戦慄めいて不自由な下半身を抉りぬいた。
瞬間、遠吠えする獣のように背中が反ってしまう。
「ンァ‥‥んぁぁぁァッッ!」
ヤァッ、すご‥‥感じちゃう‥‥ッッ‥‥!!
腰をねじった拍子に、濡れそぼるヴァギナの奥をバイブが突きこまれ、窮屈な角度で
肉壁をえぐりぬいたのだ。
場所も状況も忘れ、私は緘口具の下からみだらな悲鳴を吹きこぼしていた。
次々こみあがった喜悦のほとばしりを抑えようと懸命に口腔に嵌まったボールギャグ
をくわえ込む。こんなアパートの廊下でよがり声なんか出していたら‥‥
いくらお盆とはいえ、住人はまだかなり残っているはずなのだ。
「‥‥ッ」
あごの下を喰い締めるボールギャグの革紐が、チリチリ情けなさをかもしだす。
人として喋る自由を奪ったボールギャグを、自分から噛みしめる屈辱感が肌を震わす。
与えられた轡に喜んで噛みつく馬と、どれほど差があるというのか。
私、ケモノじゃないのに‥‥
あふれかえる刺激を抑圧するしかない苦しみすら、心をゾクゾクと嬲りたてるようだ。
それでもマゾの辱めに耐え、なす術もない拘束の痛みを噛みしめながら、残った理性
をかき集めて、私は自分自身を注意深く瞳でたしかめ、全身を揺すりたてた。
ギギ、ギュチチ‥‥
音高く食い入る革の痛みさえ、興奮しきった私には誘惑となって揺さぶってくる。
ひょっとしてゆるみかけた拘束はないのか。ほどけそうな部分がないのか。
‥‥拘束は、完璧に柔肌をとらえていた、
むしろ、もがくほど汗がしみこみ、一層いやらしく全身が絞りたてられてしまうほど。
ゆるむどころではない。折りたたんだ肘はアームサックでビッチリ腕の形が浮きだす
ほど縛められ、太ももの枷はかすかに血行を阻害している。
「う、ウグ‥‥」
とっくの昔に、肌で理解しているとおりに‥‥
もはや、私が自力で拘束をほどくことは不可能なのだ。
理解がいきわたった瞬間、裸身はただれた快楽に渇き、ドクンと心臓が跳ねあがる。
私に残されているのは、それ一つだけ‥‥逃げだす自由を失い、夢中になってバイブ
の動きを咀嚼し、犯される苦しさに身をうねらせるだけなのだ。
不自由な事が、逃げ場のない絶望が、終わりのないアクメが、これほど甘美だなんて。
めくるめく衝撃は神経を灼き、アヌスを滑らせ、とめどなくクレヴァスを潤していく。
クライマックスに終わりはなかった。
イッてもイッても、よがり狂った疼きと盛りはいや増すばかりだった。手枷の奥で指
を握りしめ、瞳をギュッと閉じ、裸身をぎくしゃくとはずませて‥‥
まだ、まだイクッ‥‥
止まらない、腰がはねて‥‥切ないのに‥‥
どうしてだろう。縛られて、苦しいのに。手枷が外せないのに、そんな焦りさえもが
こんなにもイイだなんて‥‥調教されたカラダが、勝手に反応しちゃう‥‥
「ん、んくぅぅぅ!」
もはや、ボールギャグのしたたりとともに喘ぎ声さえかすれてほとばしる。
じっとり濁った夏の夜気は冷静な思考を汗に滲ませ、あっけなく快楽に砕けちった。
              ‥‥‥‥‥‥‥‥
「‥‥クフッ、かっ、かハッ」
思いだしたように、ときおり喘ぎ声の残骸めいた吐息が唇のはしから洩れだす。
ぐったりと気だるい自虐の惨めさに身を灼かれ、はぁはぁと呼吸をくりかえすばかり。
つらく、長い道ゆき。
自分が何をしているかはっきりしないまま、私はよたよたおぼつかない仕草で四肢を
動かし、少しづつアパートの廊下を歩いていく。
‥‥そう、まさに四肢、だった。
指先まで自由を奪われた両手は、ただのケモノの四つ足と変わりないのだから。
お尻の穴がギシリと疼痛できしみ、尻尾がいじわるくお尻の肉をぶつ。
「ふぅっ、ふぅぅ」
四つん這いで映る視界は驚くほど狭く、不自由だ。汚れた床だけを見つめ、みっちり
下半身を串刺しにされたまま、肘と膝を使い、快楽のうねりに飲まれて歩く。
一歩ごとにダイレクトな振動が胎内の異物をギジギジと揺らし、微妙に下半身を犯す。
本当に男のモノを受け入れ、なすすべなく突かれてよがり狂っているかのような掻痒
感が、たぎりきった蜜壷をグジュグジュに灼きつくす。
鼻の頭からは、ポタポタしたたる涙滴の汗。
かすかに不快で、けれど窮屈な束縛を施された両手では満足にぬぐうこともできない。
顔を流れる汗はケモノの浅ましい興奮と奴隷のいやらしさをひきたてるかのようだ。
四つんばいのカラダにも、少しづつなじんできた。
カチャ、カチンと金属音を奏でて、足首と太ももを繋ぐ金属バーが歩行を制限する。
住人に聞こえてないだろうか、不審がられて出てこられたら‥‥足を進めるたびに、
目撃される恐怖と甘いスリルとが交互に心をむしばみ、トロリと下腹部が熱い粘液を
こぼしてそのヒリつきを主張しだすのだ。
「ンク‥‥ンッッ」
かふ、かふっとボールギャグを咥えなおしては、浅く息苦しい呼吸をくりかえす。
エレベーターホールにたどりついた時、下半身はわきたつほど甘く沸騰し、バイブを
緊めつける革の貞操帯はドロドロに糸を引いて汚れきっていた。
ちらりと振りかえると、私の歩いた後には点々としずくがこびりついていた。ヨダレ
と汗、愛液がブレンドされた女のしずく。ぬぐうことのできない痕跡に、カァァッと
頬が上気する。
わたし‥‥なにを、してるんだっけ‥‥?
ぐずぐずに溶けくずれた意識でぼんやり目的を思い返した。
そうだ‥‥ご主人さまを、ここで待とうと思って‥‥
水谷君がバイトから戻ってくるまでに、誰かが来ないとも限らない。だから、せめて
逃げ場のあるエレベーターホールにいようと思ったのだ。
「くぅぅ‥‥ゥン」
快楽に翻弄され、残酷な手枷の中で指がつっぱった。
アームサックからのぞく手首は、絶望めいた形状記憶合金のリングが嵌まったままだ。
どんなにビクビクあがいても、緩みもしない金属の枷。これが食い込んでいる限り、
絶対に私は自縛を解けないのだ。睨みつける瞳が悔しさでうるむ。
見つめるカラダは奴隷の標本だった。
丸くバイブの底を覗かせ、ぷにっと爛れた土手を裂いて革ベルトはお股に埋もれきっ
ていた。コリコリに尖ったクリトリスを潰す革紐は、無数の痛みをもたらすばかり。
寝静まった深夜のアパートで、ひとり欲望に耐えかね、這いつくばって悩ましく身を
焦がす自分があわれで、また愛とおしい。
とことこと、エレベーターの前に歩み寄って‥‥
そこで、誰かが上がってくるのに気づいた。ゆっくり数字が上昇してくるのだ。
ご主人さまが戻ってきた。
思いかけて、なぜ、と思った。
なぜ、このエレベーターに乗った相手が、水谷君だと思ったのか。
「‥‥!!」
はっと、冷水をあびせられたようにわれに返る。
誰が来たか見極めもしないで、ホールの中央にいるつもりだったのか。冗談ではない。
まず隠れて、状況をうかがうのが先のはずなのに。
ごぼっと、苦悶のようにボールギャグからヨダレがあふれだし、廊下にしたたる。
焦ってもつれる手足を動かし、わきの階段へと逃げた。暗い踊り場で一瞬たちすくむ。
‥‥ポーン。
「‥‥っっぅ!」
エレベーターのチャイムに飛び上がり、私はあちこち壁にぶつけながら必死の思いで
階段を駆け昇った。ガチャガチャンとやかましい金属バーが、なおさら冷や汗を噴き
出させる。
「おい、なんか今、そこにいなかったか?」
「え~、なに、ほっときなよぉ」
軽薄そうな男女の会話が、背筋を凍りつかせる。
中谷君じゃない、違った‥‥あと一瞬、遅ければすべてが終わっていたのだ。
びっしょり背筋を流れくだるのは、本当のおののきなのだ。
「いや、気になる。ちょっとたしかめるさ」
「なに言ってんの、やめなよー」
不審げな男の声に焦りがよみがえり、私は追い立てられて階段を上っていった。打撲
で腫れ、ずきずき軋む手足をかばいながら、できる限り静かに這っていく。
このときはまだ、気づいていなかった。
なぜ階段を上がったのか。
ごく簡単なこと。このカラダでは、階段を下りることなど不可能そのものなのだ‥‥
              ‥‥‥‥‥‥‥‥
「ンッッ」
ぼんやり厚い雲に覆われた空を目にして、わけもなく涙があふれた。
とうとうここまで来てしまった‥‥
ヒワイすぎる縛めを施したきり、文字どおり丸出しの裸身で、私はさえぎる物もない
広い屋上に追い立てられてしまったのだ。
9階から階段を上がると、すぐに屋上に出る。眺めのいいこの場所も、今はねっとり
した真夏の夜風になぶられ、闇の濃さをきわだたせている。
厳しい縛めの下で、関節が悲鳴をあげていた。
獣さながらにブルリと全身を震わせ、もはや降りることのできない階段を見つめる。
闇の中うずくまる女の裸体は、拘束された汗だくの白い四肢は、人目にどう映るのか。
化け猫かも‥‥思ってから、ちょっと哀しくなった。
私は誰にも飼われていない。飼われることを、尽くす悦びを知らない寂しいペットだ。
ふぅふぅと、荒い息のたびに波打つ腹部がいとおしい。
抱きしめて欲しい。唐突にそう感じた。
ペットがかわいがられるように、飼い主の手に包まれて撫でられてみたい。
いくらでも甘え、時にお仕置きされて、ご主人さまの望みどおり躾けられて、逃れる
ようのないマゾのカラダに調教されていくのだ。
「ん‥‥くぅぅン」
鼻声が耳をつき、こみあげる寂しさにギョッとする。
私のご主人さまはどこにいるんだろう。
志乃さんあての拘束具は、つねに、私のカラダを計ったかのようにフィットする。私
と志乃さんの体格が似ているだけかもしれない。けれど本当は、誰かが、私のサイズ
を目で測っているのではないか。革製の拘束具は気軽に買える値段ではない。まして、
ここまで特殊なカスタマイズがされていればなおさら‥‥
それだけ大事に調教してくれるご主人様なら、どうして私を助けてくれないのか。
「っふ、くふ‥‥」
トクン、トクンと裸身だけは火照りつづけ、めくるめくアクメをむさぼって断続的な
痙攣をくりかえしている。どうしようもない刺激。どうしようもない拘束‥‥絶望の
ふちで、最後の快楽の火花がひときわ激しく燃え上がるかのように。
ゾクゾクッと神経を灼きつくす快楽の波に呑まれ、何度も弓なりに背中がそりかえる。
初めから、危険だと思っていた。
危うい拘束具だと分かっていたのに、なぜ私は杜撰な自縛を選んでしまったのか。
いけない、そう思う。
朦朧とした意識が、間違った方向へ動いている。考えちゃいけない‥‥
けれど。
本当の私は、なす術もなく自由を奪われるこの瞬間を待ち望んでいたのではないか?
ドクンと、心臓が大きく脈を刻む。
セルフボンテージに嵌まっていったのも、そう。
二度と感じることのない究極の絶望を私は味わいたかったのか。OLではない本当の、
拘束されたマゾとしてアパート全員のさらしモノにされ、嬲られたいと願っていたの
ではないか。
ならば、残酷きわまるこのシチュエーションこそ、最高の快感なのではないのか。
もはや私には、自縛から逃れる手など何一つ残されていない。
こうして怯えながら一睡もせずに夜明けを迎え、やつれきった白い肌に固く革を食い
込ませた無残な姿で他の住人に発見されるのを待つしかないのだ。
牝の匂いをまき散らして‥‥それが、私のエクスタシーなんだから‥‥
「ッグ、ひぅ、いぅぅぅ‥‥んぁァッ!」
思った瞬間、狂乱が下腹部を突き抜けていた。
灼熱の怒涛と化して、濡れそぼったクレヴァスから異様なほどの愛液がこぼれだす。
ぬめりきった熱い蜜壷はぞぶぞぶとバイブを噛みしめ、一斉に微細な蠕動をはじめた
肉ヒダから、過敏になった神経はめくるめくアクメの波を、不自由な全身のすみずみ
にまで送りこんでくるのだ。
ゾクン、ゾクンと律動めいた絶望が、子宮から津波の勢いで全身をひたしていく。
鈍くだるかった手足や、拘束されたカラダさえ昂ぶる被虐の波に呑み込まれ、絶頂を
おそれて激しい身もだえを繰り返してしまう。
アナルプラグをきゅうきゅう拡約筋で絞りたて、生々しい異物感に心奪われたまま。
ニップルチェーンをおっぱいにあてては、ぐぅっと一点に集約する痛みを味わって。
こんな‥‥
発情した獣のように、とめどなくイカされてしまう‥‥
どれほど強くもがいても、どれほど嫌がり、心で抵抗しても。
逆らえば逆らうほど、甘い奴隷の悦びばかりが全身にふきこぼれてきて‥‥
ボールギャグにギリギリ歯を立て、ほとんど絶息しながら私はマゾの高みに昇りつめ
ていった。
               ‥‥‥‥‥‥‥‥
曲げた膝を90度に固定されたままでも、膝立ちの要領で上半身を起こすことはできた。
縛り上げられた両手でカラダを支え、肘を振りあげてエレベーターのボタンを押す。
回数表示が動きだし、やがて、屋上で止まる。
‥‥ポーン
チャイムから開くまでの一拍、緊張のあまり全身がヒクンと収縮した。
ドアが開く。
無人だった。
開いたエレベーターは無人だった。当たり前だ。深夜のこんな時間、わざわざ屋上に
やってくる住人などいない。ふぅ、ふぅぅっと、四つんばいの拘束姿で身構えたまま
全身の毛が逆立ち、ひきつった裸身が恐怖の余韻で跳ねている。
惨めな子猫だ‥‥
わななく被虐の戦慄はそのまま快感の波浪となって子宮の底に流れこみ、渦をまいて
熱いしぶきをふきあげた。ひときわ濃い蜜液がトロリと下の唇を彩り、なめまわす。
よく躾けられた、発情気味の猫。
乗り込んだエレベーターの中で同じポーズを取り、9階のボタンを肘で押す。
沈みこむ感覚が、下半身をそっと慰撫するようにかき乱した。
‥‥ポーン
再び開くドアの前で、私はギクギクと緊張しきっていた。
こんなにもおののいて、疲弊して。
私が私でなくなっていく、そんな感じさえするのだ。
9階のエレベーターホールに降りた私は、脱力した四肢をつっぱってのろのろと廊下
を戻っていく。
もう、かまわないと思った。
だれに見られてもかまわない。住人に出会っても、悲鳴をあげられても‥‥あるいは、
犯されても。それだけのミスをしたのだと思えてならないのだ。
907号室の窓からは、さっきと違って細く明かりが見えた。水谷君が帰ってきている。
なら、私にできることは一つきりだった。
のろのろと自分の部屋の前に、四つんばいで向かう。
水谷君を呼び出して助けてもらうのだ。どれだけ恥ずかしくても、耳たぶまで真っ赤
になってしまっても、それ以外にこの残酷な自縛を解く方法なんてないのだから‥‥
カツン、と足を固定する金属バーがひっかかり、反響が消えていく。
足が、止まっていた。
「‥‥‥‥!!」
目にしたものが信じられず、全身がすくみあがった。
充血し、汗ばんでいた裸身がみるみる鳥肌だっていく。そんな、まさか。
たしかに確認したはずなのに‥‥
「ニャー」
心細げにテトラの声が響く、私の家のドアは。
つっかかった靴べらがはさまって、うっすらと開いていたのだ。
              ‥‥‥‥‥‥‥‥

「どうしたの、早紀。なんか嬉しそう。彼氏でもできた?」
「ん?」
運転席からバックミラーごしにこっちを見る友人に、私は笑いかえす。
結局、あの後‥‥
どうにか部屋に戻った私は、床に転がっていた給湯器のリモコンに救われたのだった。
浴槽からお湯をあふれさせ、形状記憶合金の手枷をひたして外したのだ。
その後、もどかしい縄抜けは30分以上かかり、曲げっぱなしだった肘も膝もしばらく
しびれきっていた。
絶望の底を舐めつくした、震え上がるような奴隷の一夜。
「ふふ、ひさびさの腐れ縁じゃないの。楽しくないはずないじゃない」
「うわ~、腐れ縁だって。大学時代、どれだけ私が早紀に尽くしてあげたか忘れた?」
「ん~、合コンのダブルブッキングで冷や汗かいたこととか?」
そらっとぼけると、二人の友人はころころ笑う。
同乗するのは大学時代の友人たち。一人は私と同じOL、もう一人は共働きの主婦を
している。二人とも、危ういSMなど興味もないだろう。
私にとって、セルフボンテージはつかのまのスリリングな遊戯だ。
それが日常であってはならない。ときおり快楽のふちをのぞく‥‥だからこそ、興奮
はいや増すのだ。
もちろん、あの夜の謎は残っている。
閉じてたはずのドアがどうして開いたのか。テトラが何かしたというのか。
あるいは、私が早とちりしただけで最初から薄く開いていたのか。
たしかに閉じたドアを私は確認したと思う。思うけど、あの混沌と、朦朧とした記憶
をどこまで信じれば良いのか‥‥
けれど、私は深く考えないことにしていた。
もし、あれがまだ見ぬ誰かの行ったささやかな介入なら、それでも良いと思うのだ。
「‥‥」
いや、うん、室内を見られちゃったりするのは、やっぱり、イヤだったりするけど。
やっと分かったのだ。
ご主人さまが誰か、どこにいるのか、私が悩む必要などない。
こうして遠隔調教を受けているだけで、私のカラダは開発されていく。それで充分だ。
このカラダが、完璧な調教を施された時‥‥
あるいは、本当に私がセルフボンテージから抜けだせなくなり、助けを必要とした時。
ご主人さまは必ず現われてくるとそう思えるのだから。犯人探しのように、うたがい
を抱く必要などない。
水谷君からのお誘いも、喜んでうけることにした。
旅行から戻ってきたら、彼がその「ちょっと良いお店」に連れて行ってくれるらしい。
素直に喜んでいる自分がいるし、それでいいって感じている。
分かってしまえば簡単なこと。
私は、私のままでいればいいのだ。
いつご主人さまが現われたって、私は、奴隷として尽くす用意ができているのだから。
ご主人様のために、いくらでもいやらしくなれると思う、私は‥‥
「ほらぁ、早紀、またにやけてるぅ」
「え、ええっ? 失敬な」
「失敬な、じゃないよ。なんだ~、なに隠しごとしちゃんですか~。このこの~」
大学時代のような、無邪気な笑いが車内にあふれていく。
そうして、私はつかのまのじゃれあいにすべてを忘れ、旅行に向かったのだった。
                                  (fin)

【友達】馴致/飼育【セフレ】

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おぼろな意識が、惑乱した理性が、私を支配していた。
仄暗い自室の壁に、鏡写しとなったいやらしい裸体が映し出されていた。
週末の夜。静かなマンションの室内に、妖しく声が響く。
『これでもう、早紀ちゃんは絶対に、縄抜けなんかできないわ。注文どおり‥‥』
『ん、ッッ』
甘く、低く、ご主人様の声がねっとり耳朶をあやす。
それだけで一糸まとわぬ私のカラダは波打ち、快楽の記憶に震え上がっていく。
SMバー『hednism』での一夜。
女性バーテンを利用して実際のリアルな緊縛を味わおうとした私は逆に罠にはまり、
猥褻な調教風景をビデオに撮られてしまっていた。自縛マニアだと見抜かれ、一晩か
けてじっくりステージの内外で嬲られ、一部始終すべてを記録されてしまったのだ。
(あなた‥‥本当はご主人様なんていないわよね?)
むろん私は否定しているし、女性バーテンにしてもあくまで推測しているにすぎない。
けれど、しかし‥‥
録画されたこの映像だけは、逆らいようのない絶対的な弱みだった。

しがないOLである以上、自分の生活を守る為にも、私はあの人に逆らえないのだ。
微笑みかけてきたバーテンの、いとおしげな瞳。
『子猫ちゃん』とあの人に呼ばれ、かわいがられ、虐めされて。
あれから十日あまり。今ではすっかり、私はこの苛烈な被虐の味に馴らされていた。
もう、普通の自縛では、ただのセルフボンテージでは足らないのだ。
「んぁ‥‥ん、ンフ」
バーテンの鮮やかな縄掛けを目にしつつ、私はボールギャグの奥から吐息をもらした。
あの晩と同じ革マスクが顔の下半分を覆い、喘ぎも悲鳴も吸収してしまう。シンクロ
するかのように湧きあがった甘い感覚を噛みしめた私は、拘束する準備がととのった
自らの裸身を見下ろす。
ぺたんとベットに座った私は、折りたたんだ左右の足それぞれに形状記憶合金で施錠
される特殊な足枷を食い込ませていた。くるぶしとお尻がぴったり密着するほど膝を
たたんだこの姿では膝立ちがやっと。お湯に漬けないと外せない足枷は、自縛後の私
が両手の自由を取り戻さぬかぎり、高さ50センチのベットを断崖絶壁の牢獄に変えて
しまうのだ。
『気持ちイイでしょう? 我慢しないで。好きなだけ啼いて、私に喘ぎ声を聞かせて』
『くぅ‥‥ぅぅぅ』
愛情深い言葉責めをうけ、巧緻な緊縛を施される裸体が、鏡の向こうで火照っていた。
ふたたび目の当たりにする私自身の淫らがましさ。
あの感触、あのわななき、自力ではなにもできず、自由を奪われていく虜の感覚。
革の拘束着にきつく絞り出されたウェストや乳房がひりひり爛れだす。
2つの乳首をつなぐニップルチェーンがジャラリと揺れ、とたん、とめどない疼痛が
バイブを咥えこんだクレヴァスをつぅんと突き抜けていった。
「ふぐ、ンンンゥグ」
まだ自縛も完成しないのに、待ちかねていた淫靡な疼痛が躯の芯を灼いていた。あの
晩以来、このカラダはあの人好みに作り変えられつつある‥‥
んっと喘ぎを飲み下し、きたるべき絶望の愉悦に焦がれながら手首から拘束していく。
「‥‥」
肩に背負うのは、ハンガースタンドから外した軽いアルミ製ポール。卑猥に上半身を
喰い締める拘束着の革ストラップが、ポールがゆるまないようしっかりと両肩に固定
していた。
ピンと広げた両手は、肘の上下と手首の3箇所にそれぞれ革手枷を嵌められ、さらに
ミトンの革手袋が手首をすっぽり覆って指の自由さえ奪っていた。
肩のポールに取りつけた金具に手枷・肘枷のナスカン(連結器具)をつないで手枷を
施錠すれば、広げた腕は一本の棒となり、悩ましいセルフボンテージの仕上がりだ。
解錠のためのカギはニップルチェーンの中央から垂れ下がり、重みで今も私の乳首を
虐めつづけている。
つまりこれは責め絵などで見かける、肩に背負った棒に両手を縛りつける緊縛だった。
「ンッ」
カチリ、カチリとナスカンを軋ませ、みずから両肘をポールに括りつけていく。
あとは残された手枷から下がる錠前をポールに押しつけ、連結して施錠すれば残酷な
自縛奴隷のオブジェが誕生するばかりだった。
両腕を磔にされた苦しい姿勢のまま、錠前の開いた手枷をポールの金具に押し当てる。
「ン‥‥ンフ、かふっ‥‥」
ほんの一押し。
けれど、理性のかけらが私をすくませ、ためらわせていた。
いつものように、最後の最後で躊躇と陶酔がわきあがる。ゾクゾク背筋の引き攣れる
気持ちよさ、これが私をやみつきにさせ、セルフボンテージの虜にしているのだから。
絶体絶命の恐怖が、自由を剥奪される慄きが、私を惨めにあおりたてていく。
特に今回襲いかかったわななきは激しく苛烈だった。
今回のセルフボンテージはろくに準備もせず、ほどくための手順さえ検討していない。
ここで施錠してしまったら、私のカラダは取り返しのつかない緊縛を施されてしまう。
分かっている、絶対にやめるべきなのだ。
ためしに、寸前までトライするだけの予定だったのだから‥‥
これ以上してはいけないのだ‥‥
踏みとどまろうとする理性を、じくじく欲情に溺れた躯が拒み、甘く背を押していた。
爛れきったクレヴァスを犯すバイブの律動が気持ちイイ。
こんなに感じてるのに、こんなにイイのに、ここで寸止めなんて、逆に惨めすぎて。
もどかしくて、意識がおかしくなってしまう‥‥
そう‥‥ほんのちょっとだけ‥‥この刹那の、めくるめく愉悦のために‥‥

カキン——
チャリッ——
はっと我に返ったときには、すべてが終わっていた。

無意識に押しつけていたU字錠が連結し、磔の形をとらされた手首が食いこんでいた。
左右の手枷が施錠された、冷たく無情な音。
「‥‥ぃうン!!」
唐突に全身を逆立てるほどの焦燥感に突き上げられた私は、ポールを背負った不自由
な裸身を激しくうねりよじらせていた。
狂乱の勢いで暴れまわった両手は、しかし、肩からビィンと一直線に固定されたまま。
のたうちまわる上体は重く窮屈に囚われていて、そら恐ろしいほどの痙攣が私を興奮
させていく。
(ウ、ウソ、まさか‥‥縛っちゃった、どうしよう‥‥)
ドクンドクン波打ってあふれだす戦慄と恐怖とせっぱつまった焦りと‥‥絶望と‥‥
やってしまった‥‥
後先考えず、快楽だけを欲して愚かにも‥‥
両手の手首も、肘も、ポールにへばりついて根が生えたようにぴくりとも動かない。
「んぐぅぅぅ!! んっふ、はぅぅぅ!!」
カーテンを開け放った窓に、卑猥な自縛姿の女性が映りこむ。
膝を曲げて固定された両足をしどけなく女座りの形でよじらせ、長い棒を背に抱いて
やじろべえのように腰を揺すり、そのたびに弾むニップルチェーンに甘く激しく乳首
を噛みつぶされて、ギクリと硬直する下半身をいやおうなくバイブで犯し貫かれ‥‥
口腔をふさぐボールギャグと、顔を覆うマスクに表情さえ殺されて、ただひたすらに
うるんだ哀願のまなざしをむけるしかない裸身。
『よし、これで完成』
『ファ‥‥ンッ、んンンン!!』 
『どう? “絶対縄抜けできない”緊縛が、ご主人様のオーダーだったわよね』 
ゾクリ、ゾクリと奔騰するカラダに注ぎ込まれるバーテンの残酷な台詞。
ビデオと現実の縄掛けは、自由を奪われてよがりまう躯は、シンクロしきっていた。
完全な拘束の完成。
もはや、私のカラダは私のモノではなかった。
どこの誰とも知れぬマスターに遠隔調教され、堕とされて発情したマゾ奴隷の裸身。
自ら縛りあげたカラダを痙攣させ、虜の身から逃れる術を知らず悶え続けるしかない
発情した肉の塊でしかないのだ。
ミトンの内側で、ギュウと指先が突っ張っていく。
ほとんど衝動的な愚かしさ‥‥
バーテンから渡されたビデオを見ているうち、こみあげた疼きに耐えかねて‥‥
刹那的に実行してしまった自縛から、いったいどうやって抜け出せばいいというのか。
それにそもそも‥‥この状況から、縄抜けすることが可能なのだろうか?
本当のところ、私はなにを期待していたのだろう。
——確実に失敗するだろう自縛の結末を、絶望の味を、欲していたのか。
全身をかけめぐった快楽の大波は、忌まわしい自縛の失敗、禁忌を犯した瞬間のダイ
ナミズムに果てしなく近くて、目くるめく絶頂が幾重にも幾重にも胎内に積み重なり、
膨れ上がっていって‥‥
(すごい、どうしようもなく感じている、ベトベトにアソコが濡れそぼって、そんな、
気持ちイイ‥‥良すぎて、狂って、狂っちゃ‥‥イク‥‥ッッ‥‥!!)
「ん、ひぅン、く、んんンンン‥‥ッッ」
まさに、一瞬のうちに。
壁のスクリーンに映しだされたあの晩の私自身の痴態を見せつけられながら、ビデオ
に映った調教の一部始終の、その甘美なる絶望の調べに己が自縛姿をだぶらせ、重ね
あわせながら‥‥
絶頂の、エクスタシーのはるか彼方にのせあげられ、私の意識は真っ白に消えていた。

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

「さて。早紀ちゃん、だったわね。私から提案があるのだけど‥‥‥‥」
あの日、あの時。
青ざめた私を見やってバーテンは口を開いた。
「普通、こうなったらその後、子猫ちゃんがどうされるか、想像つくかしら」
「‥‥私の、ご主人さまが、黙っていませんよ」
「あらぁ」
パンと手を打ち、はなやいだ仕草でバーテンは声を上げた。
「ぜひお会いしたいわ。こんな可愛い娘を手なづけるご主人さま。気が合いそう」
「‥‥」
「いいのよ、言いつけて。仕返し結構。さぁ、どうする?」
あくまで意地悪くバーテンはにやつく。しかも、悔しいことに私は反論できないのだ。
ただ黙って気おされないようにジト目で睨む。
「まぁまぁ、そう毛を逆立てないの」
「よしてください。ペットみたいにそういう表現」
「ふふ。前にも言ったけど、私は無理矢理とか脅迫で奴隷をモノにするのは嫌いなの。
SMは信頼関係だから、お互いに信頼と愛情がないとダメ。そうよね」
「‥‥はい」
「そこで提案。あなた、一日私の奴隷をやってみなさい」
「え‥‥?」
「つまり体験奴隷になるってこと。私と早紀ちゃん、お互いの相性がどれだけ良いか、
実際に肌で試すの。それで最後にどうするか選ばせてあげる。拒否するか、一生私の
奴隷になって可愛がられてすごすか。二択をね」
バーテンの台詞は、硬直していた私の身体に電気を通したようなものだった。
一日体験奴隷‥‥
私にも、選択の余地が‥‥
せっぱ詰まった心に響く、福音のような救いの手。
それは、拒みようのない誘惑だった。私の心はまだ見ぬ本来のマスターと、目の前の
小悪魔的な女性との間で揺れ動いている。この人をもう一度ご主人様と呼び、調教を
受けることができる‥‥しかも最後には、自分で選択までできるというのだ。
「その‥‥もし、その後でやっぱり私が拒否したら」
「そうね。残念だけど、それ以上要求はしない。写真もビデオのマスターも返す」
「!」
「その代わり」
顔を明るくした私の瞳を覗きこんで、バーテンは嗜虐的な表情をただよわせた。
「調教師としての誇りにかけて、私は絶対あなたを堕としてみせるから」

             ‥‥‥‥‥‥‥‥

ゆるゆる重力を失った絶頂。エクスタシーの波間から意識をとりもどす。
女性バーテンの提案した期日は刻々と迫っていた。
その日、私がどのように責められ、どう変わってしまうのか。ただ一晩であれほど私
を狂わせた彼女から徹底的に調教された時、はたして私はセルフボンテージマニアと
しての矜持を押し通せるのだろうか。
あの人なしでは耐えられぬ、淫らなマゾ奴隷に変貌してしまうのではないだろうか?
飛びついた承諾は、今では悪魔の刻限と化して心を苛み、うろたえさせていた。
今夜もそう。
あの晩の事を思い返すうち手は自然と彼女に渡されたビデオへ伸び、壁のスクリーン
に私自身の調教風景を映し出しているうち、いつか疚しい疼きが肌を覆いだして‥‥
そうだ、私は‥‥
あれ、なにをして‥‥躯が、ギチギチ軋んでる‥‥?
ビリビリ、よがり狂ってるみたいに‥‥すごいの、グチャグチャに私、感じて‥‥
のろのろ瞳を開け、浮上してきた意識をはっきりさせようと首を振る。

金属音を奏でた首輪がぎっと緊まり。
目に映るのは丸出しのオッパイと、勃起した乳首を摘むニップルチェーンの鋭い痛み。
何もかもがなまなましく女を匂いたたせ‥‥
部屋の中央に活けられた自縛奴隷のオブジェは、緩む気配もみせずひくひくと痙攣を
くりかえしていた。

「ほごっ、ン、んんンンーーーーーーっっ!?」
あふれかえった絶叫は、しかし、すべて緘口具に吸収され、かすれて宙を漂っていた。
一片のためらいも容赦も慈悲もなく、すみからすみまで拘束しつくされて。
目覚めた私は、完璧な奴隷そのものだった。
はしたなく玩具に嬲られて発情しきり、無力な自縛姿をあまさず空気に晒しつくして。
嬉しげにニチニチとバイブを咥え、股間をべっとり愛液まみれにしてベット上に放置
されたまま、男を誘うように飾りつけられていた。
「ふぅ、ふぅぅっ、ひぅぅぅ」
ぶるりぶるりと裸身の震えがとまらない。
自縛していたのだと、自由を奪われた緊縛姿だったのだと、目覚めて気づくこの瞬間
に心を飲みこむ戦慄と恐慌は何度あじわってもなれることがない。ショックで心臓が
止まりかけ、次の瞬間、貯めこまれていた快感がどっと流れ入ってドロドロに裸身を
蹂躙し、最後に凍えるような絶望が肌を総毛立たせるのだ。
「うっ、ぐ、くぅぅ」
私にできるのは全身を突っ張らせ、口枷を噛みしめ、狂おしい波をやり過ごす事のみ。
どうしようどうしよう解けない縛られてる‥‥理性も思考もグチャグチャに潰されて、
ガクガクとイキっぱなしになってしまうのだ。
いつのまにか、マンションの部屋にはうっすら朝日がさしかかっていた。
どうやらイったきり、前屈みの窮屈な姿でうとうとしていたらしい。拘束されてから
すでに数時間。全身がだるいのもうなずける。
おそらくはうつらうつら気を失っている間もセルフボンテージの施された肢体は自動
的にイカされ続けているのだろう。わずかに腰を動かしただけでゾブリと深い凌辱の
男根が下腹部を芯まで貫き、クレヴァスを裏側からめくりかえす勢いで律動しだす。
たった一本のバイブに、ここまで追いつめられてしまうなんて。
奴隷としての認識はまたもカラダに火を点け、あっという間に理性を溶かしだす。
違うのだ、それではいけない‥‥
悩ましく眉をひそめ、ギリギリと快楽を意識から締めだそうとした。
足の指でギュウとシーツをつかみ、未練たっぷりにボールギャグを歯の裏で咥えこむ。
後から後からわきだす被虐の情感に身をよじり、うるむ目で私自身を仔細に見下ろす。
「‥‥」
たっぷり一分近くののち、頭が真っ白になっていた。
ウソよ、信じたくない‥‥
こんな‥‥本当に、今度ばかりは脱出の手が思い浮かばない‥‥
肩に背負うアルミ製のポールに磔の形で拘束されてしまった両手。肩・肘に2箇所と
手首、さらには首輪までもがポールに縛りつけられ、しかも鎖でなくナスカンで直接
連結されているため、ポールと腕とがぴったり密着している。
単純に引っかけて嵌める構造のナスカンも、指が使えない今、外せるはずもない。
それは両手を広げきった先の手枷とておなじこと。
この姿は、躯のどこにも手が届かない、きわめて巧緻な拘束なのだ。
そして私自身を解放する唯一のカギは不自由な手の届かぬ乳房の間、ニップルチェー
ンの中央にナスカンで連結され、ぶらぶらと揺れている‥‥
(どうしよう、どうすれば‥‥)
焦りはもどかしい刺激となり、ヒリヒリと全身に熱を帯びさせていく。
仮にポールの端まで手枷と留め具をずらしていったとしても、ポールの両端についた
丸い飾り玉が邪魔をしてポールから抜き取ることはできそうにない。
ポールそのものは軽く細い。
けれど女の力ではどうしようもない、強靭な磔の横木となって私を拘束しているのだ。
この手枷を外せなければ、私は一生このままだ‥‥
「ひふっっ、つぅッッ」
たぷんとアソコが蠕動し、みちりと淫音をこぼしてオツユがあふれだす。
桃源郷の境をさまよって、私のカラダはすっかりドロドロの汁まみれだった。全身の
拘束着にしみこむ汗。革マスクの下であふれる唾液。根元までバイブを飲み込んで、
浅ましいオツユ垂れ流しのクレヴァス。
こんなので‥‥
いや、この恐怖こそが私をこの極限まで煽りたて、グズグズに感じさせてしまう‥‥
もっとも深い無意識の底で望んでいた絶望の形がコレだった。
自分の姿に目を落とし、いとおしく噛みしめる奴隷の証‥‥口腔一杯にふくらみ舌を
押しひしぐ惨めなボールギャグの縁に歯を立ててくぅんと爛れた吐息をまき散らす。
あまりにも無残で、縄抜けの不可能な姿だった。
もはや何一つ自由の残されていない四肢。ただただ言いなりになるしかないマゾの形。
そもそもセルフボンテージは、コントロールする過程に達成感と快楽があったはずな
のだ。無謀にひとしい自縛でも、必死にもがき、悶え、快楽にのたうって苦しみ‥‥
それらすべてをコントロールして、最後には自由を取りもどす。
それが、自縛のカイカンだったはずなのに。
「‥‥」
ふ、クッ‥‥むせぶ熱い吐息をボールギャグの穴から吐きだすと、ヨダレがしぶきと
なって惨めに飛び散った。
空白になった頭は、しとどな官能に蕩けた頭は縄抜けの手段さえ思いつかずに無様な
自縛の舞ばかりをカラダに命じている。こうしてブルブルと、ひくひくと、どんなに
裸身を弾ませ、くねりよじらせたところで、金属の枷が外れる可能性などないのに。
これはセルフボンテージではない。
ただよがり狂うだけの、主のいない調教記録そのものだ‥‥
『奴隷市場で競りにかけちゃおうかしら。あなた、絶対売れ残らないからおしまいね。
普通の生活、捨ててみる?』
「ん、ク!?」
唐突に耳に届いた女性バーテンの声が、私をぶるっと震わせた。
パニックに塗りこめられ、忘れていた。
未だに、ビデオは延々と壁に映像を映しだし、連続再生を続けているのだ。
残酷な響きをこめ、バーテンの嬲り台詞が続いていく。
『戸籍も失って、一生快楽をむさぼるだけの人生。短命らしいわね、専属奴隷って』
ウソ‥‥
そんな、そんなのイヤ‥‥
でも、私、抵抗できないのに‥‥このままじゃ‥‥
あの時、あの瞬間感じていたおののき。
けれど、それはまさに今の私自身に重なってしまうのではないだろうか。
そもそも自縛の予定など立てていなかった私は、いつもと違って玄関のカギを閉めた
まま。この猿轡では悲鳴さえどこにも届かず、仮にどうにかベットから降りられたと
しても膝立ちの、両手を磔の、この姿では狭い玄関にさえ入ることができない‥‥
「ひぅぅぅ、んぶ、ンォ、いぁぁぁァァ‥‥!!」
どろりとあふれだす絶望の調べ。
連綿とくりひろげられる私自身の調教の記録と、何の変わりがあるというのか。
今の私はどこにも行けず、なにもできず、ただ機械的にイカされながら衰弱していく
ほかない、快楽をもさぼるだけの人形なのだ‥‥
はしたないその光景に目を奪われ、同じようにギシギシと身を軋ませつつ、ふたたび
鼻先へ突きぬけるような苦しく激しいエクスタシーに飲まれた拘束姿の裸身は、わき
腹を波打たせ、懸命に快楽反応を噛みしめながら軽々と絶頂へ昇りつめていく。
「ン~~~~~~~~~~ッッッ!!!」
拘束された両手が動かせず、アクメの衝撃が受け止めきれずにカラダの中を暴れ狂う。
声にならない絶頂の悲鳴とともに、ドプリとしとどな淫ら汁が、股間の革ベルトから
洩れだした‥‥
週明けの朝、更衣室で出会った中野さんと私は目を合わせる事ができなかった。SM
バーで肩を並べたステージ調教はほんの2日前。まだ、あまりに生々しかったのだ。
そそくさと挨拶して自分のロッカーに行きかけたところで、背中から声をかけられる。
「早紀先輩、一昨日の夜、会いましたよね」
「‥‥え?」
文字通り、ビクン、と背が跳ねた。ぎこちなくなる手足を押さえ込む。
カマをかけられている‥‥
あの時の奴隷が私だと、疑われているのだ‥‥
さりげなさを装ってふりむくと、いつもおっとりした顔の彼女が、はっきり疑惑の色
を浮かべて私を凝視していた。
「アレ、痛くありませんでした? 私、お股がひりひりしちゃって」
「ンーっと、ん、なに? 一昨日?」
「‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥違うの、かな? ホントに?」
「あの、中野さん。いいかな。もう着替えないと」
「あ、はい、えっと‥‥ええ」
粘りつく視線を振りきり、私はその場を立ち去った。ロッカーが彼女と対角線にある
のが、これほど嬉しかったことはなかったと思う。
なぜって‥‥
その時、私の肌には調教でつけられた縄目の痕がまだ鮮やかに残っていたのだから。

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

またしても意識を失い、浅い夢を見ていたらしい。
ふっと上半身を起こしかけ、カラダ中の筋肉がぴくりとも動かせないことに気づく。
あぁ‥‥そうだった。今の私は、人でさえないのだ。
最下層まで貶められた発情期のケモノ。
シーツの上で悶える機能しかない、発情中の、裸の置物に過ぎない‥‥
目覚めとともにたちまち苦しく浅ましいセルフボンテージの愉悦が汗みずくの肌身に
しみわたっていく。サディストの私自身によってデザインされた自縛の味は、Mであ
る私自身のツボを完璧につき、あらがう間もなく絶頂まで昂ぶらされてしまうのだ。
みずからの手で選びぬいた調教を奴隷の身に施されていくこの悩ましさ。
軽く身悶えただけで下腹部がにちりと淫音をしたたらせ、ゾクゾク責めあげられて。
自分好みのカラダへと躾け直され、無力に堕とされた躯を犯し貫かれる快感ときたら。
くぅ‥‥ンッ、ンン‥‥気持ちイイ‥‥
イイ、よぅ‥‥
「あフ、はぐぅぅ」
本気のよがり声、これさえかすれて声にもならないのだ。
助けを求めたくても、私の唇になじみきったボールギャグが愛情深く口内に食い入り
ストラップが頬をくびれさせるほど引き絞られていて、悲鳴さえくぐもった喘ぎ声に
変換してしまう。興奮しきっていた昨夜の私自身の手で施された拘束の硬さを、どれ
ほど恨めしく思いかえすことか。
完璧に口腔を埋めつくす口枷をわざと音高くぎしぎしっと咥えこみ、吐きだせないか、
せめて緩まないかときりきり空しく口の中で転がしてみる。
舌の根元をみっちり圧しひしぎ、歯の裏にへばりつく悩ましいスポンジボールギャグ。
小さな口元を限界まで開かせっぱなしのボールギャグは完璧に収まっていて、だるい
顎がひりひり疼き、残酷な圧迫感がつややかに官能を揺さぶりたててくる。
「くふっ、はぁンン、カハァ‥‥」
喘ぐ快感。声を奪われる快感。人としてのコミニュケーションを奪われる快感。
必死になって喘げば喘ぐほど、私のカラダはふるふると熱く淫らに茹だってしまう。
後頭部のストラップを解かないと声を取り戻せない。そんなことは分かっているはず
なのに。ムダだと、無意味なあがきだと、身をもって知っているのに。
なのに、煩悶はとめられず、体力ばかり消耗してしまう。
なんて愚かしく哀れなんだろう‥‥その思いがまた奴隷の躯をそそりたてるのだから。
堂々巡りの快感の輪廻。
ただしく、救いようがないマゾの業とでもいえるだろうか。
幸い、たっぷり水を含ませておいた猿轡は鼻を覆う革マスクに密閉され、喉の渇きは
心配なさそうだ。
けれど、そのせいで口の中はパンパンに膨れあがっていた。汗とヨダレで顔に張りつ
く革マスクの表面にボールギャグの輪郭がうっすら浮かびあがる光景は淫靡そのもの。
無残な縛めの身である私に可能なのは、ねっとり涎にまみれて唇と一体化した口枷を
ただ恨めしく見下ろすことばかりなのだ。
「‥‥‥‥ンっ」
首をふりたくっていた私は、やがてがくりと肩を落とした。
やはり、こんな手段では到底吐きだせそうもない。助けを求めるのは不可能だ‥‥
自虐的で悩ましい抵抗にズクリと全身が疼く。
爛れた粘膜をめくり返していくような、たまらない悦びと怖れの深み。
キュウキュウ蠕動するクレヴァスが、引きちぎりそうな勢いでバイブを飲みつくす。
そう。
まさしく、はしたないことに、狂おしいことに。
今の私はこんな行為にさえ感じきって悦びを極めさせられてしまう、マゾ奴隷なのだ。
つぅんと体内をつきあげる、得体のしれないおののきにあらがいきれずに‥‥
凄いっ、グジャグジャになってる、躯の中で暴れてる‥‥ぅ‥‥
「‥‥‥‥ッッ!!!!」
達してしまう瞬間、背筋がひきつれ、カクンと前のめりに崩れた私はきりりとボール
ギャグを噛み縛っていた。あふれかえる刺激の波の大きさにこらえきれず、絶望と被
虐の象徴に歯を立てたままブルブル全身をつっぱらせていく。
ボールギャグから水音があふれ、革マスクの内側をべっとり汚していった。

窓の外では、すでに日が高く昇りはじめていた。
週末にはまだ早い金曜日。体調不良だと中野さんを通して会社に伝えたのは昨夜だ。
日頃まじめで通っている私の欠勤理由が疑われることはないだろう。
OLたちが仕事をしているこの同じ瞬間、まさか熱に浮かされたセルフボンテージで
自由を剥奪され、絶望的な凌辱の渦に巻きこまれているとは、思わない‥‥はず‥‥
「きひッ‥‥ン、ひぅぅ、ふ、カフッ、ぃうンンン」
またっ、またイカされちゃう‥‥ッッ!!
止まら‥‥ない‥‥誰か‥‥
とぎれなく襲いかかってくるハードなリズムに、灼けついた神経が痛みで爛れていた。
腰がビクビクよじれ、たてつづけに昇天させられてしまう。イッた直後の裸身を容赦
なく責めあげるバイブの律動を、馴染みきったカラダはすぐ受け入れてしまう。
もうダメ‥‥
狂う‥‥狂っちゃう‥‥
完璧に痙攣しっぱなしの手足が動かせないだけで、どれほど苦しいものか。
例えばジェットコースターで急降下する瞬間、バーを掴むことができないとしたら。
高いところから足を踏みはずすあの一瞬が、永遠に終わらないとしたら。
身じろぎさえ許されない何重もの革拘束に責められながらのエクスタシーは、快楽の
波濤に乗せ上げられて降りることもリズムをとることもできない、コントロール不能
な凌辱の恐怖そのものなのだ。
「ひぐっ、ひぐぅぅぅ」
ただひたすらに上半身をグラインドさせ、甘い波に身を任せようとする。
けれどそれは、ニップルチェーンで連結された乳首をいたずらにかきむしるのと同じ。
身じろぎにあわせ、乳首に噛み付いた金属の金具が激しく揺れる。
過敏な先端をびりびりっと食いちぎる苦悩の衝撃は全身をすくませ、やがてじんわり
した疼痛となって乳房全体に広がり、腫れあがっていく。
我慢できない苦痛が、むずむず感が広がっていく。
それを嫌って上半身を硬直させていれば、今度は逆にヴァギナをえぐりこむ官能の渦
がたえがたいくらい沈殿していって昂ぶらされてしまう。
結局、どのような形にしても不自由なカラダは快楽反応の二律背反に板ばさみとなり、
むさぼらされるアクメにやがて意識を遠のかせてしまうのだ。
本当に凄い‥‥いくらでもイケる‥‥
止まんない、絶対、ダメ‥‥
このまま楽しんでいたら、溺れていたら、私は終わりだ‥‥
ギュッと瞳をつぶり、マゾヒスティックな楽しみを断ちきるようにして身を起こす。
ぐっとお腹に力が入り、下腹部のベルトが急激に股間に喰いこんだ。にぢりと肉割れ
が裂け、二分させられた恥丘を盛りあげながらさらにバイブが深く抉りこまれていく。
止まる気配もないバイブが、いやらしく唸りを上げる。
「ぅぅグ、んぁぅぅぅ」
すでに半日近くみっちり犯されつづけた私の躯は熟れきっていて、わずかなバイブの
角度の変化でさえ、爛れて敏感になった媚肉が喰らいついてくるのだ。
無神経な玩具に嬲られつつ、けだるい全身に残った力をかき集めてカラダを起こす。
セルフボンテージのお約束があってこそ、快楽は快楽でいられるのだ。
だからこそ。
金属と革の硬い縛めから、逃れなければ。
まだ余力があるうちに、気力が快感に溶かされてしまう前に、縄抜けしなければ。
胸の谷間で揺れる手枷のカギを、チェーンから外すのだ。
どうすれば外せるか。どうすれば、自由が手に入るのか。必死になって頭を働かせる。
単純にナスカンで留められているだけなのに、完璧な磔の身では手も届かず、顔半分
をすっぽり覆う革マスクとボールギャグのせいで歯を使うこともできない。
鼻先にぶら下がっているのに決して届かない、絶望の餌。
なら、ならば、緊縛姿の私に残された手は‥‥
‥‥行うべき行為に思い当たったとたん、想像だけでくらりと甘美な眩暈が走った。
はしたない行為。
まるで快楽をむさぼる子猫のような情けない行為。
それでも、何もしないわけにはいかない‥‥
覚悟を決めた私は、はしたなく喘ぎながら上半身をリズミカルにゆっくり振りだした。
最初は小刻みに、しだいに、大きく旋転させるように。
着慣れた革の拘束衣によってくびりだされていた大きな乳房が、たぷたぷと弾みだす。
2つの胸を繋ぐニップルチェーンを振りまわし、反動で手枷のカギを外そうとする。
「ンッ、んぎィ!」
ズキンと乳首に痛みがはしり、顔がのけぞっていた。
鮮烈でダイレクトな疼痛。金属のクリップに噛みつかれた乳首がじぃんと痺れ、痛々
しく充血して尖りきっている。かきむしりたいような狂おしさが乳房全体に広がって
いくのだ。
髪の毛がさかだちそうな刺激を我慢して必死に上体を弾ませる。
ギィンと遠心力でつっぱったチェーンが弧を描いて胸の谷間に叩きつけられる。その
衝撃と苦しさと、一瞬楽になった乳首に走る電撃めいたひりつきと。
磔になった両手がミトンの中で痙攣し、無意味にあがく。
ほとんど運任せで縄抜けとさえいえない稚拙な手段。それでも運良くこれでナスカン
が外れてくれたなら、すべてが終われるのだ。
この苦しい疼痛も、惨めでいやらしい卑猥な胸振りダンスも‥‥
ダメだ、そうじゃない、エッチなことを考えちゃいけないんだ‥‥またおかしく‥‥
絶望の味がこんなに気持ちイイのに、また感じ出したら‥‥止まらなく‥‥
不意に、ぶるぶるっと裸身がわなないた。
体の奥深くで大きくうねる官能のささやきに、躯がどろりと崩れだす。
いけない‥‥また‥‥私‥‥
あふれる刺激をこらえようとねじった顔が壁際の鏡を見つめ‥‥それが終わりだった。
悩ましく瞳をゆがめ、快楽の熱をむさぼりつくす奴隷の姿。
‥‥どうして抗えるのだろう。
これが、私の最高の望みだったのだから。
ひとしれずイキ続け、決してほどけない拘束の中で無情にのたうつのが‥‥
本当に、なんて情けない姿。哀れで、綺麗で、蕩けそう‥‥
千切れそうな痛みが、膨れあがった乳首の掻痒感が、とめどなく肌を灼きはじめる。
どうしようもない不自由さ、もどかしさが、マゾの疚しさにすりかわって甘く激しく
カラダを苛みだすのだ。
ふぅふぅと息を吐く頬が、じわじわと快楽の波に火照りだし、耳まで染まっていく。
違う、私はこんな刺激なんか求めていないのに。
この無限ループから抜け出したいのに、残酷な拘束はゆるむ気配も見せなくて。
自由を剥奪された事実そのものが、絶望的に身を揺すりたてるだけの行為そのものが、
めくるめく快感を裸身に注ぎ込んでくるから‥‥
ふたたび下腹部がよじれ、バイブを振りたてて深く深く収縮と蠕動をくりかえしだす。
嫌だ、もう、こんな形はイヤなのに。
こんな、このままじゃ、また私、イかされちゃ‥‥‥‥ッッ‥‥‥‥
「‥‥‥‥!!!!」
刹那、意識を走った火花はまさに真っ白く脳裏をアクメでぬりつぶして。
圧力だけで壊してしまいそうなほどに、みちみちとお股のバイブを喰い緊めたままで。
ガクガクッと絶息し、ふるふる肩を震わせる私のお腹には依然として冷たいチェーン
のとカギが、空しい努力をあざ笑うかのように押し当てられたままだった。
ふぅ、ふぅぅと爛れた喘ぎが絶頂の苦しさを物語る。
終わらない。
終われない‥‥何度イかされても‥‥抜け出せない‥‥自縛の罠から‥‥

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

放心‥‥して、いたのだろうか。
気づいた時、私は天井をながめ、シーツの上に身を横たえていた。
横たわるといっても、頑丈な革の足枷に折りたたまれた下半身は立てた膝を伸ばせず
苦しい姿勢のまま。ポールに括りつけられた磔の両手はベットからはみだし、手首が
宙に垂れている。肩の下に固定された棒のせいで肩甲骨が浮き上がり、背中が反り返
ってしまうのも終わりのない自縛の辛さを強調するのだ。
ねっとりと、みちみちと、身じろぎに応じて革鳴りが響き裸身が緊めつけられる。
たえまないアクメの連続でふわふわカラダが地につかないような、非現実めいた陶酔
が全身をむしばんでいる。
けだるく甘い絶望の果実、そればかりを味あわされて。
想像以上に四肢は憔悴しきり、ぐったりと気力を失って弛緩しっぱなしだった。
無理もない。
ろくに食事もとらず、ひたすらに絶頂を極めさせられて、体力が消耗するのは当たり
前なのだ。こうして時間がたてばたつほど症状はひどくなり、セルフボンテージから
の脱出をさらに困難にしていく。
悔しさでじわっと涙が滲み、拭くこともできずにつぅと頬をしたたっていく。
天井にのびた陽射しが、徐々に影を濃く伸ばしだしていた。壁のTVもいつのまにか
消え、静かな室内にこだまするのは浅く鼻にかかったマゾの嬌声ばかり。
「‥‥」
キュッとボールギャグを噛みしめ、この悪夢が現実だということを再確認する。
‥‥運良く、誰か部屋にこないだろうか。
そう。例えば、隣の水谷君が異常に気づいて入ってきてくれたら。
現実逃避の妄想さえ浮かべてしまうほど、私の理性は疲弊しきっていた。
当然、都合のいい展開が転がってくるはずもなく、革の拘束具は手足を阻んだままだ。
芋虫のようにいざり、のたうち、よがりまわって。
どうしたらいいの、私は‥‥?
身の内を引っかきむしるような鋭い焦りが、冷汗が、全身をびっしょり濡らしていた。
絶望したら、希望を失ったらそこで終わってしまう。
せめて‥‥そう、せめて私をセルフボンテージに導いたご主人様に、間違って拘束具
の小包を送ってきた見知らぬマスターに出会うまでは、諦めるわけにいかないのだ。
シーツの上で七転八倒し、ようやくのことで上半身をおこす。
たったこれだけで、もう私はぜいぜいと息を切らしていた。その事実にぞっとする。
体力が、余力があとわずかしか残されていない。
「くぅッ」
閉じられない歯を食いしばり、女座りの姿勢から転倒に気をつけて静かにうつぶせる。
たわわに充血し、ビリビリしびれる乳房が体重で押しつぶされ、悲鳴をあげていた。
カラダの下でニップルチェーンが引き攣れ、麻痺しかけていた神経に、新たな疼痛の
芽が乱暴な勢いで塗りこめられていく。
「ん、んくぅ‥‥ふぉォォン!」
たえがたい痛みに惨めにも反応させられ、バクンと弾んだ裸身はお尻を高々と掲げた
ぶざまな姿勢で凍っていた。磔の横木が背に食い入り、断頭台のようにシーツに頭を
うずめさせた。口枷を食いしばり、やっとの思いで顔をねじって呼吸を確保する。
なんて淫らな光景なんだろう‥‥
イメージするだけでどろりとカラダが達しかけてしまう。
これは、オシオキを待ちわび、マゾの悦びにオツユをしたたらせる服従のポーズだ。
バックから犯されるときのケモノの姿勢。違う、だから、カギを外すことだけ考えて
‥‥疚しい邪念を払いのけ、ゆっくり腰を前後に振りはじめる。
カラダの下敷きになったチェーンはねじれ、ナスカンにも体重がかかっていた。この
ままチェーンをシーツに擦りつけてやれば、あるいは外れるかもしれない。そういう
読みなのだ。
チェーンそのものをナスカンに押しつけようと、カラダをくねらせて調整していく。
「くッ‥‥んんぅフ、ヒクッ」
しかし、上下動を繰りかえしだしたとたん、全身が狂ったように跳ね蠢いた。
気違いめいた衝撃と、意識を遠のかせる快感の波。
チェーンよりも先に揉みくちゃにされた乳首から量りがたい刺激の奔流がだくだくと
流れこみ、甘い悲鳴が自然と絞り出されてしまうのだ。
下腹部に突き立ったバイブまでが拘束衣の軋みにつれてズリズリ蠢いて、まるで本当
にバックから犯されているみたいな、妖しい気分になってしまう‥‥
「ンンッッッッ」
チリン、ちゃりっと金具のぶつかる音が響きつつも、のぞきこむ胸の谷間から一向に
ナスカンが外れようとしない。体重をかけ、ナスカンの可動部にチェーンを押しつけ
ようとしても、柔らかいシーツに埋もれたナスカンはすぐに滑ってずれてしまう。
なによ‥‥どうして、うまく‥‥いかないの‥‥
考えてみれば、その時すでに私は呆けきっていたのだ。
手も使えないのに、どうして柔らかいシーツに押しつけただけでナスカンが外れると
思い込んでしまったのだろう。これこそ不可能に近いというのに。
もっと有効な手はあったはず。
膝の間にはさんでナスカンを外すなり、自由な足の指を使う方法を考えるなりすべき
だったのだ。けれど、もちろんそうしたアイデアが浮かびかけた時にはすべてが手遅
れで。
「あぁン、ふぁぁぁン、ンンーー!」
いつのまにか。
まさにいつのまにか、痛みにむしばまれるこの儀式は本来の目的を見失いつつあった。
ピンと括りつけられた両腕が、ギシリギシリと革にあらがって淫らな軋みを奏でだす。
痛くて痺れて感覚さえおぼろになりかけて、なのに、腰の反復運動だけが奇妙にイイ。
気持ちイイ感覚に流されて、とめられずに暴走しだすのだ。
イケない、まただ‥‥
私、また‥‥うぅ、どうしよう‥‥
また、また‥‥最後までイきたく‥‥イかされたく、なっちゃってる‥‥
ビクビクッと裸身が突っ張り、激痛とただれきった痺れがオッパイをじぃんと激しく
包み込んでいく。すごい、本当に感じてる。ご主人様の手でグチャグチャに嬲られて、
思いきり揉みしだかれているみたいな、そんな気分に、なってる‥‥
‥‥理性だけは失うまいと踏みとどまるのも、儚い抵抗で。
ねじれきったニップルチェーンの鎖が、クリップにはさまれて充血した乳首を痛烈に
ひしゃげさせた次の瞬間、私は声をあげて思いきり絶頂を迎えてしまっていた。

             ‥‥‥‥‥‥‥‥

窓の外が、昏くなりかけている。
夜が、不自由なままで迎える夜が、やってきた‥‥
いじましさ、焦り、消耗、すべてが渾然一体となり、私をけだるく束縛していた。
硬い革拘束の残忍さだけではない。ことごとく思いついた脱出の方法が失敗に終わり、
疲弊した肉体はもう縄抜けをしようと決意する気力さえ奪われてしまっているのだ。
どうしようもない、自縛の、終わり。
あっけないものだと思いかえす情けなささえ希薄で、ただひたすらに全身を震わせる
凌辱の悦びに私は痙攣を続けるばかりなのだ。
まさに、ベットの上に置き去りにされたインテリアのように、震えるだけの存在‥‥
「みゃーー」
聞きなれた声が私を現実に引きもどした。シーツに爪をかけ、よじのぼってくる子猫。
テトラにエサを与えるのを忘れていたんだっけ、私。そっか‥‥
‥‥
‥‥‥‥
そうだ、テトラなら!
天啓がパァッと連鎖的に閃いていった。
テトラ。私の飼っている子猫。人なつこく、好奇心おうせいで、活発な子猫。そして
引っかきグセのある・・・・・・・・・子猫だ。
バーテンの罠から私を救ってくれたのもこの子だったのではなかったか。あの時も、
外しようがなくのたうちまわっていた私のコートのボタンを引っかきまわし、いとも
器用に外してしまったのだから。
なら、この子になら、テトラなら、ニップルチェーンから伸びるナスカンだって‥‥
「ンッ、くぅんンン」
不自由な猿轡の下からつとめて喉声をあげ、テトラの気を引こうとする。もっとも、
愛想をふりまかなくても腹ペコの子猫は私に注意を向けてくれたようだった。
とことことやってきて、そこで私の興奮具合に気づいたのだろう。ブルブルっと躯を
揺すりたて、なぁーと甘い声で擦り寄ってくる。
不自由な奴隷のカラダで子猫を待ちわびるドキドキと緊張感は限界まで高まっていた。
心臓の鼓動が壊れそうなぐらい。無理もない、この一瞬を逃したら、私は二度と自縛
から逃れられないのだ。
太ももにぴっちり吸いついた革の足枷にじゃれかかるテトラを、必死になって乳房の
方に集中させようとする。上半身を弾ませ、キラキラとニップルチェーンを光らせる。
テトラ、こっちだよ、こっちこっち‥‥
足枷なんかどうでもいいから、ホラ、このチェーンをいじって‥‥
チェーンの、ね、中央の、ナスカンを引っかいて外すの‥‥
声を出せぬ口の中で必死に呼びかけ、子猫の機嫌をとろうとしている。どうしようも
なくいじましい、緊縛奴隷と移り気なペットの駆け引きだ。私にはいっさいの自由が
残されていないのだから、ただ子猫のきまぐれに身を任せるしかない‥‥
無力な裸身がビュクビュク疼く。
ニップルチェーンを振りまわす乳首はギリギリ疼痛に変形し、浅ましさでカァァッと
カラダは火照りだす。
なんて惨めで、卑猥で、いやらしいんだろう。
被虐の悩ましさを体感させられ、とぷりとぷりと蠢くクレヴァスが蜜を吐きだす。
子猫のほうに絶対的な主導権がある以上、私はそっと促すしかないのだ。
やがて‥‥
「みゃ」
一声あげたテトラは、唐突にジャンプしてニップルチェーンにぶら下がった。
鮮烈な痛みが、激痛が、もっとも敏感な先端をつらぬく。
「ヒゥゥッッ!」
こみあがった悲鳴はまぎれもなく恐怖と痛みによるものだった。
思わず上体をたわませて後ろに逃れかけ、そのカラダが不自然にガクンと硬直する。
飛びつき、ぶら下がった子猫のがニップルチェーンにそってずるずる滑り落ち、中央
に下がったナスカンに思い切り体重を預けたのだ。
「ピギャア!」
びっくりしのか威嚇の唸りをあげ、子猫がぎゅむっとナスカンにしがみつく。両足を
つっぱらせた不自然な立ち姿で、子猫は私のニップルチェーンを‥‥そしてその先の
乳房を、異様な勢いで変形させていくのだ。
信じがたいほど鋭角にV字に張りつめたニップルチェーンが、歪に乳首を引き伸ばす。
その痛みが、たえがたいむず痒さが、私を恐慌に突き落として。
千切れちゃう、痛いっ‥‥
お願いだからテトラ、ヤメッ‥‥‥‥‥‥ッッッ!!
「‥‥‥‥ンム、んぅぅ‥‥」
「ピニャァァ!」
威嚇の声をあげて子猫がぴゃっとベットの端まで飛びのく。
ちょろちょろっと私の股間から溢れたのは、言うも恥ずかしい‥‥生理的欲求だった。
湯気をあげるおしっこが、あまりの痛みにせきを切って洩れだしたのだ。
「‥‥!!」
誰も見ていないというのに、顔が真っ赤に火照っていく。
自縛プレイの真っ最中に飼い猫に責められ、あろうことか失禁してしまうなんて‥‥
子猫にお漏らしさせられてしまったのだ。
あらかじめ何重にも敷いてあった防水シートとタオルの上に、おしっこがしみていく。
呆然と、拘束された躯をヒクヒク揺すりあげてありえない痴態を眺めながら、解放感
と恥辱の羞恥に意識をさいなまれ、ふたたび私はマゾの愉悦をむさぼらされていた。
ゾクンゾクンと跳ねる腰が、渦を巻く頂上の遥かな高みへ裸身をつきあげていく。
こんな、こんなことでまたイカされてしまう‥‥
さらに消耗した私は、無力な自縛姿で延々と、自動人形のようにイキ続けるのだ‥‥
「くぅぅぅゥッッ!」
絶頂の苦しさに背がのけぞり、大きくおなかを波打たせて深呼吸しようとする。
嫌だだった。
こんなので、こんな恥ずかしい形では、イキたく、ないのに。
ぶるりと腰が震え、おしっこの最後の一滴が、ちょろっ、と解放されて。
「‥‥‥‥」
恥辱のあまりギュッと瞳を閉じたまま、私はエクスタシーにつきあげられていた。
びっしょり汗にまみれたカラダを室内にさらして、たちのぼる臭気から逃れることも
できず。
でも、でも‥‥
視線の先、そこにはナスカンの外れたカギが転がっていた。
ポールに括りつけられた両手を解放しうる唯一のカギ。唯一の、最後の希望。
ミトンを嵌められたこの手で扱うのは難しい、けれど少なくともこれで、カギは私の
手に入ったのだ。
「んっ、んっクッ」
喉を鳴らし、ようやく絶頂のリズムにカラダを馴らして愛しい子猫を見やる。
彼女は眉の間をしかめ、鼻をくっつけるようにカギのにおいをかいでいた。
そして。
テトラは、不機嫌そうな猫パンチで、手枷のカギを弾いたのだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
完全に凍りついた私の前で、ようやく外れた手枷のカギが転々と転がりだしていた。
シーツの上を弾み、埋もれる小さなカギ。それが気に入ったのか、しきりにテトラが
前足で転がし、そして、次第にベットの端の方に追いやっていくのだ。
「んんンッ、んふぅぅぅゥーーーーッッ」
喉の奥で声も吐息にもならぬ絶叫をあげ、慌ててテトラを押さえつけようとして‥‥
わが身の浅ましい現実に愕然となる。
みっしりと革の手枷足枷に塗り固められた彫像そのものの裸身。
今の私は、テトラをつまみあげることさえできない、どころか声を荒げて叱りつける
ことさえできない、文字通りの無力な状況におかれていたのだ。
それでも、被虐の官能に浸かりきって力なく折りたたまれた下半身を悶えさせ、深く
シーツに沈みながらも無意味にあがきまわって子猫に近づこうとする。たぷんたぷん
乳房をふりまわし、はたから見たらさぞ扇情的だろう煩悶も、エクスタシーの苦しい
痙攣を押し殺す私にとってはこれが最後のチャンスなのだ。
とにかく、カギさえ手に入れれば、あとはこの辛い一人遊びから解放されるのだから。
一度に5センチずつ、10センチずつ、じりじりと子猫ににじりよっていく。
駄目よテトラ、違うの‥‥
それは、あなたのオモチャじゃないの‥‥やめなさい‥‥!!
本当に‥‥怒る、から‥‥だから‥‥
「はグぅぅ!」
ぐらりとよろめいて踏んばった瞬間、鮮烈な快感が衝撃となってカラダを貫いていた。
ニップルチェーンが足枷の紐にからまり、私は私自身の全体重で爛れきった乳房を、
すでに虐めぬかれてジンジン痺れている乳首を、円錐形に引き伸ばしてしまったのだ。
純粋な、まじりっけなしの痛みに涙があふれだす。
ひどい、こんなの‥‥カラダ、壊れちゃう‥‥
つんのめった躯が、頭からひっくりかえりそうになる。
あわてて体を支えかけた手はしかし革の枷に引き戻され、今度は逆に自分の漏らした
おしっこの痕に顔からつっこみかけていた。焦って弾ませたカラダは反動でずるりと
滑り、かせいだ距離をあっというまもなく引き戻されてしまう。
まったくの無駄。手を休めた子猫までのほんの1メートルが、はるかに遠すぎるのだ。
「ン、はぅ‥‥ンンッ」
乳首の痛みに上体を折ってよじったカラダを、つぅんとマゾの愉悦がつきぬけていく。
不思議そうに首を傾げるテトラにさえ、子猫にさえ弄ばれ叶わないこの現実ときたら。
あまりに、あまりにいじましくて、私をおかしくさせていく。
本当に‥‥どうして、私はこんなに惨めな目にあわされているんだろう‥‥
ひどすぎる‥‥こんなので、もう、感じちゃっている‥‥
ゾクゾクッと悦びに口の端から涎があふれ、下腹部でジュブブとバイブが蠢き、甘い
甘い悦楽がびっしょりと全身にしみわたっていく。もはや、裸身を嬲りつくす情欲に
あらがうのがやっとの私は、這いずることさえ満足にできないのだ。
「みャ、み?」
私をじっと凝視していたテトラが、ふたたび興味を失ったのかカギに向きなおった。
焦燥と恐怖にかられ、大きく瞳を開いて口枷から嗚咽をもらす。
駄目、お願い、テトラ‥‥それだけは‥‥
許して‥‥
「くぅ、んん、ンンンッッ」
「ミ゛ャン!」
叩きつけた前足に弾かれたカギは、放物線を描いてベットのふちを飛びこえて。
そのまま、あっけなく、視界から消え去った。

時が、止まった、ような気がした。
チン、チリンとフローリングの床に金属音がこだまし、そして静寂が戻ってくる。
手枷のカギを、拘束を外す唯一の手段を、失った。
薄ら寒い事実が、状況が、認識が、紙のようにうすっぺらく頭の中を上滑りしていく。
脱出の手を奪いとられ、イかされ続けたカラダは消耗しすぎていて。
もう‥‥
私は、二度と‥‥
この拘束から、死ぬまで‥‥脱出、できない、の、だろうか‥‥‥‥?
‥‥
‥‥‥‥
転がり落ちたカギを、さっきまでカギがあったはずの場所を、私は呆然と見つめ‥‥
刹那、発狂せんばかりの桃源郷が、快楽の深淵が、怒涛をあげて殺到してきた刺激の
濁流が、緊縛され発情した汗みずくの裸身をのみこんでいた。
イったばかりのカラダがたちまちよがり始め、昇天へのカウントダウンを刻んでいく。
未だに止まらぬバイブに犯され続けて、せわしなく弾む四肢は私の意志をうらぎって
ひくひく蠢き、縛めの残酷さを嫌というばかりこの躯に味あわせてくるのだ。限界を
知らぬアクメの途方もない刺激が、ひらすらに神経を灼きつくしていって。
「ひィィ‥‥グッ、うブッ」
あまりの快美感に息さえ詰まりかけ、ボールギャグの中で激しくむせこんでしまう。
辛い、苦しい‥‥
極まった快楽の頂上が、こんなにも、痛みにさえ、近いなんて。
酸素不足で意識が白く染まっていく感覚さえ、ただ果てしなくとめどなく快楽衝動を
あきあがらせて。ビュクビュクンと、男性みたいに悶え汁をクレヴァスのほとりから
垂れながし、なす術もなく躯を革の枷に預けきったまま、上気しきった裸身で被虐的
な絶望の調べをどこまでも奏でさせられて。
ただ、私は無力に、拘束された肢体をしどけなく突っ張らせ、のたうつしかなかった。
嫌というほど味あわされた、エクスタシーの頂点めがけて意識が遠のいていく。

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

「あ、お早うございます、佐藤さん」
「お早う、水谷君。今日もずいぶん早いのね」
扉を閉めたところで耳にするのは聞きなれた爽やかな声。ちょっと胸を弾ませつつ、
私もとっておきの笑顔で答える。
「部活の方で集まりがあって‥‥駅まで一緒に行ってもいいですか?」
「いいわよ。せっかくだし、腕でも組んでいきましょうか」
「は、はは‥‥もう、参るなぁ、早紀さんには」
年下の男の子をからかうのがこんなに楽しいなんて。
今朝もまた、彼を異性として意識する自分を再発見して、新鮮な気持ちになれるる。
アパートの隣の住人、水谷碌郎(ろくろう)君は最近越してきた大学生で、はにかみ
気味の笑顔がかわいらしい好青年だった。
何度か宅配便を預かってもらったのがきっかけで仲良くなり、最近はバーに誘われる
こともある。まだ男女の関係ではない、けれど、お互いに強く意識し、惹かれあって
いるのはまぎれもない事実だった。
OLと大学生、本来なら生活時間もずいぶんズレそうなものだが、お隣同士の私たち
はたいてい毎朝マンションの廊下で顔をあわせることになる。
「じゃ、行きましょうか」
「そうですね」
並んで歩きだすのがごく自然に思えるほど、私は彼を身近に感じるようになっている。
かわいい年下の子。
それだけでないミステリアスな部分も、彼は持っていた。
セルフボンテージを始めるようになったきっかけ。
危うく他の人に見つかりかけて、何も知るはずのない彼に救われたこと。
およそ出来すぎなほど、彼は私の自縛プレイに知らず知らず関わってきている。
それゆえ、私は疑ってもいた。
実は水谷君が、佐藤志乃さんのご主人様だったのではないのだろうか‥‥
彼こそが、私に拘束具を送りつけ、自縛マニアに調教してのけた、まだ姿の見えない
ご主人さまその人ではないのだろうか‥‥

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

「う‥‥」
つらい、つらい意識の浮上。
酸素が欲しいのに水面がはるか上にあって、泳げば泳ぐほど沈んでいく‥‥
「‥‥ッ、あむ、んんンッ」
目覚めると同時に口腔いっぱいに食まされた口枷が軋み、歯を立ててむさぼるように
ボールギャグを噛み絞っていた。たまった涎を苦しい思いでふたたび飲み干していく。
ひどく空腹で、ひどく気だるく、そして、喉が渇いていた。
あれほど濡れそぼっていたボールギャグも、かなり乾いてきてしまっているのだ。
しずみかけた残照が、室内を照らしている。
顔を傾けて日の残り具合を確認しようとすると、ベランダをしきる窓ガラスに私自身
の完璧な拘束姿が鏡写しにあぶりだされていた。もう、それほどに夜が近いのだ。
‥‥時間の流れに、なんの意味があるのだろう。
縄抜けの、セルフボンテージからの脱出に、私はしくじったのだから。
ただの一度。そして、致命的なミス。
TVが消えていたのは、お腹をすかせたテトラの仕業だったのだなと今にして思う。
その子猫も、彼女が弾き飛ばしたカギも、どこにも見当たらない。
「‥‥」
もう、おしまいなのだろうか。
完膚なき絶望しか、残されていないのか。
縛りつけられた手首に目をやる。硬い革のミトンに指の自由を奪われた手。仮にあの
カギを手にできていたしても、この手ではカギをつかむこともひねることもできない。
まして、その手首を縛りつける手枷の鍵穴にカギをさすなど、物理的に不可能なのだ。
最初から穴だらけの杜撰な計画で。
とにかく早く気持ちよくなりたくて、いい加減なセルフボンテージを施してしまって。
「うぅ、うぅぅ‥‥」
涙があふれた。悔しさと、情けなさと、自嘲がグチャグチャになっていた。
こんな躯で感じまくって、本当にもう何度イかされたか数えることさえできないほど
よがり狂わされて、これが、この貪欲で意地汚い姿が、奴隷としての私なのだ。
だって‥‥
こうして悶えているのさえ、気持ちよくて、死にそうなんだから‥‥
ジュブ、ジュブブッと、淫らな律動が下半身で響いている。喰い緊める秘裂の内側で
粘膜をかきみだすバイブの振動。かなり弱くなってきたリズムに合わせて、今だって
腰がグラインドして、止まらないんだから。
恥ずかしい‥‥バカみたいで、このままいくらでも飛べそう‥‥
「‥‥」
長く息を吐き、じょじょに、ゆっくり躯を起こしていく。
このままで良いはずがない。まだ、なにかあるはずなのだ。忘れていた何かが‥‥
その時、ようやく呆けた頭が引っかかっていたことを思いだした。
ひどくのろのろと上体を起こしていく。
キシリ、キシリと上半身を何度もうねらせ、窓ガラスに映った自分を確認する。
自分の背丈より長い金属のポールを背負わされ、両手をみっちり括られて前屈みの姿。
ゾクゾク背を嬲るマゾの妖美さにあてられぬよう、脱出方法をふたたび検討していく。
たしか、最初の自縛後‥‥
理性を取りもどした時に頭をよぎった可能性は2つあったはずなのだ。
一つは手枷のカギをニップルチェーンからはずし、ミトンをかぶされた手でどうにか
手枷を自由にすること。すでに失敗した手だ。
そして、もう一つ。
背負った磔柱から飾り玉を外し、手枷を固定する金具そのものをポールから抜き取る
こと。それがができれば、カギなどなくても自由を取り戻せる。
きっちり両端に嵌まった飾り玉を、ポールのネジ溝に沿って回転させ、外す‥‥
でも、どうやって。
肘も手首も固く締めつけられていて、裏返すことのできぬ緊縛姿では、飾り玉を手で
回転させることが不可能なのだ。仮に手枷がゆるんだとしても、なめらかな飾り玉の
表面は、革のミトンではつかめず回転させられないのではないか。
「‥‥」
実際に手首をひねり、懸命に飾り玉をつかんで回そうと試みる。
革手袋の表面が飾り玉の球面でつるつる滑り、どうやっても、どんなに力を込めても、
この不自由な体勢では回転する気配もない。ミトンの表面で飾り玉を磨いているよう
なもので、逆にどんどん手がかりを失い、回せなくなってしまうのだ。
どうしよう‥‥
深い、絶望の暗闇が足元に口をあけて待っている。
もはや背中合わせの感覚。ううん、すでに、私はこの虚無に飲まれているのかもしれ
ない。縄抜け不可能だと、この拘束は残酷なのだと、身にしみて感じているのだから。
今度は、腕をベットにすりつけてみる。
飾り玉を回転させるように、背負った磔柱の端をこするようにして弧を描く。うねる
シーツになるべく均等に力を加え、少しでも嵌まったネジ溝がゆるむようにと期待を
かけてじりじりした作業をくりかえすのだ。
何度も、何度も。
長い金属ポールを背負っての作業はひどく疲れるものだった。もどかしい作業のせい
で躯が焦れ、消耗がそのまま疚しい不自由な快楽に、マゾの官能にすり変わっていき
そうになる。乳首の疼痛を、下腹部のうねりを、ぐっと噛み殺して悶え続けるのだ。
「ふグ、んむぁぅ」
いらだった声が甘く乱れ、ギョッとしてさらに腕をこめていく。
感じてしまってはいけない。それだけははっきりしている。
しかし‥‥
ピクピクンと背筋が引き攣り、自らの行為の惨めさに、その望みのあまりの薄さに、
裸身が痺れはじめていた。こんな非効率的な作業に意味があるのだろうか。ここまで
完璧に私自身の手で施された自縛が、この身を陶酔させるほど無残に食い入る拘束が、
今さらあっさりほどけるとでも思っているのだろうか。
だとしたら、あまりにご都合主義で、いい加減な妄想じゃないだろうか‥‥
やがて息が切れ、ようやく作業を中断する。
柔らかいベットに擦り付けたところで手ごたえなどない。けれど、ひょっとしたら、
少しでも緩みだしているかもしれないのだ。
おそるおそる手首をひねった私は飾り玉に触れ、力を加えて緩んでないかたしかめる。

左右の端についた飾り玉は、溶接されたかのようにびくともしなかった。

「うぅン、ハァ、ンンンッッ」
こらえきれずに倒錯した喜悦の喘ぎがあふれだす。
幾度となく、手を返し品を返し、くりかえし肌にすりこまれていく無慈悲な絶望の味。
わかりきっていたことだった。当然、あの時の私はこんな単純に外れるような仕掛け
を用意して、自分にセルフボンテージを施すはずがないのだから。
何よりも私自身の発想を知り尽くしている、もう一人の、サディストの私自身の罠。
どうやったって、逃れようがない‥‥
「あぁ、ぃあぁァァ」
ぶるぶるっと、魂の奥底から揺さぶりかけるような被虐の波が覆いかぶさってきて‥
アクメへの階段を駆け上がりながら、くるんと意識が暗転した。

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

あの朝も、いつものように水谷君は照れた笑みを浮かべていた。
「週末のこと、なんですけど‥‥どこが、いいですか」
「‥‥」
爽やかな笑み。嬉しげな表情。その彼を、私はきちんと見ることができない。その朝
が、バーテンに脅されて調教の約束をさせられた次の日の朝だったからだ。
「実は、ちょっと変わったバーを見つけて」
「‥‥」
「バイト代も入ってきたので、良かったら俺にもおごらせて下さい」
すごく嬉しかった。同時に、期待もしている。
SMにのめりこんでいるとはいっても、私もまだ普通の恋愛を捜し求めているところ
はあって、ようやく積極的になってきた年下の彼が発するサインは分かりすぎるほど
感じ取ってしまう。
ここしばらく恋をしていない。最近、久しぶりに、そうなりかけているのを感じる。
だから‥‥なのに‥‥ううん、だからこそ‥‥
「ゴメンなさい」
「え」
「急なことで悪いのだけど、用事が入ってしまったの。だから、その」
「キャンセルですね。分かりました」
傷ついたような目を伏せ、さとられまいと水谷君はかえって明るい声を上げていた。
答えてあげたいのに。
本当は、彼にリードされても良いかなって、思いだしているのに。
今の私は、彼とつきあうわけにはいかないのだ。
なぜって。
その時、私はもう、私自身のカラダじゃなくなっているかもしれないから。
バーテンとの約束の期日は2週間後。その後、私があの女性バーテンのモノになって
いないと、あの人だけの奴隷に堕とされていないと、誰が断言できよう。
拒絶するつもりでいる私でさえ、本気で迫られたら逃れられないと感じているのだ。
だからこそ。
彼を好きになれそうだからこそ、裏切るようなことはしたくない。
だから‥‥

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

「はっ、ハァァッ」
ぶり返してきた淫虐の熱に浮かされ、私はギシリギシリと身をよじって悶えていた。
唐突にあふれだす、尽きることのない甘い果実。被虐の陶酔にかられ、火照った肌は
いくらでも刺激を受け入れてしまうかのようだ。
腰を浮かし、振りたててみる。
とたんにビチッと濡れた音がつぶれ、強烈な痛みと狂おしい愉悦が神経に流れこんで
くる。みっちり股間をクレヴァスを左右に裂き、バイブの底だけを残して長い全体を
みっちり肉洞に埋め込ませている張本人‥‥拘束衣の革ベルトが、みじろぎに合わせ
クリトリスを揉みつぶしながらギクギク前後に擦れてしまうのだ。
こんもり左右にくびれ盛り上がった恥丘の谷間で、真っ赤に爛れているだろう肉の芽
が、クレヴァスからのぞく淫核が、たえまなく甘い高熱を発して私を煽り立てるのだ。
「‥‥ッ、ムフゥッッッゥ、くぅ、んブ、オブッ」
息もつかせぬ連鎖的な絶頂と昇天。
跳ねる腰がとどまることなくアクメを導き、びっしょり濡れそぼって繊細な毛を張り
つかせるみだらな潤滑液が、この期に及んでさらに私をいくらでもイかせようとする。
悩ましく惨めな愉悦によって奴隷ならではの快楽を与えられ、躾けられて‥‥
従属させられた私は抵抗もできず、強制的にイかされるばかり‥‥
ガクガクンと裸身が跳ねた瞬間、腰が抜けそうなほどに深く渦を巻いてアソコが収縮
しはじめた。みちみちと粘膜をまきつかせ、絡みつき、ざわざわとバイブを引き込む
ように蠢く。
セルフボンテージの、残忍な緊縛がもたらす快楽の極致。
ほうけた意識はしだいに現実とその他の境目を失いつつあるようだった。
ひっきりなしにテトラが耳ざわりな鳴き声をあげている。お腹がすき、この娘も不機
嫌になってしまっているのだ。せめてこの声に、この異変に誰かが気づいたら‥‥
しかし、それが甘い期待だということは理解できていた。
ペットOKなマンションは防音もきっちりしていることが多い。つまり、ここでどれ
ほど暴れよがり狂っても、異常は外に伝わらないということだ。
時折、人や車の音が届いてくる。多くの人々が普通にウィークエンドの夜をすごして
いるのだ。マンションの廊下を歩く靴音さえ響いてくる。
‥‥彼らは、扉一枚へだてた向こうで絶望にのたうち、脱出不可能な自縛に苛まれて
助けの手を求めるOLがいることなど気づかないのだ。
閉ざされ、カギをかけたドアでは、どのみち誰も入ってくることなどできない。水谷
君が運良く気づいてくれたとしても、そのときには、私はもう‥‥
「!!」
はっと瞳を押し開き、私は逸る可能性を冷静に検討しようとしだしていた。
部屋の間取りがこうなっていて、ドアの向きがこっち側、ということは、つまり‥‥
ドクンと胸が波打ち、苦労して鼓動を刻んだ。
間違いない。
今横たわるベットの、頭を向けた壁の向こうが、水谷君の部屋だったのだ。とすれば。
この時間、あるいは彼が大学から帰ってきているのかもしれない。
もどかしく腰をズリ上げるようにしてカラダを起こした私は、背中を壁に押しつけて、
ドンドンと金属のポールを壁に叩きつけはじめた。
届くだろうか‥‥
運良く、かって宅配が来た時そうだったように、彼が居てくれないだろうか‥‥
私に、私のSOSに気づいて、ご主人さまがやってきてくれたなら‥‥
ドン、ドンドン。
背をこじって壁をノックする音の弱々しさが、あらためて私の消耗を示していた。
息切れで目が眩み、必死に酸素をとりこもうと胸をあえがせる。
乱れきった呼吸に上半身がよじれ、それでも括りつけられた両手を壁に打ちつける。
ぞわりぞわりとバイブにからみつく下腹部のぬれそぼった粘膜の蠕動。微細な肉ヒダ
は休むことを知らず、別の生き物のようにソレをむさぼりつくす感触にとめどなく、
この瞬間でさえふぅふぅと追い上げられ、いいようによがらされてしまうのだ。
イきたくないのに、アソコは、いくらでも感じちゃうんだ‥‥
おっぱいだって、ヒリヒリ痺れて敏感になっちゃって‥‥
ここまで調教されきった今の私を見たら、ご主人様は、どう思って下さるだろう。
喜んで、私を褒めてくれるだろうか。
いっぱいごほうびをくれて、佐藤志乃さんにそうしたように、私のことも奴隷として
可愛がってくださるのだろうか。
「‥‥」
意識が錯乱しているなと、ぼんやり、思う。
何をイメージしているんだろう。
ご主人様が、まるで、隣の彼であるかのように思いこんで。
水谷君がご主人さまだなんて、なんの証拠も根拠もないくせに。私に都合の良い結末
を勝手に思い描いているだけなのに。
そんな、うまく行くはずが‥‥ない‥‥‥‥
いつのまにか動きは止まり、私は壁にぐったりもたれかかっていた。
壁の向こうから反応はない。
しんと静まりかえった室内が、徒労であったことを告げている。
やっぱり、無駄だったのだ。
最後の、唯一の可能性さえ失った私は、果てしなく絶望の縁に落下していく。
終わらない、とどまることのない凌辱の多幸感。
クレヴァスが真っ赤に充血して、クリトリスが革のベルトに揉みつぶされて、一つ一
つの刺激が鮮明に、クリアにカラダを灼きつくして、ビチビチッと音立ててきしむ磔
の両手に、淫獄の拘束に希望を奪われた私は、薄れかかった意識を悦虐の奈落に沈ま
せてゆく‥‥

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

縛られたカラダだけが、熱い疼きを主張していた。
バーテンの脅迫を受け入れ、自棄になってしまったのか。たまたま悪酔いしていたか。
あるいは‥‥他の女性客にまじってふたたび後ろ手に縄掛けを施され、被虐の境地に
酔ってしまったのか。
「だからね、あなたの自縛はどうも危なっかしいような気がするのよねぇ」
私の意見になど耳をかさず、女性バーテンは首をひねっていた。
「また引っかけですか。違います。私にはご主人さまが」
「ええ。分かってるわ。だからこれは仮の話。もし、あなたがSM好きの自縛マニア
だったら。そういう『もしも』の話よ」
「ふぅん、そうですか。もちろん、その仮定は間違っていますけれど」
私のセルフボンテージは素人めいて危なっかしいと彼女はいうのだ。私自身そんな事
を言われて引き下がるわけにいかなくなっていた。
不自由な体を乗りだし、バーテンの瞳を挑戦的に覗きこむ。
「‥‥もし、もしもバーテンさんの言うとおり私が自縛マニアだったら、なにがどう
危なっかしいというんですか。プロの視点とやらで教えてくださいよ」
「うふふ」
そーきたか、そーきましたねと二度笑い、バーテンはカウンターの向こうに動いた。
別の客にカクテルを出し、再び戻ってくる。
何もかも見透かすような、少しだけ意地の悪い女性バーテンの笑み。
変わらぬ笑みをたたえて彼女が告げる。
「早紀ちゃんの場合、気持ちだけが先走りすぎているような気がするの。技術や冷静
な判断がついてきてない感じ。いつか、手ひどい失敗をしそうで‥‥それが心配だわ」
「‥‥」
「ムチャしないでね、お願いだから」
顔を上げた彼女は、本気で不安そうに、まるで今にも私を抱きしめたそうに、そんな
瞳でこちらを見つめている。
だからだったのか。
「ふぅん。じゃあ、私がそんな窮地に追い込まれたら、助けて下さいますか?」
「ええ、すぐにでも行くわ。だから呼んでね」
彼女の返事は即答だった。

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

バーテンの姿が目の境を浮かんだり消えたりしている。
あれ、今のはなんだったんだろう。
幻視? 記憶の、混乱? 夢‥‥
なんだかよくわからない。
拘束され続けているせいか、カラダに現実感がないのだ。
ぼんやりと、遠い高みで意識が自分を見下ろしている、そんな多幸感。
ふわふわ浮き上がったエクスタシーの悦楽は、まるで自分のことをひとごとのように
意識させて現実逃避をさせている。天井を顔をむけたまま、ぐったり疲弊しきった私
はベットに倒れこんでいた。
充分タオルやシーツを敷きつめていたにもかかわらず、股間の辺りがムズムズ気持ち
悪い。愛液とおもらしがしみこんで、嫌な濡れた肌触りなのだ。
両手は、相変わらずビィンと棒にそって伸びきり、拘束されたまま微動もできない。
首の下に横たえられた金属のポールの頑丈さをあらためてカラダで思いしる。
何時なのか、どのくらい経ったのか。
もはやそんな問いかけに意味はない。夜らしいという漠然とした体感ばかり。
太ももにへばりついて乾いた愛液に新たなオツユがしたたりおち、ぬらついていく。
かろうじて気力を振り起こし、首を傾ければ、窓ガラスに映ったあでやかな拘束姿に
いやでも瞳は吸い寄せられてしまうのだ。
一点の迷いも妥協もない、完膚なき自縛の完成形。
決して、二度と、自力では抜けだせない『嵌まり』のセルフボンテージ。
この思いを味わうのは、何度目だったのか‥‥
案外多いような気がして、われしらず心の中で苦笑する。
だとすれば、女性バーテンは正しかったのだ。いつも紙一重の幸運に助けられただけ
で、私自身は技術も冷静さもない、未熟なマゾの予備軍だったのだと。
絶対に脱出不可能な自縛。
マゾの愉悦にむしばまれ、自力では何一つ身悶えも許されずに衰弱していくほかない、
快楽反応に痙攣するだけの愛玩用のドールに自らを仕立て上げてしまう。
決してやってはならないとされる禁断の自縛。
けれど本気で破滅を望み二度と戻れないほどの絶頂を望むなら、実に簡単だったのだ。
文字通り最後の最後までイキ続ける、そんな極限の自縛なんて‥‥
「んぉ‥‥ん、ンフ」
身をもって思い知るこの衰弱、この消耗、このおののき。
これはセルフボンテージなどではない。
自殺志願者が、自らのあがきを完璧に封じこめる為に施す緊縛にほかならなかった。
あるいはそれは、奴隷に堕とされたい、一方的に無抵抗に身を投げだしてご主人様に
すべてをゆだねて可愛がられたい、そうした痛切な被虐の疼きが歪んだ末のものなの
かもしれない。
あの女性バーテンに出会って、抑圧してきた奴隷願望が加速したのかもしれない。
私の中でふくらむ破滅願望。
今、ここに完成しているのだ。
自縛したOLは自分自身の仕掛けた陥穽に嵌まりこみ、終わらぬ恥辱に弄ばれていく。
そして‥‥
それも、じきに終わる‥‥
「‥‥」
気づけば、甘い鳴き声をあげる力さえ残されていないような感じだった。
浅い息を吸うたび、胸がひくひくと上下してニップルチェーンをさらさらと揺らす。
じきに、衰弱しきった私のカラダは快楽衝動にさえ反応できなくなるだろう。
誰も、誰一人私の存在に気づくこともない。
もはや完全に脱出の望みをうしなった私はすべてを諦め、このいとおしい被虐の情欲
に、慣れ親しんだマゾの快楽に、緊縛の肌触りにゆったりと身を沈めていく。
両手をギッチリと縛りつける革拘束の感触が、最高に気持ち良かった。
恥ずかしい姿で、惨めな自縛の最期を迎えて、おそらくは止めることのできぬバイブ
に犯され続けて‥‥それが、私の、すべて。
もう、二度と私が浮上してくることはないだろう。
二度と。
決して‥‥‥‥‥‥
このまま、悩ましい縛めに悶え苦しみ、取り返しのつかぬ無力感に溺れながら‥‥‥
激しい音をたて、
鞭が
カラダに‥‥振り下ろされてくる。
逃げようと、
かわそうと、
身をよじる動きを知り尽くすかのように、鋭い痛みが肌のあちこちで弾けていく。
あれ‥‥
どこ、だっけ‥‥
『何やっているの、早紀は!』
「ふグ、んぅぅ」
びっくりしてふりむく私の前で、あの女性バーテンが私を睨んでいた。
ビシリ。弾む痛みでカラダをわななかす。後ろ手の、懐かしい緊縛。気持ちイイ‥‥
どこも動かせない。やっぱり、感じちゃうんだ。
私、マゾだから‥‥
胸が、叩かれすぎて、ピリピリして、裂けちゃいそう‥‥
バーテンがふたたび鞭を振りあげる。
『駄目な子ね、あれだけ言っていたのに』
何を‥‥?
『だから素直になりなさいって、いったでしょう』
え、私、ご主人様の言うとおりに‥‥
『セルフボンテージなんかしないって、ウソをついていたんでしょう? 違う?』
あぁ‥‥
そうか、そうだったっけ‥‥
猿轡をかみしめ、答えられずにいる私をビシリびしりと鞭が襲う。
痛い。痛くて、ヒリヒリして、叩かれた痕がむずがゆく紅く腫れあがって‥‥
たまらない。
私はもう、どうしようもないから。
お願い、お願いです。もっと‥‥
もっと私を虐めて、お仕置きを、ごほうびのお仕置きを下さい‥‥
ひざまずこうとするカラダがギュッとムリヤリに折り畳まれて。
暗い室内に私は、いつのまにか座っている。
膝を抱えるようにして。両手をピンとそろえて、なんか大きな棒に括りつけられて。
頭がもうろうとして分からない。急に寂しくなる。
ごしゅじん‥‥さま‥‥ 

夜が、落ちてきた。
ぐわんと頭が振られて、それではっと意識を取りもどす。
私‥‥なにを‥‥
意識がどろどろで、動かそうとして手も足もまるで神経が通ってないみたいに反応
する気配もなく、焦って悶えて。
あぁ、いつものことだ、私、縛られてる。
両手を広げて、硬い柱に縛りつけられて‥‥すごい‥‥グチャグチャの緊縛だ。
縄‥‥じゃない。革の拘束具と、金属の錠で、これ以上ないくらいハードな拘束を
みっちり施されて‥‥身動きもままならないくらい、かっちり囚われちゃっている。
カギも見当たらないし、ボールギャグが口いっぱいになるまで頬張らされていて。
下半身だって、あそこにみっちり根元まで太いバイブを飲み込まされて‥‥
これじゃ抜けそうもない。ずっと犯されっぱなし‥‥
ヤダ、私、感じてるんだ‥‥べちゃべちゃに濡れそぼってる‥‥よね‥‥?
あれ?
‥‥でも、変だ。
だったら私は、誰に縛られちゃっているの‥‥
だって、これがセルフボンテージだったら、絶対ほどけない‥‥
ふぅ、ふぅぅと浅く息を吸う。
なんだか空気が薄くって、頭がちゃんと働いてくれてないみたいだ。

『やっぱり早紀さん、マゾなんですよ』
今度は中野さんの声だ。
おっとりした普段の彼女じゃない。まるで、夜の営みをリードする、女王様のよう。
甘く鈍く私のカラダをくすぐりはじめる。気持ちよくて、悶えてしまうのが楽しい
のか、くすくすくすくす笑いながら、中野さんが、私のカラダを、
『ほどけないセルフボンテージなんて、そんなの実行しちゃうの本物のマゾですよ』
凄い勢いで、甘く意地悪くなぶりはじめてきた。
子猫が‥‥名前、なんだっけ‥‥子猫が、猛烈にミャアミャア鳴きたてている。
羨ましいの?

びっくりして目がさめる。
なんだったんだろう‥‥中野さん、酔っていた‥‥?
うすぼんやりした、まぶたがくっつきそうな眠気の中で世界を見つめて。
見覚えのある室内に、見覚えのある家具に、
見覚えのある、
窓ガラスに映った、私自身のエッチな、姿。

『それがキャンセルの理由なんてひどいな。俺、すねちゃいますよ』
「‥‥ん、ンクゥ」
『一日中家の中にこもって、何してるかと思ったら、一人エッチだなんて‥‥』
喉を鳴らして、甘えるように謝ってみせる。でも、誰かは分からない。
私のご主人さま?
あぁ、違う、いや、同じなのかな、水谷君だ。
背中から私を抱き寄せてカラダをいじっている、みたいな、気が、する。
ふわふわと、
ふわふわ‥‥と‥‥
『‥‥だろ? だから、‥‥も』

「‥‥、よく、躾けたんだね、君自身を」
「!」
誰かが、いた。
私の背後に。
しんと静まりかえった、真夜中近い、私のアパートの一室に。
聞き取れぬほどの低い小さい囁き。男らしい‥‥としか判断できない、わざと声を
分かりにくくしている感じの声だ。
ふりむこうとして、今度は、まぎれもなくしっかり頭をおさえつけられ、ふたたび
前を向かされた。緊縛された裸身では、男性の力にかなうはずもない。そしてそれ
以上に、頭をなでた男の優しい仕草が、まるで、ずっと前に知っていた者のような
気がさせられて、逆らいたくなかったのだ。
優しく、男が腰を抱き寄せる。
腰だけじゃない。つぅっと、手の先から肘、二の腕、肩、首のあたりからずーっと
下へ‥‥淫靡な、犯そうという手つきじゃなくて診察するものの手つきで指が私を
なぞっていって。
最後に、男は私の乳房をたゆんとすくいあげ、その上を何度も指でなぞりだした。
くすぐったい、恥ずかしい感触。
なんだかワケが分からぬまま悶え続けて、でも、それはエッチな気分を昂ぶらせる
ためのものじゃなくて、そのうち‥‥
そう、
それが指文字らしいことに気がついて。

エッチな
マゾの
子猫
みつけ

「‥‥んむっむっムッゥゥ」
顔がパァァッと真っ赤に染まっていくのが分かった。
なんだろう、この人は。怖いはずなのに、いきなりの侵入者なのに、こうして緊縛
された裸の女性がいるというのに、優しく優しく私を扱おうとしているようなのだ。
伝わったことが分かったのだろう。
ぽんと肩を叩かれ、ふたたび男性の指が背中でくねりだす。
ゆっくりと、同じ台詞をくりかえし、くりかえし‥‥










‥‥
‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥
ぶるりと
背筋が、愉悦の前兆にも似て、大きく弓なりにのけぞりかかった。

‥‥君を‥‥

‥‥飼って‥‥‥‥あげる‥‥ね‥‥‥‥

そう、か‥‥
私は、もう人じゃないんだ。
自由をみずから放棄して、奴隷でありたいと望んでいたはしたないペットなのか。
だから、この男性に囚われて、飼われてしまったとしても‥‥
ボールギャグを咥えこみ、全身を拘束されたこの状況では、なす術もなく彼に身を
預けるしか、選択肢がないのだ‥‥
私、飼われて‥‥
人であることを、やめて‥‥しま‥‥
意味が。
戦慄の内容が脳裏にとどくより早く、私は激しくおののきに震え上がっていた。
彼が誰なのか、たしかめようとした瞳に目隠しの布を巻きつけられ。
抵抗する手段もなく、無防備な下半身にいまだバイブをくわえ込んだままで。
背をのたうたせ、ギクギクッと‥‥
狂おしく、股間をオツユまみれにして、イッてしまっていた‥‥
ぐるぐると、乳房になすりつけられたその単語だけが、頭の中で渦を巻いていた。
飼ってあげるよ‥‥
飼って‥‥飼われて‥‥しまう‥‥
私は、飼われるのだ‥‥
この不自由なカラダで‥‥首輪つきのまま‥‥
とびきり発情した、いやらしいマゾのペットととして、調教されてしまうんだ‥‥
喉の渇きも。
冷えきった汗みずくのカラダを、さらにぬらぬらとべとつかせる新たな汗も。
ひくひくと収斂をくりかえす、下腹部の鈍いうずきも。
『人』としての尊厳を失い完全なオブジェと化して侵入者を楽しませるだけの存在に
成り下がった、この私自身の、わいせつなる緊縛の裸身も。
すべてが花開き、すみずみまで肉を犯しつくす被虐の調べを奏ではじめてしまう。
誰とも知れぬ異性がもたらした、たった一言の睦言。
『飼って、あげるよ‥‥』
それは奴隷志願の私の心をたやすくわしづかみにする、なまめかしい誘いそのもの。
いや‥‥拒否できない私にとって、この誘いは命令と変わりない。
おしつけられた指文字の感触がまだ乳房に残っていて、ジンジンと恥ずかしいほどに
カラダを火照らせ、乱れさせ、女の芯をどぷどぷと潤ませてしまっている。
なにをされても、抵抗のそぶりすらかなわぬ肢体。
私自身の望み通り、もはやこのセルフボンテージを自力で解くことは不可能だった。
抜けだす希望をすべて潰す、悩ましくも巧緻に編み上げられた縛めの数々。磔の身を
ひたすら悶えさせる絶望的な籠女の檻の中で、すでに私自身、嫌というほどこの拘束
のいらやしさを味わい、焦り、理性を失い、よがりくるってしまったのだ。
自分の状態を熟知しつくしているからこその恐怖。
犯されようと傷つけられようと、殺されようと、ボールギャグをしみじみ噛みしめる
このカラダで‥‥目隠しの拘束姿で、いったい何ができると言うのだろう。悲鳴一つ
口にできない現実はあまりに残酷で決定的だった。
「‥‥」
息が浅く細くなり、目隠しの下でまぶたがひくひくひきつっている。
恐怖と、被虐の期待と、身のよじれるような悪寒が、ぐちゃぐちゃに裸身をかき乱す。
怖かった。
マゾだから、奴隷だから、誰でもいいなんて思うはずがない。
むしろ、逆。
マゾだからこそ、いっぱい虐められたいからこそ‥‥
安心して、信頼できる相手にしか、カラダをゆだねたくないのだ。
なのに、厚い目隠しはすべての情報をさえぎっている。
目の前にいるだろう男性が誰なのか。
泥棒や暴漢とは思えなかった。何も知らない侵入者なら意地悪い台詞で煽ったりせず、
すぐに私を犯すだろう。とっくに最悪な目にあわされているに違いない、と思うのだ。
そして‥‥解放者でもありえない。
ひょっとしたらという淡い期待はとっくに裏切られていた。拘束を解こうともせず、
悶える私はさっきから視姦され、嬲られつづけているのだ。
水谷くんだとしたら‥‥
彼だったら、彼にだったら、もちろん後で私は怒りくるうと思うけど、このカラダを
任せてもいい。少しぐらい意地悪されてもいい。見も知らぬ、好意もない男性に好き
勝手されるくらいなら、まだ、その方がいい。
だけど、あんなに隣の部屋との壁を叩いたのに、水谷君から反応がなかった。あの時
外出していたのなら、今になって彼が都合よく私の部屋に来るわけがないのだ。
それ以外の可能性。
残されたたった一つの可能性は、身勝手にすぎるような気がした。
この部屋の合鍵をもっている人物。
すでに引っ越した『佐藤志乃』さんあてに拘束具を送ってくる、彼女のご主人さま。
しらずしらず私をセルフボンテージマニアに調教し、したてあげた‥‥
まだ見ぬ、私自身の、ご主人さま。
そうなのだろう、か。
この人が、時に夢にまで見た相手なのだろうか。
いつか恨み言を言おうと、ちょっとした手違いが一人の女をどれほど変えたのか見せ
つけたいと‥‥調教され開発された私自身がどれほど貴方に会うのを待ちわびていた
か、身をもって味わって欲しいと‥‥
そう思っていた、ご主人さまなのだろう‥‥か‥‥?
「ング。くぅ、くふゥゥ」
喉がゴクリとなる。
ヨダレがボールギャグのふちからあふれ、はっきり呼吸が荒くなりはじめていた。
恥ずかしいほどの妄想。
いつかご主人様に出会うため、すっかり従順に、緊縛の味に馴らされた私。
甘やかな妄想さえ凌駕する、筋肉がひりつくほど厳しく、淫蕩な拘束を施された裸身。
エクスタシーに昂ぶったままの余韻が、イった直後のカラダをまたも責め嬲っていく。
恐怖と絶望とがあっけなく究極の快感へと反転し。甘美な隷属への期待でお股の奥が
トロトロしたたりだすのだ。
私は、どうなってしまうんだろう‥‥
怖いはずなのに、おののいているはずなのに、なのに、私は‥‥
バクン、バクンと乱れきった動悸が止まらない。
翻弄された全身はひきつけを起こし、衝撃の波をかぶった手足がぷるぷる突っ張って
舐めあげる快楽の舌先に踊らされつづけているのだ。自ら止められぬ絶頂は、もはや
それ自体がはしたない奴隷を惨く躾けなおす調教行為そのもの‥‥
「うぅ、ふぐぅゥゥ」
ゾクリゾクリと快楽のほとばしった拘束の身はぶざまに跳ね踊ってしまう。
この男‥‥
私のもがくさまを、悶える姿をみて、黙って一人楽しんでいるんだ‥‥
怖い‥‥さからえそうもない‥‥
ギッとベットを軋ませ、ふたたび相手が近寄ってくる気配がする。身体は思わず跳ね、
意味もなく距離をとろうといざってしまう。無意味だと分かっているのに止まらない
カラダを不意に横抱きにされ、耳もとに顔が近づく気配がして。
「志乃と同じだね、キミも」
「‥‥!」
耳朶の奥へ、男のささやきがしみわたっていった。
志乃さんのご主人様と私しか知りえない名前を、彼ははっきりと口にしたのだ。
ならば。前に住んでいた佐藤志乃さんを知っているこの人こそが、この男性こそが。
たゆんとすくい上げられたオッパイを、こねまわす動きで指文字がくねっていく。
『かわいいよ』
『よく、ここまで、自分を調教したね』
『あとは、たっぷり虐めぬいて、俺の奴隷に、してあげるから』
‥‥
‥‥
‥‥‥‥
歓喜。
あふれだす、背筋を舐めるように這い上がる、悦虐の、凌辱の期待。
カラダ中の毛穴からしみだし、上気した裸身をひたしていく激しい衝撃の波。
一瞬にして、消耗しきっていた私のカラダは大きく前のめりになり、突き上げてきた
マゾの悦びに飲み込まれてしまっていた。磔の身がギイギイとかしぎ、脱力したまま
括りつけられていた両手が、ピィンと固く突っ張ってしまう。
ニップルチェーンがさらさら残酷に痛みを囁いて。
深く深く下腹部に咥えこまされたバイブが、拘束衣のお股と擦れ合ってなしくずしに
私を内側から抉り、受け身の快楽でゾクゾクとのぼせあがっていってしまう。
この男性に‥‥ずっと会いたかった、私のご主人様に。
おそらくは、私は嬲られ、躾けられ、過酷な調教を施されて、しまうのだ。
心の奥深く、どこかで求め狂っていたように。
彼の思いどおり自由をもてあそばれる奴隷として。虜の裸身をハァハァといやらしく
波打たせる肉人形にしたてあげられていく‥‥のだろう‥‥きっと‥‥
セルフボンテージとは違って‥‥私の意志にかかわらず、特にムリヤリ躾けられて。
強制的に、被虐の快楽を塗りこまれ、後戻りできぬマゾのペットとして。
肉洞の底まで、濡れたヒダ一枚一枚まで触られ、しゃぶられ、無抵抗に貫かれて‥‥
いっぱい、可愛がられるんだ‥‥
ガクガクと震える裸身を、柔らかくしっかりとご主人様の手が支えてくれて。
その手にすべて委ねて、ピクピクとよがってしまうのが気持ちよくて。
まだ怖くて、慣れないからご主人様の手が這いまわるとドキリとおののいて、でも。
うん。
こんなに優しく抱きしめてくれるご主人様に調教され、奴隷になれと命じられたら。
最後まで抵抗する気力なんか、私にはない‥‥
「いいんだよ、力を抜いて」
「く、うぅン」
「我慢しない。イって。さぁ」
耳もとでふたたび。
低く柔らかく、たしなめるような声が囁く。
一瞬で真っ赤に頬が火照り、茹でダコのようにカァァッとのぼせあがってしまった。
怯えつつなぜか期待してしまう、どうしようもないマゾの心理を見透かすような口調。
否応のない響きが心をグズグズに溶かす。
私はこういう声を知っていた。どういう人が、どういう時に出す声かを。その効果を。
あの、女性バーテンの声と同じもの。
絶対的な断定口調は、奴隷に対するご主人様の命令そのもの‥‥それが、嬉しいのだ。
ご主人様の調教はもう始まっている。
今、私はご主人さま好みの奴隷になるために、少しづつ躾けられているんだ‥‥
「躾けがいがあるよ。君みたいにエッチなペットは」
「くぅぅンン」
その一言で決壊が甘く崩れ、全身を大きく弓なりにそりかえらせて、私はイっていた。
ペット‥‥私は、ペットなんだから‥‥
ゾクリゾクリと裸身をねぶる波のくるおしさ、幾度となく頂上に押し上げられ、男の
手に支えられて底なしの谷間へ落下していく。ジュブジュブと淫猥な音をクレヴァス
からしたたらせ、目隠しとボールギャグで覆いつくされた顔を真っ赤に染めあげて。
「ふふ」
嬉しげな男の笑い声で、私もホッとする。
良かった、私、ご主人様の望みどおりのカラダに自分を開発してたみたいだ‥‥
最後にニップルチェーンを軽くはじかれ、突然の甘いおののきに短い悲鳴をあげた私
は、戦慄と痛みがエクスタシーとなって全身にしみわたっていくのを感じていた。
他人から与えられる刺激。予想外の刺激。
おののきは、さらなる凌辱を調教をもとめ、かえって肌を敏感にさせてしまう。
調教されるというのはこういうこと‥‥
「くぅ、ンン‥‥」
知らず知らず喉声ですりよっていた私の頭を、男が優しくなでた。よしよし、とでも
言わんばかりに、小動物をあやし落ち着かせる手つきで何度もなでる。
震えるカラダをあやしつつ、そっと口元に手をあてがいボールギャグを外していく。
溜まった涎の臭気がむわっと鼻をつき、ぴっちり顔半分を覆っていた革マスクが、次
に唇からはみ出していたボールギャグが、実に1日半ぶりに外された。
締まりをうしなった唇からボダボダッと涎が流れおちる。
恥ずかしい‥‥
そむけかけた顔に、ひんやり濡れたタオルがおしあてられた。
丁寧に、優しい手つきが顔の汚れをぬぐいとっていく。涎にまみれてかぶれかけた顔
をぬぐっていくのだ。気持ち悪かった顔まわりが、すっきりと元に戻っていく。
「あ、ぁ‥‥」
何か話しかけないと、と焦ったが、麻痺した口は呂律など回らず、変な呻きばかり。
男の手がそっと唇に手をあてた。喋るな、といいたいらしい。
離れていく男の気配を感じながら、私はゆるゆると全身の力を抜いていった。
セルフボンテージとはまるで違う感覚。
他人に支配され、他人の思うがままにされ、すべてを受け入れるしかない。つい最近
SMバーで味わった感覚と似ているようで、けれど、決定的に違う。
この調教には、閉店時間などないのだ。
ご主人さまが満足するまで私は拘束されつづけ、嬲られつづけ、調教は続くのだろう。
間違いなく、身も心も私がご主人様のモノになるまで、ご主人様は満足しない‥‥
ゾクリ、ゾクリと甘やかな戦慄でカラダがうねってしまう。
気持ちイイ‥‥すごく、イイ‥‥よぅ‥‥
縛られて、自由を剥奪されて、どんな風に虐められるか妄想するだけで私、おかしく
なっちゃってるんだ‥‥
「んぁ、ン、ふぅぅぅ‥‥はぁぁ」
かすれ、ひりひりした喉から低く息をはきだす。
全身の自由を奪われた上に視覚までさえぎられ、どうしようもなく私は敏感になって
しまっていた。肌の細胞一つ一つがみずみずしく跳ねている感じ。いま触られたら、
それだけで感じてしまいそうなほど。
「‥‥ひゃァ!!」
急に背負った金属のポールごと腕をつかまれ、舌足らずな悲鳴をあげて私は真っ赤に
なってしまう。怯えるも何も、もう私は、ご主人様のモノでしかないのだ。この人に
カラダを預けきっているのも同じなのだから‥‥
ツンツンと唇をつつかれ、おずおず開いた唇にストローのようなものが差し込まれる。
「飲んで」
言われるままストローをすすると、渇ききった口の中を跳ねるように鮮烈なミネラル
ウォーターが流れこんできた。その一口が流れ下ってはじめて、どれだけ喉が渇いて
いたのかを思いしる。
むさぼるようにして、私はゴクンゴクンと飲み干していた。たちまち中身が空になり、
ストローが離れてからようやく、大事なことに思い当たる。
私は、この人のおかげで助かったのだ。
たしかにまだ拘束されたまま、後で犯されるかもしれない。でも。ご主人さまが来な
かったら、私はきっと脱水症状かなにかで倒れていたと思う‥‥
「あ、あのぉ」
潤った唇を開いてしゃべりかけたとき、ぐぅとお腹が音を立てた。
沈黙。
じわじわと、赤面。
目隠しされていなければ、きっと、目のふちまで真っ赤に染まった顔を見られていた。
懐かしさを感じるクスクス笑いが聞こえ、ふわっと頭をなでられる。
「よしよし」
ご主人さまがキッチンの方に移動して料理を始めるのを耳にしながら、私は今までで
一番の羞恥に‥‥身もふたもない羞恥にたえかねて火照った裸身をよじっていた。
分かってる。生理的なものだと。
まる一日半、何も食べてないのだから、そうなるのも分かる、理解できる‥‥けれど。
エッチな姿を、イかされる様子を見られている方がまだ良かった‥‥
こんなの、何倍も恥ずかしい‥‥

聞き取れぬほどの呟きが、密着した息声となって耳に届く。
「口をあけて」
「あーん」
ほどよく温まったお粥を、ひとすくいごとにご主人様に食べさせてもらう。まるで、
愛しあうカップルのようだと思った。私が拘束姿でなく、目隠しもされていなければ。
「はい」
「あー‥‥ンッ、ァンッ」
本当は違う。
セルフボンテージ姿のまま、私は発情した裸身を甘くまさぐられ、電池を取り換えた
バイブでぬぷぬぷと秘裂を犯され貫かれながら食事を与えられているのだ。背中から
抱きすくめられ、乳房をいじられたり敏感な部分に吐息を吹きかけられて思わず首を
のけぞらせたりしながら‥‥
快感をすりこまれながらの餌付けをされているのだ。
食欲と性欲がぐちゃぐちゃに入り交じり、口の中でおかゆを咀嚼しながら下の口では
ギチギチと濡れそぼったヒダで太いシャフトをくわえこみつつ蠢いてしまっている。
ぬるぬると這い上がってくる被虐の疼き。
何より悩ましいのは、この身を縛る革拘束が私の施したセルフボンテージということ。
こうして悪戯されるのも、エッチな手で嬲られるのも、すべて自業自得なのだ‥‥
「ンッ、イヤァァ‥‥ぁッ、ン」
「嫌ならやめる?」
低い低い声で、ご主人さまが囁く。
とたんピタリとカラダが止まり、私は悔しいながらも逃れようとしたご主人様の手に
ふたたび自分のオッパイをすべりこませ、密着させるほかない。
みしりと、重みを持って乳房をいじりまわす指先に、イヤイヤながらも鼻をならす。
どうしようもない空腹感は、まして食事を始めてしまった以上は、もう我慢できない。
だから、ご主人様にさえるがまま、私は食事をねだらないといけないのだ。
「お、お願いです‥‥食事を、ください」
返事の代わりに耳たぶを軽く甘噛みされ、ゾクゾクッと感じてしまった唇にスプーン
があてがわれる。
そうして、私はふたたびカラダを這いまわる手に啼かされながら食事を再開するのだ。
お股に埋もれた革ベルトごしにつぷつぷ濡れた肉芽を擦りあげられ、こらえきれずに
男の肩に顔をうずめて弱く低くすすり泣きながら。おかゆを食べたその同じ唇で下の
お口からあふれだすしずくを舐めさせられ、あまりの良さに感極まって声も出せない
ほどよがりながら。
予想もできぬ刺激におびえ、いっそうギクギクと腰を揺すりたてて。
革の枷を食い込ませ、ご主人様に抱きつくこともできぬもどかしさに身を捩じらせて。
鋭敏な肌をさいなむ被虐の旋律に裸身を奏でられながら。
ぼんやりと蕩けた頭のどこかが、これが何度も続けばきっと食事を与えられるだけで
感じるようになるんだろうなぁと思う。
パブロフの犬のように条件付けされ、調教されていくに違いないのだ。
でも‥‥
私は、快感におぼれた今の私は、ご主人様に逆らう気なんておきないらしい‥‥

               ‥‥‥‥‥‥‥‥

空腹と渇きという深刻だった欲求がみたされて、薄らいでいた理性が戻りつつあった。
変わらず不自由なカラダ。下腹部で食い締めるバイブの快楽。目隠しによって過敏に
刺激を受け入れてしまう裸身。セルフボンテージの時と状況は変わっていないのだ。
食器を片付け、戻ってきた男がベットの脇にギシリと座る気配がした。
このあと、どうなるのだろう‥‥
分からないけれど、でも、彼に求められても、私は拒めないだろうと思った。この人
は私を助けてくれた、それ以上に、ずっと会いたい相手だった‥‥
目隠しがもどかしい。顔をみたい。
今の私以上にセルフボンテージに習熟していた佐藤志乃さん。あの人をあれほど調教
したご主人様は、どんな顔なのだろう‥‥?
ご主人様の手が何度か頬をさすっている。感じさせる手つきではなく確かめるように。
考えてみたら、この人は、私のことを前から知っていたのだろうか。
だってそうだ。
今まで考えたこともなかったけれど、佐藤志乃さんはとっくの昔に引っ越している。
なのについ最近まで、ご主人様は私のところへ、危うい拘束具を送りつけてきていた。
もしかして‥‥
「ご、ごしゅ」
言いかけて、なれない言葉に詰まってうろたえる。
いいんだ、実際そうなんだから、私はずっと前からこの人を慕っていたんだから‥‥
「ご主人様は、その‥‥私のことを、ご存知でしたか」
「‥‥」
黙っていたが、頷く気配をはっきりと感じた。
「じゃ、じゃあ‥‥今日は、どうして、こんな、偶然私が、危なかったときに」
「咥えて」
うまくまとまらない私の言葉をさえぎり、彼がちいさく呟く。
同時に、さっきまで口にほおばっていたボールギャグが、私の唇にあてがわれて。
「俺に飼われたいのなら、自分で咥えるんだ」
「え?」
「‥‥‥‥」
鼓動が大きく乱れた。
ドクンと胸が激しく動悸を打ち、カラダがぎしりときしんでしまう。
「いやなら、俺は帰る」
「‥‥」
「‥‥‥‥」
分からない。分からなかった。
口をついた言葉さえ、自分のものであるかどうかさえ分からないほどに混乱していて。
でも‥‥だからこそ無意識の真実を‥‥
私は口走っていた。
「な、なります‥‥奴隷に、してください。でも、その」
「‥‥‥‥」
「私、ご主人様の言うことを聞きますから。だから、猿轡は、しないで‥‥」
私はこの人の事が知りたいから。
ご主人様ともっと話をしたいから、顔も見たいから、もっと近くなりたいから‥‥
返事はない。ただ、じっと唇に、なじみぶかいボールギャグが押しつけられたままだ。
時間だけが、じりじりと、過ぎていく。
「‥‥」
「ど、どうしても‥‥ですか、ぁ‥‥」
「‥‥‥‥」
震える声で問いかける私には答えず、静かに唇の上をボールギャグがくすぐっている。
ドロリとした粘着質の震えが、全身を伝って這い降りていく。
ご主人様の返事ははっきりしていた。
う、うぅ‥‥ぁぁ‥‥
ゾク、ゾクッと、いいようのない感触が、私の背をくすぐっている。
どうあっても、彼は私に口枷を噛ませ、言葉を喋る自由を奪うつもりなのだ。しかも
力づくでなく、私が自分から猿轡を咥えるのをずっと待ちつづけている。
それが、私が調教してもらうための条件。
ムリヤリ調教されるわけではない。むしろ反対に、私が、ご主人様に調教をおねだり
しないといけないのだ。
どうしようもなく惨めで、浅ましい選択肢だった。
ずっと憧れていたご主人様に助けられて、その人に選択肢を選ばされたとして。
こんな状況におかれて、どうして逆らえるだろう。
「わ、分かり‥‥ました‥‥」
「‥‥」
「お、お願いします‥‥私を、虐めてください」
あぁ‥‥
わけもない震えが、吐息となってこぼれていく。
本当にそれでいいのか。
自分から望んで調教されたくて、それが本心なのか。
分からない。
分からないけれど、でも、私は。
この人と、まだ、一緒にいたいから‥‥
沈黙の重さに心を締めつけられて、私はおずおずと口を大きく開いていく。
一度洗浄したらしく、新鮮な水気を含んだスポンジの玉が優しく口腔を圧迫していく。
しっかりとストラップを引き絞られ、ふたたび私は、ボールギャグを咥えこむ格好に
させられた。さっきと同じ奴隷の姿、なのに、なぜだかカラダがビクビクしてしまう。
そうか‥‥
自分から望んで、私は、この人の支配を受け入れたんだ‥‥
だからこんなにも‥‥カラダが、疼く‥‥
『支配』と『服従』の構図。それがはっきり形となって、私の心をあおりたてていた。
少しづつ馴らされ、従順なペットに仕立て上げられていく。
それがいいことなのか、マズイことなのか。
私には判断できないまま、ふたたび、理性にぼんやりとした膜がかかっていくのだ。
横たえられたカラダから慎重に拘束具が外されていく。
長いあいだ同じ姿勢をとらされ、硬直してうまく曲がらない手足を、ご主人様の手が
ほぐしはじめる。少しづつ血行の戻っていく関節に、カラダに、じぃんとした痺れを
感じながら、ようやく弛緩しはじめた四肢を力強くマッサージされて気持ちよく身を
まかせつつ、うつらうつらと、私はゆるやかな睡魔に引き込まれていった。
まどろみからの目覚めはごくゆるやかなものだった。
ぽうっとした意識がけだるく昂ぶっている。
耳に届くのは、ゴウンゴウンという振動に、なにか爆ぜる音。
目を開け、朝のはずなのに真っ暗な世界につかのま混乱する。顔に触れようとした手
がギッと固い感触に引き戻され、そこでようやく、昨夜のことを思いだした。
——私は、ご主人様の奴隷になったのだ。
——私自身の望みどおりに——
ほんのり頬が赤らむのが自分でも分かる。
しっかり押し込まれたボールギャグが、言葉を剥奪する口枷が、実際おかれた立場を
いやでも意識させてしまう。
人としてでなく、調教され、可愛がられるだけの奴隷としてむかえる最初の朝だった。
ふつふつ悩ましく火照る裸身をシーツの上でくねらせる。
セルフボンテージで『嵌まって』から一日半。ずっと同じ姿勢で拘束されていた手足
の関節も今はほぐれ、普通に動かせるようだ。
私自身も、簡単な拘束を施されただけで、ゆったりと寝かされている。目隠しは相変
わらずながら、手首を緊めつける革の手枷は左右の太ももと手首同士を繋いでいて、
無防備な拘束姿とはいえぐっすり眠れたらしい。
気がつけば、寝ているシーツまでがいつのまにか清潔なものに取りかえられていた。
ということは、あの振動はつまり、お漏らしをしたシーツを洗っている洗濯機の音。
何から何まで、かいがいしいばかりにお世話をして頂いて。
私のご主人様は、本当に‥‥
どうしようもなく、思うだけで溶けてしまいそうなほど、優しい人らしかった。
「ンッ、ンフゥゥ」
つくんつくんと下腹部を蕩けさせる秘めやかな振動にギクギクと背が突っ張る。
こんなところは‥‥ンッ、やっぱり、いじられっぱなしで‥‥
ほんの少し、朝からの刺激を恨めしく思いつつも、下腹部を責めっぱなしの器具から
しみわたった被虐的な刺激に身をゆだねていく。みっしりクレヴァスを爛れさせる
バイブの重みが消え、代わりに小さなローターらしき振動が女の合わせ目のつけねで
もっとも敏感な肉芽をじわじわ炙りたてていた。
「ンッ、ふぅぅぅン、はぅッ!」
意識したとたん、快楽の奔流がゾクゾクッと一気に背筋をうねってほとばしりだす。
もどかしいばかりの弱々しい振動だから、かえって敏感に下半身をよじらせちゃって
腰の動きがとまらない。そこばかり意識が集中しちゃって、ほかへの注意がすっかり
おろそかになってしまうのだ。
恥ずかしさも忘れ、腰を浮かして感じやすい場所を探していく。
うん、この角度‥‥ちょうどクリトリス全体がピリピリって痺れて、気持ちイイ‥‥
「おはよう」
「!!」
足音も前触れもなく男性のカラダが覆いかぶさってきて、本気でおののく裸身がピク
ピクンとあゆのようにベットの上で跳ね踊ってしまった。
「ンッ、ンフッ」
「!」
力強くからみつく腕に抱きしめられる。
チュっと、くすぐるようにして暖かい唇が頬をくすぐり、顔を覆う革マスクの上から
ボールギャグのふくらみにそって唇が這っていく。
目隠しの下でゾクゾクあおられている私を誘うように、柔らかな感触はゆるゆる首元
まで這いおり、そこでいきなり、鎖骨の下あたりをちゅるりと舐めあげる。
敏感すぎる肌が激しい反応をおこして‥‥
「ヒッ!! ンッ、くぁ‥‥あぅぅぅぅぅン、いぅぅ」
のけぞったカラダを、濡れた下半身を、後先も考えずご主人様にこすりつけた私は、
心の準備もできぬまま絶頂の悦びを極めさせさせられてしまっていた。
嬲る指先に肌をすりつけ、しとどな喘ぎ声をもらす。
おはようございますの返事のかわりに、声を奪われた唇から本気の喘ぎ声をこぼして。
とろーっと内股をつたう私自身のオツユが、いっそう事態を悩ましいものにする。
うぁ、あぁ‥‥ン‥‥
恥ずかしい‥‥目覚めのキスで、私、イかされちゃった‥‥

磔の横木から解放され、よつんばいの姿勢で獣の拘束具を装着させられた。
ご主人様の手に導かれるままフローリングに肘と膝をつき、束縛の枷を施されていく。
生まれたままの裸身が、毛を逆立ててぷるぷる震えている。きっとはた目には、期待
と興奮で紅潮し、発情期の獣に似つかわしい桜色にゆだっているのだろう。
首輪のリードをつながれ、惨めさに裸身が引き攣れた。
ご主人様は、私をマゾのペットとして調教し、仕立て上げるつもりなんだ——
「う、うぐ」
気づいた瞬間、信じられないほどの快感が電撃となって裸身を流れくだってゆく。
人以下の存在として、惨めに扱われて燃え上がってしまうカラダ。
セルフボンテージを重ねるうち無意識に誘導され、今やこの裸身はそら恐ろしいほど
ご主人様好みに仕上がってしまっているようだ。
おずおずと目隠しのまま顔を振る私に、今日始めてご主人さまが囁きかけてくる。
「おはよう、早紀。似合ってるよ」
「う、あふぅぅ」
思わずくねったお尻を撫でまわされ、双丘の谷間に指が入りこむ。ふりふりと可愛い
お尻をふらなくてもいいんだよ。そういわれた気がして、耳まで赤くなった。
「よしよし。じゃ、朝食だ」
ぐりぐり頭をなでられ、じぃんと深いところを甘い愉悦がみたす。ただ一言でこんな
にも嬉しくなる。飼い主に裸身をすりつける私は、身も心も堕とされたペットだった。
リードを曳かれ、おそるおそる4つ足で室内を歩かされる。
お尻を振りたてる浅ましい歩行で怯えつつもいやおうなく感じてしまうのは、無意識
に私が彼を信頼していられるからなのだろう。
長い間‥‥
このひとときを、セルフボンテージに魅入られたあの瞬間から待ちわびていた。
本当のご主人様に躾けられ、調教され、服従の身を嬲られて。
なまなましい部屋の空気さえドロリと私を愛撫し、エッチなオツユをしたたらせる。
「おすわり」
「ンッ」
「口枷を外すけど、『ワン』以外言っちゃいけないよ。破ったらオシオキだ」
「んんぅぅ!」
「じゃあ朝食抜きかな? うちのペットは」
思わず口を尖らせた私は足の甲でオッパイをたぷたぷされ、抵抗もむなしくたちまち
甘い喉声を漏らしてしまう。ひどいコトをされているのに、たまらなくイイ‥‥
おとなしく頷き、口枷と目隠しを外してもらった。
目に映るのはリビングの床スレスレ、まさにペットの世界だ。正面の柱がテーブルの
足らしく、そこにリードが短くまきつけられている。右隣に、ご主人様のぬくもり。
そして、私の鼻先に‥‥
「‥‥!?」
ゾクゾクッと、背筋が波打った。
正面、テーブル下の定位置にはキャットフードをペチャペチャむさぼるテトラがいて、
その手前、私の鼻先に置かれた小皿には、スクランブルエッグとソーセージが私の分
の餌として盛りつけてあったのだから。
ペットと鼻つき合わせて四つん這いでの餌付け。
飼っている子猫と一緒に、自分までペットとして不自由なカラダで食事を取らされる。
どうしようもない浅ましさ、屈辱、くらりと眩暈。
すべてが戦慄となり、私の心にひそむ、いやらしい女の芯を直撃していた。
下半身で咥えっぱなしのバイブを、キュウウッと千切れんばかりに緊めつけてしまう。
意地悪い‥‥こんな、あんまり‥‥
情けなくて、そんなことに従ってる自分が、いとおしくて‥‥おかしくなる‥っ‥‥
ご主人様は、黙ったままテーブルの上で朝食を始めているようだった。
「あ、あの、ご主‥‥」
「こら」
身を起こし、顔をあげて訴えかけたとたんキュッと足で背中を踏みつけられた。
ドキッと鼓動が乱れ、いやおうない圧力に顔を低くして伏せの姿勢をとってしまう。
やはりご主人様は顔を見られたくないのだろうか。でも、それだって足でなんて‥‥
絶対的な奴隷と主人の格差にすくみあがる。
「ワン以外はお仕置きだよ、早紀。分かったら返事」
「‥‥」
「返事は?」
低いささやきはからかうようで、ぐりぐりと足で体ごと押さえ込まれてしまって。
反発もできず、辱められて声も出せずにいる私は奴隷なのだ。
優しくない‥‥
不意に、そんな思いが心をよぎった。
私、調教だって、こんな本格的なのは始めてなのに、もう少し優しくたって‥‥
いきなりこんなだと、私、くじけちゃう‥‥
「‥‥わ、ワン」
返事する声に、多分、少しだけ泣きべそが、嗚咽が交じっていたのだろう。ご主人様
の足がどけられ、一度だけ、上から覆いかぶさるように屈んで腕を回してきたご主人
様に、裸身を、乳房を、腰を、あやす手つきで抱きしめられた。
震えをとりのぞくように這う繊細なタッチが官能をくすぐって、鼻声で鳴いてしまう。
「ふぅン、ん、ンンッ」
「可愛いペットだよ、早紀は」
「ぅぅ‥‥」
どうしてなのだろう。
どうして、もう、私はご主人様の調教から、逆らえないでいるのだろう。
調教行為の底を流れる、ご主人様の愛情にくるまれた気分になってしまうのだから。
「ンッ」
鼻をすすり、顔を小皿につっこんで食事をはじめる。手をつかうことなどできない。
目の前で前足を舐めるテトラが鏡写しの自分のようで、つぶらな瞳にさらに煽りたて
られて、それでも顔中をベタベタに汚して朝食をたいらげていく。
いやらしい姿の私。
子猫と一緒に犬食いを強いられ、そんなので下半身までグチョグチョにして、自分で
も聞き取れるぐらいクチュクチュあふれるオツユで太ももを汚しちゃっている。
んぐんぐと口だけでソーセージをほうばる格好。これだってメタファーそのもの‥‥
「んっ、ひゃぁンン!!」
かじりついたソーセージがぷちっと弾け、肉汁が顔にかかって私は悲鳴をあげていた。
お尻を高くつきあげ、へっぴりごしになる‥‥その顔を、清潔なタオルを持った手が
ぬぐってくれる。
「んっ」
口一杯にソーセージをほおばったまま、私は、わけもなくその手に頬ずりしていた。
浅ましい奴隷にできる、精一杯の、これが、愛情表現で‥‥
おねだり、なのだ。

             ‥‥‥‥‥‥‥‥

朝食を終えた私はふたたび目隠しと口枷を噛まされ、一匹の従順なペットに戻った。
裸の上にまとう単純な後ろ手の手枷。縛めと枷は、私の心を奴隷へと作り変えていく。
『してもらいたいこと、ある?』
「んふ‥‥?」
『ムチでも、蝋燭でも、緊縛でも。して欲しいこと』
乳房をたわませ、ご主人さまが指文字で話しかけてくる。猿轡を噛ませておいて、私
の反応をうかがうために、そして羞恥をあおるために、わざとそんな問いかけばかり
してくるのだ。
ベットに横たえられた私のカラダは、背中からしっかり抱擁されていた。
密着感と甘い男性の息吹、睦みあう男女の体勢が心地よい。
執拗に濡れたクレヴァスをまさぐられ、ボールギャグを噛みしめて顔を赤くさせる。
秘めたこの場所を男性にいじられるのは本当に久しぶりで、繊細な手つきが背徳感を
かきたてて、のびあがって逃げるカラダを抑えつけられるのが憐れで‥‥
ふと、あることに気がついた。
自分でも意識せずにムズムズと逃げてしまう私の下半身。エッチな昂ぶりとは違う、
これは、いわゆる生理的欲求‥‥
「ん、んーーーっっ」
『どうしたの、早紀。やけに嫌がるね。もうやめるかい?』
「くぅ、うふぅー」
違う、違うったら、そんな変な焦らし方をされても、私‥‥
しだいしだいにこみあげる尿意が、間断なく腰から下を震わせる。ご主人様の愛撫が
なお尿意を加速させてしまうから、だから腰をいざらせてシーツにのめりこんで。
知られたくない、我慢したい、けど、このままだと堰が切れて‥‥
『‥‥トイレ、か』
ビクッと震えた。
おそるおそる、こくりとうなずく。
このあと、どんな目に会うか‥‥私はじゅうぶん承知していた。
ここで自由に解放してくれるようなご主人様ではない。きっと、さらに私を‥‥
『トイレの躾も飼い主のつとめだったな。トイレに行こうか、早紀』
追いつめようと、する。

「んぐ、ふぅっ‥‥んくぅぅ」
もがき、身をよじり、いやいやながら私はトイレまでひったてられた。
自分でできるから、だから手枷を外して‥‥身振りで訴えたところでご主人様が満足
するはずもない。あきらめ、不自由なカラダをご主人様の手にゆだねる。
便座に座らされ、ドアを閉じて狭い個室にぎゅう詰めになった。
じっと見下ろす視線の圧力をビリビリ感じる。おしっこ出さなきゃと思っても、見ら
れる緊張で膀胱がきゅっと締まってしまい、すぐには出てきそうにないのだ。
頬なんかピリピリ、痛いくらい紅潮している。
目隠しも口枷も、赤面し、うろたえる私の表情を隠してはくれない。
お願い、お願いですから私を見ないで‥‥
「リラックスして」
「!?」
甘い吐息を耳もとに浴びせられ、私はなすすべもなく後ろ手のカラダを捩じらせた。
近々とくっついてきたご主人さまが、妖しい手つきで愛撫を再開する。あろうことか
緊張に震えているお股に指をさしこみ、同時に胸から指を滑らせていく。
だっ、ダメ‥‥こんな時に、そ、そんな‥‥
「ほらほら、出しちゃいなって」
まるで子供のように無邪気な命令に激しくかぶりをふった瞬間、堰を決壊したそれが
シャーッと激しい勢いで下腹部を駆け抜けた。
や、ダメ‥‥
あっと思う間もない。おしっこを見られる、その心の準備さえできぬうち、ゆるんだ
尿道から勢いよく水音をあげて、おしっこがあふれだしていく。
「‥‥」
「ん、あぅ」
ボールギャグを噛みしめ、頬をうつむけて視線に耐える。
安っぽい煽り文句でないご主人様の沈黙が、かえって私の羞じらいと悩乱を深めた。
見られてる、卑しい、はしたない排泄行為を、あまさず見られてる‥‥
止まらない‥‥まだ、まだまだあふれてる‥‥
出きったおしっこが湯気をあげ、ぽたぽたっと残りの雫がまとわりつく。トイレット
ペーパーに手を伸ばしかけ、ぐっと手首に食いこむ手枷ではっと気がついた。
「‥‥」
「う、うぅぅ」
「‥‥」
「ン、くぅ」
うらめしく、ご主人様をみあげる。まぶたの下まで火照ってしまうほどの惨めさだ。
拘束されてるから、おしっこさえ自分でふくことができない‥‥
「拭いてほしい?」
囁かれ、コクコクと首を縦にふった。鼻を突くアンモニアの匂いがますます私を赤面
させる。はしたない後始末までご主人様にしていただく‥‥ポッポッと顔が火を噴き、
もうろうとして理性さえさだかではなかった。
柔らかく拭くご主人様の手のぬくもりが、なおさら羞恥心を沸騰させるのだ。
「どうせだから、こっちもしちゃいなよ」
「‥‥くふぅぅ!!!」
急にその手がお尻をくりくりっといじり、とたん、強く強く排泄の欲求を覚えていた。
そうだ‥‥
さっきの感覚は、ただ尿意だけじゃなかったんだ。
ご主人様の前で緊張して、だから、ずっと我慢していた生理的欲求が‥‥
「う、うぐぅぅぅ」
「俺は気にしない。大丈夫だよ、早紀」
「あふ、あ、っはぁぁ」
猿轡から洩れる悩ましい喘ぎが呻きへ、そしてすすり泣きめいた諦めに変わっていく。
お尻を、そん、そんなに激しくいじったら、虐められたら。
ダメ、汚いの‥‥全部、出ちゃう‥‥
私、もう限界で、だから、これ以上、む、無理、我慢なんか‥‥
あ‥‥‥‥

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

「かわいかったよ、早紀。お尻をヒクヒクさせて」
「くぅぅ」
ご主人様のからかいに、やっとの思いで返事する声は消え入りそうな喘ぎだった。
ぐったりした裸身を抱えられ、流したトイレからつれだされる。
私‥‥なにもかも、見られてしまった‥‥
何もかも、一番汚いとこまで見られて、うぅ‥‥恥ずかしい思いがおさまらない‥‥
全身をうち震わせる恥辱のわななき。
Hな小説で浣腸されたとたん従順になってしまうヒロインの気持ちが、いまほど、嫌
というほど分かったことはなかった。
この恥ずかしさ‥‥打ちのめされた感覚‥‥本当に、立ち直れそうにない。
ご主人様と目を合わせることさえできない気分。目隠しをされてなお、おさえようの
ない羞恥で顔を伏せてしまう。
もっとも秘めておきたい部分を、もっとも憧れていた異性に見られてしまったのだ。
エクスタシーを見られるより、恥ずかしい自縛の現場を取り押さえられるより、なお
みっともない生理的欲求をあまさずみられてしまって。
胸のうちにわきあがるのは、はかない諦めと、深い深い従属の心だった。ご主人様に
逆らえない、あんな下の世話までされて、素直に調教されるほか、私には尽くすすべ
がない‥‥
ご主人さまが胸に指文字を描くのを、ぼんやりと意識する。
『俺は少し出かけるけれど、君はどうする?』
「え、あぅ‥‥う、ぁ」
『どんな風に調教してもらいたい? どんな縛られ方をしていたいかな?』
おっぱいをなぞる文字を理解して‥‥
瞬間、怒涛のようなイメージが頭を駆け抜けていった。
ご主人様に会ったら頼みたかったこと。して欲しかったこと。そんなもの、言われる
までもない。本当に、数えきれないほどの願望があるのだから。
猫のように一晩中かわいがられたい。
屋外に連れ出されて、恥ずかしい晒し者にされてみたい。外でエッチなコトされたい。
ムチの味を知りたい。吊るしぜめにされたい、逆海老に緊縛されてみたい。あの人と、
ご主人様の前の彼女と‥‥
佐藤志乃さんがされたのと同じ事を、全部私にして欲しい‥‥‥‥!!
「‥‥ふふ」
知らぬ間にひくひく跳ねていたのか、私の仕草に何かを感じたらしくご主人様は薄く
微笑んだ。いとしいものを撫で回すように、私のカラダにすみずみまで指を這わす。
「そうだな」
ご主人さまが、私の心に刻み込むかのように、自分の声で呟いた。
「早紀に、俺の縄の味を教えておくか」

ギヂッ、ギュチィィ‥‥
激しい縄鳴りをあげながら、熟れ爛れた女の柔肌を麻縄が喰い緊めていく。
「うぐッ、あ、はぅ、はふぅぅ‥‥んなァァ」
たえまない疼痛と疼きが灼りつく裸身を絞り上げ、情欲をそそりたててゆく。
ただ一本の縄で自在にコントロールされ、悔しくも甘くよがり、むせび泣かされる。
惨めに操られ、あらがうこともできず蛇のように腹をのたうたせ、指の関節にまで、
縄をまきつけられて。
そのいやらしい縄目の餌食となっているのが、私自身のカラダ‥‥
火照る裸身はベットの上でうつぶせとなり、後ろ手の逆海老縛りで転がされていた。
ひときわ引き絞った足首の縛めが後ろ手の結び目に短くつながれ、私は完全に自由を
失ってしまう。
『柔らかいね、早紀のカラダは』
「ンッ」
囁きつつの縄さばきと同時にご主人様の下半身が肌をこすり、私は真っ赤になった。
ご主人様もこの姿に欲情してくださっているのだ‥‥
見られる快感はひときわ恥ずかしく、暖かい。
目隠しを外された私がご主人様の背中ごしに目にしたのは、私の視線にあわせて角度
を変え、あますところなく灼りつく裸身を映しだす全身用の姿見だった。
非日常的なSMバーとは違う、ほかならぬ私自身の家。OLとしての私の部屋。その
生活の匂いさえしみこんだベット上に、被虐的に淫靡な湯気を立ちのぼらせる肉塊が
コロンと無造作に転がされている。
痛々しく発情しきったソレは、見る者の目を愉しませる扇情的な剥き身。
乳房をくびられ、V字の首縄の重みに喘ぎ、ウェストを絞られて細身の柔肉をたわま
せられ、後ろ手の手首にかっちり縄が噛みつく愛玩用のかなりきつめの緊縛だ。
見栄えのする縄目と恐ろしいほどの拘束感が、ギジ、ギュチチと縄鳴りをあげて私の
心をからめとっていく。
『行ってくる。おとなしくお留守番をしているんだよ、早紀』
「ン」
かろうじてコクリと首を揺すり、私はうなずいた。
見送りの挨拶をしようにも、歯の裏にしっかり咥えこむ口枷は、いつかのネコ耳つき
の、あごの下まで押さえ込む酷いボールギャグに取り替えられている。私の代わりに
みゃーとテトラが喉声をあげ、ご主人様は小さく肩を震わせてリビングを後にした。
室内に、静寂と沈黙がもどってくる。
かすかにカラダをゆらし、とたんアナルビーズに犯されて悲鳴をこぼす。
ひっきりなしにひくつくお尻には、尻尾つきのアナルビーズが入れられている。連な
った丸いつぶつぶが、腸壁をこそぎとっては汚辱の感触で私を啼かせてしまう。
ご主人様を見送る妻‥‥とはとうてい行かない。
見事なアーチを描く逆海老縛りで放置されたこの私の姿は、むしろテトラと変わらぬ
もう一匹の、それも手のかかるペットだった。
完全なセルフボンテージの失敗から、いつしか本当の調教へ。
絶望から絶望へ‥‥
ご主人様の縄掛けは、緊縛の手口はあまりに鮮やかで、これほど拘束を施されながら
カラダにかかる負担はほとんどない。ギシリギシリ身悶えるたび、私の被虐のツボを
押さえたかのように全身を圧迫感が緊めあげ、からみつき、できあがった肌を煽って
まとわりつく。
もし、これでご主人様の身になにかあったら。
びっちり柔肌に吸いつく縄装束を施され、叫ぶことも逃げることも、ありとあらゆる
生殺与奪の自由を奪われた私は、今度こそ‥‥助からないだろう。
誰にも知られず、誰の助けもなく、一人、無力な裸身を波うたせてよがり狂いながら。
この恥ずかしい姿で、最後を迎えることになる。
「‥‥」
ふふと、ひとりでに変な笑みがこぼれた。
私は‥‥本当に、もうどうしようもないほど、根っこの部分はエッチな人間らしい。
とめどない妄想ばかり思いついて、ゾクゾク自分自身を煽っているのだから。
そんなことありえない。
だって、私はすでに一度、危なかったところを助けられているのだから。
(‥‥本当に?)
絶えず疼き、ヒリヒリと、たえまなく甘い悦びの血脈がどくりどくりと皮下を流れて
たゆたっていく。じわじわ裸身をむしばむ淫らな期待が意識をぼんやりさせ、現実を
薄いベールにおおってしまっている。
いうなれば、これは夢の世界。
心を溶かす夢に魅入られて、私は従順に淫乱にしつけられていく。
我慢することもない。好きなように、気持ちよく、調教を受け入れていればいい。
「んっ、んふぅぅ」
不自由な肢体は、なかば吊られたような状況になっている。
足首と後ろ手を結ぶ縄が上から垂れる別の縄で作られた輪をくぐっているため、ほん
のわずか躯が浮かされてしまう。重心を前にかけると輪が足首の方にずれ、後ろ側に
体重をもどすと上体が少しだけ浮く。
このかすかなアンバランスが、私の身悶えを縄のきしみにつなげ、縛られたままでの
甘い悦楽をつくりだしていた。自ら悶えることで、好きなように全身を軋ませ、縄の
味に酔いしれてしまうのだ。
「あっ、あふぅぅ‥‥ふクッ」
トクン・トクンと動悸を逸らせ、のぼせた意識でご主人様のことを思う。
ご主人様‥‥私に佐藤志乃宛で拘束具を送りつけ、セルフボンテージの世界へと引き
こんだ悪い人だ。昨日の話でも、この部屋に住むのが志乃さんじゃなく私だと知った
上で、私を誘いこんだといっていた‥‥
あれほどに待ちわびたご主人さま。
なのに、どうしてか、彼は顔を見せず、声も聞かせてくれない‥‥
話をする時でさえ、できるだけ声をきかせたくないようだった。短い会話のやりとり
以外はすべて、乳房に指文字を書いて意志を伝えようとしている。
なぜ、だろう‥‥
顔を知られたくない‥‥ひょっとして、私の知り合い?
分からない。それどころか、カラダがとろけて、思考さえろくにまとまらない。
「はぁぁン、うァン」
いきなりバランスを崩し、ぼふっと顔からシーツにのめった私は、深々とクレヴァス
・アナル両方の内壁を器具で同時にこそぎ取られ、しびれきっていた。
たえまなくあふれかえる甘い愉悦の波。こんなのが、ご主人様が戻ってくるまで今日
一日ずっと、ひたすらに続くのだ‥‥
窓の外はまるで明るい。まだ昼でさえないぐらい、このまま、ずっと放置されて‥‥
これは、夢なのだろうか。
ふと思う。
あるいは、もうろうとした意識がみせる最後の幻覚に溺れているだけで、本当の私は
ずっと今も助けもなく、無残に拘束を施されたオブジェとなって安置されているまま
ではないのだろうか?
男性が、ご主人様が顔を隠すのは、本当は、そんな人がいないからじゃないだろうか。
想像もつかないから、こういう形にされているのではないろうか‥‥
分からない‥‥
ただ、カラダが熱くて、とりとめがつかない‥‥
どこか物足りないとでもいいたげに、私のクレヴァスはひくひくと熱く蠢いている。
犯されるのは怖い。むりやりはイヤ。でも、私は、ずっとあの人を待ちわびていた私
は、今では『ご主人様に抱かれたい』とまで思っている。それだけは、たしかで。
奇妙な気持ちだった。
自分から、まだ顔も知らぬご主人様の躯を求めてしまっている。
私は、ご主人様に犯されたいのだろうか‥‥
「あぁふ、ぃグ」
涎をしたたらせ、ボールギャグに歯を立ててこみあげた快感をのみくだす。
セルフボンテージで馴らされきった放置責め。
その中で、ご主人様に施されたこの緊縛は、かぎりなく完璧に近かった。
愛撫や揶揄の台詞で煽られ責め立てられ、なかばムリヤリ一足飛びに被虐のステップ
を駆け上っていく、あの苦しいエクスタシーとはまた違っていた。
湯舟に身を沈めたような、ゆるくたゆたう高揚感。
どうせ、どうあがいて四肢を突っ張らせたところで、今の私は後ろ手の指先まで固く
縛り合わされているのだ。
蹂躙され、発情する裸身はまさしく緊縛のオブジェそのもの。
目の前の姿見を見つめ、悶える様と現実の触覚を擦りあわせながら、さらに自発的に
カラダを熱くグズグズに脱力させていく。
私自身でなく、ご主人様の手によって徹底的に緊めあげられたこのカラダでは何一つ
抵抗など叶わぬ身なのだ。ただひたすら、不自由な裸身を心ゆくまで悶えさせ、その
惨めさに酔いしれて、被虐の波間をただよいつつ上気し、昂ぶらされ、のぼせていく。
縄目が残酷であるがゆえに、束縛のリズムはむしろゆるやかに。
鼓動の速さで一歩ずつ、着実に、禁断の甘い官能を搾りとっては蜜を喉へと流しこみ。
無慈悲に縄打たれた奴隷の身で、煩悶の悦びを極めさせられてゆく。

             ‥‥‥‥‥‥‥‥

ふわふわと、手足が宙に浮き上がったようで感覚がまひしかけている。
比喩ではない。長いこと縛られっぱなしの手足がしびれ、それが痛みではなく、心地
よい陶酔となって全身をかけめぐっているのだ。
イイ‥‥
気持ちイイ‥‥酔って、縄の味に溺れて‥‥いつかのバーの一夜のように‥‥
嬲りつくされた身は軽く波打たせるだけでギチチリッと幾重もの縄鳴りを呼び起こし
合奏となって肌を食む。狂おしい快楽の調べばかりが、私をドロドロに中から溶かす。
おま○こが、べちゃべちゃで、もう、たまらない‥‥
いっぱい奥深くまで突き刺されて‥‥思いきりかき回されたい‥‥
このまま、縄掛けされたままで、玩具のようにあしらわれて‥‥男性の強い手で‥‥
『ちょっと、すぐそこまで買い物に行ってきたよ』
「?」
うつろな意識を引き戻すと、いつのまにかご主人さまがいた。
出かける時と違って顔を隠そうともしない。サングラスに風邪用のマスク、いささか
不審者じみているけど、見てとれる顔の輪郭は想像以上に若々しい男性のものだった。
オッパイをなぞられた痕が、うるしでも塗られたように腫れあがる。
ぱっつんぱっつんに爛れた乳房は、指文字だけでめくるめく快感をしみださせるのだ。
すご‥‥すごすぎる‥‥
ご主人さま、もっと、もっと私を、私を虐めて‥‥かわいがって‥‥
会話なんか二の次で、自分からふりふりとくびりだされた胸を押しつけていく。
苦笑しつつご主人さまがギュウっとオッパイを絞ると、頭の中で火花が弾けとんだ。
先の方なんかビリビリってしびれてしまって‥‥
イク‥‥気持ち、イイ、よすぎて、イっちゃう‥うぅぅ‥‥!!
「んんぐ、む、っふ、うぅぅぅぅ‥‥」
『買い物って言うのは早紀を調教するためのものでね』
「はふっ、ンァァァァ‥‥!!」
『すぐ近くのSMショップでね、早紀を責める道具をそろえてきたんだ』
「‥‥っ、ひぅ!?」
唐突に不自然な動悸が私をとらえていた。
このマンションの近くにあるSMショップ。この町でそんな場所は一つきりだ。駅前
の繁華街の雑居ビル4Fの『hednism』 。私の知っているもう一人のご主人様のお店。
そもそも、発端はあれだった。
屈服したら一生彼女のモノになる‥‥奴隷か、自由か‥‥
私自身を賭けた調教で屈服し、丸一日彼女の奴隷となる約束を交わした私は、その時
のことを思い返していて衝動に駆られ、絶望的なセルフボンテージを始めてしまった
のだから。
彼女との約束はまだ生きている。
私はご主人様の奴隷だ。けれど、あの女性との約束だって、破るわけにいかない‥‥
『さぁ、早紀もしたくを始めようか』
「‥‥‥‥!?」
甘い息の下、物思いにふけっていた私はご主人様の声でわれにかえった。
厳重な縄を解かれ、どこか残念に思いつつ自由を取り戻す。
何をされるのか分からぬまま、ご主人様に急かされてふたたび4つんばいのポーズを
とらされた私は、今度はケモノの拘束具を嵌められていった。朝よりもずっと厳重に、
革のロンググローブも、底厚の肘パッドも取りつけられる。
浅ましいことに、自由になったばかりの私は期待と興奮で裸身を熱く昂ぶらせていた。
両手、両足ともぎっちりベルトを絞られ、太ももと足首、手首と肩がくっつく拘束姿
で、もはや肘と膝でよちよち歩きするほかないというのに。
さっきよりずっと不自由な、完全な4つ足のケモノ‥‥
このカラダで、私はどんな恥ずかしい調教を強いられるというのだろう。
顔を上げる私は、きっとボールギャグと革マスク越しにもはっきりと嬉しげに見えた
に違いない。
頭をなでられ、首輪のリードをとらえられて、これで私は完璧にご主人様のモノだ。
低く、深く、そして嬉しそうに‥‥ご主人様が呟いた。
「さぁ、メス犬の夜のお散歩に行こうか、早紀」
「?」
「室内じゃない。マンションの外へ、その格好で公園まで歩いていくんだ、早紀は」
思わず窓の外を見る。
外は、まだ夕暮れにさえ程遠い、晴れ上がった午後だった。
「さぁ、メス犬の夜のお散歩に行こうか、早紀」
「?」
呆けた顔で、私はご主人様を見上げていた。
外はまだこんな明るいのに。会社帰り、学校帰りの住人が一番出入りする夕方なのに。
今ここから出かけたら、絶対、他の住人に見られてしまう。
冗談にもほどがあると思った。
露出のリスクが高すぎて、あまりに危うくありえない調教なのだ。
「信じてない目だね。でも、給湯器のリモコンは隠した。逆らってもムダだよ、早紀」
「くぅ‥‥ン?」
「俺がやらないと‥‥本気で思っているかい?」
ご主人様の瞳が細まっていく。
鼻を鳴らしかけ、ふと自分の姿に思いいたった。色づく唇の隙間から食みだすボール
ギャグ。残酷な獣の拘束具を課せられて地に這いつくばり、胎内を抉るバイブに涎を
ふきこぼすしかない、私自身に。
肘と膝に当てられた厚いパットが、ご主人様の本気を示しているのではないだろうか。
首輪を曳かれる私は、自分の望み通り、生殺与奪の一切を明け渡した牝犬だから‥‥
そうだった‥‥
拘束姿の従順なペット。お尻をふりたて、四つんばいで惨めに地を這うばかりの獣。
「んっ、ンァッ!?」
ゾクリと戦慄に捕らえられ、私はあわてて手足の拘束を凝視していた。
おののき、取り乱して手首をあちこち眺めだす。
絶望的なまでに閉じきった金属の輪。
手首と肩口、足首と太ももの根元それぞれを束ねられ、本当にいまの私は肘と膝で必
死によちよち歩くだけの‥‥あと、ご主人様に嬲られる以外の機能を剥奪された‥‥
交尾を待ちわびるだけの、完膚なき達磨女なのだ。
「分かったようだね。俺の許しがない限り、一生、早紀はそのまま暮らすんだ」
「うっ、うぐっフ、ひぐぅゥゥ!!」
「甘い期待ばかりで従うからこうなるんだよ。分かるかい、調教ということの本質が。
何もかもが君ばかり中心に回って、快適な、それが調教だと思っていたかい?」
「ひぅぅ、ンンンンンーーー!」
「早紀の好きなことだけ紡いで楽しむわけにはいかないよ。それは、それこそご主人
様をモノ扱いしている。最低の仕打ちだ。分かるね」
‥‥
ご主人様の呟きが、耳をすり抜けていく。
怖い怖い怖い怖い‥‥あんなに待ち焦がれていたのに、命令された途端、強制された
途端、怖くて、できなくて、手足がひきつって‥‥
グチャグチャにうるみっぱなしのアソコと裏腹に、全身を冷や汗がおおっていく。
この姿では、たとえ何をしようと強制しようとご主人様の思うがまま。
どころか逆らってひどい罰を与えられたとしても、身悶えさえままならないのだから。
遠慮なく首を曳かれ、窒息の恐怖感を植えつけられて。
すくみあがって抵抗もできない裸身ごと、ズルズルと玄関前まで引きずられていく。
うそ、うそっ‥‥その扉の向こうは、絶対に‥‥
怖くて、恥ずかしくて、もうこのアパートで生きていけなくなる‥‥
あふれだす涙と嗚咽。醜く顔を歪ませて、必死にご主人様にすがりつくのだ。
しばらくは無言だった。
私も、彼も。
どうすべきか、どうしたらいいのか、この人を信じたいのに、虐めてもらいたいのに。
秒針の音さえ肌の柔らかい部分に突き刺さってくる。
「‥‥俺の気持ち、こういうの‥‥どうにも、難しいな」
「ンク、エグッッ」
すすりあげつつ、頭をたれてご主人様の言葉を聞く。
叱責とも独白ともつかぬ声もまた、どこかとまどい、迷いをふりきれない響きだった。
「俺は君の道具じゃない。俺も、して欲しい。お前にさせたい。我慢が難しい」
「‥‥!?」
「つねにマグロじゃなく、そういう発想は、浮かばないのかな、早紀」
俺もして欲しい‥‥
台詞の弱々しさが、しゃくりあげる私の顔をはっとあげさせていた。
SとM。
当たり前の事。私が欲望をぶつけ、しゃにむに感じてしまうように、ご主人様だって
男性の当たり前の欲望を感じないはずがないのだ。
ずっと受け身で過ごしてきて当然だと思っていた。ご主人様が何でも与えてくれると。
さっきも、その前も、ご主人様が行動を起こすのをずっと待っていたのだ。
でもそればかりじゃ、2人の関係が正しく結べるはずがない。
ご主人様だって、独占欲も、支配欲、調教の欲望も‥‥性欲だって、あるのだから。
私は‥‥
ご主人様を、好きになりたいから‥‥
怖くても、信頼して、この人の立派な奴隷にして頂きたい‥‥
こくりとうなずき、従順の表明にカラダをすりつけた私は上目づかいに彼を見上げた。
ご主人様の欲望を、私が叶えてあげたいから。
しゃがんだご主人様が手を伸ばし、ボールギャグのストラップに手をかける。
「ンッ、ンフフフッ‥‥はい。私、ご主人様のためな‥‥ひゃぁ、あ、カハッ、ふク」
「ふふ。牝犬にに声なんかいらないね。犬らしく鳴いてご覧」
ボールギャグを外されたと思うのもつかのま、今度は強制フェラチオのための口枷を
噛まされる。素直に開く唇いっぱいに太い鉄の環を押し込まれ、ほんのわずか言葉を
交わすことさえ許してもらえないのだ。
少しだけ恨めしげに、頑張ってリングギャグを深々とほおばりつつご主人様を睨む。
「不満そうじゃないか」
「ンー」
「舐めてくれるね? 俺のものを」
「ぁぅッ‥‥くぅン」
甘ったれた喘ぎが出たのは気のせいだろうか。
悪っぽく囁きかえすご主人様も、サングラスとマスクの下でどこか嬉しそうだった。

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

今度こそ、はっきりと眼にするご主人様の姿。朝は目隠しをされ、出かける時は背中
だけだからなおさら見つめてしまう。
どこか若々しさを残す男性、それが、私のご主人様だった。
同い年か、あるいは下かもしれない。マスクとサングラスで隠れたその顔は、どこか
凛々しく胸をときめかせる風貌のようだ。
リングギャグの栓を外され、開口部から舌をつままれてペロペロしゃぶりつつ、私は
ぽーっとうっとりした瞳でご主人様を見あげてしまう。
恥ずかしい拘束に甘んじて、この人に好かれて、かわいがられなんて。
喜びにときめいて、カラダがひくひく跳ねちゃう‥‥
「さぁ。今度は俺がマグロだ」
「むぅー」
意趣返しをされてぷっと膨れる。リングギャグのせいで気づかれないだろうけど。
私は迷わず、ご主人様の下半身に顔を寄せた。
ベルトを外し、ぱっつんぱっつんに盛り上がったジーンズを脱がそうと悪戦苦闘する。
「んっ、ンフッッ」
唇には相変わらずリングギャグを噛まされたままだった。
ご主人様のこの意地悪のせいで、歯をたてられない私はどうしてても前足を使わざる
を得ず‥‥そうなると、バランスをとるため、あのポーズになってしまうのだ。
「‥‥!!」
ここにきてご主人様の意図を思い知り、私は耳の上端まで真っ赤になっていた。
ワンちゃんの、チンチンのポーズ。
膝立ちになってカラダを密着させ、拘束された前足の先を曲げてジーンズのふちごと
ジッパーを下ろそうと悪戦苦闘する。その私の格好たるやご主人様にしなだれかかり、
くにくに足に押しつけるオッパイから、バイブと肉裂れのすきまからおツユをこぼす
アソコまで、カラダの全面が丸出しなのだ。
屈辱的で、しかもそれを自覚させられるポーズだった。
ご主人様の瞳がスケベな感じにニヤついている。観賞される奴隷の羞じらいが裸身を
まだらに火照らせる。今にも胸を、お尻を揉まれそうで、でも見られてるだけなのが
また切ない。
ようやくジジッとジッパーが下がり、割け目から天を突く反りがあらわになっていた。
ブリーフ越しの彼自身は充分以上に固く雄々しく反り返り、まるで媚薬のように発情
中の私を駆りたててしまう。
はふはふ言いながらブリーフに前足をかけたとたん、ご主人様が呻いた。
「痛、いたた、腹をえぐるな」
「あぅ!?」
前足がめりこんでボディブローになったらしい。思わずしゅんとなり、頭をたれる。
オシオキされても仕方ない粗相だ‥‥うなだれる頭を、意外にもご主人様の手が優し
く撫でてくれた。
「がっついたのは分かった、まぁ、許す」
「うぅ」
言葉でも辱められ、プレイでも辱められ‥‥
真っ赤になりながらも私はいそいそと、ご主人様自らがブリーフを下げてむき出した
太いソレに顔をかぶせた。そろりそろりと口枷のリングを通し、舌先で息づく分身を
確かめて嬉しさに腰をよじらせる。
ご主人様のオチ○チンが、私の口の中で、痛々しいほどビクビク震えてる‥‥
ガチガチにこわばったそれを慰撫するように舌を絡め、滑らかに首を動かしてフェラ
チオをはじめていく。あふれだす涎を頬のくぼみにため、舌にまぶしてからご主人様
に塗りたくる。音を立て、頬を吸い、むせ匂いにまみれて熱心に顔を動かす。
初めのろのろした首ふりは、少しづつ勢いをつけて口腔深くまでくわえ込んでいく。
「ンッ、おふっ」
たまらない恥じらいに、声を奪われた口枷の孔から嬌声がしたたった。
チンチンの姿勢で前も後ろもバイブに蹂躙され、完全なメス犬に仕立て上げられて、
そんな私が自発的にご主人様のものを咥え、美味しそうに奉仕を始めているのだから。
頭でわかっていても、とめどない恥辱が頬を火照らせる。
まぎれもないペットに成り下がった私を、ご主人様はどう思い、どう感じているのか。
『俺にもして欲しい‥‥』
あの弱々しさは、おののく私と同じように迷いあぐねてのことだったのだろうか。私
のご主人様になるのかどうか。これからも私を調教しつづけるべきか悩んだ末の。
だとしたら、ご主人様には遠慮なんかさせたくはない。
SMプレイでは、きっと、ご主人様の方がずっと大変で、苦労のかかる立場なのだ。
私への遠慮や躊躇が言わせた台詞なら‥‥
「ンブッ、ふブっ、っくぅぅ」
ぶちゅ、ぶちゅっとできるだけイヤらしく唾液を攪拌し、大きな音でしゃぶりつく。
舌先でねっとりとしごくように‥‥ご主人様を楽しませるように‥‥
男性がどんな風にコレを楽しむのかは知らない。
だけど私は、本当に、ドロドロに下腹部を熱くしながらご奉仕を続けていた。昔の彼
にだってしたことないくらい熱心に。敏感な舌先でなぞり描く肉のシャフトが、味覚
と触感と、鼻を突く雄々しい匂いと、擬似的に犯されている視覚のいやらしさとで、
これでもかと言わんばかりに私を責め嬲っている。
ご主人様のが、苦みばしった味の先走りのしずくが、脈打つ固さがたまらないっ‥‥!
「ングッ‥‥ふぅ、あうぅぅ」
いい、イイよぅ‥‥変な気持ちがどんどんにじみ出てきて‥‥
すごい犯されてるのが分かって、しゃぶるたび苦しそうに眉を歪めるさまがセクシー
で、上目づかいの視線が絡むたび、コレが口の中で跳ねるのが嬉しくって。
だから。
ご主人様の、全部。全部を。苦しくなんかないから。
一滴残さず、ビクビク波打ってるそのすべてを‥‥私に、下さい‥‥
いっそう熱心に舐めしゃぶり、ひくひく開いたり閉じたりする先っちょの割れ目に舌
を差しこむぐらいの勢いでとろとろと唾液をしたたらせて。
「ぐ、くぅッ!」
低い呻き声はセクシーだった。
そして、そのあと、あまたたび、たっぷりとたわむ砲身から吐き出された白濁もまた。
口蓋の裏を直撃して私をむせさせ、飲み干そうにも飲みきれず、濃いエグイ色をして
で緘口具のふちからあふれた粘液をあびたまま、媚びた上目づかいを彼に向ける。
半分は恨み言。酷いなぁって思ったから。
もう半分は睦言。私の口でイッてくれたことが嬉しくて、なにか奴隷の矜持のようで。
白濁まみれの舌先をギャグから出し、口枷の縁をねっとり舐めていく。
‥‥前の彼に教わった男殺しのテクニックとか、なんとやら。馬鹿馬鹿しいと思って
いたこんな唇を舐める仕草が、ご主人様を喜ばすために役立つとは思わなかった。
「‥‥エロイな、早紀は」
責める口調と反対に、ご主人様のソレがみるみる硬度を取り戻していく。
憤った分身をジーンズに押し込み、目元をゆるめてご主人様は私を見下ろした。
「名残惜しいけど、今はここまでにしよう。良かったよ」
「うン」
「さぁ、メス犬のお散歩に行こうか、早紀」
「‥‥‥‥」
みたび、非情な命令。
それを耳にして、私は、こくりと頷いていた。
ちろりちろりと被虐の焔が、理性をあぶり焦がしていく。
真実の意味で調教をされている。その自覚があった。
ご主人様の満足のためだけに、あえてお披露目でもするかのように、私は一番危ない
時間に連れだされようとしている。嫌がる行為を無理強いされている。
毛並みをあやす手が、うなじを伝い、背筋からお尻へ、つぅっと官能的に撫でていく。
白桃の裂け目からもぐりこみ、柔らかくほぎれたお尻に生えた尻尾へ。
アナルビーズを食わえこむヒダのすぼまりをいじられ、掌がふわふわシッポを揺らす。
「んっふッ、ふわぁぁァァ」
ゾクゾクした愉悦に突き上げられ、喘ぎはとめどなかった。
遠吠えする獣じみてお尻から弓なりに背をたわませ、キュプキュプと、胎内でアナル
ビーズばかりにこすられて、いじましいぐらい粘液があふれてしまう。
尻尾をあやされ、すっかり骨抜きにされ、拘束姿の、メス犬の私がお散歩へ向かう。
こんな躯で‥‥精液処理の道具そのものの、淫靡な躯に仕立て上げられて。ご主人様
どころか、誰にだって抵抗できない状況下で。
行きたくないのに。怖いのに。震えが止まらないのに。
隣人に出会ってしまったら、もう私はこのアパートに住むことさえできなくなるのに。
頭上でノブが回り、玄関の扉を鼻面でおしあけ‥‥
「ひゃンッッ」
お尻の中をかきまわされ、刺激にもんどりうった私は肘と膝で飛びだしていた。
アッと思う間もない。ねっとりした外気が毛穴をすくませ、取り返しのつかぬ動揺が
裸身を覆いつくす。
くらりと頭が傾ぐほどの眩暈に襲われ‥‥
ただの一歩で、完全に、底の底まで、私の肉体はオーガズムの頂点をきわめていた。
ぶるぶるっとよじれる秘裂が、排泄の孔が、バイブをギリギリ緊めあげる。佐藤早紀
を捨てられるのか‥‥その、本気の覚悟をするゆとりさえ、与えられずに。
完全に、後戻りできぬ裸身が、夕陽に染まっていた。
背後で音高くドアが閉じる。
リードを曳かれ、哀願することも逆らうことも叶わずに、四つんばいのまま歩きだす。
野外調教は、始まったばかりだ。
              ‥‥‥‥‥‥‥‥

宵闇の迫るアパートの廊下に、音高くひづめの音がこだまする。
肘と膝のパットに連結された金属のリング。たったそれだけの細工で、足音を殺して
そろりそろりとおびえる私の仕草はすべて無意味にされていた。
あまりにも辱められ、恥辱をなめつくして、自分がもう分からないのだ。
リングギャグにぐっと歯をたて、閉じられない唇から、力の入らぬ口から息をこぼす。
あぁ、だって‥‥
信じられない‥‥すごい、足音が響いて‥‥誰に見られるか‥‥
こんなヒドイ事されて、私ときたら、気も狂うばかりに感じちゃっているのだ。
靴音でも、ヒールの音でもない。いびつな蹄を踏み鳴らして、外気にさらけだされた
牝犬の裸がふらふらと亀のような歩みを続けていく。
進まない。
歩いても歩いても、踏み出す一歩がご主人様のスニーカーの幅にすら満たないのだ。
目も眩むばかりの焦燥感が、焦りが、意識を白く灼きつくす。
「‥‥」
だいぶ時間がたったにも関わらず、しつこく残照の粘りつく廊下は赤く染まった花道
だった。人の気配なんてそこかしこから感じとれる。なのに、私はまったき無防備で。
「んくぅ‥‥ッ!」
口枷を噛み絞り、快楽とともにわきあがる苦しい涎をコクンと飲み下す。
感覚は、這いずりまわる芋虫のそれだった。歩く、ではない。チリチリとマゾの愉悦
にただれきった肌をこすりつけ、その場でズリズリとのたくっては蠢くばかりなのだ。
信じがたいほどの被虐の疼きがカラダをかけめぐる。
なぜって、だって、今度こそ私は心から嫌がっている調教行為を強制させられている
のだから。逆らえず、ご主人様の色に染められていくのだから。
何もかもがか細く、頼るものさえなく。
頻繁に、何度も、いくども、顔を持ちあげては遥か高みで人の世界を確認するご主人
様の顔を‥‥横顔じゃなく下顔を‥‥上目づかいにのぞきみる。
それ以外に私を守るものは、何一つない。
震えつつも四肢をこわばらせつつも歩いていけるのは、ご主人様を信頼しているから。
安全を確認して下さるこの方なしでは、私は自分の部屋にさえ戻れないのだから。
「‥‥心配するな、早紀」
一人言のように、でも間違いなく私に向けて呟き、ご主人様がリードを曳く。
喉奥で哀しく喘ぎ、声と裏腹に耳たぶの先までのぼせあがって、私は曳かれていく。
バイブのリズムにあわせて肘と膝を動かし、啼かされっぱなしのカラダを爛れさせて。
行き先は‥‥
これも信じがたい、ようやく宵闇に包まれたばかりの、近所の児童公園だ。

深い深い泥の底を、黒い夢幻境をさまよう気分だった。
断片的な世界を、熱に浮かされ、立て続けのエクスタシーの中、わけもわからず朦朧
と這いずり回る。ようやく暗くなり始めた路地。アパートのエントランスから下りる
階段数段の絶望的な高さ。揺れるオッパイが邪魔で、遠くを走る自転車や車が、魔物
のように巨大に見えて、次第に拘束になじんできた躯が、肘と膝だけでもご主人様に
負けないぐらい普通に歩けるようになってきて、意味もなく道路のシミを避けては足
取りをふらつかせたり、よたよたと電信柱に隠れて通行人をやりすごしたり‥‥
そうして、公園入口の車止めを見あげている。
震えて力の抜けそうな肘と膝を必死につっぱらせ、四つんばいの姿勢でふらつく。
「なんだ、濡れまくっているな」
「あぉ、ン」
下腹部をまさぐられ、羞じらって身を揺する。
濡れたとばりをいじられて、バイブと一種にご主人様の手で虐められて‥‥感じない
はずがないのだ。体中をくねらせて、ご主人様の足にすりついてしまうのだ。
これが現実だなんて。
バイブを咥えた全裸で児童遊園の前にいるなんて。
ありえない‥‥そう思っていたのは、つい1時間前ではなかったのか。
シーソーに砂場、ブランコ、トイレがあるきりの小さな公園も、靴の先をなめる視点
からは茫洋として暗がりまで伸び、広がっていた。
ご主人様の計画が緻密だからか、あるいは幸運か、ここまで誰にも会わず歩いてきた。
だが‥‥この公園には人がいた。
塾帰りらしい中学生ぐらいの少女たちが、携帯をいじりつつ、ベンチに座っている。
見られちゃうから、イヤですよう‥‥言葉の代わりにカラダで気持ちを表現しつつ、
私は手綱を引っぱった。伝わったのか、ご主人様が頭を下げ、私を見下ろす。
慈愛に満ちた目。そう感じる。
サングラス越しに愛情深く眺められ、カラダがひくひくとなった。
「そうだな、早紀」
「あ、ンン」
思わず、殺していた喘ぎが大きくなってしまう。良かった、分かってくれた‥‥
手綱をにぎりなおし、ご主人様は続けた。
「よしよし。まずは一人で中に入って、四隅を一周してきなさい、早紀」
驚愕に瞳が、瞳孔が開いてしまう。
‥‥ご主人様は、本気だった。
囁きには、反論を許さぬ威圧感がこもっていた。その意志に私は震えあがってしまう。
宵闇の迫る児童遊園に一人で入っていかないといけない。
それはすなわち、ご主人様の庇護を失い、無防備な全裸をさらけだすということだ。
自由を剥奪され、凌辱を待つばかりのこの躯では、3歳の子供にだって抵抗できない。
まして公園内には中学生ぐらいの女の子が2人もいる。もし何かイタズラされたら、
あるいはケータイで警察でも呼ばれたら。
それ以前に、この格好は、私だけじゃなく彼女たちにもトラウマを与えかねない‥‥
「嫌か。なら、さらにきつい命令だ」
「くぅ、ンン」
「あの子たちに、このニップルチェーンで乳首を繋いでもらえ。その後、公園の四隅
を一周して、そこで伏せて待つんだ。俺は近くのコンビニまで行ってくる。戻るまで
に、すませておきなさい」
「うぅッ‥‥!!」
ご主人様はニップルチェーンを口枷に押しこんで咥えさせ、すたすた早足で歩きだす。
あわてて追いかけようにもこの手足で追いつくはずもなく、角を曲がったご主人様は
すぐに消え、私はひとり取り残されるのだ。
「ンムぅぅ‥‥ぅ」
ぞわわっと全身の毛穴が開くのが分かった。
ウソ。こんな、本当に‥‥私、一人ぼっちで、命令だけされたままで‥‥
火照りつつ全身の血の気が引いていく、異様な感覚。びっしょりと冷や汗にまみれ、
完膚なきまで施錠されつくした牝犬の姿で、私は公園前に取り残されてしまったのだ。
火のついたように下腹部が疼き、ネトネトの肉ヒダが灼けただれて‥‥
女の孔すべてをみっちりと埋め尽くされ、激烈な羞恥の予感で躯が燃え盛っていく。
仕方がなかった。
あのときの私に、他に、どんな選択肢が残されていたというのだろう。

               ‥‥‥‥‥‥‥‥

あらためて‥‥
薄闇の中で自分自身を観賞し、凶々しい凌辱のエロティシズムに私は震え上がった。
淡い街灯を受けて、汗まみれの裸体が濡れ光っている。
きつく折り畳まれた肘と膝。ハァハァと開口部の鉄の環から舌をつきだすばかりの口。
際限なくポタポタとだらしない蜜を滴らせる下の唇と、アヌスに深く穿たれた尻尾。
指先から上腕までを包むレザーグローブは汗で完全に肌と同化し、厚いパットで接地
する肘と膝は、正しく犬の四肢そのもの。
顔はすっぴんで、梳くこともできぬ前髪がべったり額にへばりついているのだ。
この惨めな裸身を、思春期の少女の前にさらすのだから。
私一人ならけっして選ぶはずのない選択肢。それが、ご主人様の、絶対の命令なのだ。
行きたくない。けれど、ご主人様の調教に従うのが、奴隷の務めだから‥‥
のぼせあがった顔を伏せ、舌先でニップルチェーンを落とさぬよう押さえこんで、私
は車止めの脇から、のろのろと公園内に歩みいった。
前足が柔らかい土にめりこみ、すんでのところで転倒しかかる。それでも声は出さず、
のろのろと植え込みにそって先に公園のふちを歩いていく。顔はうなだれたまま。
できる限り、少女たちとかかわりたくなかったのだ。
見られたくない‥‥知られたくない‥‥
誤解しようもない、完璧に躾けられ調教された獣の拘束姿では。それが本心だった。
お仕置きされてもかまわない。せめて、2つの命令のうち一つはすませておきたい。
その足がもつれ、私はガサッと植え込みにつっこんだ。
突然の物音に驚いたのか、キャッ‥‥とも、ヤダ、ともつかぬ小さな悲鳴が上がる。
思わずその場で凍りつく。お願い、気づかないで‥‥
「な、なんか、いるよぅ?」
「‥‥‥‥」
「な、なに、あれ‥‥人? ヤダァァ」
見られた‥‥!!
ぎゅうっとカラダ中の筋肉が収縮した。
ご主人様だけじゃなく、赤の他人にまで浅ましい格好をさらしてしまった‥‥
おののきと好奇心の混ざった視線で裸身に舐めまわされ、恥辱を堪えて歩きつづける。
目を細め、拘束された指先をきつく握りしめて、気づかないふりをするのだ。すぐに
気持ち悪がってどこかに行ってしまうに違いない。
沈黙と静寂が続く。
視線ばかりが灼りつく肌に痛かった。
見られる恥ずかしさで何度もよろめき、大胆な弧を描いて濡れたお尻で誘ってしまう。
さぞかし煽りがいの、虐めがいのある奴隷だろう。おののきが心を掴むのだ。
「うぅ」
たえがたい羞恥に呻き、リングギャグを噛みしめた私はのたうち、その場で四つ足を
踏ん張った。公園の土は決して清潔じゃない。丸出しでオツユまみれのアソコを地面
につけたくない。
少女たちの気配が動く。良かった。立ち去ってくれるのだろうか。
だが‥‥
ひたひたと重なる少女たちの足音が、こともあろうに近づいてきた。
遠巻きに囲まれ、私は園内の隅に追い込まれてしまう。
「こ、この人‥‥変なカッコしてる、お姉ちゃん」
「ヘンタイよ、絶対。こんな姿で、私たちのこと、怖がってるみたいだもの」
姉妹の会話が耳に刺さった。
ヘンタイ‥‥そう思われても、何の反論もできない。こんな姿で、まぢかで破廉恥な
ポーズを凝視されているというのに、胎内がカッカと熱く照り映えているのだ。
じくじくと音をたて、抜けそうなバイブを深くきつく緊めつける。
「ひゃっ、キタナイ‥‥汗でべったべたァ」
「やめなよ、触っちゃダメ! 病気移されちゃうよ!!」
しゃがみこんだ妹を、姉らしい少女がすぐに叱った。目線の高さを合わせられ、顔を
のぞかれて、真っ赤になってうなだれてしまう。こんな子供たちに言葉で煽られて、
嬲られている。ご主人様の命令で、自分のはしたなさを嫌というほど痛感させられて。
どうして疼きがとまらないの。なんで快感がにじみだしてくるの。
惨めであればあるほど、カラダが盛ってしまうなんて。
マゾ奴隷は調教を受け、きっと、こうして社会のルールからはみだしていくのだ。
「お姉ちゃん、あれ」
「なんか口に咥えてるね、このヘンタイ。なんだろ」
触るなといったばかりの少女が大胆にも手を突き出す。反射的に私は後じさっていた。
この子にはどこか無邪気な悪意を感じる。ニップルチェーンを取られてしまったら、
乳首どころかもっとヒドイことをされてしまう‥‥直感的にそう思ったのだ。
だけど、私の仕草は姉を怒らせたようだった。
「何よ! そんなカッコで逆らうつもり!」
「ひぅ‥‥」
逃げるゆとりもない。なだめる言葉さえ、私は封じられている。
肩を怒らせた彼女が片足を上げた。ヒールのようなものを履いたその足を、私に‥‥
「何をしている」
男性の叱責が闇から飛んできた。
低い一声で少女たちがひっと立ち上がり、その場から逃げだしていく。
ぎょっとしてふりむくと、街頭に照らされてシルエットになった人影がやってきた。
警官‥‥通りすがりの男性‥‥?
脳裏をよぎる恐怖は、ご主人様だと確認した瞬間に消えていた。パァッと顔をほころ
ばせて駆けよりかけ、そこで彼の命令を果たせなかったことを思いだす。お仕置きを
されるだろうか‥‥のろのろと歩み、私はうなだれた。
私を見下ろし、ご主人様は口を開いた。
「大丈夫か? ケガ、させられなかっただろうね」
「ん、ン」
第一声は、私を気遣う、真摯な声。
心がぽっと暖かくなり、私はご主人様の足元にすりよった。ご主人様が肩を揺らして
いる。その姿は、まるでホッとした飼い主がもらす安堵の笑いのようだった。もしか
したら、最初から隠れたふりだけして、私を見守っていてくれたのかもしれない。
ご主人様に守られている‥‥助けてもらった‥‥
無防備に愛される喜び。屈服し、庇護される喜び。それは、圧倒的に私を満たした。
野外での露出調教を施されていく現実。
とどめようもなく、思慕の思いと、マゾの血がじわじわ目覚めていく。
「命令を守れなかったね」
「ンーー」
「まぁいい。早紀が無事でよかった。せっかくだから、ここにマーキングしていこう」
マーキング? 犬の、マーキング‥‥
意味を把握し、とたん顔がバラ色に上気していく、
「意外に今日は外の温度も低いし、実は今すぐしたいんじゃないのか?」
「‥‥」
言われて初めて、おしっこの欲求に気づく。
ご主人様は、サングラスとマスクの下でニヤニヤしているようだった。ベンチに腰を
下ろし、楽しそうに私をからかいつつ見つめている。
恥ずかしい‥‥
けれど、この恥ずかしさは、さっきとは違う、暖かい恥ずかしさだ。ご主人様に要求
され、何もかもさらけだすことが私の悦びになってしまっているようなのだから。
ご主人様を悦ばせたい。かわいがってもらいたい。
その一心から、のぼせた頭で片足を上げ、寒気を感じる下半身をぶるぶる揺すった。
なにか、とどめようのないものが、もう、すぐに、あふれてくる。
イヤらしいバイブの振動に、さらにあおられて‥‥
シャァァっ‥‥
ほとばしる水音は恥知らずな勢いだった。
掲げた足の間から、おしっこが湯気を上げ、アーチを描いて木の根元にかかっていく。
全裸で‥‥
フェイスギャグを噛まされて‥‥
自力では一生外せない形状記憶合金の枷を嵌められたメス犬として‥‥
情けない四つんばいの姿で、公園の片隅にマーキングを、おしっこを垂れ流していく。
「溜め込んでいたなぁ、早紀。念入りにマーキングしておけよ」
「くぅぅ」
真っ赤になりながらも、私はたしかに‥‥
後戻り不能なマゾの悦虐を、堕ちていく者の悦びを、躯に刻み込まれていたのだった。
人の尊厳、羞じらいを代償とした解放感が裸身にしみわたっていく。
2つのバイブにイかされ、緊縛に身をゆだねながら、こんな破廉恥なことまでできる
ぐらい、ご主人様好みのの奴隷に躾けられていくのだ‥‥
トリハダだつ毛穴の奥まで、ヒダの一枚づつまで、調教の蜜の味を刷り込まれていく。
最後の、最後の一滴までポタポタっと出しきった私は、しゃがみこんだご主人様の手
でにワレメを丁寧にぬぐわれ、ティッシュの感触にさえ煽られて、感極まった喜悦の
喘ぎを、透明なものを、上からも下からもたてつづけにあふれさせていた。

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

私のカギを使い、ご主人様が玄関ドアを開け放つ。
ケモノの拘束具を着せられたまま、リードでうながされた私はよちよちと自分の家に
あがりこんだ。背後でご主人様が扉を閉める。まさにペットとしての扱いそのものだ。
お尻をピシャピシャと平手で叩かれ、追い上げられていく。
恥ずかしい‥‥嬉しい‥‥気持ちイイ‥‥
さまざまな相反する要素が私の心の中でせめぎあっていた。
お風呂場に連れこまれ、わかしたてのお湯で形状記憶合金の枷を外してもらう。
疲労でこわばったカラダから革の拘束具を脱がされてゆくうち、不意に恥ずかしさが
こみあげた。もう何度となく全裸を見られ、抱きしめられて、ありとあらゆる場所を
揉みほぐされたというのに。
狭い風呂場で、無防備な姿で、男性と2人きりなのが、ドキドキの理由なのだろうか。
「あ、あの‥‥ご主人様」
「ごゆっくり」
言い残し、ご主人様が風呂場の擦りガラスの戸をしめた。
女心を察してか‥‥それとも、調教の後の、リラックスを与えてくれたのか。ご主人
様をどんどん好きになっていくのに、彼の心理だけが読みきれない。
心身の汚れと疲労を洗い流す。
ちゃぽんと水音をはねさせ、きしむ手足を思うさま湯舟で伸ばした。
ご主人様は、何をさせたいのか。私をどうしたいのか。この後、私がどうなるのか。
何もかもが見えないまま、マンツーマンの調教は続く。
嫌‥‥ではなかった。だからこそ、なにもかもあの人に、私は預けているのだから。
でも、なぜ‥‥
「抱いてくれないのですか?」
舌先にのせた台詞を、そっと、跳ねたお湯のしぶきに溶かしこむ。
こんなにも気持ちを滲ませているのに、私から迫ってさえいるのに、あの人は最後の
一線を越えようとしない。さっきの公園でも簡単に欲望をみたせただろうに、あの人
はジーンズの前を膨らませたまま、それでも私を愛撫しようとはしなかった。
嬉しい、満足‥‥でも、なぜか、心が‥‥
「寂しい‥‥変ね」
不意に視界がにじみ、ばしゃばしゃとお湯で顔を洗う。

風呂上りのほどよくゆだった裸身に、ふたたび縄を打たれていく。
放置プレイのときとは違い、ゆったり緊縛を身にまとう‥‥そう、まさしく縄装束だ。
手首や胸縄はたるみも隙もなく緊まっている。けれど、血行が圧迫されたり、苦しい
感じはまるでない。やわらかい手編みの籠に全身を包まれた不自由さだ。
発情したまま、その熱をにじませて。
ご主人様の調理した夕食を床下で頂き(スパイスの効いた野菜カレーだ)、トイレも
付き添っていただいて、あとはお姫様抱っこの要領でベットの中へ連れ込まれる。
またしてもドクドクと高鳴りだす胸に、私は驚いていた。
バイブを外され、股縄だけを埋もれさせた下腹部が甘い蜜をたくわえだす。
甘いときめき。まさしく私は彼に、強烈な異性の匂いを、誘惑を感じとっているのだ。
今度は‥‥どう、なるのだろう。2人きりで、私は絶対抵抗しまいと誓う。

30分ののち。
穏やかな寝息をたてるご主人様を、私はなかば恨めしげに、もうほとんど公然と頬を
ふくらませて睨みつけていた。ボールギャグを舌でつついては鼻を鳴らす。
鈍感にも、ほどがある。怒っているのに、甘えたくて、でも起こすのがためらわれて。
なんだコリャ。自分に問いかけたい。私の心はどうして、こんなバラバラなのかと。
どうして、私を抱いてくれないのか‥‥と。
「ンーー」
不満のあまり喉声をあげ、私は彼の足に自分の足をぎゅっとからめる。
ベットスタンドの灯りの中、はだけられたご主人様の裸の胸に私は頭をもたれていた。
頬をすりよせる胸板はゆるやかに上下し、広い肩幅と引き締まったカラダはセックス
アピールをただよわせ、男性の色香で私を切なく悶えさせてしまう。
ご主人様を起こせばいい。その通りだけれど、そうは思っても満ちたりた彼の寝顔を
邪魔するのが忍びないのだ。まして、私は奴隷の立場だから‥‥
涎の痕が残るだろうに、ご主人様は優しく私の頭を引き寄せ、腰に手をかけている。
とろんとした瞳で、私は飽くことなく彼を見つめていた。
この人は誰だろう。どうして顔を隠すんだろう。
仰向けに寝ている今でさえ、彼はサングラスとマスクをしたまま。ジャン・ポール・
ゴルチェのロゴ入りサングラスは、輪郭を実際以上にシャープに見せている。水谷君
の面影はたしかにある。でも、それにしては頬がふっくらしすぎ。それにあの子は、
ブランド物とか好きなタイプじゃないはず‥‥
声は全然似ていない。ずっと低い。ちょっと怖ささえある。
でも、押し殺した声が声音かもしれないと疑いだしたら、そうも思えてしまう。笑い
声がやけに明るくて水谷君ぽいとも思えるのだ。
たえまなく猿轡で話す自由を奪われているのも、私の詮索を封じるためかもしれない。
正体を秘めたご主人様。
明白なのは、私の、変わらぬ思慕の思いだけ‥‥
縄掛けされた裸身が疼き、濡れた股間をご主人様の太ももに押し当てた。
片足をロープでベットの足に繋がれているため、こんなにもご主人様が無防備なのに、
ずり上がって後ろ手で変装をはがすこともできないのだ。
何重にも括りあわされた両手首の先で、自由な指先が意味もなくはためいてしまう。
私を‥‥女として、みていない‥‥?
でも、ならフェラチオなんかさせるだろうか。
分からない。分からなかった。ここまで煽られて、最後は放置プレイだなんて。
もどかしい火照りの行き場もなく、また鼻を鳴らす。
ふわふわと焦らされたまま、意識が断続的にとびだした。
あまりにもめまぐるしい調教の連続で、ありえない体験を立て続けにして、とっくに
刺激の量が私のキャパシティを超えてしまっているらしい。泥のような睡魔が、頭を
真っ白に塗りつぶそうと襲いかかってくる。
ダメ、私‥‥まだ、ごほうびもらってない‥‥
なにやら意味不明な寝言を最後に、私の意識はふっつり絶えた。
 
              ‥‥‥‥‥‥‥‥

さざめく雨音で目が覚める。
外はまだ早朝のようだ。考えてみれば、緊張と疲労で引きずり込まれるように眠って
しまったのが、10時も回らないぐらいの時間だったと思う。
ご主人様は‥‥
顔を向けると、至近距離から瞳の底をのぞきこんでくるご主人様の目に捕らえられた。
サングラス越しの深みが私をからめとり、続いて意味もなく真っ赤に頬を染めさせる。
「おはよう、早紀」
「あふ‥‥ん、あふ」
半ば寝ぼけて律儀に返事を返すと、彼はクスッと笑って起き上がった。

ビデオデッキをいじっていたらしいご主人様が戻ってきて、朝の餌付けがはじまる。
テーブルの足に首輪をつながれ、椅子に座った足でカラダをいじられながら、テトラ
と見つめあって食事をする。ミルクを舐める彼女の向かいでコーンポタージュを舐め
させられ、テトラと一緒にちろちろ舌を出しながら、いたたまれぬ浅ましさでカラダ
がじゅんと濡れそぼっていく。
いつでも、今すぐバックで貫かれたとしても。
準備が整い潤いきった私のカラダは、ご主人様のモノを受け入れられるだろう。
‥‥セックスのことばかり考えている自分に気づき、さらに私はカァッとのぼせた。

両足を投げだしてベットにすわり、後ろから抱きしめるご主人様の膝と膝のあいだに
すっぽりとおさまる。尾てい骨にあたる男性のこわばりを意識するうち、ご主人様が
リモコンを操作した。
アパートの壁に、パァッと浅ましい女奴隷の姿が浮かび上がる。
はっと身をこわばらせた私を抱き寄せ、ご主人様は耳の裏から囁きかけてきた。
「昨日、君が風呂に入っている間に見つけたんだ。楽しんでいるね」
「う、くふぅ」
恥じらい‥‥いや、それ以上の、さらに悪い、いたたまれなさ。
ご主人様を裏切ってしまったかのような、そんな後ろめたさが私を押しひしいでいた。
彼以外のドミナに支配され、縄をかけられていく私自身が、あますところなく映し出
されていく。その中で、私はあられもなくよがり、声を上げ、どう見てもレズSMを
愉しんでいるようにしか見えないのだから。
「感じて、いるんだね」
「う、うぁう‥‥」
「いいご主人様じゃないか。俺の出番なんかないような気がするよ、早紀」
淡々とした、感情の見えない声が私をわななかせる。
違う、違うの。だって、だって私は‥‥
どれほど思っても、声を奪われ、こんな姿で、奴隷に言い訳の自由が許されるものか。
私は、ご主人様の腕の中で小さくなっていた。さらにこわばり、激しく自己主張する
ご主人様の下腹部の、その意味に気づかずに。
「正直に答えるんだ。君は‥‥本当は、まだ誰のものでもないんだな?」
コクリ。
「俺は、他人が調教済みの奴隷なんて欲しくない。一人の奴隷をシェアするつもりも
ない。俺のモノは俺のモノだ。俺だけのために尽くさせる」
「‥‥」
「正直、昨日はこれがショックだった。夕食後に力づくで嫌がってでも早紀をモノに
したいと思っていたのに‥‥何もできなかった。俺は浅いんだ、案外」
自嘲の響き。
息詰まる告白を、私は息を潜めて聞いていた。
「今はまだ君を俺のものにする時期じゃない。お互い準備がたらない」
「んふっ、ン」
「こんな状況で君を抱けば未練が残る。他人のモノになったかもしれない君のことを
考えつづけるのはご主人様としてあまりにみっともない」
だけど‥‥
言葉を返し、ご主人様は私のカラダをやわやわと卑猥な手で揉みこんだ。
思わず喘ぎ身悶えるその耳もとで低く囁く。
「君は無防備に俺を信じてくれる。泥棒とか、金銭やカードを盗まれないかとか‥‥
そんな心配さえ考えもせず、無条件に、僕にカラダを預けてくれる」
「‥‥」
「分からないんだ。早紀。俺は‥‥」
ご主人様の声は、ためらい迷う男性の苦悩にみちていた。
私が忠実な奴隷でありたいと思うように、この人もまた真摯なご主人様であろうと、
そう思っているのだろう。
「俺は‥‥どうしたら、いいのか‥‥」
「‥‥」
黙ったまま、ふりむいた私は彼の目を見あげ、舌先でボールギャグをつついてみせた。
口枷を外され、そうして、もつれる唇で、やっと‥‥心を決める。
恥ずかしいとか、顔から湯気を上げて上気しているとか、そんなこともう構わない。
のぼせた瞳で、羞じらいをかなぐり捨て。
言いたかった本音を言う。
「ご主人様に愛されたいんです。今すぐ調教してくださらなくてもいい。一晩だけで
いい。気に入ってくださったのなら、私を‥‥メチャクチャにして、抱いてください。
ご主人様がウソじゃないって、知りたい。感じたい」
「早紀」
「本気です。ご主人様の、カラダを知りたい。欲望を欲しい。愛を交わして下さい」
支離滅裂‥‥なんだか私、まるで、エッチに狂ったダメな女みたい‥‥
灼りつく裸身のせいばかりではなかった。
私は、本当に、ご主人様の思いをカラダで感じたいのだ。尽くすことが奴隷の役目、
だからこそ。
唇をかみしめた私のあごが、くいっと引かれた。
思わずあわせた瞳が男の愉悦に、性欲にたぎっている。マスクを外し、形の良い唇を
あらわにする。返事は短く。思いは深く。
「分かった。君の、望みのままに」
「はい‥‥ご主人様」
閉じることなく、熱い吐息を重なった唇から飲み下す。

求めあう舌と舌は懊悩の極致だった。
ここまでずっと焦らされ、お預けにされてきた愛情が、愛の交歓が、生の感覚器官を
通して、粘膜をとおして、とろとろとじくじくと混ざりあう。
飽きることない口腔の探索。
不自由に身を絞られていたって、こればかりはご主人様も私も条件は同じ。弾力ある
舌の中腹を下の歯におさえつけ、ズリズリとなすりながら涎を飲ませていく。
「ぐ‥‥う、んググ」
「んふ」
ご主人様に先んじてリードしている‥‥愉悦の笑みは、あっという間に妖しく崩れた。
お返しとばかりプックリ尖っていた乳首をつままれ、きゅうと紡錘形に引き伸ばされ
てしまう。
「あぁン、はぁァンァ‥‥んんっ、んぷっ、ンンーー」
痛みと快楽がグジャグジャになり、悩ましく吐息をつぐところで首をそらされ、彼の
唾液をたっぷりと流し込まれた。口腔を舌で犯され、防戦一方の中さらに下腹部へと
もう片方の手が伸びていく。
「はぁン、ひぁァン、だめ、ダメェァ」
ダメなのか、欲しいのか、声と裏腹にくびれた腰はおねだりするように伸び上がり、
背筋をつたいおりてくる手にお尻を撫で回されてハスキーな鼻声で悶えてしまう。
そう、もっと深くまで、太ももだけじゃイヤ、その奥が、私‥‥濡れて‥‥
ついに。
ツプリと、白桃の裂け目をかきわけたご主人様の手が、股縄をおしのけて前後の孔に
やわやわと指を這わせだす。くすぐったくていじましくて、そのくせ刺激は柔らかい。
「あっ、あぁン」
ムダと知りつつ伸び上がって裸身をくねらせる。逃げられるはずもない抵抗だ。
唇と指で、女の穴という穴を制圧され、下半身が浮き上がるような衝撃に、唇を深く
奪われたまま、私は腰をビクンビクンとはしたなく揺すっていた。
離れた唇からねばぁっと濃いアーチがしたたり、崩れ落ちる。
もどかしく肌をくっつける私をつきはなし、ご主人様は縄の束をしごきだした。
さっきまでの縛りはそのまま、さらに後ろ手胸縄の上から縦横に火照った裸身を縛り
上げていく。オッパイの上下をヒリヒリとくびりだされ、ウェストを菱縄で緊めあげ
られ、何度となく後ろ手の手首を通し、二の腕を上半身にびっちり一体化させていく。
ふたたびのボールギャグを、私は自分からむさぼり咥えこむ。
あぁ‥‥そう。この感じこそ。
不自由の極みに広がる、愉悦の幻想境。身じろぐだけで爛れた素肌がキリリと縄目に
虐めぬかれ、ご主人様の愛撫との相乗効果が、果てしない悦虐へと私を導くのだ。
マゾの色に染まりきった私の瞳は、ご主人様にどう映るのか。
たたんだ片足まで縛められ、凌辱の期待を目にこめて、私はご主人様ににじりよった。
待ちきれなくてグショグショのオツユがシーツを汚す。
ご主人様もまた、獣の目をしていた。
遠慮も気遣いもない。乱暴な手つきで腰から抱えあげられ、対面座位の形でご主人様
の上に腰を浮かされる。
火を噴かんばかりに強く天を突く男性自身へにワレメの周囲をくすぐられ、そして。
無造作に、前戯すらなく、ご主人様の猛りくるったソレがズドンと、落下の勢いで私
のクレヴァスに、まちわびる蜜壷に突き刺さった。
「い、ギィッッ!」
ボールギャグの奥から歓喜の悲鳴をあげてしまう。
すごい、もの凄くビクビクしてて、エラにこじあけられていく‥‥
濡れそぼったアソコはやすやすとご主人様のモノを飲み込み、カリの張ったシャフト
にねっとからみつく。そのまま、腰を支えるだけのご主人様の手の中で、私のカラダ
は自分の重さに導かれ、じわじわとメリメリと串刺しになっていく。
いきなりの変質的な性行為に目元をうるませ、私は、彼自身を味わいつくしていた。
バクバクと動悸がおさまらず、乳房や後ろ手の縄目をいじられながら、ご主人様の肩
にあごをのせてヒクヒクともだえてしまう。
まだ繋がっただけで、受け入れただけでこの充足感なのだ。
これが動き出したらどうなることか‥‥?
恥ずかしい満足感に赤くなる頬をつままれ、顔をのぞかれて、ボールギャグの上から
唇を吸われたり、唾液を流し込まれたりして、ネチネチと奴隷の辱めをうけるのだ。
さんざんに私をもてあそび、嬲りつくしたあとで。
「く‥‥すごい感触だな、早紀。ようやくなじんできたよ。いいかい、動くぞ」
「ンッ、ンフ‥‥ぁ、ぁふ、ぅぅぅんンンーーーッッ!!」
抽送の衝撃に、あっという間もなく私は最初のエクスタシーに、アクメの頂まで上り
つめていた。無残に縛り合わされた奴隷の身をたわませ、捩じらせ、もがきあがいて。
ご主人様の声だって上ずっている‥‥そのささやかな満足感に酔うひまさえ、私には
与えられないのだ。

何度も突かれ、貫かれ、ギンギンにこわばった彼自身を懸命に貝のヒダで緊めあげて。
いつのまにか私がまたがる格好で彼の上にいた。
下からオッパイをわしづかみにされ、唐突な愛撫に甘くよがりなく。
騎上位でうねりくるう裸身。腰と腰が上下に弾み、恥骨に衝撃が響いてくる。
長いリズムでたぷんたぷんと乗せあげられ、そのたびに雫がなんともいやらしい淫律
を奏でている。腰に回されたご主人様の手。見下ろせば、縄打たれた全身が激しく汗
ばみ、みしみしと軋んでたゆたっているのが分かる。
激しい交合を見せつけるように深く貫かれ、腰を大きく弾ませる。
ボールギャグから爆ぜる涎さえ、気にする余裕もない。
また体位を入れ換えられ、上半身を前につきだすようにして背後から抉られる。
前に崩れそうな裸体を縄で引き戻され、ご主人様が縄尻を自分の首に引っかけてでも
いるのか、顔からシーツに埋まることもなく舳先の女神像のように裸身が反り返って
いる。
汗のつぶを弾きとばし、みだらに、官能に、縄打たれたカラダが隅々まで打ち震える。
肌を這いつたい、アクメの波が重層的に重なり合って私をおののかせるのだ。
「くぅうン、はぅぅぅン」
もはや人の喘ぎなど出せなかった。
縄尻を曳かれ、ぐいぐいと根元まで打ち込まれていくコレは獣のような交合だ。
恥も外聞もなく啜り泣き、甘い蜜の味に歯を食いしばり、全身を火のように盛らせる。
宙に浮く乳房がたゆたゆと縄のはざまで前後に震え、短くアップビートな抽送が私を
ズクズクと突き崩していく。
なしうくずしの快感に、反応も、彼につくすことさえ意識から消え去っていた。
ひたすらに続くのはエンドレスな快楽の衝撃。
とめどなく、めくるめく蜜の味にむせかえって、ガクガクと気をやりながら。
まだ続く、まだ、まださらに上がある、まだ、躯がこんなにきつくギュウとねじれて
いるのになお、オーガズムの波が、波濤が、全身を飲みつくし、遥かな高みへと押し
流していく。
男性のたくましい腕を感じ、脈打つモノのリズムを、味を、をあそこで噛みしめる。
こんなにも‥‥カラダが、舞い上がる‥‥

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

ご主人様‥‥
意味のない睦言をつぶやき、暖かい男性の胸にもたれかかろうとして目覚める。
違和感があった。しなだれかかった上体が何かに強制され、不自然に突っ張っている。
まるで、両腕をピンと広げて、磔にされてでも、いるかのような‥‥
磔‥‥両手が、磔に‥‥!?
「へ‥‥ふぇっ!?」
愕然として目が覚めた。
室内は夜の闇に沈み、枕もとのスタンドと、天井の灯りだけがほの暗く部屋を照らす。
首をかしげた私は、窓に映りこんだ光景を目にしていた。

アパートの部屋の、いつものベットの上に座らされて。
観賞用のオブジェらしく絶望的な拘束を施され、汗みずくの裸身を揺らす私自身が。
‥‥‥‥そこに。

背負わされた金属のポールはたるみもなく、ニップルチェーンで繋がれた両の乳首は
すでにしびれきっていた。女座りの足は、拘束の厳しさに変色しかけている。
顔の下半分は、厳重なレザーのマスクに覆われていて。
「あ、あふ‥‥!?」
さぁぁっと血の気が引いていく。
信じられなかった。わが目を疑った。
セルフボンテージに失敗したあの瞬間のまま、何も変わらぬ拘束姿で座らされている。
絶望的な緊縛に啼かされ、さらに消耗し、脱出の手段もなく、そして、一人きりで。
胸の谷間で、二度と外すことのできない手枷のカギが揺れていた。
助けなど、すがれる人など、ここにはいない。
ご主人様との甘い蜜月‥‥では、あれすら死の寸前に朦朧とした意識が見せたただの
幸福な幻想に過ぎなかったと?
あの感触が、あの声が、すべて夢の中のものだったと‥‥いうの?
ウソだウソだウソダほどけない外せない助からない逃げられないどうしてどうし‥‥
狂ったようにその場でカラダをひねり暴れさせ、パニックに陥って叫ぶ。
「イヤァァァ!!」
こだます沈黙は、深く、長かった。
叫びの残滓が、耳を刺すように部屋の空気を漂っている。
「え?」
「どうして」
「声が‥‥出た?」
狂人のようにぶつぶつ呟きを漏らす。
マスクの下で当然噛みしめているはずのボールギャグは、なぜか首にかかっていた。
あの時と‥‥自縛に失敗し、打ちのめされて気を失ったあの時とは、違う。
しかも。
「ウソよ、なんで‥‥外れて」
思わず呟く私の足元、女座りに凹んだシーツの谷間には、飾り玉があったのだから。
そう。あれほどもがき苦しんでばし外れなかった磔の横木の、その先端の飾り玉が。
手枷を外す最大の障害が、そろえて、外された状態で、私の足元に。
「‥‥」
呆然となり、けれど、しばしのち。
私は、忙しく手足を動かし、セルフボンテージからの脱出を再開したのだった。

週明けの月曜日。
いつもと同じ、いつもの朝。手足に縄のあざが軽く残り、連日連夜の調教三昧で腰が
抜けそうなほど疲労している以外は、そう、いつも通りだ。
彼との邂逅は夢ではない。そこは確信している。
そうでなければ、あの磔の状況から、私が抜け出せたはずがないのだ。
ご主人様は私を助けてくださり、週末の間、優しく愛してくれた。私はただあの人の
命令におののき、啼かされ、温かい腕を感じながら、何度も何度ものぼせあがっては
頂上をきわめていた‥‥
「なのに、どうして消えちゃうんだか」
とりとめない思いにふけりつつ玄関を出ると、隣の部屋のドアが開くところだった。
「あら、水谷君」
「はい。早紀さん、おはようございます。ちょっと眠そうですね」
「うん‥‥」
あのね、昨日何していた‥‥?
昨日はありがとね‥‥
一瞬のうちに様々な会話のパターンが思い浮かんでいた。アパートの隣人、水谷碌郎
君。彼こそ、もっともご主人様に近い男性の一人だった。彼がそうなのだと、あるい
は違うと、どうやってカマをかけるべきか。考えつつ年下の大学生に目をやる。
あっと、私はのけぞっていた。
「な‥‥なんですか? 寝癖でもついていました?」
「いや、あの、えっと」
思わず口ごもる私の視線は、開いたシャツの胸に無造作にひっかけられたサングラス
へ集中していた。同じダークシルバーのフレーム、ゴルチェのロゴ。見覚えがある。
ご、ご主人様‥‥の‥‥
「あぁ、これですか? ヘヘ、いいでしょう」
「へ?」
私の動揺を知ってか知らずか、彼は無邪気そうな笑顔を見せる。
「あのドラマ以来、このシリーズも品不足で困りますよね。やっと手に入れたんです
‥‥早紀さんが私大生の流行に詳しいとは知りませんでしたが」
「へ、へぇ?」
その時の私がどれだけ間抜けな声を出したか、想像もつかないことだろう。
水谷君の話の断片から、そのサングラスは大学を舞台にしたWEBドラマで人気俳優
がかけていて、一気に人気が爆発したシリーズだと分かった。
つまり、彼ぐらいの年頃の男の子が持っていても、なんの不思議も無い、ということ。
「ふ、ふぅーん」
「ま、そんなワケですよ」
得々と語った彼はサングラスをかけ、エレベーターホールへ歩きだす。
でも。
後ろ姿は、そして歩きぶりも、たしかに似ているようにしか思えない。今の説明も、
なんだかとってつけた釈明めいて、白々しさがなかっただろうか。
「‥‥ご主人、さま」
われしらず呟いた私の前で、大きな背中がギクリと揺れた‥‥ような、気がした。
違うと思う。たぶん彼じゃないかと思う。でも、確信はできない。
そして確信できるまでは、私からは何も言えないのだった。セルフボンテージの性癖
は、私とご主人様だけの秘密。決して、誰にも明かすわけにいかない。
だから、今、ここで水谷君を問い詰めることができない。
この、もどかしさ‥‥
それでも、私は可能性を信じたかった。あるいはそうであって欲しいと願う。好きな
人が、好きになりかけている人が、本当の意味で優しく厳しいご主人様なら。
「その時が来るのを、待ってるわ‥‥私は。ずっと」
「‥‥え? は、はい!?」
語りかけた台詞に、思いっきり、水谷君がうろたえていた。
まあ無理もない。こんな思わせぶりな台詞、たとえ彼があの人じゃなくても、普通は
焦るに決まっている。だからカマをかけたというレベルの会話でさえない。
あえて言えば、私の、独りよがりな願望。
「あ、あの‥‥早紀さん? な、なんですか? なんか、約束しましたっけ?」
「うふふ」
ご主人様の準備が整うまで。私は私自身を取り返しのつかない所まで、従順なセルフ
ボンテージ好きの奴隷に仕立て上げるまで、この秘めやかな行為を続けていくだろう。
それにあの女性バーテンのことだってある。
彼女とのデート‥‥ううん、一日調教のあとで、私が私のものである保証なんかない。
あの人が、私のご主人さまになってしまうかもしれない。
けっこうこれで、私の倍率は高いらしい。簡単には、なびかない女なのだから。
だからこそ。
だからこそ、私は、ご主人様からの告白を、待ち続けるだろう。
そう。彼の準備が整うまでは、いつまででも。
まだ動揺を隠せない年下の彼の、やけに初々しい姿にほほえみつつ、先に歩きだした。
流し目をくれ、腹の中で台詞の残りを呟く。
「付き合う前から本気で両想いってのも、素敵な主従関係‥‥ですよね、ご主人さま」

【彼女】40歳のオレに20歳の彼女ができた話 【彼氏】

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ちょっと自慢カキコさせてくれ

40歳のしがないサラリーマンなのだが、

20歳下の可愛い彼女ができて、毎日幸せすぎる。

20歳下っつったらハタチよ。今年、成人式だったのよ!

オレが童貞喪失した年に生まれたってことよwww

しかもその子は色白清楚系でめっちゃ可愛くて、

容姿なら間違いなく歴代彼女ナンバー1

おっぱいの大きさは普通だけど、色・ツヤ・ハリが違う。

もうね、付き合いだしてまだ4か月だけど、毎日ラブラブで、

近々同棲しようかとか話している。

そのまま結婚しちゃうかもwww

正直、宝くじで1億円当たるよりか、彼女と出会えたことの方が嬉しい。

当たったことないけど、そんぐらいオレ今幸せ。

残念ながら処女ではなかったけど、経験人数は前彼の一人きり。

しかも、1回しかしてなかったらしいから、もう処女も同然。

口内発射からのゴックンや、ナマH&中出ししたのは、オレが初めてだっていうから感激しちゃったよ。

もう最近は毎晩のようにヤリまくってる。

初めはたどたどしかった彼女だけど、オレの調教のおかげで

最近はすぐにアソコがトロトロになって自分から挿入を求めてくる。

ホテルだけじゃなく、車の中や非常階段、ヤリたいときはスグに入れさせてくれるよ。

オレの言うことをなんでも素直に聞いてくれて、愛されてることをスゴく実感できる。

いままでイイことなんてなかった人生だけど、今は幸せすぎて、逆にコワい。

オレは別に普通の容姿で、とくにカッコイイ訳でもなく、

腹なんてむしろ出てる方だし、とにかく自分に自信の無いさえない男よ。

なのにこんな彼女ができて、現実味がなくて、

夢でも見ているんじゃないかとおもうときもある。

もちろん、夢ではないのだが、幸運が重なった結果ではある。

ほんとにラッキーとしか言いようがない。

出会いは、いわゆる出会い系サイト。

当時、いくつもの出会い系サイトを渡り歩いていて、

何人かとは会ってエッチしたり、セフレになったりしてた。

恋愛感情なんか無くても、エッチは気持ち良い。

30分前に会ったばかりの初対面の女をベッドに押し倒して

お互い服を着たままパンツだけずらしてエッチしたこともある。

今思えば、人妻はやりやすかったなぁ。

同い年で、やたらと体の相性の合う女とは、毎晩のようにエッチしたなぁ。

で、あるとき体だけの関係に虚しくなっちゃって、

恋愛したくなっちゃったの。

セフレとのエッチはキープしつつ、出会い系で彼女を探す日々。

まじめそうな女の子ばかりを選んで、決して下心を見せず、

ひたすら真剣にメールする、ということを何人も繰り返してた。

最初は同年代ばかりをターゲットにしていたけど、

そのうち、気になる女のほとんどにメールしてたことになって、

次第に年齢層を下げて行ったのね。

数打ちゃ当たるとは言うけれど、そこで出会ったのが今の彼女。

最初はぎこちなかったけど、いつしか直メするようになり

「会いたいね」ってお互いが言うようになってからは早かったな

当時もセフレとは続いていて、エッチしたあと恋愛相談とかしてた

エッチには不自由してなかったからガっつくこともなかったし、

相談相手のセフレからのアドバイスもあって、

オレたちは順調に仲良くなっていったのよ。

最初は歳の差が気になるかと心配だった。

向こうはオレに敬語だったからね。

年上としては、彼女をリードしなきゃと思って、

思い切って2回目のデートで手をつないでみたんだ。

何年振りかでドキドキしたよ。

つないだ手が、汗ばむの。どっちの汗かわからんけどwww

夜の公園のベンチで座っておしゃべりして、

もちろん手はつないだまま。

そのうち手だけじゃ物足りなくなってハグしちゃった。

ぎゅーってされると気持ちいいみたいで、

彼女の口から幸せそうな「んんー♪」って声が漏れる。

抱きしめたまま、自然に彼女に告白した。

そのあとキスして、服の上から全身撫でまわして

お互い「ハァハァ」言っちゃってwww

…エッチするのに、そこから1カ月かかっちゃったけどな。

彼女は前彼と別れてから2年以上の間、誰ともエッチしてなくて

前彼とだって1回しかエッチしてなくて、

エッチに対して、ちょっとした怖さを持っていたみたい。

とうことで、彼女との初エッチのときは色々と制約があったわ

まず、電気を暗くすること

次に、ゴムを着けること

アソコを見ないこと

とかね

なんだか、今時のハタチとは思えなったよ。

出会い系であった割り切りの女で同年代の子もいたけど、

恥じらいが全然違って、そこがまた初々しくて新鮮だった。

彼女の気が済むならと、久しぶりにゴムを着けたさ。

自称テクニシャンwのオレとしても、そんな子とエッチするのは学生以来。

明らかに慣れていなくて、なかなかチンコが入らない。

濡れて無いわけではないのだが、強くすると痛そうにするし、

緊張のあまり余計な力が入っている感じ。

メリメリという感じで、徐々に亀頭を押し込んでいく。

カリまで入ったら、愛液を掻きだすように少し戻してまた入れてを繰り返し、

徐々に奥まで挿入していく。

今まで生エッチが当たり前だったから、

ゴムを着けているとヤッてる実感が薄いのよね。

とはいえ、奥まで全部入ると、若さゆえの締め付けがハンパない

照明を落としたホテルの薄明かりの中、改めて見ると、

すらっとした色白の、引き締まった彼女の体がとても艶めかしかった。

無駄な肉が付いてないのよね。かと言って固いわけでもない。

視覚で彼女の体を楽しみ、チンコで締め付けを堪能していると

彼女がぽつりと「すごい奥まで入ってる…」

ああ、前彼は短いひとだったのねwww

オレが入れたまま、チンコに力をいれてピクピクさせると

彼女がそれに合わせて「あぁっ」って言うのが可愛かった。

念願の彼女とのエッチだったけど、理性は保たれていたから、

彼女をイカせてあげようと、気持ち良くさせることだけを考えて

愛撫し、腰を振り、体位を変え、舐め、吸い、もみしだいた。

いくつか試したけど、彼女が好きな体位は正常位のようだった、

余裕を見せつつ、緩急織り交ぜてピストンし、

舌を絡めつつ彼女の高まりを感じて高速ピストン

「何コレっ!?気持ちいぃー!」って彼女の声がホテルの部屋に響いていたよ。

初めてイッたんだって。

長いチンコがズボズボと出たり入ったりするのがたまらなかったそうだ。

その後、オレがイクために、ガンガンと突きまくったら

途中3回くらい「イクイク」って言ってたわ。

驚いたのが、オレが「イきそう」って言ったときに

「外で出して!」って言ったこと。

ゴムを着けていても、妊娠はコワイらしい。

その要求は呑めないので、一番奥の子宮口にチンコの先を押しつけて

思いっきり射精してやった。(ゴム着きだけどね)

もうね、ビュービュー出たね。愛は精液の量も増やすのか!?と思ったよ。

したら、彼女も同時にイッてたみたいで、体をピクピクさせて快感に浸ってんの。

しばらくして、うっすら目をあけてオレの方を見て

「赤ちゃんできたらどうしよう…。漏れてないよね…?」だって

ゴム着けてんのにそんなことあるかい!と思いつつ

チンコをずぼっと抜くと、そこに有るはずのゴムが無い!

「まさか!?」と思って彼女のマンコを見ると、

ゴムがビローンと垂れ下がってた。

あまりの締まりの良さと精液の多さで、抜くときにハズレたのだろう。

一瞬ヒヤっとしたが、ゴムを引き抜き、ザーメンがどんだけ出たかチェック

感覚的には相当出たはずなのに、全然溜まってなかった。

これはもしかして、漏れちゃったか!?と思ったけど、

彼女に気づかれてないようなので、ゴムをさっとゴミ箱に捨て平静を装ったわ。

って言うか、それ以降のエッチでは、ナマも中出しも解禁されたんだけどな。

ほんとに愛のあるエッチができると、心も通じるね。

今ではお互い自由にエッチを楽しんでる。

露出調教が好きなオレは、カーセックスから始めて、非常階段でのエッチをこの前体験。

この夏は、ノーパンノーブラで買い物に行かせたり、青姦に挑戦しようかと思ってる。

最初は恥ずかしがってた彼女も、近頃は、結構乗り気なのが嬉しい。

良いパートナーに出会えて、オレは本当に幸せだよ。

もしもオレが、ふつうの出会いを求めていたら、

自分の回りの小さな世界でしか異性を探せなかっただろうと思う。

その範囲を広める方法はいろいろあるが、

オレは、出会い系サイトをやっていて良かったと思ってる。

アドバイスをくれたセフレたちにも感謝しているし、

その人たちとのつながりを作ってくれた出会い系サイトにも感謝してる。

ここまで読んで下さって、そんな出会いを求める方が居たら

オレはココのサイトをすすめるよ。

ふつうのSNSみたいだから、女性も抵抗なく入れるんだ。

じゃ、がんばってな。

おれ、いつか彼女と結婚するんだ。

出典:2ch毒男板
リンク:フィクション


【友達】ガラスの学校【セフレ】

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き、禁止服…」
私はそれを手渡されて絶句した。
学校内で自慰をしているところをみつかった私は校長室に呼び出され
てしかられると生と指導員の体育の今川先生のところに連れてこられ
たのだった。
この学校の校則で禁止されている淫らな行為、というのは自慰も含むこ
とは私も知っていた。
見つかるわけない。
それに、見つかってもそんな本気で怒られるわけが…
「そう、君がこれから着ける服ね。服のことは知っていたわよね?」
淫らな行為をした生徒に強制される更正服。通称、自慰禁止服。
この学校に何着か備え付けられていて、淫らな行為をした生徒がいた場
合卒業までの間、二度と同じことをしないように貞操を管理するための
服だ。
でも見るのも

「…」
触るのも初めてだった。
私は今川先生の机の上にたたまれた状態で置かれた自慰禁止服をそっ
と触れてみる。
そもそも…
学校に伝わるよくある伝説のようなもので、先生が生徒の風紀を正すた
めに流している冗談のようなものだと思っていた。
「知らなかった、とは言わせないわよ。あんなに話題になってるんだし
ね」
「はい…、でもホントにあるなんて」
校長室で絞られた後、校長室から出ると廊下で待っていた今川先生と一
緒に校舎裏の倉庫までこの服を探しに行ったのだった。
5年に一度ぐらい私みたいな生徒が出てきて使うことがあるのだとい
う。
誰が作ったのかしらね、なんて今川先生は苦笑していっていた。
銀色のロッカーの中が洋服ダンスになっていてかなりの数の自慰禁止
服が並んでいた。
私は…
中学2年。
この学校を卒業するまで一年半もある。
その間これを…
「結構、興味津々みたいね。大丈夫よ、体と一つになるぐらいなじむわ
よ」
「…今着るんですか?」
私が恐る恐るそう聞くと、先生がそうよと答えた。
倉庫に有ったたくさんの自慰禁止服。一つずつサイズが違って、私の身
長にあったものをその中から今川先生が探してくれた。
ハンガーにかかったワンピースの水着のような形の黒い自慰禁止服。
首の部分はタートルネックになっていた。
それは普通の服よりずっしりと重そうなそんな印象を受けた。生地も随
分と厚く、ただの服というよりは本当に人の性欲を封じ込めるというそ
んな威圧的な印象すら受けるそんな服だった。
「質問はもういい?」
「あの、脱ぎたいときは…」
「川口さん! これはお仕置きなのよ、脱ぎたいときに脱げるわけがな
いでしょう!?」
「で、でも…」
私がそうくらいつくと先生は一つため息を大きくついてから私に服の
説明をしてくれた。
「ここいい?」
服の首の部分。服の首に巻きつくようにせりあがった部分には、ベルト
のようなものが着けられているのがわかる。
「あなたがこの服を着たら、ここのベルトに鍵をかけます。鍵は数学の
森下先生が管理することになっているから、私に言っても無駄よ。それ
に森下先生に言っても卒業までは外してもらえないわ」
森下先生は男の先生。
そんなに怖い先生じゃないけど…
でも…
頼んでもやっぱりだめなんだろうか。
「生理の時とかでトイレでどうしてもというときだけ、私がこのお腹の
ベルトのロックを外して下半身を露出してあげるから…、でもそのかわ
りトイレも監視付きよ」
「はい…」
トイレも監視付き…
今川先生は授業でも生徒指導でも厳しいので有名だった。授業では男子
女子の区別なくかなり厳しいトレーニングをさせられるし、進路相談で
も行くところないわよと直接言われて泣いた生徒がいるという逸話を
聞いたことがある。
「もう説明はいいわね、いらっしゃい、そこに教員用の女子更衣室があ
るから」
「はい」
今川先生はそういってその自慰禁止服をもって私を更衣室まで連れて
いく。
生徒用のところとはちがって立っているところが一畳ほどしかないホ
ントに狭い更衣室だった。
「脱ぎなさい」
私はその更衣室の奥側にたたされるとそう言われるのだった。
一瞬ためらってから、どうすることもできないんだと思いなおして、セ
ーラー服に手をかけて服を脱ぎ始める。
あの服を着るのだ、全部脱がないといけない。
女の先生の前とはいえ、あんなものを着せられるとわかっていてはあま
りに恥ずかしいのだ。
震える手でセーラー服を脱いで、それから下着を脱いだ。
「靴下もよ」
そう言われて私は靴を脱いで靴下を脱いで一緒に足元に落とした。
私が全裸になると今川先生は私の脱いだ服を拾い上げて横の机の上に
乗せるとその机の上に置かれていた自慰禁止服をわたし手渡すのだっ
た。
ついに…
私はそう一瞬泣きそうになってからそれをぐっとこらえてそれを受け
取る。
ずっしりと重い服。
私はその服のネックのベルトを外すと紐靴のように紐で閉められてい
る前側をぐっと開いて服を開くとそこに足をいれる。
合成繊維のようなもので作られたその服は全体に鎖カタビラのような、
硬い網が縫いこまれている。その割には通気性はよく作られているよう
だった。
股の間にあたる部分と胸にあたる部分にはまるでスクール水着のよう
に内側に二重に目の細かい硬い網の入った白い布が張られている。
両足をいれてぐっと服を引き上げて肩にかける部分を両肩にかけてい
く。
腰の部分がきゅっと引き締まっていて、あまり服の重さは感じなかった。
平らに見えた胸あての部分は私の胸に押されてゆっくりとふくらみ、膨
らんだ状態でしっかりと収まったのだった。
「ちょっと待ちなさい、紐を縛るから」
そう言われて私は一度手を下ろすと、先生は一度紐を抜き取ってから両
胸の間を締める紐を一段ずつ先生にきつく編みあげていった。
一番上まで編みあがると紐は綺麗にチョウの形に胸の上で結ばれる。
飾りのようなものなのかもしれない。
そこまで終えると、私の体にぴったりと着付けられた自慰禁止服を最後
に先生がネックのベルトを留めてそのベルトの金具の部分に南京錠を
がちゃりと下ろした。
「これでいいわ」
 *
セーラー服を上から着ても、自慰禁止服を着ていることがわかる。
もう、普通の生徒ではなく、学校で自慰をしたえっちな女の子ですとい
うプラカードを下げて生活をすることになるのだ。
なんか…
気が重い。でも、森下先生か、知らない相手じゃない。
そう思ったときだった。
私は今川先生に今一度怒られて帰ろうとしたとき、体育科の職員室に森
下先生がはいってきたのだった。
「森下先生! なにか御用ですか?」
「いえ、霧花くんと話をしようと思ってね、心がいたんでるだろうから」
そうちょっと苦笑して今川先生に言うと、森下先生は少し困ったような
顔で私の顔を見たのだった。
「着心地はどう?」
「最悪ですよー…、ずっと自慰できないなんて…」
私はそう甘えるように森下先生に、そう言った。
森下先生は私のクラスの隣のクラスの担任の先生、数学が好きな女の子
が少ないということもあってか、森下先生は私の質問にいつも丁寧に答
えてくれていた。
「なんだ、更正する気なしか?」
「はーい…」
でも…
自慰するのって自然なことじゃないのだろうか。
ま、まぁ、学校でするのが自然なことというわけじゃないけど…、うー
ん、やっぱり悪いことをしたのだろうか。
「なぁ、霧花」
「なんですか? 先生」
こうして話をしていると少しでも気がまぎれた。
もちろん…
期待もしていた。
「鍵の話は知ってるか?」
先生は、24才。飛び級をして大学に入ったらしく、すごく若い先生だ
った。
「なにそれ…、もっとちゃんといってくださーい、せんせー? じゃな
いとわかりませーん」
確かに言われてみると嫌だった。
だからごまかし。
俺と遊べ、お前で遊んでやる、そんな言葉は…私も好きじゃない。
でも…
森下先生が鍵をもってる人でラッキーだったかも。
「なぁ、先生が独身なのは知ってるだろ?」
先生はそう言ってから、少し襟を正して私のほうを向き直って頭を下げ
ていった。
でも…
「…霧花さんのことが好きです。付きあって下さい」
こっちは嬉しかった。というか、どきっとした。
 *
私ってば…
めちゃくちゃ幸運かも。
こんな自慰禁止服なんて着せられる羽目になったのまで、恋を実らせる
ためになってるなんて信じられない。
私は…
先生の車に乗って先生の自宅のマンションに連れこまれた。
「家に連絡…しないと」
「これをお前が着ることに決まってから直接ご両親に頭下げに言った
よ。お前俺のこと親にまで言ってたんだって?」
「…や、やだ! そんなこと聞いてくるなんてマナー違反…」
私はそういいながら顔を赤くした。
毎日親に、あの先生好きかもとか、そんな話ばかりしていたから…
でも…
「今川先生の管理権も譲り受けたし、お前も連れてきたし、そろそろ、
本当のことをお前に教えてやろうかな」
「え…?」
私は…
その時、雰囲気が変わるのを感じた。
「今のお前は、親も、学校も、世間からも見放されて俺しか頼る相手が
いない。そうだな?」
「…」
一瞬、私はその森下先生の言葉の意味がわからなかった。
「せん…?」
「しかも、自慰禁止服を着せられていて、不自由だ。そうだな?」
「で、でも、先生が…」
「俺の奴隷になれ」
そう、先生は言った。
その言葉に、私は泣きそうだった。今更逃げるわけにも行かない。
今川先生に森下先生に管理してもらうほうがいいとお願いして変えて
もらって、両親には先生と一緒に暮らすことがばれている。
今、先生に嫌われたら…
「じゃ、じゃぁもしかして…」
「お前が自慰をしてるところを指摘したのは俺だよ。お前が困るよう
に」
そう、森下先生はくすっと笑って私のほほを手でなでる。
まるで…
自分のものになった人形といわんばかりに…
「せ、せんせ…」
「いいかい、自分の立場はわかったよね? ご主人様と呼ぶんだ、幸せ
にしてあげる」
「せんせ…」
そう呼んだ私の両手をぐっとつかんで…
先生はポケットから取り出した。
「痛いっ…」
取り出した警察手錠のようなものを私の両手にかけた。
私は…
先生のことが好きだ。私のことを奴隷呼ばわりしようが、私のことをど
うしようとしていようが、どんな裏工作をしていようが好きだ。
でも…
先生は私のことを…
「遊びだと思うんだ」
そう、先生は私の耳で一度ささやいた。
「せんせ…!!!」
「ご主人様、だ。いいね」
私は、その、先生のたった一度のささやきに壊された。
遊びだと思えと。
遊び。
「ご主人様…」
「そうだ、いい子だ」
そう言った私は、先生に抱きしめてもらえた。
いや…
先生の態度からするともう、終わらぬ遊びなのかもしれない。私はそう
思って…
先生のことを…
そう呼んだ。
「…」
「…」
うぇえっ…、ひどいよぉっ!! そんなのあんまりだぁっ…」
私は、ご主人様の前で思い切り泣いた。
それは…
ご主人様が私に言った一つの言葉からだった。
“いいか、ご主人様にしてもらう前には必ず、バイブであそこをほぐし
て準備しておくんだいいか?”
うん、と答えた私。
でも…
その直後、先生が引出しから取り出したバイブを私の目の前につきつけ
たとき…
私は泣きそうになった。私が何度反抗しても、口応えせずにやれという
ご主人様の強硬な態度に私は泣いたのだった。
「わかった、悪かったよ」
「ひどいっ!!!」
「わかったから…、ほら、どうしてほしいんだ?」
先生は、泣き崩れてどうすることもできない私にそっと横に座って私の
話を聞いてくれたのだった。
私の…
言い分はたった一つだった。
「私はね、先生のことがね、すきなの」
「ああ、それでなんだ?」
「でね、先生がね、ご主人様でもね、私にバイブを使いたくてもね、い
いの」
「うん…」
「でもね…、私、処女なんだよぉっ…」
「…そうか」
「先生に、最初ぐらいは普通に…」
そういいかけた私の言葉をさえぎって、先生が少し困った顔をして、私
に言ったのだった。
「普通に、じゃないだろう?」
「え?」
「激しく、俺のものでやってほしいんだろう?」
「う、うん、かも…」
よくわからない。
したことがないから、激しいのも普通もわからない。
先生は…
私にかけていた手錠を外すとセーラー服を脱ぐように言うのだった。
 *
「…できました」
自慰禁止服だけの姿になった私は、先生が手にもった鍵でウエストベル
トの鍵が外されて下半身を覆う部分のあそこの部分を押さえていた部
分だけが外されて、そこだけが露出させられた。
「ああ…」
先生の前で、ベッド上で座って、先生に服を脱がされて。
ついに…
先生に抱かれる。
「目をつぶれ」
「はい」
私はそっと目をつぶると先生が電気を消したのがわかった。
それから、私の体をそっと一度抱き上げると、それから私のあそこに先
生のものがゆっくりと押し当てられて…
それが体の中にぐにゅっと入ってくる。
体の中に入ってくる先生の体。
先生の肉体。
ご主人様。
「んっ…」
たまらなく、気持ちいい!
私は、そっと先生の体に抱きついて腰をそっと先生のものを奥深く加え
る方向に動かそうとする。
「あせるな」
「…」
先生にそう言われてびくっと体を留めた私は…
先生のものが…
「あぐっ!!」
私の体の中に一気に入ってくる。頭の中で、その破孔の痛みすら、必死
で快感に買えようとしている私がいた。
「いぐっ…」
「痛かったか?」
私は、ポロポロ涙を流しながら首を横にふる。
いつのまにか目を開いていた私は、私を抱く先生の顔をぽーっと見てい
た。
「はぁっ、はぁっ…」
私の体の中に入ってくる先生の体。
ゆっくりと、私の体から出てはぐいっと差し込まれるそれに私はだんだ
んと本当に感じ始めていた。
ぎゅっと先生の体を抱くと…
私の体と先生の体の間に自慰禁止服の硬い表面が邪魔をする。
でも…
妙に、自慰禁止服に体を締めつけられた状態でこうして先生に抱かれる
のが…
快感… くすっ
「ああっ…、いいっ…」
よくわからない感覚を、快感と決めつけて私は感じた。
「はぁはぁ…」
「いいことを、教えてやろう」
「はい…」
先生はそういって、私を抱きながら…
私に言った。
「お前の着ているのは、調教用の拘束服だ。ふふ…」
「え…」
「元はそうなんだよ! 先代の校長が女子生徒を奴隷にして遊んでい
たのがばれたときに口実にしただけなのさ…ふふ」
「そ、そんな…、あっ」
初めてあそこに男の人のものをくわえて…
どきどきで…
いきなりそんなこといわれてもわからなかった。
「後々、意味がわかる」
そういい終わると先生は一度私の体から性器を抜き取った。
「え…」
私は…
まだ、いっていない。先生も。
「そのままじゃ、いけないさ、お前のあそこはまだ未熟だからな」
「そ、そうなの…?」
そういって先生は自分のものにゴムを付けているのを見てどきっとし
た。
妊娠したら大変だなと、そんなことを思ったのだった。
「避妊じゃないよ」
「え…」
「お前には毎日ピルを飲ませる。これは、俺のちんぽに薬がつかないよ
うにさ」
そういって、先生はゴムをつけた自分のものに黄色いクリームをべっと
りと塗っていた。
すっかりそのクリームを塗りこむと…
先生はそのべとべとのそれを、私のあそこにあてがうのだった。
足を…
M字に開いた格好の私は、それを呆然と見ていた。
「え…あっ…」
あっあっ…」
クリームがべっとりとついたあそこで犯された私は、先ほどまで先生に
抱いてもらっていたベッドの横の天井からつりさげられた鎖の先に付
いた手錠につりさげられて放置されていた。
しっかり、自慰禁止服の股の間の部分も鍵をかけられて元に戻された状
態で…
私は…
その…
「あっ…、だめぇっ…」
あそこを襲う猛烈な快感にびくびくと震えていた。
媚薬というよりは、強烈な快感誘発剤にちかいそれは犯されてもいない
私をもう三度もいかしていた。
先生のものより気持ちいい…?
いや、違うのだ。
違うのだ。
「…、ご主人様さっきの…さっきのして…もういっかい…」
この薬を塗りこめられた先生のあそこで犯されたとき…、私は、いきっ
ぱなしの状態を味わってしまったのだった。
頭の中がいった状態のまま…
快感の絶頂の…
どくっ…、どくっという感覚のまま固定されてしまって、全身が壊れそ
うな寸前の状態であそこのなかをまさぐられる。
「しょうがないやつだな」
「お願い…」
はしたないとわかっていても、私はそう先生に何度もお願いした。
「おまえのあそこはな、薬でべとべとなんだよ、ゴムつけてやらないと
俺までおかしくなる。ゴムつけてやるのは嫌いだと言っただろう?」
「そんな…、ほしいの…」
「じゃぁ、交換条件だ。優秀な奴隷になる約束をしろ」
「優秀な…」
欲しい…
明日なんて、どうでも…
そっとご主人様に髪をなでられて私はご主人様にそっと教わった。
「いいか?」
「うん…」
「霧花はご主人様の奴隷です、どのようなご命令でも喜んで従います、
って言うんだ、言ってごらん」
「…、き、霧花は、ご主人様の奴隷です」
それは…
自ら壊れる約束。
「どのようなご命令でも喜んで従います」
「本当だな?」
「…聞くよ…?」
そういった私に、先生はにやっと笑って見せた。
「そうだな…、じゃぁ、まず、口をあけろ、小便をしたい」
「はい」
私は口を開いた。
その私のあごをご主人様がくいっと引いて少し上を向かせる。
「…素直だな」
「…」
口をあけたまま。
私は…
ご主人様がズボンの中からがあそこを取り出して、私のほうを向けたと
き…
じっと覚悟を決めた。
「…」
「…」
「いい覚悟だ、だが、もう少し慣れるまでは勘弁してやる。風呂場でし
っかり練習してからだ、部屋が汚れると困るからな」
「…」
「顔の緊張をといていいぞ」
私はそう言われて開いていた口をふっと閉じる。
「ご主人様…」
「なんだ?」
「いじわる」
私は…
いま、ご主人様がしゃべっているその瞬間も、あそこに薬を…
「いぁっ…うう…」
びくっと体を震わせて私はいった。
「あっ…」
いった瞬間ぐっと目をつぶっていた私は、ご主人様に体を抱き抱えて引
き上げられた。
そして、そのまま私のあそこを貫くように犯される。
「あっ、だめっ…、ご主人様のあそこに薬がついちゃう…」
「ふふ、気が聞く奴隷だな」
「はぁはぁ…」
ご主人様がぐっと体を動かすたびに私は…
何度もいくようなそんな快感が体をつきぬける。
たまらなかった。
「あぐっ…」
わたしは…
疲れていたのかも。
その日は、そのまま気を失ってしまった。
 *
朝、起きると私はご主人様のベッドで、先生の隣に寝ていた。
もちろん、
 ご主人様 = 先生
だ。使い分けているのは、先生は先生として見ていたいときとご主人様
としてみていたいときがあるから。
たとえば、学校で授業を受けているときは先生はご主人様だし…
私をベッドでそっと抱いてくれるときは先生。
あれ…
なんか逆転してるかも。
私は、そんなことを考えているとき、裸になっていることに気づいた。
ご主人様が脱がせてくれた…!?
私は…
思わず先生に抱きついた。
先生も、隣で寝ている先生も裸だった。
「あう…」
さすがに昨日は元気だったけど、寝ている間はあそこは小さくなってい
るみたいだ。
あれ、でもまてよ…
朝立ちっていうぐらいだから、起きるときには…!
じゃぁ、ちゃんと、ねらいすませば…
私はそんなことを思ってご主人様にぎゅーっと抱きついた。
「なんだぁ…?」
寝言のようにそうつぶやいたご主人様に私は言った。
「好きだよ~…」
気づいてないなと思うと、私は何度も言った。
「愛してるよ~…」
何度も…
半分は遊びだったけれど。
「奴隷にされてもね、幸せならいいよ~…」
でも…
本心もあった。
朝、随分と早い起床。
寝るのが早かったせいもあって…
私が、朝っぱらからいたずらをしたせいもって…
朝からえっちをした。
裸でするのは初めてで、とっても嬉しかった。
昨日の夜にしたみたいな過激な快感はなかったけれど、それはそれで、
先生の生身の体を感じられて幸せだった。
でも…
昨日の夜のあんなに気持ちいいのは癖になりそうだった。
それから…
私と先生はばらばらにお風呂に入った。
時間的に忙しくなってしまったこともあって私は一人で自慰禁止服を
着て、先生に施錠してもらった。恋をしているときなのに、一時でも自
慰をできないのはちょっとつらいけれど、でも…
それはそれで快感かもなんて思った。
 *
先生の車で私は一度自宅に戻った。
両親に、本当のことを説明した。さすがに先生と肉体関係を持ったこと
まで詳しく話したわけではないけれど、両親はわかっているようだった。
それでも…
いいみたいだった。
「一緒に暮らすのはいいけど…、進学はするのよ」
「はい」
両親の希望はそれぐらいだった。
私が三女であることもあって、あまりというかそんなに両親の関心があ
るわけでもないようなのが助かることだった。
さすがに…
自慰禁止服には親も驚いていた。
それでも、それに関して一つも怒られなかったところを見ると両親にも
少しは心当たりが有ったりするのだろう。
なんて思った。
「荷物はどうするんだ?」
それから…
電車通学だった私は先生の車で学校に行く。
「送ってくれるって、服と勉強用具、当面のは今日かばんの中にいれて
おいた」
らぶらぶなのがばれてしまうけれど、それはそれでいい。
そのほうが…
自慰禁止服なんかを着せられているのが逆にえっちっぽくていいとい
うものだ。
事実…そうだし。
「そうか、じゃぁ、大丈夫だな」
学校に付いた私は…
先生に別れ際に、昼休みに校長室の前までくるように言われた。
 *
「霧花、今日、森下先生と一緒にきてたよね」
「うん、えへへ~」
「そんな服着せられてるのに…、らぶらぶとか?」
「うんっ…、着せられたから、らぶらぶなのかもよ~?」
私がそういうと、逸美は、ちょっとくやしそうに私のことを見ていた。
「あーいいもん、私は年下のかわいい男の子みつけて霧花を見返してや
るんだもん」
「相変わらず年下?」
自慰禁止服。
手で触ると、雰囲気がある…
でも、確かに言ってみればえっちな服を公認で着ているようなものだ。
先代の校長先生が、生徒を調教…?
そんなことが…
あったなんて、知らなかった。
結構おじいちゃんだったような気がしたけれど、あの年でも元気だった
のだろうか。
それともそれよりもう一代前の校長先生のことだろうか。
そんなこと考えながら私は授業を受けた。
「あ、霧花は、今日は学食?」
「うん」
私は彼女の弁当を見てそううなずいた。
「じゃ、もう行く? 混むよ?」
「うん、じゃ…」
私はそう逸美と別れを告げて、教室を出ると、学食ではなく校長室の方
へと歩いていった。校長室は二つに校舎の分かれた学校の一階の食堂と
反対側の建物の中。
普段は用事があるものもなく、誰も通らない廊下の一番奥だ。
その…
通路の途中に森下先生がたっていた。
「あ! ご主人様」
私はそうわりかし大きな声で言ってご主人様にかけよってそのままそ
っと抱きついた。
「…ここではよせ。」
「はーい」
そう返事をして私はそっとはなれる。
「校長室の中を見せてやる」
そういって、先生は突き当たりの校長室ではなく隣の締切と書かれたド
アのほうをあけて私を中に誘い入れた。
突き当たりの校長室は私が昨日絞られたばかりのところで…
見せてもらいたくもない。
「あれ? ここは?」
その…
部屋の中に入るとそこはもう一つ校長室のようなつくりの部屋が有っ
た。
「旧、校長室だ。なんだかんだで先代はやりすぎだったかな、あやしい
噂もたったしこの部屋は演技が悪いんだよ、だから隣の部屋を改装して
校長室にしたのさ」
校長先生が座るらしき場所に大きな机。
その前にソファーが一つ横向きに置いてある。
机の前があいているのはやはり、生徒をたたせる為なのだろうか。
横には本棚と…
「!!」
振り向いた私は、あるものを見て驚いた。
大きな彫刻、女の子がもだえ苦しんでいるようなそんな格好の彫刻だっ
た。
思わず寒気がするほどリアルな表情。大きさも等身大ぐらいあるのでは
ないかというような大きさで、気味が悪かった。
「今の校長達が使いたがらないのがわかるだろう?」
こんな…
こんな像を学校の校長室に置くなんて…
私には信じられなかった。
「そういえば、先生は若いのにどうして前の校長先生のこと知ってるん
ですか?」
先生はまだ24才。
先生になったのも去年からだったと聞いている。
「まだ生徒だったよ」
「あ…」
そうか。
なんとなく納得してしまった。
「今の雇われ校長とちがって創立者の息子さんだったからね、力もあっ
たのさ」
「こんなところで、どうするんですか?」
「抱いて欲しいか?」
私はそう言われてゆっくり首を振った。
「気味が悪いよ…、早く出たい」
「その割には興味深そうにみてるじゃないか」
私は、そう言われてその女の子の像から目をそらした。
年も私ぐらいの女の子をモデルにしたと思われるそんな像、彫刻なら、
全裸の像でもかまわないのだろうか。
いつも…
私は少しどきどきしていた。
もし、私の裸の姿がモデルで学校に飾られるような裸の彫像を作っても
らったら…
あまりの恥ずかしさに…
「どうした、顔が赤いぞ」
「え…!?」
私は思わず両手を顔に当ててぽーっとほてっていた顔を冷ます。
そうして、先生のたっているほうを見ると、壁に大穴が…
「せ、先生、それは…」
「調教室への入り口」
そう先生は言って、一度そこに立っていた古い本棚を横にスライドさせ
て階段を隠してみせる。それからもう一度開くと、そこにその地下に続
く階段が現れる。
まるで、ホラー小説かなにかでありそうな、そんな仕掛けだった。
こんなものが現実に…
「ここは、もとなんかだったんだろうな」
先生のところまで私はかけよってその地下に続く階段を見る。中にはち
ゃんと電球も付いていて明るく照らされている。
ということは…
中を誰かが使っている。
先生が…?
「知ってるのは村上先生と、今川先生と俺ぐらいだよ、ここは」
そういって先生は私を連れて地下へと階段をもぐっていった。
階段に一度入ると、こちらから見ると引き戸にみえる本棚をすっと引い
て動かしてぴったりと入り口を閉じると、再び地下へと降りていった。
地下の調教室を見せられた私は恐怖に震えていた。
「あっ…、いぅう…」
一人の少女のあえぎ声。
無人だと思っていたその部屋には村上先生の奴隷だという少女が一人、
檻の中で方針状態でそんな声をあげつづけていた。
“森下先生、ご主人様は…?”
“今は一緒じゃないんだ、我慢してればきもちよくなったころにちゃん
と来てくれるから、ね?”
“はいぃ…、あうっ…”
檻の中で女の子座りを崩さない少女。
階段を降りてすぐ右には、コンテナのような箱が2段に重ねられてあわ
せて十個ほど設置されていた。下の段のコンテナは上の段より少し前に
飛び出して作られていて、上の段の足場にもなっているようだった。
その女の子は、一番手前の下の段に閉じ込められていた。
年齢をみると…
「卒業生だよ」
「え…」
私は先生の言葉に言葉が詰まった。
「かわいい子だろ。」
私はそういう先生に思わず隣のコンテナにもその子の閉じ込められた
すぐ上のコンテナにもある台座、が気になっていた。
「…それか」
「これ…なに?」
聞かなくてもわかるような気がした。
この子が、もだえてしまうようなそんなもの…
「お前もそのうちそこに繋がれて…」
「うそ…」
「ほんとさ」
そういわれて私はそれをもう一度見る。
真中に有るのは、高さ5センチぐらいの自転車のさどるのような形のも
のだった。前と後ろがわに2本鎖が伸びていて、その先に金属の輪が伸
びている。
「名瀬、みせてやってくれるか? この子もお仲間なんだ、仲良くしよ
う」
「そう先生がいうと、ぽーっとした顔でその子がそっと体をあげてみせ
る」
綺麗な胸だった。
でも…
その下のお腹に巻かれた金属のベルトのようなもの。
そのベルトに繋がれた短い鎖がサドルにぴんと張った状態で繋がって
いる。サドルに腰かけたまま逃げられないようにする構造だった。
「…」
隣のコンテナ。
よく見なくてもサドルの部分に何かを取り付ける部分があるのが見え
る。
「付けるものはこっちだ」
社会科見学かなにかのように…
見て回るだけの私と、説明をする先生。
でも…
先生がそういうように、いつかはこれは私に使われるときが…
「…」
私はそう考えるとあまりに張りつめて…
胸を両手で押さえて落ち着こうとする。
「どうした?」
「…なんでもないです、ちょっと驚いただけ」
左のほうをぱっと見ると、この広い部屋にはほかにもいろんなものがあ
る。
調教、と聞いて一目見て目に付くのは私には三角木馬ぐらいだったけれ
ど、他にも使い方のわからないものがいっぱいある。
使い方がぱっと見でわからないのは…
おそらく…
「…」
先生が部屋の中ほどに有るロッカーを開いてみせる。
思ったよりは小さいロッカーだったけれど…
「わ…」
中には、見たような形のものがぎっしりと詰め込まれていた。
「随分すごいコレクションだな。これだけあると…、最近売り出された
IC組み込み型とかのもそろえないといけないのかななんて思うよな
ぁ」
「…」
全部、特注なのだろうか。
一つ手にとってみると、やはりお尻の部分はみな同じ形で、ベースにな
るものにつなげる仕組みになっているようだった。
多分、この中から適当なサイズのものを選んであのサドルにとりつけて

「…」
私を座らせるのだ。
「今日は中を見せるだけの為、というわけでもないんだけどね」
最後に…
私はあのコンテナ群の裏側に案内された。
地下室。
部屋の中にはいくつか電球もあったけれど、天井付近にいくつか排水口
のような形の小さな天窓があいていた。ガラスが張ってあって声は外に
出ないようになっていた。
でも…、外から覗きこめば見えてしまいそうでもある。
コンテナの裏側には電気設備があった。
「…たとえば…」
先生の声が小さくなる。
「これをいじくるとな、電圧が変わるんだ。右いっぱいまでひねってし
まえばあの子が耐えられないぐらいあそこに埋め込まれたバイブがぐ
にぐに動くようになる。こっちはタイマーかな」
ささやき声でそういう先生の指先を見て…
私はどきどきしていた。
あのつまみをぐっとまわすだけであの子がもだえる。
あんあんいって…、壊れるまで責めつづけられる。
「…」
「他にもいろいろできるが…、この右下の2つだけは最新のテスト型で
ね。ほんとならこれに全部を取り替える予定だったらしいけどな」
 *
時間が結構経ってしまったのもあって、先生と私は学食に食事をしにい
くことになった。
今から食べてぎりぎり、というぐらいだった。
“先生これは?”
“……”
最後に先生に聞いたのは、一番左下のコンテナのことだった。
一つだけすごく複雑な形をしていて、一つだけ、その中で浮いていた。
“…?”
“考えてみな、そうだな…、そこの鍵をお前にやるよ”
それから…
先生と一緒に食事をした。
「せんせーはぁ、どんな格好の女の子が好き?」
「んー、難しい質問だな」
「そうじゃない、お尻をこっちに向けてだ」
先生とデートぎみの昼食を終えた私は午後の授業を終えて先生の家に
帰る。
学校で…
先生が職員会議を終えるまで3時間ほど教室でぼーっと待っていた。
その間にいろいろ考えた。
なんだかんだで周囲の視線を見ている限りでは結構私と先生の関係も
知られてきているようだということ。
あの女の子は今どうしているのだろうということ。
先生から渡された鍵を、どうしようかということ。
「そうだ、それでいい」
家に帰ると、ご主人様から私は直接、奴隷として調教されることを教え
られた。
先生の自宅のマンションの鏡台のある部屋の洋服ダンスの上には、私の
自慰禁止服の首の錠前の鍵が鎖に繋がれて設置された。
家に帰ったら、私が一人で奴隷としての格好をできるように、というこ
とだった。
私はご主人様の前で自慰禁止服をはじめて一人で脱いで、洋服ダンスの
横のハンガーに禁止服をつる。
それから…
タンスから先生の白いワイシャツを着て、タンスの上に置かれた首輪を
自分にはめる。
それが、奴隷としての私に最初に教えられたことだった。
「こう…?」
私は、トイレで先生に後ろから指示されながら変わった座り方を教わっ
ていた。
洋式のトイレに、腰かけるのではなく両足で便器に前からまたがるよう
に座るのだった。そうして座ると先生が独自に取り付けたと思われる足
の置き場があり、斜め真上にはフィットネスのような位置に壁に取り付
けられた握りと手首をおく台があって、そこにつかまると、こう体を支
えられるようになっているのでした。
両手を伸ばしてその握りを握ると、先生が手首台の白いベルトを私の手
首にぎゅっと巻きつけます。
どんなところでも…
私は縛られるのが役目。
「よし、覚悟はいいか?」
「…………はい」
友達といろいろ話してえっちなことには詳しくなったはずの私も…
お尻に何かするというのは知らなかった。
今から先生は浣腸をするのだという。浣腸というのは、そう…
「これだぞ、これが全部お前の中に入るんだ」
そういって、先生が私に大きな注射器を見せる。
先についているのは針ではなく、ゴムのようなやわらかい素材でできた
丸くとがった突起だった。中は管になっていて…
私のお尻の穴にその先端をいれて、お尻の中にその中の水を注入するの
だという。
「せんせい、ホントにお尻でするの?」
「…知らないのか?」
「うん…」
「お前のここも穴だろう? 調教してここを広げるんだ、そうすればこ
こですることもできるし、ここで快感を感じられるようになる」
先生の言うことは…
今一つ理解できなかった。その時は…
まさか、先生の言っていることがお尻に先生の性器をいれてするアナル
セックスということだなんて思いもしなかったのだ。
「……」
何もわからずに…
私はただ、ご主人様のいうなりにしていた。
話を終えるとご主人様は私のお尻をよく手で揉みほぐすようにして、そ
れからローションという潤滑剤をお尻に塗りこんでいった。
「…」
なんとなくぬめっとした感じが気持ちいい…んだか気持ち悪いんだか
よくわからない。
そんな妙な感触、先生がいうようにえっちなことではあるのかもしれな
いと…
「にゃっ!」
私は思わず”その”感触に変な声をあげてしまった。
慌てて、顔だけをお尻のほうへと振り向こうとするが腕を高いところで
繋がれているせいで見えないのだった。
でもお尻に変な…
「どうだ? お尻に入れられる感触も悪くないだろう?」
「え…」
その時、私はお尻にそっと力をいれてお尻に先生の指が入っているのだ
と気づいた。
私は愕然としていた…
「い、いや、そんなとこ…」
「嫌か?」
ぐにっとお尻の中で先生が指を動かす。
あそこと違って中をどうすることもできないお尻は、先生の指の根元を
ぐっとお尻で締めつけるだけで、入ってしまった先生の指を締めつける
こともどうすることもできず、中のやわらかい粘膜をいじられるがまま
なのだった。
「き、汚いよ」
私のくちから出たのは…
そんないい訳だった。
好きな人がしたいことならさせてあげたい。させてあげたいけど、それ
をさせてあげる自分というのはとっても…、変な子で…
それがなぜか少し抵抗があって…
「汚くなんかないさ、お前の体は全部好きだよ」
そういって先生はお尻から指をにゅっと抜き取る。
それで一息付きかけたっ…
その時。
「いぁあっ…」
先生が私のお尻に顔を埋めて舌で私のお尻の穴のところをべろっとな
めたのだった。
「ああぁ…」
あまりに、愛されている感じが強すぎて私は困ってしまった。
私のそんなところまで、私の体のそんなところまでご主人様は…
「あう…」
そうして…
すっかり心がとろけてしまった私。
そんな風になった私、その私のお尻に先生はいじわるく注射器を突きた
てるのだった。
「ほら、お願いしてみろ」
「あぅ…」
先生から、さっき挨拶のしかたは教わっていた。
「霧花のお尻の汚い排泄物の洗浄をしてください…」
「あああ…」
お尻の中にぎゅるぎゅると逆流をしてくる液体。
「ほら、もう出せ、何度かにわけてやるから」
がくがくと震えていた私を、先生がみかねたのか、先生は全部注入する
といっていた注射器の中身を半分ぐらい注入するとそういって私のお
尻をなでるのでした。
私は…
右も左もわからないようなそんな状態で恥ずかしさもなにもわからず

そのまま入れられたものをはきだしたのでした。
「はぁはぁ…」
ぐっと目をつぶると私の目からは涙がこぼれてきて…
ちょっとつらかったのです。
 *
森下先生。私のご主人様。
年齢は24歳。
学校で数学科の先生をしている。先生というよりは、あまり背が高くな
いこともあってか見た感じは学生に近いけれど、学校では結構しっかり
した先生で通っている。
教え方は、数学の好きな私にとっては結構いいと思っている。
他の子は数学自体が嫌いな子が多いからあまり参考にならないのだが

男子の評判はまぁまぁのようだ。
私の通うこの光ヶ丘西中の卒業生らしく、この学校に詳しい。
中でも先代の校長先生とこの学校の秘密に関しては特に詳しいようだ。
旧校長室の秘密の階段と、その先の調教室のことも知っているところを
みると、当時になんらかのかかわりをもっていたようだ。
先生ではなく、生徒として。
それから…
えっちなことも詳しそうなかんじ。
今のところ、詳しいとしか思えない。
生まれてはじめてのセックスの時には薬を使ったし、今日はこれだから、
あまり普通のことをするのでは満足しないタイプ。
私と先生とは、私が教わって、先生が教える。そんな仲だった。
お互い愛称がよかったせいもあるんだろう。
わからないところを教わったこともあるが、今から考えると、もっと露
骨に仲良くしていたような気もする。
でも、先生と生徒という関係はその通りだったから…
やはり今回の事件がこうして一緒になったきっかけかもしれない。
今は私は両親に許可をもらって先生と同居している。
同居というよりは、同棲というか、なんというか奴隷として尽くしてい
る…というほどでもないけれど…
そんな感じだ。
私に告白する前にあらかじめ親に話を通しておくところなど、先生は結
構根回しのうまいタイプなのかもしれない。私はこう、下手っぴだから、
こんな自慰禁止服なんてものを着せられる羽目になったりするのだが

「そういえば、今日の夕食はどっか外食でも食いに行くか」
「…」
「どうした?」
「ううん、ちょっと驚いただけ…、あ? お尻のことだよね…?」
話がかみ合っていない。
それぐらい、私にはショックだったのだ。
でも、慣れなければいけない。
「大丈夫、最初はみんなそんなもんさ、すぐ慣れる。」
「そうなんだ…」
「女は強いからな」
「うーん…」
「外食行くか?」
「うん」
結果的に三度ほどお尻に注入されたものをすべて吐きだした私。
お尻の中がなにか、洗浄されたというだけあって、なんとなくすっきり
したといういい肩はおかしいかもしれないけれど、何か何もなくなった
感じはする。
お腹も空いた気がするのは気のせいだろうか。
「そういえば、村上先生だがな」
「うん」
「子供が今度小学生なんだ。いずれうちの中学にもくる」
「でも、それって六年後のことでしょ?」
私がそう言うと…
ご主人様は一瞬考えた顔をして、上を向いていった。
「あの顔では我慢しきらんだろうな」
「…」
でも、それってどうすることも…
「問題は、三重のことさ。捨てられたら俺が引き取らないといけない」
「三重?」
私がそう聞き返すと…
先生は一瞬とまどってから私の質問に答える。
「あの地下室の彼女だよ、本名は三重悦子。俺より二つ年下だったはず。
彼女もお前と同じでハメられた子…、ハメられかたはお前よりひどいか
もしれんな」
「…」
「現に、あいつは今でもあんなところで暮らしてる。他のやつらは、み
んな大学に進学したってのになぁ…」
「他にもいたの?」
「前はな。結構女ってのは強いんだよ。男に抱かれているわけでもない
のに、あんな形でも欲求を発散できる…んだろうなぁ、みんな成績もよ
かったよ。ほら、うちの学校の先生にもいるぞ、植松先生」
植松先生。
確か、社会科の先生だったと思う、授業を受けたことはないけれど、名
前は聞いたことがある。
今は顔も思い出せない。
「行くんだろ?」
「え、うん」
「準備しろよ。終わったらいいものをやる」
自慰禁止服…。
私に与えられた学校からの制裁。
だがそれは、もともと、先代の校長が女子生徒調教の事実を隠すための
隠れ蓑としてのものでしかなく、こうして今、私に着せられていても…
私でさえさらに淫らになっているとしか言いようがない。
名目とはかけ離れた…
いわば、本来の目的どおりの役目を果たしている。
「禁止服の本当の使い方だ」
「これ…」
小さな突起物のようなものを…
「お前のお尻を押し広げたままにするプラグさ。禁止服のお尻のところ
にぴったりはまる構造になってる」
先生は自慰禁止服の股の間を通る部分にあてがうと、そのあそこを覆う
部分の途切れた部分より後ろに付いた少し硬い台座らしき部分にカチ
ンとはめ込んだ。
「着るの…?」
「そ、お尻にぐっと埋め込んで着るのさ」
白いワイシャツ一枚の姿の私は、室内用の首輪を外してタンスの上に置
くと、ふぅと一息ついてその改造された自慰禁止服を手にとった。
足を通し、ぐっと引き上げる。
「…」
少し考えてから片手をお尻にやって、お尻にあたっているプラグをぐっ
と押して…
「…」
ぐにっとお尻の中に入る感じ。
さっきの浣腸でお尻がやわらかくなっているみたいだった。
先っぽをいれて服をさらにぐっと引き上げるとぐっとそのプラグがお
尻の中に食い込んで肩をかけるとちょっときついぐらいの状態で安定
する。
「お尻が…」
「広がっている感じ…か」
コクリ。
私はうなずいた。
自慰禁止服を下着代わりに身に着けて、首のベルトに鍵をかけるとその
上からセーラー服の上下を着る。内側を黒い衣装に身を包んだ女性。
そんな趣も…
「…」
お尻に異物されいれられてなければ…か。
私は顔を赤くしてお尻の筋肉にぐっと力をいれてお尻の穴にかみこん
だプラグをぐっと感じて変な気分だった。
お尻にこんなものをかみこませたまま…
外を歩くのか。
確かに、調教用の服…かも。
その時私がお尻にいれていたのは、太さ平均1.5センチ、一番太いと
ころで2センチほどしかない細くやわらかいものだった。
 *
「ねぇ、霧花」
「ん?」
「調教されてるなんて嘘だよね?」
「…」
私は一瞬返答に困った。
ずっと、昨日気持ちよかったことばかり考えていた。お尻をずっと広げ
られたままのデート、そして、帰ってきてから裸にされて抱かれた私。
「ホントなの…?」
「え?」
「ホントにされてるの?」
「どういうこと?」
私は、答えづらかったこともあってそう聞き返した。
「香織が私もされてみたいなーなんてマゾっ気だして言ってたから…、
霧花はさ…」
「…」
「あれ…?」
そう逸美が一瞬なにかそんなことをつぶやいて…
「なんで、霧花、それ着せられてデート…?」
「うん」
なんか…
それだけ言ってうつむいてお尻のプラグをぐっと感じていた私を…
逸美ちゃんは、じっと何かを考えるような顔で見ていた。
そんな合間も私はそっとお尻に力をいれてプラグをきゅっとお尻の筋
肉できつく抱きしめて感じていた。
先生に私は今日からお尻のプラグをだんだん太いものにしていって、そ
れと同時にあそこを開発するために、バイブを使ってやるのだと言われ
ていた。
「バイブか…」
私はそうつぶやいてどきっとした。
聞こえたかな、と思ったけど、逸美は横を向いて考え事をしているよう
だった。
「ふぅ」
「私、ちょっと行ってくる」
そういって、駆け出すように教室から出ていった逸美のことがちょっと
気になって私はその彼女の後を追ったのだった。
廊下を走り階段を降りたところで見失ったけれど…
私はなんとなしに彼女がいきそうなところ、職員室に顔を出した。
 *
職員室。
中には予想どおり逸美がいた。
「あなた何を言ってるの?」
そんな植松先生の声が聞こえてくる。
二人が話しているのは職員室の入り口からすぐそこの植松先生の机の
ところだった。周りには人がいる気配はない。
「先生だって女性でしょ? 霧花がかわいそうだと思わないの?」
そんな…
声が聞こえてくる。
そして私は、その言う相手が悪いことも知っている。
「あのね、逸美ちゃん。あなたのいいたいことはわかるの」
「はい…」
「でもね」
そこまで聞こえた後、先生は逸美に耳うちをしていた。
びくっと震える彼女の体がドアの影から職員室を覗いていた私にも見
える。
「そんな! じゃあ…、香織ちゃんは…」
「あなた、彼氏がいたのよね」
「…」
「抱いてもらったことは」
「あります」
「どうだった?」
「それは、もちろん嬉しかったです。もう振られましたけど」
「そう、気持ちよかった?」
「せ、先生!」
「ほら、先生だけに教えて…、こっそりでいいから…」
もう一度…
今度は逸美が耳うちをする。
結構ながかった、私はどうだっただろう。薬で…かもしれないけど、す
ごく気持ちよかった。自慰禁止服の上からだったし、先生にいじめられ
ている感じがすごくあった。
でも…
いじめられるのってそんなに悪いことじゃない。
でもそれは…!
私は先生に愛されているから。
先生に…
一生愛してもらえると信じているからなのだ。逸美ちゃんはそうなっち
ゃいけない。
逸美ちゃんの好きな男の人は、私と違う。
逸美ちゃんは…
「あなたも経験してみない? いやならいいわ、でも本当のことを知り
たいなら、そうなさい。あなたが経験したいなら、真実を先生が教えて
あげる。」
「うん、知りたい…」
そう、強い目で逸美が言った時、私は怖くなって職員室の前から逃げ出
した。
そして数学科研究室の有る上の階に私は階段をかけあがった。
「先生っ…先生っ…」
親友の行動に動揺していた私は、先生の元で泣きじゃくっていた。
「まぁ、そういうこともある。」
「でも…」
「いいか、現実を見るんだ。お前の親友は、おそらく今ごろ調教室で…
 *
私はご主人様と一緒に、調教室を見に行った。
「お前も、同じ道だぞ」
そう、ご主人様は言った。
「いやぁっ…、いやぁあああああ…」
悲鳴が聞こえてくる。
逸美の悲鳴だった。怖くて見ることのできない奥のほうのコンテナには
彼女がもうすでに閉じ込められてしまったらしいかった。
そして、植松先生が調教室を出ていくところだった。
「あら、森下先生も奴隷を調教?」
「せ、せんせいっ…」
私は、植松先生にそう呼びかけた。
「あら、霧花ちゃん…、こんな男に調教されても対して気持ちよくない
でしょう」
「そ、そんなこと…」
「女の体はね、無理やりにめちゃくちゃにされたほうが感じるのよ」
そう植松先生は言って、そそくさと調教室から出ていった。
とても…
綺麗な先生。
「ご主人様、そうなの?」
断続的に聞こえてくる逸美のあえぎ声がこわかった。
「しらんよ、俺は女じゃないからな。」
「いやぁっ…、気持ちいいよぉっ…いっちゃうっ…」
逸美ちゃんがあんなに声をあげて…
あそこを感じている。
「お尻がおかしくなりそぉっ…」
おしりに入れられたバイブを…
なにか…
悔しかった。
「うらやましいか?」
「ううん」
「がんばらなくてもいいぞ、そのうち自分もああなると思えっていた方
が気分的にも楽だろう?」
「…」
「先に帰ってくれるか?」
 *
私はそう先生に言われて調教室を出ると、ぼーっと何かを考えながら道
を歩いていた。
一瞬、自宅に帰る角を曲がりそうになって私ははっと気づいて先生のマ
ンションへの道を選んだ。
「…」
先生から渡されたマンションの玄関の鍵。
それをじっと見ながら歩いて帰ると結構遠い道のりをとぼとぼと歩い
ていた。
先生は何を…してるんだろうと。
そんなことをずっと考えていた。
やはり逸美ちゃんのこと。
それとも、植松先生のことで何かを考えてやろうとしているのかもしれ
ない。
先生の家に帰った私は、そのままベッドに直行して自慰禁止服を脱ぐと
そのまま全裸になってベッドに横になった。
「…」
それで…
家でしていたのと同じように、あそこに手を伸ばしてぐにぐにとあそこ
をまさぐりはじめるのだった。
そうしているうちに…
先生のことがいとおしくなって、私はベッドから出てさっきの洋服ダン
スの引出しをあちこちあけてあるものを探し始めていた。
先生の変わり…
一人で自慰するときにそんなもの使ったことないけど…
もう処女じゃないし、先生にもしろと言われている。
私は、手ごろなバイブを見つけ出すとそこに一緒に転がっていた新品の
電池を見つけた私はパッケージから出してバイブのコントローラーに
入っているものを新しいものに取り替えた。
それからもう一度ベッドに戻り。
同じ、全裸でうつぶせの格好でベッドにもぐり、あそこにバイブをあて
がう。
そしてそれをぐっと…
「あうっ…」
ずりずりと体の中に挿入していった。
そのまま私は自分の手をとめることもできず、あそこに深くバイブをい
れていた。
「ああ…」
しっかりとバイブがささったのを確認してから私は手を股の間から出
して、ベッドに台の字になるように手足を広げる。
それから…
最後にバイブのスイッチをカチカチとまわして…
「ああっ…いぅ…」
ぐぃんぐぃんと動き出すバイブのそのメーターを半分ぐらい回しても
う一度私は大の字にベッドの端をつかむ。
「あぐっ、いい…」
私はじっとその格好で…
バイブを感じていた。
いつのまにか熟睡していた私は、朝一人で目がさめた。
先生は帰ってこなかったみたいだった。いったいどうしたんだろうか…
そんなことを思いながら私は朝の準備をしはじめた。先生がいないから
か朝の時間は随分とゆっくりと感じる。
玄関口には昨日届いた実家からの宅配が段ボールで届いていた。
裸のままではあれだと思って私はその段ボールを開いて中から適当な
下着とクリーニングされたセーラー服を探し出してそれを着る。
「髪型でもかえよっかな」
そんなことを思い立って、私は森下先生がポニーテールが好きだと言っ
ていたのを思い出して、洋服ダンスを昨日荒らしたときに見つけたリボ
ンを私はとりに言った。
男の部屋にリボン。
先生、昔彼女でもいたのかな。
そんなことを、思った。あれだけ知っているんだから…
「…」
それから鏡台に向かって私は一度ブラシで髪を下ろすとそろそろ美容
院でそろえてもらわなきゃなと思いながら自分の長い髪をしゅっとま
とめてそのリボンできゅっと縛る。
私はまだ化粧はしたことがない。
今度…
してみようかな。
そんなことを、化粧品からは縁遠い髭剃りとブラシとドライヤーだけの
鏡台を見ながら思ったのだった。
「先生帰ってこなかったな…」
 *
私は学校に行く寸前になって自慰禁止服を着なければいけないことを
思い出して、昨日のプラグが着けられた状態のまま、もう一度禁止服を
身に付けてその上からセーラー服の格好で登校した。
学校に歩いて登校するのは3日ぶり。
別に珍しくもないけれど、並木道を歩いて門までたどり着くと校門をく
ぐっていく。
その時、私はポンと肩をたたかれて手をぐいと引かれて隣の体育館の横
のところに手をひっぱっていかれた。
「おはよう」
そう言われて私が上を見上げると、私の手をつかんだのは新条香織さん
だった。
「あ、おはよう、丁度よかった香織さんに話…」
そう言いかけたとき…!
私は、不意に後ろからぐいっと顔を後ろに引かれて口にガーゼのような
ものを後ろから抱き抱えたその誰かに押し付けられた。
思わず息を吸った瞬間…
私の意識は宙に消えていた。
「…」
「…?」
気が付くと周囲が暗かった。
体がすごく重い。手足の感覚がほとんどなかった。
「気づいたかしら」
「か、香織さん?」
はじめてまして、の人だった。
だから、私は訳がわからなかったのだ。一体…ここは…?
いつのまにか私は全裸にされて皮のベッドのようなところの上に寝か
されていた。
「ふふん、憎たらしいと思ったいたけど、こうして自分のものになって
しまうと案外かわいいものねぇ、森下のやつの気持ちがわかるわ」
「え…? 憎たらしいってそんな…」
コンコンと足音が聞こえて私の目の前まで歩いてきたようだった。
目の前がボケていてよく見えない。
「ここは…?」
「あなたのよく知っている場所、校内のどこか」
「ちょ、ちょうきょうしつ…」
私はそう言ったところで、必死に起こそうとした体から力ががくっと抜
けてベッドの上に顔をぶつけた。
調教室…、香織さんまで知っているの?
どうして私にこんなことを?
「逸美、来なさい」
そう香織ちゃんが言った時私はびくっとした。
そして目の前に現れたのは、黒い自慰禁止服だけに身を包んだ逸美ちゃ
んの姿だった。
「ふふ、親友のこの姿を見るのは初めて? それとも昨日あの姿を見た
のかしら?」
「…」
「ああ、心配しなくてもいいわ、逸美が着せられているのはあなたの禁
止服じゃないわ、あなたのはちゃんと薬漬けにしてあるの」
確か…
自慰禁止服って、鍵がかかってたはずなのに…
鍵かけ忘れてなかったはずなのに。
「そろそろ意識がはっきりしてきたみたいだから…、お尻にいいものを
あげるわ。これよ」
そういって香織さんが私に見せたのは…
直径が5センチぐらいありそうな巨大なバイブだった。
そんなの…
入るわけない。私はそうおもってバカにしていた。
先生とえっちをいっぱいしたからか、なんとなくこういうことは私のほ
うが上手だとそんなことを思っている自分がいたのかもしれない。
大体そんな大きいの、前にだって入らないぐらいだよ。
「直径4センチじゃ、小さかったかな?」
ぐっと体に力をかけて体を起こそうと手足をひっぱるとがちゃがちゃ
という音がして手首と足首がひっぱられるようだった。
そっちを見ると、手足が鎖で繋がれている。
ちゃぽっという何かが水に漬かるような音がしてから、お尻にぐいっと
そのバイブが押し当てられたようだった。
「いぁっ!!」
ぐっとそれが押し込まれると私の体は…
おかしくなっていた。力も何もはいらずにその巨大な頭が私の体の中に
進入してくる感覚だけを感じるのだ。
「ううっ…」
朦朧とした頭でも…
そんな大きなものを入れられたら…
「あぅっ、あううっ…」
おかしくなりそうなぐらいはわかった。
でも、どんどんと私の体はそんな巨大なものを受け入れていく。どんど
ん体の中に入ってくるそれは、お尻の中の粘膜全体を押し広げながら入
ってくるのだった。
「あああ…」
「ほら、入っちゃった。ふふふ…」
「な、なんで…」
「あなたのお尻に弛緩剤を注射してあげたの。どう? こんなに大きな
ものをくわえこんだ感想は?」
「す、すごい…」
お尻全体が性器みたいだった。
いや、性器より感じるぐらいにひりひりと全体がバイブを感じている。
「でも早く起きてくれて助かったわ。私たち、2時間目の英語の授業は
さぼりたくなかったのよねぇ」
「ああっ…抜いて…」
私がそう言うと、香織は私のお尻に埋め込まれたそのバイブをにゅるに
ゅるっと抜き取ってぎゅるっと抜きとった。
「はぁはぁ…」
「そうよねぇ、後ろだけじゃ満足できないわよね。いいわ、すぐに前も
後ろもいっぱいな状態で責めつづけられる快楽を教えてあげるから」
そう言うと、香織さんは私の両手の鎖を外すとぐっと私の腕を後ろ手に
ひねりあげて背中で私の両手首に手錠をかけた。
抵抗しようと思っても力がほとんど入らないのだ。
それでもだんだん正気に戻ってきていた。
私には次に首輪がはめられ、両足の鎖もはずされると、私は香織と…逸
美ちゃんに体を支えられる格好で、どこかに連れていかれるのだった。
そこは…
檻の中だった。
「いやぁっ…」
私はそのことに気づいて抵抗しようとしたが、2対1で体が思うように
動かないのでは抵抗にならず、私はそのまま檻の中に連れこまれてしま
っていた。
「いやぁっ、やめてぇっ…」
そんな声をあげても二人は何も言わずに私をちゃくちゃくと檻の中に
いれると、私にあの腰かける低いサドルを…
見せたのだった。
そこには、さきほど私のお尻に入れられたのと同じようなサイズのもの
が二つ。
どちらがどちらに入るのかもわからないぐらいだった。
「そんな……」
唖然とする私を前に、二人はただ私をそこに設置していくだけだった。
抵抗すると首輪の鎖をぐいっと引かれてあまりの苦しさに私は従うし
かないんだと、そう感じさえした。
腰を二人に両側から支えられ、両足を開かされてその二つのバイブが体
にしっかり入る角度で私は体を下ろされていく。
「んっ、んあああ…」
お尻と、それと同時にあそこにも入ってくる大きなプラグ。
大きすぎる、もういっぱいと思ってもお尻は地面に付かず、さらに奥ま
でぐぐっと二つのプラグが挿入されるのだった。
奥の奥…
もう限界だとおもうぐらいのところまで挿入されて私のお尻が台座に
触れる。
さらに二人からぐっと上から押し付けられるとバイブがぐっと私の体
の中で突き当たるのを感じた。
「ああっ…、いぅうっ…」
最後に私には鎖で繋がった金属の腰ベルトがしっかりとウエストには
め込まれ、そして手錠をはずされると両手はお尻の後ろの檻の台座に備
え付けられている幅が5センチほどもあって手首をしっかりと固定す
る手かせにはめ込まれた。
「う…うぐっ…」
両手の自由を失い、バイブを前後に挿入された格好のまま体を動かすこ
ともできないようにされ、二人は私を置いて檻から出ると私を閉じ込め
る鉄格子の扉をがちゃりと閉じる。
そしてその鉄格子の戸にも厳重に鍵をかけると二人は何も言わずに見
えなくなった。
「待ってっ… いかないでっ…」
「まだ行かないわよ、ここをこうするまではね」
そう後ろから声が聞こえて私はぞっとした。
「いぐっ!」
突然、私の体の中に入れられていた二つのバイブが体の中でぐいっと体
を動かし始めたのだった。
「あっあっ…」
左右に、前後に体の中でくねりはじめるそれに私は思わずよだれをたら
しそうになるほど感じてしまっていた。
「あああっ…」
「昼休みにまた来るわよ。慣れておくことね、午後はそれを埋めたまま
授業に出席よ?」
それだけいって香織さんは、逸美ちゃんを連れて檻の前を通りすぎてい
った。
「待ってぇっ…」
いかないで…
いっちゃう…
いくぅっ…
「あああっ、気持ちいいよぉっ…」
お尻が…
壊れちゃいそう。
ぐいっとお尻とあそこを同時に突かれる感触に私は思わず体をぐっと
そらしてそんな座った格好で犯されている私はいってしまっていた。
少しすると体が元に戻ってきて、手の力も戻ってきたのだった。
でも、力が戻っても余計なところに力が入るばかりで、この檻の中から
逃げ出せるというわけでもなく、私の体に差し込まれている部分以外、
全体が金属でできているこのコンテナの内側の拘束具は、一部の隙も無
く、中に繋がれたものを逃がさない構造になっているのだった。
私の手首を固定している部分にしても、鍵を下ろされているわけでもな
いのに、こうして下向きに両手首をぴったりとあわせた形で繋がれてい
る以上留め金には手が届かない。
たとえ指の先が届いたとしても、そんな力で留め金は外れない。
手が自由にならないのなら…
「いぁ…、いぁあ…」
私は行き場のない足をさらさらしたプラスチックのような材質の床を
すりすりするように動かしていた。
足に力を入れて腰を浮かせてバイブから逃れようとしてもあの長いバ
イブを抜き取れるようなゆとりはおろか、ほんの少し体を上下させられ
るに過ぎなかった。
そう、手が自由にならない限り…
ウエストで私の下半身をバイブの生えた台座と鎖でつないでいる腰の
金属ベルトのお臍の上あたりについたバックルも外すことはできず…
この…
「あっあっ…」
不定期に激しく動く快感からも逃れられないのだった。
前後の穴にめいっぱいに広がる異物感。
入るはずのない大きさのものを入れられている私のお尻の筋肉は力を
入れてもゆるみっぱなしの状態で、ただひたすらにぐにぐにとバイブに
いじられているだけだった。
そして…
前の穴は、長いことの責めで愛液でべっとりとぬれてしまっていた。
入れられた瞬間の快感が消え苦しいだけになっていた前のバイブが、す
っかり愛液まみれになって体の中をなめらかに揉みほぐすようになっ
ていた。
それが…
とってもとってもたまらなく気持ちいい。
自分の体が自分を気持ちよくさせていると思うだけで私はこころがき
ゅんとした。
「はぁはぁ…」
鉄格子の檻の中の狭い空間。
その真中で、裸で家畜として飼われるように…
そして、床からわずかに浮いたバイブの台座にそのバイブをくわえこん
だ上から、ぺたんと座りこみ足を両側に開いた女の子座りの格好で固定
され…
両手を後ろ側に繋がれている。
前を見ると…
鉄格子がある。
 *
そんなに長いこと一人ではなかった。
…といっても、何度も何度もイったし一時間ぐらいは放置されていただ
ろうか。
ドアの開く音がしてどきっとした私の前に現れたのは先生だった。
私のご主人様。
「ちっ…」
私を見るなりそういって、ぱっと立ちあがったご主人様に私は思わず…
「ごしゅじんさまぁっ…」
助けて…
欲しいです。
そう言おうとした私は戸惑っていた。ご主人様に今、あともう一時間が
んばってみようねと言われたら、はいって喜んでうなずいてしまいそう
だった。
その時、
私はご主人様が私の入っている檻の鉄格子を手で掴んでがちゃがちゃ
とゆすっているのを見てその深刻さに気づいたのでした。
「香織、人の大事な人を人質にとってどうするつもりだ?」
「あら、そんな言い方すると、すねるわよ?」
「…勝手にしろ」
「あら…、いいのかしら? なら、また明日話しましょ」
そう言ってコトっという足音がして、私のご主人様が香織さんのことを
呼び止めた。
「わかった、すまん、いいなりになるよ」
「…そう、それでいいの」
「出してやってくれ、約束は守る」
ご主人様がそういうと、香織さんがトントンと足音を立てて歩いてきて、
私から見える角度に来るといやみっぽくそのセーラー服姿で腰を下ろ
して私を見る。
香織さん…
私は香織さんに言った。
「ご主人様をいじめないで…!」
言いたいことを言った。
「余計なこというな、霧花」
その私は、ご主人様のきつい言葉で怒られた。
「うぐ、い、いぅぅ…」
二人に見られている前では、必死で快感をこらえて体を動かないように
必死で鉄格子の根元に視線を静止していた。
二人があんなに深刻そうな顔なのに…
快感に狂っているなんて恥ずかしかったのだと、思う。
「ふーん、ご主人様思いの奴隷だね、さすが恋の奴隷を作る名人だけあ
るわ。この子が自由になったら言うことを聞いてもらえないかもしれな
いでしょう。」
「…責め具からだけでも外してやってくれ」
じっと…
私はいきそうになるのを耐えていた。
誰が前にいても、誰がどんな話をしていようとこの檻の中で責められて
いる快感は同じ、できることなら二人に見てもらっている前であんあん
あえぎ声をあげたかった。
ただ、それを見てもらっているだけでいい。
できたら…
「先生は本当に私の言うことを聞く気があるの?」
「…」
よくできたら、後でかわいがってくれればもっと嬉しい。
でも、よくできないって言われて後でしかられてもよかった。
かまってもらえるだけで嬉しいのに…
「言ってみれば、奴隷になれといっているのよ? わかっているの?」
「…お前の要求はなんだ、俺のことなんてどうでもいいんだろう? 霧
花だってお前にとって俺を脅迫する手段でしかないんだろう?」
そういうご主人様を香織さんはバカにするようにふふんと笑ってみて
いた。
よっぽど自信があるのか…
それとも、狂っているのか。
「私の言っていることが本当だということはわかったわね」
「ああ…」
ご主人様は残念そうに私のことを見る。
「ごめんな、一緒についていてやればこんなことには…」
そう、私のほうを向いてご主人様がいった。
私は……
本当はよくわかっていなかったのかもしれない。
「先生、出して?」
「檻の鍵はあいつが握ってるんだよ…」
最初のやり取りだけ聞いていたのか…
遠くから遅れてこんな香織さんの声が聞こえてきた。
「そうね、二人ともばらばらに帰ってくれたからやりやすかったわ、で
もあんなに簡単に眠らされるようなご主人様じゃ、一緒にいるところを
襲っても同じだったかしら?」
 *
香織さんについて「すぐ戻る」と言い残して出ていったご主人様は私が
思ったほどすぐには帰ってこなかった。
さっきまであんなに気持ちよかったはずのバイブ…
それが今は、重苦しいお中の中をぐいぐいと掻きまわす気持ちの悪い異
物にしか感じられないようになっていた。
異様な感覚は…
吐きだしそうなぐらい気持ち悪かった。
ただただ…
ひたすら…
重苦しい。
でも、このまま、あと三十分も放置されていればまた気持ちよくなるに
違いない。
バイブは私がどう思うに関係無くただひたすら無機質に…、そして無慈
悲に私の性器を、そして私の排泄器をいたぶりつづけていた。
賞味十分ほどだったか、先生と香織さんが話をつけて戻ってきた。
「…」
何も言わずに先生は私の檻の中から見える角度の調教用の寝台のよう
なところに腰をかけ香織さんは私の檻の前を通りすぎていった。
「…配電版の鍵なんてどこにあった?」
「ひ・み・つ」
背中のほうでガチャっという音とバンという大きな音の後、私の体の中
でぐいぐいと動いていたバイブがゆっくりと停止した。
その後、がっちゃんという大きな音が手元でして私の手が自由になった。
「はずし方わかるか?」
そういって先生が私の檻の前でかがんで私のほうを見る。
私は急な事態に慌てて先生の顔と自分の体の拘束具を変わりばんこに
見ていた。
「腰のそこの真中のバックルで腰のリングが二つに割れる、そう」
腰の…
ウエストの金属ベルトの中央の留め金をばっちんと外すとお腹が急に
楽になった。
そして、体からバイブを抜き取ろうとするのだが…
何も体を拘束するものがなくなったのに、私は腰が抜けたようにバイブ
の台座に座りこんでしまってどうにも体からバイブが抜けないのだっ
た。
「あんまり一気に抜くと体によくないわよ」
香織さんがさっき先生が腰かけていた位置に腰をひっかけて、私を見下
ろすように手を組んで様子を見ていた。
外から、私の拘束だけといて…
私を檻から出させてくれるわけではないようだった。
「んんっ…」
前に手を突いて腰をゆっくりあげながらずりずりと2本のバイブを体
から露出させていく。それだけでもびんびん感じてしまって力が抜けそ
うになる。
でも、こんなにゆっくり抜いていてもこんなに感じるのに、体重をかけ
てまた奥までずどんといってしまったりしたら、それこそ恐ろしい刺激
が来そうで私は気を確かにもって恐る恐る体をあげていった。
「ああ…、ご主人様抜けた…」
「ゆっくり休んでおけよ、それは自縛式だからな、自分でバイブをいれ
て手錠までかけて逃げられないような格好になったりするなよ」
自爆式?
随分時間をかけてバイブを抜き取ると…
私は、その意味もわからぬまま、ぽっかりとあいた前と後ろの穴をそっ
と手で触れて激しい責めにさらされていたそこをそっとなでた。
「…」
それから私は、その檻の鉄格子のそばに寄ってご主人様の手に触れた。
「ご主人様…」
 *
結局、私にはなんなんだかわからないまま、檻の鉄格子の間から先生が
くれたセーラー服を立つこともできない狭い檻の中でなんとか着て、檻
の鉄格子から一番離れた隅のほうでじっと座っていた。
バイブをくわえているときはそれどころではなくて気付かなかったけ
れど…
この地下室はちょっと寒かった。
夏の季節はもう終わり。
このまま、ずっと閉じ込められているのだろうかとそんなことを思うと、
冬になるのが少し怖い。
暖房なんかないだろうし…
凍え死んでしまいそう、でも今はまだこうして金属の壁に触れてもひや
っとする冷たさを感じるほどではなかった。
「…」
私が縛りつけられていた台座。
こうして目の前でじっと見るのは初めてだった。
外からちょっと見た時にはこんなバイブは取り付けられていなかった
し、初めて檻に入ったときは、二人に無理やりバイブをくわえさせられ
てここに閉じ込められた時。
具体的には…
この台座という凶器の獲物になっていたときだった。
バナナ形というのか、前後が軽く反った形で両側がまるまって真中のラ
インが山形に盛り上がった金属製の台座、その台座には軽く角度をつけ
た形で二つのバイブが上向きに取り付けられている。
その格好だけをみれば角二つの兜のようにも見える。
そして…
後ろ側には、手首の太さの金属の太くて短い管を二つ並べたものが取り
付けられている。
私の…、いやこの責め具にいたぶられる女の子の両腕を固定して逃げら
れないようにしておくためのものだ。
こうして…
上に乗せられる人を待っている状態では、その手かせは二つに割れた状
態で拘束される腕を待ち受けているようだった。
「…?」
繋がれているときは手首がくっついていたなと思って私はそこをちょ
っと乗り出してみてみると、そこの構造は…、少し変わったものだった。
少し間があいたその今の二つの手かせは、両手を当てて…ぐっと二つを
くっつける方向に押すとがっちゃんと両側の開いた部分が閉じられ…
つまり。
一人でこの拘束具に繋がれることが…
自分から、この責め具に責められている状態のまま、もう2度と逃げら
れない格好に自分からなれるようになっている…、ということだった。
自縛式。
そういうことだった。
「…」
退屈だった。
別に責められているわけでもなく、することもない。
かといって…、さすがにまたあの責め具に自分から入るのも怖かった。
大体。
自分から入ってもバイブは自動では動かないのだろう。
「…」
いや、動くかもしれないか…
「…」
少し興味のわいてしまった私はその思考を振り払ってそっとスカート
をまくって下着を付けていない下半身にそっと手を伸ばした。
先ほどまで、あんなに犯された大切な部分と、そしてお尻の穴。
今も疲れ果てたようにあんぐりと口を開けたまま、私が手を触れるとぐ
にっとやわらかくなっていて…
べとべとの体、だった。
調教を受けて疲れきった体、という、そんな感じ。
そこだけ…
肌がぴんとした感じがない。
「…」
でもこんなにぐにぐになら、バイブを入れたらすごく気持ちいいに違い
ない。
バイブ…
バイブは目の前にあった。
先ほどまで私を責めつづけてあんなに気持ちよかった責め具、たとえ苦
しくても逃げることもできずに快楽だけを与えつづけてくれる、そんな
責め具だ。
そんなものが目の前に…
「…」
私は…
思わず手であそことお尻に同時に指をぐっといれていた。
「…んっ…」
確かにさっきまでより刺激はずっと少ない。
でも…、自分を狂わせるほどの刺激を被拘束者に与える責め具を目の前
にしての自慰は、私を今までに無いほど興奮させていた。
今…
今、もし私がこの責め具にまたがったら、おそらくもう…
誰も助けてくれないに違いない。
きっと、狂うまで誰も私を責め具から逃がしてはくれず、ご主人様から
も見放されて、ずーっとずーっと…
そして、たとえ狂って外してもらえても…
少しでも意識が元に戻るとまた私はここに連れもどされ…
妄想のかなたに私はいつのまにか自慰をしながら眠っていたらしかっ
た。
目をさますと、隣に先生が寝てたりしないかなーとそんなことを思いな
がらゆっくりと目を覚ますと声が聞こえてきた。
「もう一人協力してお前の奴隷にしてやっただろう?」
そう…
先生の声が聞こえてきた。
香織さんに奴隷…
「私はこの学校をガラスの学校にしたいの」
「ここを公開してか?」
「ここで今時の中学生がどれだけ淫乱かを見せつけてやるの。公開する
わけじゃないわ、一人ずつ壊していくのよ。」
「ふぅ…」
先生のため息が聞こえる。
ここを公開…
学校の女子生徒のほとんどがここで調教され、
「…それで外部に漏らさないようにどうするつもりだ。」
「脅迫すれば簡単よ。ここでの調教風景を録画されるのは、裸を盗み録
りするのとはわけがちがうわ。誰だって従うわよ」
香織さんと先生の会話が地下の調教室に響き渡っていた。
私はそっと体を起こして見つからないように影からそっと鉄格子ごし
に二人の様子をちょっとのぞいて、それからまた檻の隅によりかかるよ
うにした。
どうしたんだろう…
私がしらない間にどうなってしまったんだろう。
それが気にかかっていた。
「ふぅ…」
「霧花ちゃんを返して欲しいなら…」
「お前ほんとに、調教されると誰でも壊れて、秘密を守って調教室に通
いつめてくれると思ってるのか?」
「当たり前よ」
「しょうがない娘だな」
「やっ何する気………?」
その時…
少し騒がしくなったのを私はじっと座って聞いていた。
「やっ!」
「…」
どたばたという音の後、その場がしんとする。
「こんなことして…、霧花が一生檻の中で暮らすことになってもしらな
いわよ」
「まぁ、それはお前次第だ。調教されると何でもしゃべるようになるも
んか、ちょっと試してみたくなった」
「な…!」
「お前の主張だろう…?」
二人の会話はそれで終わりだった。
はぁはぁと行きをする音や、ぎしぎしと縄のきしむ音とか、鎖のこすれ
る音と、先生の足音だけがずっと鳴り響いていた。
先生は、香織さんを私と同じような目にあわせるんだとそう思っていた。
それならきっと香織さんはしゃべらないだろうなと、そう思って私はち
ょっと心をいためていた。
ずっと出られないということは無いかもしれないけど…
でも…
当分檻の中かなと、そう思ったからだった。
「…な、何する気!」
それが…
香織さんが正気だったときの最後の言葉だった。
その直後ばしーんというものすごい音と共に香織さんの悲鳴が調教室
になりひびいた。
私は思わず体を乗り出して檻の鉄格子につかまって外を見ると、香織さ
んは裸で天井から鎖で両手を吊り上げられた格好でご主人様の鞭を受
けていた。
 *
低い音で打ちつける鞭の音。
私はその音がなるたびにびくっと震えていた。
もうあれから小一時間も経つだろうか、
「い、痛いよぉっ…、苦しいよぉ… 森下先生もう許してよぉっ!……」
何度と無く振り下ろされる鞭。
香織さんはその鞭が打ち下ろされるたびに悲鳴と、そんな声を発してい
た。
「もう…もう許して…」
それから…
鞭の音がもう一度振り下ろされようとしたときに香織さんの悲鳴にも
にた声が調教室全体に響き渡った。
「霧花ちゃんの檻の鍵のあるところも教えます。もう脅迫なんかしませ
ん、もう余計なこと考えたりしませんからぁっ…」
「ふぅ…、まだわかっていないみたいだな。自分でやったことを考えろ」
「そんなっ! 先生だって同じことしたくせ… いやぁっ!!」
大きなぱーんという音と共に香織さんの悲鳴が聞こえる。
私にはわかっている。
多分、先生も同じことを考えている。
香織さんももうそろそろ気づきはじめているに違いない。先生は、この
世界の掟をやぶろうとした彼女にお仕置きをしているのだ。
そう…
Sの掟だ。
そうだとしたら、香織さんはSの権利を剥奪されて…Mになる?
いや違う!
私は…、先生に愛されている。
香織さんとは違う…!
 *
香織さんが先生に鍵の場所を言った。
先生に助け舟を出されたような状態だった。鍵の場所を言えば、俺が鍵
をとってくる間休めるぞ?…と。
俺が霧花を抱けば少しは気分もよくなるかもな、とも言った。
先生が大好きな私が聞いても、その台詞は悪魔のような台詞だった。
先生はそのことをわかっていたのだろう、私を檻から解放すると何も言
わずに私をそっと抱いた。
「…」
私も先生を抱いた。
「うぐ…!!!」
香織さんが、先生と私のそんな姿にそんなうめき声をあげていた。
それから…
先生がそっと私に言うのだった。
「いいか?」
「うん」
「あの子は今、怒りの絶頂…、発狂する寸前だ。今なら彼女はすべてを
捨てられる。一緒にかわいがってあげるんだ、いいか?」
「…」
「秘密を守るためにも大切だ」
「わかった」
私は少し先生がこれ以上私以外の女の子に触れるのは不満だったけれ
ど…
でも…
あの香織さんをいじめるというそんな病んだ好奇心にひかれていた。
全身が赤く腫れている香織さんの体。
「これ以上…! 何するのよっ…」
ぼろぼろと泣く香織さんの体を私はご主人様に言われたようにぺろぺ
ろと舐めあげていった。時々、香織さんは傷跡が痛いのか、体をぐっと
反らしていた。
なんでこんなことをしなければいけないのか…
私のことを…
利用しようとしたこの人に。
「霧花、もう少しやってやれ、もうすぐ彼女が来る」
そう…
随分と長い間、それでも30分ぐらいか、香織さんを慰めてやるとなん
と調教室にはセラー服姿でいつもの明るい表情の逸美ちゃんがやって
きた。
「…どうもすみません、森下先生」
「後は頼むぞ」
鎖で繋がれたままの香織さんを置いて、それで私と先生は調教室から出
た。
なんということはなく、私は先生と一緒に学校の駐車場まで歩いて車に
乗り込んだ。全然口を開かなかった先生はそこまでくるとふぅとため息
をついてから、私の方を見てく開くのだった。
「今日はちょっと早い帰りだよな」
まだ、確かに早い。
でも、そんなこと私にとってはどうでもよかった。
「週末はどっかに遊びに…」
「ねぇっ!」
私は…
「ん…?」
「抱いて欲しいのっ……」
私は後ろから先生に抱きついた。
「いつでも抱いてやるぞ、なんてのじゃ満足できなくなったか?」
私は先生の背中に頬をこするようにしてうなずいた。
「あの檻もってかえろ?」
私はそう先生に言った。
「ああ?」
「あの檻、私が入れられてたのだよぉ、先生の部屋にもっていこうよ、
それで学校から帰ったら毎日先生にあの中に閉じ込められて…」
「ほらほら」
先生は抱きついていた私の手をとって私をそっと前から抱きしめる。
「ダメ?」
「よく考えろ、結構あれは大きいし重いんだ。学校にはいつでも行ける
んだし、あきらめろ、持って帰るのは無理、だ」
「じゃぁ、今から戻って…」
「わかってないやつだな、今はあそこは取り込み中だよ」
「でもでも…」
私は…、先生にされたかった。
快楽には中毒性があるのだ、私は、先生に今すぐでも抱かれたかった、
でもそれじゃいつまでも満足できなさそうで…、もちろん先生にも抱か
れたいけど、先生が疲れたときには先生にあんな檻みたいな…
「…ほらほら」
「でもぉっ…」
「プレゼントがあるから、な?」
「プレゼント…?」
 *
期待はしたのだけれど、先生のプレゼントはえっちなものではなかった。
でもがっかりしたのとは裏腹に、私は、今日こんなことになるなんてき
っと思いもしなかった先生が私にくれようとしたものなんだと思うと
こうしてプレゼントをひざの上に乗せて車の助手席に乗っていると不
思議に先生はすごいなぁと思うのだった。
「ドレス…か」
赤いドレス。
私のことを奴隷にしようとした先生とは思えないプレゼントだった。
「えっち用なの?」
「週末にお前と旅行でもしようかなと思ってね。助手席に座るかわいい
女の子に着てほしい服だよ」
「…奴隷の?」
「ん? ああ、お前のことだよ」
「だから、私…、性の奴隷、だよね…?」
そう。
私はそうだと思っていた。
どこまでも堕とされて、壊されていくのだと。でも…
先生は違った。
「性の奴隷…、兼恋人兼愛人兼教え子兼…、ってかんじかな」
「…?」
「俺はお前のこと独占したいだけだからな」
「えっちで変な女の子になってほしいわけじゃないの?」
そういうと…
先生はははっと鼻で笑ってから、私のほうを軽く一度見てからぐぐっと
アクセルを踏み込んで加速する。
「お前の言う、変な女って、誰にでもケツを出して誰に犯されても気持
ちよけりゃそれでいいっていうようなそんな女か?」
「え…」
「俺は、お前のことが好きだから、そんな女にはなってほしいとは思っ
たことないな。そんなこと思われるぐらいなら、余計なことはしないつ
もりだよ」
それだけ言って…
先生は急ブレーキでぎゅぎゅっと車を止める。
前見ていなかったのは先生ではなく私。思わずきゃぁっと声を上げてし
まった。
先生の顔に見とれていたから…
私を独占したいなんて意味はよくわからなかったけど。
でも、なんとなくかっこよかったからいい。
「お前の心を俺につなぎとめていられるなら、ドレスでも首輪でも、征
服でも構わないのさ」
「先生…、でも、やっぱ、私、されるの好きかも」
私のことが好きならそれでいい。
快感さえ味わえればそれでいい。
先生はえっちなことが好きだけど変な人ではない。やっぱり一応私のこ
とを女の子としてちゃんと扱ってくれるし、多分好奇心が旺盛でいろん
なことをしたいだけなのかもしれない。
「昔のこと話すか?」
「うん」
先生は何度かそういったことがあった。
今日も続きは期待していない、とても悲惨な過去なのかそれとも私に知
られたくないだけなのか、その両方なのか。
ためらった末に先生は私には話さない。
「先生」
「ん?」
「SM飽きたの?」
あれから私は先生にSMの世界から引き離されていた。
学校が終われば半強制的に家に連れて帰られるし家でもまともなセッ
クスしかしていない。
少し…
欲求不満気味だった。
「物事には順番があるんだよ。お前がSM好きで痛いことされるのが好
きな変態になるだけじゃぁなぁ…」
先生はそうつぶやくように言ってから真正面を見て運転を続けながら
私に声をかける。
「どっちかっていうとお前だって、死神に連れ去られるお姫様の方がい
いだろう?」
「先生が死神なの?」
「死神ってなんとなくかっこよくないか? 結構俺はそう呼ばれるの
が好きなんだけど」
「もしかして先生って昔死神って呼ばれてた人にあこがれてたとか?」
「……わかるか?」
「わかりますよ~」
 *
先生は私のことが本当に好きだったらしく、私はあの翌日無理矢理学校
を転校させられた。
友達がいるからと言ったのだけど、そのときの先生には何を言っても無
駄で、先生と一緒の学校に行きたいと言っても無反応だった。
先生があの学校をやめるわけではない、でも私は隣町の学校まで先生に
毎日送られて連れられていっている。
一ヶ月もすると元の日常の学校生活。
あの時間はなんだったのだろうと今でも思うことがある。
ちなみに……
私がどうしてもとねだったこともあって、あの檻は私の部屋に一つだけ
学校から持ってきてしまったものがある。
「先生~……やっぱだめ?」
「見るだけだって言っただろ? んなもん毎日使ったら体壊すぞ」
「…それはそうかもしれないけどでもたまになら…」
そう……
あるにはあるけど鍵がかかっていて中には入れない。
「もう11月だろ? クリスマスイブまでそんなにないんだから我慢
しろって」
ちなみにこの話には続きがある。
ガラスの学校 完

【学校で】遠足での秘め事【エッチ】

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高校時代の話

高2の7月の後半ごろ、年に2回ほど遠足のような催しが俺の高校にはあった。
6日間の長い間、自然に触れ合い、クラス内で親睦を深めるのが目的だ。

当時は彼女がおらず、夜の自由時間もといカップルのラブラブ時間には
暇を持て余していた。
部屋には8人でベッドでそれぞれ寝ることになっており、
メンバー7人とも遊びに行ってしまっていた。
部屋で一人何しようか考えていたところにセフレであるM子が入ってきた。
基本的に男子女子の部屋へ異性の入室は禁止。
ばれれば生活指導。
午前中だかに部屋に入ってきて遊んでいた時、カメラを置いていってしまったと言う。
まぁただの言い訳なんだろうけどね。
自分の思ってることと真逆のことを言って男を混乱させるのを見て楽しむ不思議ちゃん

露出の多い服は禁止されているにもかかわらず胸の谷間がガッツリ見えてる服だし。
M子「カメラ探しにきたんだけど・・知らない?」
オレ「知らないよ。それよりこっち来てよ」
とこちらに誘い、ベランダに強いてあったマットのうえに押し倒した。
建前で嫌がるものの、あそこを触ってみればぐちょぐちょ
声を出せば外にいる連中にばれると言い、キスをする
その時はジーパンみたいなのじゃなく、パジャマのズボンみたいなすぐに
脱げるズボンをはいており、そのまますぐに挿入した。
M子は驚いていたが、すぐに腰を動かしてこれに答えていた。
ベランダで野外で、そのすぐしたでは他の大勢の生徒が遊んでいるなか
同じクラスメイトの女子とセックスしているという背徳感の中
3分ほどで中に出してしまった。
M子はピルを服用していたため、中出しは問題ない。
おわり。

【友達】女子高生ですが。。男湯入れますか【セフレ】

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「ぅぅ..絶対無理だよぉぉぉ~」
 私の名は千野 音衣(ちの ねい)。共学の高校に通っている高3の女
性である。
 今、私は大型スパ(温泉)施設の入口の前にいる。今日が週末の上、キ
ャンペーン中でたったの1000円で入浴できるとあって、すごい人ごみだ。
 こんなに大勢の人が入りに来るスパに、私は堂々と男湯に入らなければ
いけない。1つ言っとくけど、私は別に露出狂や変態なんかじゃないわ。
 実はクラスの男子たちと賭けをして、私が応援していた高校センバツの
野球部が負けたら男湯に入ると言ってしまったからだ。
「ぅぅ..延長で負けるなんて..」
 しかし、いくら賭けだからって本気で私を男湯に行かせるなんて..
 大体、無理でしょ!高3の女子高生が入れるわけないでしょ。
 まあ、とりあえず入口で係員が止めた場合は賭けは無効よね?
 
 無理を承知でスパの入場券を買うことにした私なのだが..ここで悲し

いことが起こった。
「・・・と・とどかないぃ~」券売機のボタンに手がなかなか届かない。
 必死に背伸びをして押そうとする私を見て、近くのおばあちゃんが屈辱
の台詞を投げかけてきた。
「お嬢ちゃん。偉いわね~。1人で券買えるのね。おばあちゃんがボタン、
押してあげようか?」「いえ..自分で買えますから。それに私、3年生
なんだから」
「おや、3年生かい?おばあちゃん、高学年だと思ってわ」
(・・・こ・こ・高学年って..)すごいショックが私を襲う。
 そう、実は私はかなりの童顔で幼児体型でいつも歳相応に見られないの
だ。だけど..だけどぉぉ~高学年はひどすぎるよぉぉぉ~~。まだラン
ドセルが似合うっていうのかぁぁぁぁ~。
 愕然としている私に男が声をかけてきた。
「おい、音衣。ここは子供は1人で入れないんだから先に行くなよ」
「う・うん、お兄ちゃん」
 お兄ちゃんと呼んだこいつは実は同級生。このくだらない賭けの罰を本
当に実行してしまった馬鹿男子の天王寺だ。
 天王寺の馬鹿が私の姿を口を押さえて、くすくす笑ってくる。
「しっかし~お前、妹から借りた服をここまで着こなすなんて、実は飛び
級で高校にきたんじゃねーか?」「う・うるさいっ!」
 私だって情けない気分だよ。何が悲しゅうて天王寺の妹の服がぴったし
合っちゃうのよぉぉ~。天王寺の妹って小学5年生じゃない..
 そう、5年生の服が合う私が入口で止められるわけはなく、すんなりと
天王寺の妹として男湯の更衣室までスムーズに行けてしまった。
「確か、今月は男湯6階だったな。結構広いから迷子になるなよ」
 いや、迷子になる以前に先月は女湯が6階だったから..
 ここの大型スパは4階と6階に男湯と女湯があり、月単位で浴室の入れ替
えをしており6階の方は先月入浴したばかりだ。
 まさか、この歳になって男ばかりの風呂に入る羽目になるなんて..と
ほほな気分だよぉぉ~。
 それも..クラスメイトの男子たちと入るなんてぇぇ~。
「おっ、来たぞ。天王寺、こっちだぜ」「おおっ、ちゃんと音衣を連れて
きたぞ」「・・・い・言っとくけど、お風呂に入るだけまでよっ!」
「あははっ、安心しろよ。俺たちロリ属性ねーから」
「学校1の才女の恥ずかしい姿を見てーだけだよ」「ぅぅ..」
 それはそれで悔しいかも。悪かったわね。童顔で幼児体型で!
 
 さっそく私は男子たちに囲まれる中で服を脱ぎ始めることになったが、
傍から見れば小学生が脱いでるだけの光景なので、全然注目はされない。
「ほら音衣、お兄ちゃんたちは脱いだんだから、早く脱げよ」
(あっさり言うなぁぁぁ~~。何でクラスの男子の前でストリップをしな
きゃいけないのよぉぉぉ~)
 と言っても、ここまで来た以上、脱ぐしかないので服を脱ぎ、シャツと
スカートを外した。これでパンツ1枚となった私だが、男子たちは興奮す
ることなく逆に笑い始めた。
「おい天王寺っ。妹のパンツまで音衣に貸したのかよっ。クマさんパンツ
が似合いすぎてんぞ」「パンイチだけど、これじゃ興奮しねーな」
 こいつらぁ~、好き放題言いやがってぇぇ~。少しは歓声の1つでもあ
げなさいよぉぉ~。
 何だが、顔を真っ赤にして脱いでる私1人が馬鹿みたいじゃないっ!
 もうっ!全部脱げばいいんでしょ。望みどおりの全裸になってやるわよ。
 ちょっと自棄になりながらパンツを脱ぐと、ここで歓声が聞こえた。
「うぉっ!パイパンかよっ。そこも幼児のままかよ?」
「ち・ち・違うわよっ。生えてたら変だから剃ったのよ。悪い?」
「剃ったって..やっぱ、そこは大人だったのかよ。確かに剃り跡がある
な。へへっ」「ちょ・ちょっと、周りに人がいるんだから変な態度見せな
いでよ」
 あれほど人を小ばかにしていた男子たちが鼻の下をのばして私の身体を
じろじろ見てくる。こいつら実はロリ属性あるんじゃないの?
 だが、じろじろ見てくるにはちゃんとした理由があったのだ。
「見た目、小学生だけど乳首は大人の乳首だよな..よく見りゃちょっこ
とだけ胸膨らんでるし」
「いや、それよりも下がやばいぜ。見事な割れ目パイパンだけど、クリが
立派じゃねーか?ガキの性器っていうレベルじゃねーぞ」
「・・・・・」
 確かに男子に言われて、自分の恥丘を見ると小学生女児にはない立派な
クリトリスが包皮を包んだ形で飛び出ていた。
 きっと、これが捲れたら大人のピンククリトリスが現れてしまうだろう。
 だけど、男子たちも他人が行き交う更衣室で私の身体を弄ることなど出
来るはずなく、みんな股間を押さえながらそのまま風呂の方へ向かってい
ってしまった。
「じゃあ音衣、俺たちはバラバラで行くけど、ちゃんと約束の時間まで逃
げずに浸かっていろよな」「わ・わかってるわよっ」
 男子たちと約束した時間は2時間。まあ、私を知ってる男子はともかく
他の男性からはきっと私はただの小学生女児としか見られないから、そこ
は安心出来るとこかも知れない。
 とりあえず、どっかの浴槽の端っこに入ってじっと2時間我慢すればい
いだけのことなんだから。
 だが、その考えがすごい甘かったことをこれから思い知ることになる。
 よく考えれば、今日ってすごい人ごみだし、あちこち裸の男性ばかりじ
ゃない!タオルで下を隠すのはほんのわずかで、ほとんどの男性がぶらん
ぶらん状態で浴室の中を歩いていた。
 見た目小学生の私だけど、中身は高3の女子高生なんだから、そんなに
いっぱい見せてこないでよぉぉぉーー。
 出来る限り見ないように努力はしけるけど、どんどん目に映ってしまう
んですがぁぁーー。ああぁぁっ、私ったらもう何本?何十本見ちゃったの
かしらぁぁぁぁーー。
 でっかいのやら、ちっさいのやら、長いのやら、こんなに見せられると
頭がおかしくなっちゃう。小学生なら、平然と見れるのかも知れないけど
女子高生の私にとっては毒みたいなものだわ..
 それに身体の中から変な火照りがし始めていた。
 これはお風呂で火照った感覚と違う。明らかに私の性器が刺激を受けて
火照っているものだろう。
 だんだん、私の身体が疼いている気がする。そういえば男性の性器をい
っぱい見たのって今日が初めてだったわ。
 ついにお風呂に浸かってる私のおま●こから愛液が溢れてきた。包皮に
隠れていたクリトリスも膨らんできている。
(ぁぁっ..クリが膨らんでる..あそこも広がってきてるよぉ)
 綺麗に閉じていた大陰唇もぷっくらと膨らみ始め、おま●こが開き始め
た。このままだと女子高生らしい成長したおま●こを晒すことになってし
まうだろう。

(ダメッ!ダメよっ!)
 これ以上、淫らにならないように首を振って頑張ろうとする私。
 だけど、蝕むように理性が少しずつ崩れ始めていた。
 さっきまで見まいとした男性器。目に映るのが嫌だったのが、いつの間
に自分から見ようとしはじめていた。
 初めの方はタオルで隠せと心の中で叫んでいたのが、タオルなんか外せ
と望むようになっていた。
 時々、高校生の男子グループがくると目を輝かしながら1人1人のペニ
スをしっかりと確認していた。
(私ったら、何愚かなことやってるのよっ。自分から男のチンチンを見る
なんて..どうかしてるわ)
 何とか見ないように我慢してみるが、やはりカッコいい男性が見るとつ
い下の方もしっかり見てしまう。
(カッコいいのに..小さすぎる。あっちは顔ダメだけど、立派だわ)
 ああぁぁっ!完全に頭が欲望に毒されてるよぉぉ~。よく見たら濡れて
るしぃぃー、こんな姿クラスメイトに見られたらぁぁ~。
 でも、自分の理性でどうにか出来る状態ではなくなってきた。
 こうして抵抗しているつもりでも、私は自ら浴槽を出て自分の身体を見
てもらうように歩き続けてる。
 幼児体型といっても全裸で歩けば男性の視線を集めることになり、恥部
を見られる度に身体が疼いてくる感じだ。
 時たま、こういう体型が好きな男性がわざと近づいて私の性器を観察し
てくる。あげくに自分の性器を私の身体にくっつけてくるので、私の身体
に強烈な快感が襲ってくる。
 もちろん私は子供のような態度をとりながら気にしてないフリをしなけ
ればいけない。
(ぁぁっ..かなり固くなってきてるよぉぉ~。こいつが暴走したらどう
しよぉぉ~)
 あと少しで危険が迫るといったとこで助け舟が入った。
「音衣、こんなとこにいたのか。迷子になってんじゃねーぞ」
「お・お兄ちゃん」
 天王寺の馬鹿が現れて、私の身体をひょいと持ち上げてそのままどっか
連れて行く。
 天王寺の馬鹿が向かったのは薄暗い明かりだけが差すバリ島をイメージ
した円状の浴槽であり、そこにはクラスメイトの男子たちが独占して入っ
ていた。
「音衣を連れてきたぜ。それっ、放り投げるぞ」「えっ?」
 ジャパァァァーーーン!
 思い切り浴槽に放り混まれた私に男子たちが悪戯半分で触り始める。
 それも何本の手が的確に自分の恥部を責めてきた。
「はぁぅんんっ!!いいっ!」
 思わず喘ぎ声を出してしまった。当然こんな声を聞いたら男子たちの理
性も飛ぶだろう。
「おいっ、見てみろよ。音衣のおま●こ開きっぱなしだぜ」
「ピンクのクリも立派だし、外見はガキだけど中身は見事な大人のま●こ
だな」
 こんな淫らなものを見てしまったら男子たちを止めることは出来ないだ
ろう。暴走した男子たちの手が次々と私のおま●こを弄ってきた。
「ああぁっ!イくぅ!イっちゃうぅぅっ!」
 ここが公共の場であるにも関わらず、私は快感の趣くままに喘ぎ続ける
はしたない女になってしまった。
「イくぅぅ、イくぅぅぅっ!」
 結局、男子たちの手によって何回もイかされてしまい、こんなに気持ち
よく絶頂したことは初めてだった。
 この後は気持ちよくなりすぎたせいか、それとも欲に溺れてしまったな
のかは分からないが男子たちに従うがままに最後までお風呂に付き合うこ
とになった。
 これで私の恥辱の賭けの罰は済んだはずだったのだが..
 翌日。
「お兄ちゃん、早く早くぅ~」「わかった、わかった」
 私は何故か今日も天王寺と一緒に大型スパにやってきた。
 どうやら昨日のことが、相当な快感となって私の性癖を目覚めさせてし
まったらしい。それは露出癖であり、昨日の一件で一気に開花してしまっ
た。天王寺も私の露出癖に気づいて、これからは本格的な調教をすると言
ってきた。
 いや、最初から私を狂わすために天王寺が全て仕組んだことかも知れな
い。私が露出癖に目覚め、調教して自分のものにしようと計画していたの
だろう。
 でも、そんなこと今の私にはどうでも良かった。
 これからもずっと男湯に入って楽しめるのなら♪

<完>

【友達】窓からお尻を【セフレ】

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中学1年生の時のことです。
当時私の父は教師をしており,同じ木造の宿舎に住んでいました。
宿舎といっても,木造平屋の古いものでした。
同じような宿舎がいくつも立ち並んでいました。
中間テストが近づき,夜遅くまで自室で勉強していたのですが,勉強にも疲れ,何となくパジャマのズボンに手を入れてパンティの上からお腹のあたりをさわっていました。
(お風呂に入った後でしたのでパジャマ姿で勉強していました。)
その頃私は早熟だったのか,既にあそこには結構たくさんの黒々とした毛が生え揃っていました。
パンティの上からごわごわしたその毛のあたりを何となく触っていましたが,段々とエッチな気分になってきたのです。
私はその頃時々布団の中で,パンティの前後を絞り,ふんどしのようにしてアソコにくい込ませて楽しむことがあったのです。
そうするととってもエッチな気分になってきて気持ちよかったのです。
その頃はそれがオナニーだということも全く知りませんでした。
ただ,他人には決して言えない恥ずかしいことだという認識はありました。
机に向かいながらパンティをさすっている時,いつもは布団の中で行うその行為をここでやってみようという気になりました。
確か12時をまわっていて,両親も布団に入っていた時間だったと思います。
私は,パジャマを履いたままだとやりづらいので,パジャマのズボンを太ももの途中まで降ろしてパンティを前後から引っ張って細く細く絞り込み,割れ目の部分にくい込ませていきました。

あそこの毛は両側に完全にはみ出し,きつくくい込ませたためにアソコの肉がその両側に盛り上がり,丸見えになっています。
とてもいけないことをしていると思いながらも,学校の口の悪い男子の顔や声を思い浮かべると,今にも私のやっていることを見つけられ,恥ずかしい言葉で揶揄されるのがすごくリアルに思い浮かべられ,ますます恥ずかしい気持ちはエスカレートしていきました。
私は学校の級長や副級長をすることも多かったので,ふだん悪ふざけをする男子を注意したりすることも多かったのです。
そんな私が,今こんな恥ずかしいことをしているところを,いつも注意している男子から咎められ,もう私は反論することも何もできず為すすべがないのです。
そんなことを考えていると,興奮はどうしようもなく高まってきて,私は悪魔のようなことを思いついてしまったのです。
私の勉強机の横,私の座っている椅子の真横には窓があるのです。
その窓の敷居は低く,ちょうど私が腰掛けられるくらいの高さなのです。
カーテンは閉めていましたが,ガラス戸を開ければすぐ向こうには宿舎が連なっています。
誰かに見られるかもしれない。でも夜遅いから大丈夫。
そんな思いが頭をぐるぐると渦巻きましたが,興奮していた私は,今思い返しても不思議なほど大胆な行動をとってしまったのです。
ガラス戸を私の体が入るくらいに音がたたないようにそっと開け,カーテンは閉めたままで体だけをカーテンの向こう側に移し,パンティをふんどしのように絞ったままで,丸出しになった私のお尻を外に向け,ガラス戸の間から突き出したのです。電気はつけたままでした。
夜の冷気が素肌のお尻に触れ,お尻を露出しているという思いが実感として伝わります。
私はお尻を窓から突き出したまま,窓の敷居に腰掛けました。
右手はパンティを前側から引っ張り,左手はパンティを背中側から引っ張ってお尻が思い切り露出するように手伝っていました。
お尻を外に向けて露出させたまま,パンティをこれ以上ないというくらい思い切り引っ張り上げ,その上に前後にブラシのように動かしてやると今まで感じたことのない強い快感に襲われ,もっと露出したいという思いに駆られ,とりうる限りの体勢でお尻を外に突き出しながらお尻を浮かせてパンティがくい込んで恥ずかしい毛がはみ出したあそこをもよく見えるように足を広げながら突き出してしまいました。
どのくらいの時間お尻を外に向けて露出していたのでしょうか?そんなに長い時間ではなかったと思います。長くて1~2分,実際には10秒か20秒程度だったのかもしれません。
その後,私はどっと疲れてしましました。
ふと我にかえると,自分のしてしまったことの恐ろしさに気づき,もし誰かに見られていたらどうしよう,万が一同級生の男の子に見られていたら,明日学校で指摘されたら,もう学校にも行けなくなるかもしれない・・・そんな思いで頭の中がいっぱいになり,勉強どころではなくなりました。
幸い,誰にも見つかってはいなかったようで,今私はこうして人並みの社会生活を送れているのです。
このことに懲りて,それ以来そういったことを実行に移したことはないのですが,あの時の体験を思い出してひとりパンティをもてあそんでいる私です。
人並みに恋人とかもいたりします。
でも,こんなことは絶対に口が裂けたって彼の前では話せません。
まじめで几帳面な女性だと信じている彼には,結婚したとしても一生話せないのではと思います。
思いきってこういう場に告白して,少し気が楽になれた気がします。
私は,全裸とかお尻を全部見られるよりもパンティをくい込ませたお尻やあそこを見られる方が強く感じると思います。
やはりああいう体験がもとになっているからなのでしょうか。
彼のことは本当に好きなのですが,その一方でこんな思いを断ち切れないでいる私は意志の弱い人間なのでしょうか?
時々,自己嫌悪に陥りますが,でもやっぱり断ち切れないでいるのです。
どうしようもないですね。

【友達】月下囚人【セフレ】

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『月下囚人』
                    作;黒い月

 月の光の下で、私は自分の身体を抱き締める。
 肌寒い外気が私の肌を撫でるように通りすぎた。
 それだけのことなのに、私は思わず強い喘ぎをあげてしまう。
 人々が寝静まった時刻。
 静まり返った路上に響く自分の喘ぎ声に、私はさらに身体を震わせて感じてしまう。
 そんな状況ではないと頭ではわかっていても、身体が快感を覚えるのが止められなくて、私は手を股間に這わせた。
 外気に触れて普通なら乾く筈のあそこが、じっとりとした湿り気を持っていることを指先に感じる。
 もう片方の手で胸に触れると、膨らんだ乳房の上で完全に立ってしまった乳首から、痺れるような快感が走る。
 そのまま自慰に耽ってしまいたいほど興奮してしまっていたけど、片隅に残っていた理性を総動員して辛うじてその欲求を封じ込めた。
 そんな状況ではない。
 頭の中ではひたすら後悔の言葉が回っていた。
 何故こんなことをしてしまったのか。

 どうしてあそこで止められなかったのか。
 後悔しながら、私は夜の街の路を歩く。
 生まれたままの姿を晒して。
 その身体を隠す術もなく。
 どうしようもなく興奮しながら。

 私の名前は、市野瀬あかね。
 極普通の公立高校に通う、極普通の高校二年生だ。
 特に問題らしい問題も起こしたことがなく、成績が良いとか運動神経が優れているとかそういうこともない、まさに地味で普通の生徒だった。
 友達は男女両方、それなりにいるけど彼氏はおらず。
 毎日友達と遊んだり、テスト勉強に追われたりと物凄く平凡な人生を送っている。
 そんな私が、自分でも変だと思いつつも止められないこと。
——それは、いわゆる露出という行為だった。

 私が初めて『そういうこと』に興味を持ったきっかけは、実に他愛ないことだった。
 暑い夏の日のことだ。
 いつも通り、何の感慨もなく一日を過ごし、それでも疲労した身体を休ませるためにお風呂に入った。
 そしてお風呂から上がってきたとき、わたしは脱衣所に下着や着替えの類を一切持ってきていないことに気付いたのだ。
 偶然その日は親が仕事の出張とかで家におらず、わたしは仕方なく、タオルで身体をざっと拭いて裸のままで脱衣所を出た。
 脱衣所から廊下に出ると、蒸し暑い空気が広がっていて思わず眉を顰めてしまうほどだった。
 私はクーラーの効いた自分の部屋に逃げ込むようにして駆け込み、涼しい部屋の中で思わず息を吐く。
「すずしい……」
 あまりに気持ちが良く、わたしは髪を拭く間、素裸のままでいた。
 そして髪が大体乾いた頃、大分風呂上りの火照りが取れた身体に、服を身につけようと、タンスの前に移動したのだ。
 そこはクーラーの送風が直接当たる場所だった。
 冷たい風が全身を撫でるように通り過ぎたとき、わたしは思わず身体を震わせた。
 寒かったわけじゃない。
 気持ち良かった。
 いまにして思えば、それは僅かに残っていた体の火照りが落とされた気持ちよさだったのかもしれないけど、その時の私はただ気持ちいい、という感覚だけを覚えた。
 だから、クーラーに身体の正面を向けて、吐き出される風を受け止めた。
「ふわああ……」
 その瞬間、風が乳首やアソコを撫でるようにして通り過ぎ、わたしはまた身体を震わせてしまった。
「ひゃ!」
 その当時の私は、まだオナニーも数回くらいしかしたことがなく、自分で言うのも何だけど初心だったため、その電撃のように走った感覚が快感だということに気付くのが遅れた。
 訳がわからないままに、わたしはもっと乳首とアソコに風が当たるように、クーラーに近付いた。
 断続的に撫でる風の感触に、わたしは身体が熱くなるのを感じた。
 そっと乳首を撫でると、硬くなっているのが感じられて、触れることで更に快感が増し、さらに硬く尖っていく。
 気分が高ぶった私は、そのままアソコにも手を伸ばしてオナニーに没頭し、初めて『イク』ということを体験した。

 以来、オナニーする時は服を全て脱ぎ捨てるのが当たり前になった。
 そうして暫くは部屋の中の全裸オナニーだけだった。
 それがやがて場所がベランダになり、マンションの屋上になり、公園で全裸になるようになった頃。
 私は快楽に誘われるままに、思いついたとあるプレイを行うことにした。

 次の日が土曜日で休日の時。
 私は、そのために用意した物だけを抱えて夜遅くに家を出た。
 この時点で、すでに下着は見につけていない。
 薄手のブラウスとズボンだけを身に付けた姿で、私は目的の場所に向かった。
 いつもはかけている伊達眼鏡もかけていない。万一人に見つかったときを想定して、髪型もいつもと違う髪型にもしてあり、私本人だとすぐにはわからないようにしてある。
 勿論、知り合いに真正面から近くで見られたらすぐにばれるだろうけど、そんな近くに寄られた時点で終わりなのでそこは気にしないことにしていた。
 私は期待と興奮で高鳴る鼓動を必死で抑えつつ、目的地に向かって歩く。
 辿り着いた目的地は、人気の全くない公園だった。
 かなりの広さがあり、すぐ近くに海があり、綺麗な砂浜もあるこの公園は、かなり市が気合を入れたのか、整えられた茂みと木で視界は悪く、露出するには絶好の場所だった。
 なにより嬉しいのが、浮浪者がほとんどいないこと。
 普通、ある程度の広さがあれば、何処でも公園は浮浪者のたまり場になる。
 特にこの公園は、住宅地と公園の間は少し離れている。まさに浮浪者には絶好のポイント。
 しかし、やはり市の何らかの対策が働いているのか、浮浪者はほとんどいない。かなり公園の奥まった場所に二、三個テントが張られている程度で、そこにさえ近付かなければ安全だった。
 それでも一応その場所には決して近付かないように心に決めながら、私は早速準備を始めた。
 まずはこのために買ってきた南京錠。
 その鍵を公園入り口脇のベンチに置く。
 昼間は子供達の遊び場になっている広さ十メートル四方の運動場を横切って、そこそこ高い木が生い茂った場所に入った。
 早朝には高齢者の散歩道となっている曲がりくねった路(五十メートルくらい?)を進むと、やがて海岸が見えてくる。
 少し前にはその海岸の、海に張り出した砂州の先端まで全裸で行ったこともあるけど、今回の目的はそこじゃない。
 砂浜に行くには堤防から階段で一階分ほど降りる必要があるんだけれど、今回はその階段の下にある空間が目的だった。
 そこにはかつては何かの機械が置かれていたんだろう空間があり、そこは頑丈そうなフェンスで覆われている。
 その空間の中に入るにはフェンスで出来た扉を開ける必要があり、そこには南京錠がかかっている。
 しかし、年月の経過によってか、その南京錠は壊れていて、少し力を入れて引っ張れば鍵なしでも開くようになっているのだ。
 私はこの空間のことを『檻』と呼んでいる。
 以前はその『檻』に入って扉を閉め、動物園の動物のように晒し者になっていることを想像しながらオナニーをしたこともあった。
 その時も物凄く興奮したことを覚えている。
 けれど、今回はもっと凄いことをする予定だった。
 入り口の古い南京錠をいつも通りに空けて中に入り、暫くの間捕らわれの身になったような感覚に身を浸す。
 それから、準備を始めた。
 まずはブラウスとズボンを脱ぎ捨て、いつも通りの素裸にサンダルだけという格好になる。(本当はサンダルも脱いでしまいたかったけど、釘やガラスなどが落ちていた危ないから脱げなかった)
 脱いだ服を檻の中でも比較的綺麗な場所に畳んで置き、準備は完了。
 ズボンのポケットから取り出しておいた南京錠を握り締めて、これから行うプレイを思う。
 膝が震えて、背筋を冷たい物が滑っていくほどの興奮を覚える。
——これから私は外に出て、この檻の扉をこの南京錠で閉めてしまおうとしていた。
 元々掛かっていた壊れた南京錠ではない。
 ホームセンターで買ってきたばかりの、新品の南京錠。
 一度閉めてしまえば、鍵がなければ決して開かない。
 そしてその鍵は、公園入り口脇のベンチに置いてきていた。
 つまりここから出て鍵を閉めてしまえば、私は公園の入り口まで裸で歩いていかないと服を手にすることが出来ないのだ。
 自分で考えたことだが、馬鹿なことをしていると思う。
 何か一つでも手違いがあれば、その瞬間私はどうにも出来なくなる。
 予備の鍵も服も用意してない。裸で住宅街を抜けなければ家に帰れなくなるのだ。
 私は鍵を取りにいくことだけを目的にして、檻の入り口の鍵はかけないことにしようかと思った。
 けれど、その時にはすでに興奮しきって冷静な判断が出来なくなっていた。
(大丈夫……想定外の出来事なんて、そうそう起きないわ)
 決意を固め、私は南京錠を片手に握り締めたまま、檻の外に出た。
 途端に、海から吹く風に全身を嬲られ、その開放感だけでイってしまいそうになる。
(まだ、だめ……これからが本番なんだから……)
 入り口を閉めて、金具を引っ掛けて止める。
 後はこの金具を南京錠で止めてしまえば、もう後戻りは出来ない。
 南京錠を引っ掛け、あとは押し込むだけ、というところでまたも手が止まった。
(やっぱり、やめようかな……ううん、でも……)
 緊張と興奮で手が震える。
 押し込もうとする手が滑って、中々ロックされてくれなかった。
 それが逆に私の興奮を助長する。
 まだ引き返せるのと、引き返せない境界線。
 あまりの興奮に心臓がうるさいくらいの鼓動を伝えてきていた。
(……ええい!)
 迷いを断ち切るように、一思いに力を込める。
——カチン。
 小さな、けど確かに音が響いた。
 瞬間、私はアソコから凄まじい衝撃が走ってきたように感じた。
「あ、あああああぅっ!」
 思わずその場でへたり込んでしまい、私は荒い呼気を整えるのに必死になった。
(やった……やっちゃった……)
 頭の中を巡るのは、激しい後悔。
 そして、それ以上の興奮だった。
 自分がどうしようもない変態であることを示すかのように、アソコは隠しようもないくらい濡れていた。
 まだよろめく足を叱咤しつつ、立ち上がり、少し前かがみになりつつ私は公園入り口を目指す。
(大丈夫……この時間帯は、誰も来ないはず……)
 堤防の上に上る階段を上がりきると、そこは鬱蒼と生い茂った林。
 さっきも通った散歩路を、今度は全裸で歩く。
 サンダルが歩くたびに立てる音が妙に大きく響いた。
 肌を撫でる風の刺激に、益々興奮してしまう。
 五十メートルほどある散歩路をどれほど歩いたかもわからない。
 私は全裸を晒しているのだという感覚に浸る。
 裸で歩いているだけなのに、開放感と快感に頭がとろけそうなほど感じてしまっていた。
 でも、そんな幸福な気持ちも、あっと言う間に吹き飛ぶことなる。
 散歩道の終点。
 運動場に繋がる出口。
 その数メートル手前から茂みの影に隠れるようにしていたから、気付かれては居ないはずだった。
 だけど。
——南京錠の鍵を置いたベンチに、酔っ払いと思われる男の人が座り込んでいたのだ。
(うそ……ッ!)
 いままでの幸せな興奮が吹き飛び、私は全身から血の気が引いて行くのをはっきりと感じた。
 完全に泥酔しているらしく、何か訳のわからないことを口走る男の人。
 こんな姿で見つかったら、犯されてしまうかもしれない。
 恐怖に身体が震える。
 早くその人がその場所から立ち去ってくれるよう、茂みに隠れて数十分待ったけど、その人は中々動く気配を見せない。
 このままだと、全裸で家まで帰らなければならなくなる。
 それ以前に、この運動場を横切らないと家にすら向かえない。
 早くどこかに行って、と願うことしか出来なかった。
 暫くして。
 どこかにその祈りが通じたのか、一台のタクシーが公園の前で止まり、そこから若いサラリーマン風の男の人が出て来た。
 その人はベンチで座り込んでいた酔っ払いに駆け寄ると、なにやら言葉を交わし、喚く酔っ払いを宥めながらベンチから立たせて、酔っ払いを担ぐようにしてまたタクシーに乗り込んでいった。
 恐らく会社の部下か誰かが酔っ払ってしまった上司を迎えに来たとかだろう。
 そんな関係はともかく、私はタクシーが走り去った後、思わずその男の人に対して拝んでしまったほど感謝した。
(よかった……)
 そしてほっと安堵したら、今度は今まで以上に激しく身体が火照り、思わず茂みの中でアソコを弄り、クリトリスを刺激して数回イった。
 全く我ながら現金なものだ、と余韻に浸りながらおかしくなって笑ってしまった。
 緩んでしまった気を引き締め直して、私は周囲の様子を窺う。
 これから私は、いま隠れているような茂みから遮蔽物が何もない運動場を横切っていかなければならないのだ。
 間違いは許されない。
(……よし、誰もいない。誰も来ない)
 半ば自分に言い聞かせるようにして、私は茂みの中から運動場に一歩を踏み出した。
 もしも遠くのマンションの窓からいま見られたら、顔は判別できないにせよ、全裸であることはわかってしまうだろう。
 私は隠れられない心細さに出来る限り身体を縮めながら運動場を歩く。
 足は震え切って感覚がなかった。
 それでも身体のほうは熱く火照り、胸とアソコを隠していたはずの手は、いつのまにかその二つの場所を弄る動きに変わっていた。
 遮蔽物がないという点では浜辺の先まで行ったときと同じだったけど、あそこは誰からも見られないという安心感があった。
 けれど、いまは違う。
 下手をすれば見られてしまう。
 いや、もしかしたらもう見られているかもしれない。
 そう思っただけで一層鼓動は高くなり、アソコは湿り気を増した。全身を覆う震えは止まらない。
 ようやくベンチに辿り着いた。
 先程まで人が此処にいたのだと思うと、興奮が高まる。
 しかし。
 次の瞬間、私は今度こそ心臓が止まるかと思った。
——確かにおいてあった筈の鍵が無くなっていたのだ。
 思わず掌でベンチに触れたけど、やはりない。
 どうして、という想いが頭の中を巡った。
 先程とは違う意味で、心臓の鼓動が早まる。
 身体の中が凍えていくようだった。
 私は大あわてでそこら中を見て回り、見つからないと見るとなりふり構っていられず、四つんばいになって地面やベンチの下を探し回った。
 やはり、ない。
 起こってしまった予想外の出来事に、私は今度こそ目の前が暗くなるのを感じた。
 どうしてなくなってしまったのだろう。
 私は考えをめぐらせ、先程の酔っ払いが持っていったのかと思った。
 でもお金ならともかく、何処の鍵かも分からないものを持ち帰るだろうか?
 酔っ払いの行動に意味などないのかもしれないけど……。
 そこまで考えて、私はまさかという考えが浮かんだ。
 先程の酔っ払いは、遠目だったが確かに私が鍵を置いた場所の上に座っていた気がする。
 それなら、鍵に気付いた酔っ払いは、どうしただろうか。
 単純に払い落としたのなら、いま探したときに見つかっているはず。
 暗がりとはいえ、ベンチの下や近くの地面は徹底的に探した。
 ならば。
 鍵を見つけた酔っ払いは、その鍵をどこかに放り投げてしまったのだろうか?
 咄嗟に私は周囲を見渡す。そして、絶望した。
 『仮に』、鍵を『どこかに投げた』として。
 『どの方向』に、『どのくらいの強さで』投げたのか。
 それがわからない以上、探して見つけるのはほぼ不可能。
 これが日の照る真昼間ならまだ救いはあるかもしれない。
 例え全力で投げたとしても、鍵のような小さいモノが飛ぶ距離もたかが知れてる。
 けれど、今は夜。
 恐らく鍵が飛ぶだろうという範囲——ベンチの後ろなど——には低木が生い茂っている場所もある。
 私は最後の望みをかけて、開けた運動場側に投げていないかどうか探したが、やはり見つからない。
 全裸で運動場を這い回る自分の姿を自覚して、私はアソコが締まるような、妙な感覚を覚えた。
 変な気分になる。
 しかし、遠くから自動車がこちらに向かってくるのが見えて、慌てて私はベンチの影に隠れた。
 公園に向かってくる車道は、公園の直前でカーブしている。そのため自動車のライトが公園の中を一瞬照らしていった。
 それを見て、私は隠れるのが遅れていたらライトに存在を浮き彫りにされていただろうことを察した。
 そうなっていれば、確実に運転手に見られていただろう。
 考えがまた刺激となって私の体を震えさせる。
 とにかくそこで蹲っていてもしょうがないと思った私は、それでもかなり長い間迷った。
 迷ったけれど、意を決して、夜が遅い、人通りが一番少ないと思われる時間帯のうちに家に帰る覚悟を決めた。
 幸い、ここから自分のマンションまでは閑静な住宅街が続いている。
 隠れながらいけば何とか誰にも見られずに済むかもしれない。
 恐怖に震える膝を何とか奮い立たせて、私は全裸のまま、公園を出た。

 遠くを車が走る音が響く。
 私は何も身につけていない身体を抱きすくめるようにしながら、聴覚を研ぎ澄ませて歩いていた。 
 たまに人の足音が聞こえてきて、慌てて建物の影に身を隠しながらだから、いつもなら直線で数分で辿り着く道なのに、もう数十分以上はかかっている。
 正直、自分の愚かさ加減に泣きたい気持ちだった。
 どうしてせめてシャツ一枚でも用意しておかなかったのか。
 それを言うなら何故予備の鍵を持っていかなかったのか。
 ただ興奮に身をまかせた結果だと思うと、誰にも文句を言うわけにもいかず、私は自分自身を責めながら暗い路を歩いていた。
 たまに街灯が道路一杯を煌々と照らしている場所もあって、そこは駆け足で通り過ぎる。
 でも、一瞬とはいえ、自分の全身が明るい光に照らされる感覚に、どうしようもなく興奮してしまうのだった。
 本当に自分は変態なのだと改めて自覚させられる。
 必死に歩いていくと、少し広い横道が広がっている場所に差し掛かって、私は角に身を潜めて左右から誰も来ないことを確認する。
(誰も来ないでよ……!)
 横道の幅は約五メートル。そこを横切る間は、どこにも隠れられない。
 角に背を預け、少し呼吸を整えて、一気に跳び出した。
 その瞬間。
 遠くの角を車が曲がってくるのが視界の端に映った。
(うそ……っ!)
 まだ私は道の半ばほどにいる。ゆっくりとその車のライトがこちらを向こうとしていた。
 咄嗟に顔を背けながら、私は残りの距離を一気に駆けきろうとする。
 サンダルが脱げ、道の途中に転がった。
 完全な全裸になってしまったが、走りにくかった一因がなくなって、私は加速することが出来た。
 しかし、ギリギリで間に合わなかった。
 車のライトが、はっきりと私の全身を映し出すのが全身で感じられる。
(みられた……!)
 私は反対側の道に跳び込むと、そのまま一気に次の曲がり角まで走った。
 角に隠れたのと同時に、先程の車が通り過ぎていくのが音でわかる。
 幸い特に減速している様子もなく、あっと言う間に行ってしまった。
 けれど、確実に見られた。
 誰かに裸を。
 そう思った瞬間、私は鼓動が急速に加速するのが感じられて、一気に身体の火照りが熱いくらいに燃え上がった。
 角に座り込んで、誰かが通りかかるかもしれないということも忘れて、オナニーに没頭してしまう。
 首がのげぞってしまうほどの激しい快感に、身体を震わせて何度も何度もイってしまった。

 ようやく呼吸を整えた私は、再び自分の家を目指して足を進める。その膝くらいまで、あそこから出た粘液が垂れている。
 もう身体は疲れ切っていて、ここが自分の部屋ならそこでそのまま倒れ込んで寝てしまいたいくらいだった。
 勿論、そんなことは出来ない。
 そんなことをすれば、朝になって起き出した人たちに全裸を晒すことになる。
 その光景を一瞬想像して、またアソコが濡れるのがわかった。
 まさか、私は誰かに見られることを期待しているのだろうか。
 この情けない姿を。
 この恥ずかしい姿を。
 全て、余すところ無く。
 見て欲しいと。
 思っているのだろうか?
 私の中で、理性はそれを否定したが、身体が更に熱くなるのが止められなかった。
(……どうしちゃったのかな……私)
 ごく普通で、真面目だけが取り柄だったのに。
 私は淫乱な人間になってしまったのだろうか。
 全裸を人に晒したいと思うほど。
 それが嫌でない自分を感じて、私は何故だかとても泣きたくなった。
 ぺたぺた、という素足での足音を立てながら、私は路を急ぐ。
 ある地点で、私は立ち止まった。
 あと家まで数十メートル。
 マンションがすぐそこに見えている。
 けど、私は足を止めた。
 止めざるを得なかった。
 気付いてしまったのだ。
 ここからマンションまで続いている道は二本ある。
 片方は大きな道路がすぐ脇にある道。
 こちらは夜中でも車の行き来が比較的多い通りで、道沿いには深夜もやっているコンビニがある。
 こちらを通れば、間違いなく誰かに目撃されてしまう。コンビニの前に変な連中がたむろしているかもしれない。
 方や、もう一方の道は閑静な住宅街が続いている。
 けれど、こちらには学校のクラスメイトや昔ながらの知り合いの家がある。
 夜中だし、起きている人も少ないと思うけど、万一見つかったらその時点で終わりだ。
 翌週からは変態のレッテルを貼られ、苛められてしまうかもしれない。
 私はどちらの路を通るべきか、迷った。
 迷って。
 悩んで。
 万一でも知り合いに見られるよりは、不特定の誰かに見られる路を選ぼうと決めた。コンビニの前に変な連中がたむろしていたら引き換えすしかないけど。
 決めた瞬間、遠い背後から誰かが歩いてくる足音が聞こえてきて、慌てて隠れていた角から飛び出す。
 そして大きな道路が脇にある路を行こうとした。
 けど、向こう側から、一つの人影がこちらに向かってくるのが見えた。
 だから私は咄嗟に、知り合いの家がすぐ脇にある路の方を進んでしまった。
(やっちゃった……!)
 後ろから誰かが来ている以上、立ち止まることは出来ない。
 曲がりくねった道だから、影に隠れるようにしながら細心の注意を払いつつ、マンションに向かってとにかく歩く。
 とにかくクラスメイトや知り合いに見つからないことを祈ることしか出来ない。
 私は自分がどうしようもなく追い詰められていることを感じながら、同時にどうしようもなく興奮していることを感じていた。
 とにかく後はもう、誰にも見れないことを祈りつつ、歩くしかなかった。
 幸い、先程後ろから来た人は大きな通りの方に曲がっていったようで、私は再び耳を澄ませながら路を歩くことになる。
 なるべく急ぎながら、けれど人には絶対に会わないように。
 閑静な住宅街とはいえ、いや、住宅街だからこそ、遅くに帰ってくる人と遭遇するという羽目になるかもしれない。
 私は耳を限界まで澄ましながら、その路を歩く。
 その耳に、背後から車が走ってくるような微かな音が聞こえてきた。
 咄嗟に私は隠れる場所を探すけど、すぐ近くに曲がり道もなく、隠れる場所がなかった。
 焦るうちに、この通りに車が進入して来たらしく、曲がりくねっているからまだ見つかってはいないけど、ライトの明かりが徐々に近付いてくるのがわかった。
 私はとにかくその車から逃れるために、すぐ傍の家の門柱の影にしゃがみこんで隠れる。
 もしも車が近くで止まったらその瞬間にアウトだ。
 私はとにかく見つからないことを祈って、身体を一層その角に押し付けるようにして隠す。
 やや間があって、すぐ傍を車が通過していった。
 暗がりの中でしゃがんでいたという効果もあったのだろう。
 何とか気付かれずにやり過ごすことが出来た。
 緊張で心臓が張り裂けそうだった。
 サンダルさえ失った私は本当に全裸で。
 見つかったら絶対に言い逃れなど出来ない状態なのだから。
 しかし、何とかやり過ごせたと思ったのも束の間。
 通り過ぎた車は、私が隠れている家から数軒離れたところで、止まったのだ。
 赤いテールランプが点灯して、車がバックしてくるのが感じられた。
 私は心臓が引き絞られるような痛みを感じるほど、焦った。
 まさか見つかっていた?
 それでバックして確認しようと?
 いや、見つかっていなくても同じこと。
 このままその車がバックしてくれば、今度こそ確実に見つかるだろう。
 悪あがきにも近かったけど、私は隠れていた門柱の逆側に移動して、ギリギリまで見つからないように息を殺す。
 車のバックは、数メートル離れたところで止まったようだった。
 それから車のドアが開く音がして、誰かが路を歩く音がする。
 緊張で心臓が痛いほど締め付けられる。
 続いて聴こえてきた音に、私は思わず安堵の吐息を吐き出した。
 ガレージのシャッターが開く音。
 どうやらバックしたのは車庫入れのためで、全くこちらは関係がないことのようだった。
 ここから動けない状態なのは変わっていないし、万が一いま誰かがこの道路を通りかかったら今度こそ逃げ場が無かったが、私は安心してしまった。
 そして安心してしまうのと同時に緊張ばかりで消えていた興奮が湧き上がって、人の家の前でまたオナニーに興じてしまった。
 やがて車が車庫に収納されてシャッターが閉まる音がして、静けさが戻ってくるまでずっとそうしていた。
 慎重に立ち上がって、顔だけを覗かせて誰かが路を来ていないかどうか確認する。
 誰も来ないことを見て、私は残り僅かな距離を走った。

 ようやくマンションの前まで来た私は、明るい正面の入り口は避け、車を乗り入れたりする入り口(いわゆる裏口)からマンションの中に入った。
 ここまで来ると内部構造を完璧に把握している分、気は楽になる。
 それでも人に合わないようにエレベーターは避け、階段を登ってようやく私は自分の家に辿り着いた。
 玄関を開けようとして、失敗する。
 鍵がかかっているのを忘れていた。
 玄関の横においてある植木鉢の下に、万が一のために合鍵はいつも用意されてある。これは別に露出のためではなく、日常生活のためだ。
 この習慣がなければ南京錠の鍵をなくした時点で終わっていた。
 普段の自分に言葉では言い尽くせない感謝をしつつ、私はようやく家の中に入れた。親はいない。いない日を狙っていた。
 まさかここまで酷いことになるとは思っていなかったけど。
 私は色々と汚れた身体をシャワーで洗い流し、肉体的にも精神的にも疲れ切った身体をようやく休めることが出来た。

 次の日。
 私は昼前に目が覚め、それから昨日の後始末をするために普通の格好で家を出た。
 昨日裸で歩いた路を歩くと、昨日のことを思い出してしまい、それだけで恥ずかしかった。
 通りで脱げてしまったサンダルは片方はまだあったけど、元々なくなってもいいように百円ショップで買ったものなので回収はせず、通り過ぎる。
 その場所で車の人に裸を見られたと思うと、あそこが熱くなる。
 いつものように子供達が遊んでいる公園に着くと、まずは入り口脇のベンチの傍を見て回った。
 鍵が落ちていないかどうか軽く探してみたけど、やっぱり見つからなかった。
 茂みの中にでも投げ込まれてしまったのだろうか。
 さすがに茂みの中にまで入るのは変に思われるので、鍵は諦めて次に向かう。
 昨日は全裸で通り抜けた五十メートルの散歩路を歩く。
 朝はもっと多いのだろうけど、昼時だからか殆ど人はおらず、初老の男の人、一人とすれ違っただけだった。
 堤防と砂浜のところは、夜であろうと昼であろうとあまり人はいない。
 例の『檻』に行くため、階段を降りようとした時、下から上がってきた人とぶつかりそうになった。
「あ、ごめんなさ……って、旭くん?」
 思わず誤りかけて、その人がクラスメイトの筑紫旭くんだということに気付いた。
 柔和で陽気な性格をしていて、さらにルックスもまあまあで、密かに女子の間で人気は高い男の子だ。
 旭くんは、いつも通りの柔らかい笑みを浮かべて私に会釈してくる。
「おや。あかねさん。こんな寂しいところに何しに来たんだい? うら若き女性が休日に来るところではないと思うけどね?」
 台詞の後半は彼のいつもの冗談だ。
 おどけた様子の旭くんに、私は笑みを浮かべて見せる。
「まあ、散歩よ。そういう旭くんこそ、何でこんなところに?」
「僕もまあ、散歩といえば散歩だよ。目的があったから徘徊ではないことは確かだね」
「目的?」
 何のことだろう、と私がオウム返しに聞き返すと、旭くんは少し思案気な顔付きをした。
「……んー。まあ、ちょっとした目的さ。——ところであかねさんはもう見たかい?」
 誤魔化されたような気がしたけど、彼の言葉の方が気になったので追求はしないことにした。
「見たって……何を?」
 私が訳がわからないまま聞き返すと、旭くんは面白げな顔付きをする。意味がわからない。
「ああ、その様子だとまだ見ていないみたいだね。なら、家に帰った後で、例の掲示板を覗いてみるといいよ? チャットの方も盛り上がってるから」
 例の掲示板、というのは私のクラスの人達が集るインターネット上の『サイト』にある掲示板のことだった。
 宿題の範囲や答えを尋ねたり、なんてことはない世間話や、色恋話に代表される内緒話などもしている。
 今のところニュースなどでよく話題になる——誰かのことを誹謗中傷したりするような——場所ではなく、あくまでも喋り場や溜まり場という感じの場所だ。
 そこを覗いてみろ、という旭くんの台詞の真意はわからなかったけど、とりあえず頷いておく。
「わかった。帰ったら覗いてみるわ」
「ん。素直なのはいいね。あかねさんの魅力と言ってもいいと思うよ?」
 ただ適度に真面目なだけなのに、変な風に褒める旭くんの言葉に私は照れくさくなる。
 つまらないだけの個性をそんな風に言ってくれる旭くんは優しいと思った。
「——ただ、それこそ『素直に』影響されなければいいけどね……」
 続けられた言葉は、呟くような声量だったので、良く聞こえなかった。
「え? なに? 旭くん?」
 聞き返す私に対して、旭くんは手を振ってみせる。
「いや、こちらの話だよ。……とりあえず、僕は目的を果たしたからもう帰るよ。また明日、学校で」
 相変わらずちょっと独特なテンションを持つ旭くんは、私に向かって手を振るとさっさと去ってしまった。
 私は首を傾げながらも、とりあえず服を回収するために堤防の階段を降りる。
 一応誰にも見られていないことを確認しながら、予備の鍵で扉を開いた。
 あまり長居してここに入っていることを人に知られてもまずいので、部屋の隅に置きっぱなしになっていた服を、持ってきた鞄の中に隠して急いで外に出た。
 それから元々掛かっていた古い南京錠を元のとおりに掛け、私は『檻』を後にする。

 家に戻ったわたしは、服を洗濯機の中に放り込んでから、旭くんに言われた通りに例のサイトを覗いてみることにした。
(何か面白い話題で盛り上がってるのかな……うわ、この時間なのに、チャット部屋に九人もいる……何を話してるんだろ……?)
 少し気になったけど、とりあえず先に掲示板の方を覗いてみることにした。
 マウスポインタを操作して、掲示板のリンクをクリックする。
——瞬間、心臓が止まるかと思った。
 この掲示板は、画像もアップできるようになっている。
 可愛らしい雑貨や面白いものを見つけた人が、その写真をアップしてそれを話題に盛り上がるための機能だ。
 そして、いま現在トップに出ている写真。
 それは。
 不鮮明な画像だったけど、それは。
——間違いなく、昨日の私の写真だった。
 タイトルは『露出狂が出た!』だった。
 端に門柱が写っているところを見ると、最後の最後で車から逃れて門柱に隠れた時のものだろう。
 門柱の影にしゃがんで、オナニーをしている現場を撮られていた。
 角度から見るに、向かい側の家の二階から撮ったようだ。
 投稿者は『HIKARI』。
 確かクラスの男子の一人。あまり面識はない。
 あまり私を知らない男子だったから、被写体が誰だかわかってはいないようだった。
 さらに携帯でズームにして撮ったのだろう。手振れが酷い上に横からの撮影なので、この写真から私だと判別するのは不可能だ。
 でも誰かが裸で門柱の影にしゃがみこんでいるのは、色の濃淡ではっきりわかる。
 幾つかのレスが、その投稿についていた。
『HIKARI:露出狂が出た! 俺の家の前! 正直びびった』
『RYUMA:うげー!!!!! 変態っているもんだな!!!』
『朝日:これ、アップしても平気なのかい?』
『KANA:最悪!! 変態の画像なんて消しなよ!!』
『みづき:HIKARIくんの家の前ってことは、×○町の誰かってこと?』
『MASA:編隊……もとい、変態だな!!』
『渡貫:露出狂は巷ではそれなりに話題に上がるが、本当にいるとは。それもこんな近くに。この世は不思議で満ちているな』
『PO:クラスの誰かだったりしてな♪ ひゃははは』
『鈴:PO、馬鹿なこと言わないでよ!!!!』
『奈々:うちのクラスにこんな人がいるわけないじゃない! ……ところで、みづきはHIKARIくんの家が何処か知ってるんだ?』
『往時:そうだねぇ。クラスにそんな人はいないと思うよー。しかし本当に変態さんだねぇ。何を考えているのやら』
 心臓が張り裂けそうなほど鼓動する。
 クラスの皆に、自分のこととまではわかっていないとはいえ、このことが知られた。
 私はこらえ切れない羞恥心に全身が嬲られる思いがした。
 ここで私がこのレスに、
『あかね:これ、わたしです』
 と加えたらどうなるのだろう。
 変態だと罵られるだろうか。
 冷たい目で見下されるだろうか。
 苛められて、しまいにはクラスでは全裸でいるように義務付けられるかもしれない。
 私はその想像に気分があっと言う間に興奮していくのが感じられた。
 その場で服を全て脱いで、興奮を鎮めるために必死になってオナニーをする。
 クラスの皆に全てを見られる想像をしながら、私は暫くの間、オナニーに没頭していた。
 終

【友達】自販機へ【セフレ】

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はじめてカキコします。
私の露出癖の原体験とも言える高校3年生のときの話です。
私の高校は人口約3万人の田舎町の進学高で、難関私大を目指していた私は当然の
ように毎晩遅くまで勉強していました。
家から徒歩5分くらいのところに本屋があり、よく行っていたのですが店先に当時
でいうエロ本の自動販売機がありました。
その前を通るたびに何故かどうしても目が行ってしまいドキドキしながら通り過ぎ
ていました。
そんなある夏の深夜2時頃でしょうか。私は勉強のストレスからかどうしてもあの
自販機に行ってみたい、エロ本を買ってみたいという衝動にかられました。
ところが、どうしてそんなことを思いついたのかわからないのですが、私はなんと
全裸になってその販売機まで行こうと思い立ってしまったのです。
私の部屋は母屋から離れていたうえ、そんな時間ですから部屋のサッシを開けてそ
っと出かけるのは簡単なことでした。ただ私は真っ裸だったのです。
家を出て、目の前の道路に人影も車もないことを確認して、歩きはじめます。

家々の明かりは全く無く、街灯だけがほんのりとまだ硬さの残る私の裸体を照らし
ます。
自販機までは信号のない四つ角を2つ曲がらなくてはなりません。角に来るたびに
左右の道路をうかがいながら進みます。
びくびくと震え、家々の塀や戸口に隠れるようにして歩きながら、何故かどんどん
大胆になっていく自分がいました。
自販機まで無事に着き、深夜に煌々と光る明かりの中、何冊かのエロ本の中から一
番いやらしそうな漫画雑誌を選び急いでボタンを押して買いました。
もし車が一台でも通っていたら、エロ自販機の前に屈みお尻丸出しでエロ本を取り
出している少女の姿はどんなに異常に写ったことでしょう。
幸いにも、誰にも見られることなくエロ漫画本を抱えて無事部屋に戻ることができ
ました。その本は本当にいやらしく、私の想像を絶するものでした。
その後、2~3回同じようなことをして、机の引出しの奥におよそ女子高校生には
ふさわしくないエロ本がたまっていきました。一度、自販機まで行ったら先客の男
性が買っており、怖くなって家に帰りそれきり全裸散歩はやめました。
今でも思い出すと熱くなる20年以上前の話ですが、これこそがその後、人気のない
デパートの屋上や階段の踊り場、駐車場、公園のトイレなどでいろいろと妄想した
り、果ては脱いだりオナニーしてしまう私の原点であったと確信しています。

【友達】弟の【セフレ】

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あたしは今、中2(もうすぐ中3)の14才です。
露出じゃないかも知れないけど、きおさんの投稿を見てたら書きたくなったので書きます。
あたしには弟(小6)がいて、弟の部屋にはマンガがたくさんあるので、あたしも弟の部屋にいることが多いです。
弟は宿題をやったあとは、いつもゲームをしてるので、あたしは弟のベッドでゴロゴロして、マンガを読んだりケータイをいじったりしてます。
眠くなると毛布をかけて寝ちゃいますが、あたしの露出(?)はこのときにします。
毛布の下で、パジャマのズボンとパンツを、ひざまで下ろしちゃうんです。
すぐそばでは、弟が背中を向けてゲームをしてます。あたしは毛布の下でわれめ丸出しです。
ケータイでここを見ながら、左手で少しいじったりもします。弟のすぐそばでオナニーしてると思うと、自分の部屋でひとりでするより、とても興奮します。
一度夢中になっちゃって目をつむってしてて、目をあけたら弟が振り向いてこっちを見てました。
びっくりして「なによ」ときいたら「別に」と言ってむこうを向きましたが、少し赤い顔をしてたかも。このときはいつもよりもっとドキドキして、ジュンって感じで濡れるのがはっきりわかりました。
弟がオナニーをしてるかどうか知らないけど、もししてるならあたしのことを考えてしてたらいいなと思います。あたしは、弟のオチンチンをさわったり舐めたりするとこを想像して、オナニーしてますから。
これじゃ、近親相姦のほうに投稿したほうがいいかもですね。
場所がちがったら、ホントにごめんなさい。


【人妻】死の淵から【浮気】

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ふと外を見ると元気のいい子供と、車椅子のおばあちゃんが仲良く遊んでいます。
病室のベッドからは、妻が働いているスーパーが良く見えるので
調子の良いときは外を見るのが私の日課になっています。
小さい頃から少し体が弱く心臓に持病を持っていたことから
病室のベッドで寝ることに慣れているとはいえ
元気に働く妻をこの手で抱くことも出来ず日々悶々と窓の外を見る毎日に寂しさを感じていました。
妻と離婚すればこんな思いを感じることも無く一人で死ねるのだろうか?と
考えてみるのですが、眠りにつくたびに妻とのことが思い出され
やはり妻を愛していることを再度思い知るのでした。
考えてみると妻と結婚してからの私は、今までに無く元気で
妻や子供の顔を見るたびに『まだ死ぬことは出来ない』との思いで頑張ってこれたのだと
自分自身そう感じていました。
妻の諒子と結婚したのは26歳の時もう18年前のことになります。
当時私は心臓の持病に悩まされながらも技術系の仕事に就き
何とか日々暮らしているような状況でした。それなりに女性との付き合いもありましたが

持病があることに負い目を感じ、何時死ぬか分からないような自分と
結婚して不幸にさせるわけにはいかないとの思いから
深い付き合いになることも無く、このまま一人で朽ちていくのかと
絶望にも似た感情を持ち仕事にも中途半端な気持ちで望んでいたものと思います。
私が入社して1年後彼女は入社してきました。活発で気持ちのいい
私には持ち得ない生命力のようなものを持っていました。
そんな彼女に惹かれるのは時間の問題でした、しかし私にはどうしても
今一歩踏み出す勇気がありません
恋人とも友達ともつかない中途半端な状態でしたが日々諒子に対する思いが深くなることに
自分自身戸惑いを覚え、また諒子の気持ちも私に向いていると確信が強くなるにつれ
自分の事を告げる勇気が持てず私のほうから少しずつ距離を離すことにしたのです。
私の病気は日常生活に支障はありません、激しい運動を続けなければ
即死に至る心配もありません。しかし、幼少の頃から何度か死の淵を垣間見るにつれ
何時死んでもおかしくないと自分で思い込んでいたのかもしれません。
諒子と出会い1年経ち、煮え切らない私の態度に愛想を尽かしたのか
諒子の方からも接触してくる機会が少なくなってきました。私は心の中でほっとする気持ちと
どうしようもない寂寥感をもてあまし、これでいいと無理に自分に言い聞かせる毎日でした。
ある日同僚の田中が私に「お前諒子ちゃんと別れたのか?」と聞いてきました
私が「そもそも付き合ってない」と言うと
「へ〜本当に?でも諒子ちゃんはお前のこと好きだと思うぜ、でもお前がそういうなら
俺諒子ちゃんにアプローチしようかな〜」
「お前ならいいんじゃないかな」と言ってしまった後、私は胸が締め付けられるような思いを感じ
何度こんな思いを繰り返さなければならないのか?人を好きになるのを止められれば
苦しみから解放されるのにと絶望感ともつかない感情に支配されていました。
諒子から田中に付き合ってくれと言われていると聞いたのはそれから数日経った後でした
諒子が何故私にそのことを言ってきたのか、私には分かっていました
しかし、当時の自分にはそれを止める権利も無いと感じていましたし
田中と結婚したほうが諒子は幸せなのではないか?と感じていたのも事実でした
それから田中は私に見せ付けるように諒子にアプローチをかけていました
勇気の無い私は、それを正視することも出来ずそそくさとその場を立ち去るのでした。
それからしばらくして職場の親睦会の時の話です。
相変わらず田中は諒子にアプローチをかけていました。諒子もまんざらではないようで
2人で楽しく話しているのをいたたまれない気持ちで見ていました。
体のこともありお酒は極力飲まないようにしていたのですが、このときばかりは
私もお酒の力を借りなければ過ごすことが出来ず、明らかに許容範囲を超える飲酒に
とうとう体が耐え切れなくなってきました。
トイレに行こうと立ち上がるとふらふらと倒れて胸が苦しくなってきました、発作であることは
自分自身分かっていましたが、この時は死の恐怖よりこのまま消えてなくなりたいとの思いが強く
諦めにも似た感覚、遠くなる意識の中で諒子にせめて愛している事実だけでも伝えておけばよかったと
思ったことはよく憶えています。
目覚めると、諒子が私の顔を覗いていました。その時私は、最後に諒子の顔が見れて
良かったと思いました、私は諒子をじっと見つめていました目から涙が出てきます
意識が戻ったことに気が付いたのか田中が両親を呼んでいる声が聞こえます
諒子も目に涙を浮かべて私の肩を抱き、枕に顔をうずめ
涙を流し消え入りそうな声で「私もあなたのことが好き、だから死んじゃ駄目。
私が貴方を死なせない絶対に死なせないから」と泣き出してしまいました。
私はその時嬉しくて思わず諒子の首に腕をまわして「俺もだ」と言いました。
後から聞くと酒場で倒れたとき薄れる意識の中で諒子に「愛していると」告白したらしく
その後田中に冷やかされるネタになっていました。
田中も俺のことを心配し私に奮起を促すために諒子に迫っていたようで
それは諒子も分かっていたようでした。まんまと田中に乗せられた形でしたが
田中も「これでお前が踏ん切りつかなかったら俺が諒子ちゃんもらってたぞ。惜しいことをした」と私たちの行く末を祝福してくれ
私は田中に感謝しても仕切れない思いを抱いていました。
おかげでとんとん拍子に話が進み、諒子は「病気も含めて貴方、でも私と結婚すれば
毎日気が抜けなくてきっと死ぬことだって忘れちゃうよ。だから前向いて生きていこう」と
私はこのときどんなことがあっても諒子だけは幸せにすると誓ったのでした。
何も疑うことも無く人生で一番幸せなときでした。
一男一女をもうけ、子供達が大きくなり
長男が小学4年生、長女が1年生になって
手が離れ始めたとき、妻が
「私も外へ出て働きに行きたい」といって
近くのスーパーに働きに出ることになったのです。
妻が働きに出ることには私は賛成でした。もともと活動的でそれが魅力の妻です
子育ても一段落しこれから学費もかかることですし無理の無い範囲であれば
妻のためにも仕事をすることはいいことだと感じていました。
あくまでパートですし、仕事も子供が帰ってくる頃にはあがり
土曜日は朝から夕方までというシフトですので文句はありませんでした。
妻が働き出してから半年ほどして妻から
「日曜のシフトと月曜のシフト変わって欲しいと言われてるんだけど・・・
変わっても良いかしら?」と聞かれ
「お前がいいならいいけど日曜は何時まで?」「一応昼2時ごろまでなんだけど・・・・駄目かな?」
「あまり無理するなよ」「私なら大丈夫よ」「なら頑張ってな、俺も日曜に家事でもするよ」
「貴方にそんなことさせられないわ、でもありがとう」
ということで妻は日曜日も働くことになりました。
この頃妻も私も30代後半という年代でした。妻はいまだに私にとっては
一番魅力的でした、しかし年のせいもあるでしょうが妻が私の体を気遣って
夫婦生活のほうはかなり少なくなり月2回もあればいいほうでした。
私としてはもっと妻を愛したいのですが妻から
「十分愛されてます、私は貴方がいなくなるほうが怖いだからもっと自分の体を大切にして」
といわれてしまえば何も言えないのでした。
それだけに私の体調のいい日には必ず妻も応じてくれ私の物で気をやるのです。
私は決して小さい方ではないのですが、体のこともあり何回も出来ないので
必ず妻が気持ちよくなるように前戯をたっぷりとし、妻が満足できるように
おもちゃなども駆使して妻に奉仕していました。
妻はそんな私の気持ちを分かってくれ夫婦生活では必ず私に体をゆだね
心から感じて前戯で何度も絶頂を迎えるのです。
挿入後も私の物で十分奥までつくことが出来失神するかのごとく激しく感じ
私の体のこともあって騎上位が多かったのですが激しく前後に腰をグラインドさせ
「だめ〜もうだめ〜」と背中を大きく反らせ私のものを絞り上げるのでした。
妻は私との行為で初めて女の喜びを味わったと私に言います
過去一度だけ呟く様に
「一晩中貴方で何回もいかされて見たいけど貴方がいなくなるぐらいなら我慢できるわ」と言われ
そういう妻がいとおしくもっと愛したいのですが、妻は私が一回果てると
たとえ妻がもっとしたいと思っても「今日はお終い」といって2回目は応じてくれないのです。
それも妻の愛情からのことで、今であっても妻の私への愛情を疑ったことはありません。
しかし、時々夜に一人で慰めてる姿を見たとき自分の体のことが情けなく感じました。

日曜にシフトを入れるようになっても妻に疑わしいところは一切ありませんでした
しかし、日曜の働く時間が更に増えて5時ごろまでになり
他の日も妻の働きが認められリーダーとなったことで就業時間も増え
妻も疲れているのか月1回はあった夫婦生活も
段々減り、妻が働き出して2年経ったころには3ヶ月もレスになっておりました。
今まで私に気遣い私とのセックスが好きだった妻をちゃんと満足させられてないと感じていた私には
妻をとがめることもできず、また40にもなれば少なくなって当たり前という
友人達の話もあいまってしぶしぶではありますが納得せざるを得ないと思っていました。
ある日曜のことです、昼も過ぎ遅くなったのですが
台所で子供のご飯を作ろうとしたとき食材が足りないことに気が付きました
子供達に「昼ごはんを食べに行くついでにママの働いているところを見に行こうか?」
と日曜に久し振りに妻の職場に買い物にいくことにしました。
妻には恥ずかしいから来ないでといわれて主に食品しか扱ってない
スーパーに行く機会もなかったので働き出した直後は何回か行きましたが
妻が日曜日に働きにで始めてからは一回もいったことはありませんでした。
お店に着くと子供達は少しはしゃぎぎみにスーパーに駆け足で入って行きました。
まだ母親が恋しい年ですし、また出かけて妻に会うというのも何か新鮮な気がして
私も少しどきどきしていました。
長女が母親を探している間私は必要なものを籠にいれ
会計をする前に子供を探しました、しばらくして長女が店員さんと
話しているのを見て私も近くにより
「妻がお世話になっております、お仕事の邪魔をして申し訳ございませんでした」
「いえいえ〜リーダーには私もお世話になってますから」と感じのよさそうな
年配の奥様でした。しかしその後の言葉に私は息を飲むのです
「でも桂木さんいつも1時には上がっちゃうから今日はお帰りになってると思いますよ」
「え、・・・いつも1時上がりですか?」「え・・・あ、多分ひょっとしたら店長と上で会議かもしれないけど・・・・」
「店長さんは今どちらに?」「ど、どこでしょうね。今日は見て無いから・・・」
「そうですか・・・私の勘違いでした、すいません。では今日はこれで
お手を煩わせて申し訳ございません」「い、いえこちらこそ」とそそくさと立ち去りました。
私は子供から「今日はママ帰ったのかな?」と言われるまで呆然と立ち尽くしていました。
子供から声を掛けられ我に返り会計を済ませる間中
先ほどのパートさんの言葉が頭を巡ります。
日曜の出勤が延びたと言うのは妻の嘘なのでしょうか?
パートさんにあのような嘘を作る理由が見当たりませんし
実際妻はここにはいません。会計を済ませた後気もそぞろに車に乗り込みました
ふと駐車場を見回し妻の車を探しました。それほど大きな駐車場ではありません
ぐるっと回って駐車場内を見渡しても妻の車はありませんでした
ハンドルを握りながら何故妻がこんな嘘を言わなければならないのか?という事で
頭がいっぱいになり駐車場の出口で車の流れを見ながら悪い想像ばかりしてしまうのです。
子供達に「パパどうしたの?」と言われ、なんとか気を取り直して車を発進させるのですが
やはり何故妻がこのような嘘をつく必要があるのか理解できないでいました。
家に帰ってみてもやはり妻の車はありません。
家に入り子供達の「お腹がすいたよ〜」という言葉を聞くまで
またも考え込んでしまっていました。子供達の為にご飯を作りながら
妻の帰りを今か今かと待っている私がいます。
「ご馳走様」という子供達の無邪気な笑顔に少し救われながらも
今子供達と遊ぶ気にもなれず、自室で仕事するから2人で遊ぶように言って
早々と自室へ引きこもり、ベッドで寝転びながら何時間考えていたのでしょうか
妻の車が駐車場へ入ってくる音が聞こえてきました。
玄関を開け中へ入ってくると子供達の「お帰りなさい〜」という元気な声が聞こえてきました。
部屋からでて2階から玄関を見るといつものように妻に甘える子供達の姿が見えます
妻を見るとパートさんの一言で動揺する私が妻を信用していないように思え
ちゃんと妻に聞いてみようかとも思うのですが、私が妻を疑ったということを
妻に知られたくないと言う思いもありなかなか決心がつかないでいました。
私がゆっくり2階から降りていく途中で娘が「ママ今日はママのお店にいったんだよ。
ママいなかったけど、パパも残念そうだった〜」と無邪気に報告している声が聞こえました
私自身が問いただすかどうか気持ちも定まらないまま娘が聞いてしまったことで
私は少なからず動揺しました。
「え?今日来たの?そっか・・・・・ごめんねママ店舗の集まりで午後から本部のほうにいってたから、
ママも会いたかったよ〜」と妻が言うのを見て一瞬ほっとしました。
パートさんが言ったいつも1時上がりだと言う言葉に引っかかりつつも
動揺する様子も無く子供に説明する妻を見ると疑いを持った私が早計だったかとも思えてきました。
妻は私の顔を見ると
「どうしたの?少し疲れているようだけど・・・大丈夫?休んでいたほうがいいのじゃない?」
「いや、大丈夫ださっきまで少し横になっていたから心配要らないよ」
「そう・・・なら良いのだけど・・・あまり無理はしないでね、貴方の体が一番大事なのよ」
「ああ・・・ありがとう気をつけるよ」
いつもの優しい妻です、少なくとも私を気遣う心は偽りではないと感じます。
その夜やはり気になるので今日のことを妻に聞きたいという気持ちが出てきました
疑問を解消して自分の気持ちを軽くしたいという思いもあります。
いつものように子供を寝かせ明日の準備を子供と一緒に確認する妻を見て
妻が私を裏切っているなどと全く想像できないでいました。
私は先に寝室へ入り明日の仕事の資料に目を通していると
妻が髪を拭きながら寝室へと入ってきました。私が何か言うより先に妻が口を開き
「お店に来るなんて珍しいわね。でもいないときに限ってくるなんて間が悪いわ」
と明るく言うのでした。私はこのとき疑った自分を恥やはり妻は私を裏切ってはいないと感じました。
「あ〜悪いね、ちょっと足りないものがあったから。久し振りに諒子の働く姿を見てみようかと思ってさ」
「ふふ、でもあんまりいい格好じゃないから見られても複雑」と少しすねた感じで言いました
「店舗の集まりってしょっちゅうあるの?」
「ん〜しょっちゅうって訳でも無いけど他にも色々あるのよ、ミーティングとか」
「そっか・・・あんまり無理するなよ」
「へへ〜心配してくれるんだ」
「当たり前じゃないか・・・」と妻にキスをしてベッドになだれ込もうとしました
「駄目!」「なんで?」「今日調子悪そうだったから駄目」
「大丈夫だよ」「駄目」
「だってもう3ヶ月もして無いんだよ・・・」「ごめんなさい・・・でも今日は駄目」
「なら何時ならいいんだよ」「そんな我侭言わないで私は貴方のためを思って・・・」
「だからって3ヶ月もして無いのに・・・・俺のことが嫌になったのか?」
と私が言うと、真剣な眼差しで私の目を見て
「怒るわよ、私は貴方だけを愛してます。どんなことがあっても絶対・・・・」
「ごめん・・・・」「うん・・・じゃ寝ましょ」
妻が横になり私もそれに続いた。ベッドの中で先ほどの妻の台詞が頭の中をぐるぐる回っていた
(どんなことがあっても絶対・・・)いつもの妻の様子とは明らかに違う
何か思いつめたような悲壮感すら漂う目で私にそう訴えた妻の顔が
しばらく頭の中から離れませんでした。
私は妻に疑いを持ってしまった事に罪悪感を感じながらも
やはり私を拒絶する妻の態度に小さな不信感を抱いていました。
あれから3ヶ月ほどそれとなく妻に迫ってみるのですがやはりやんわりと拒否され
この前の妻の悲しい顔が目に浮かび結局無理強いは出来ないでいたのです。
長男の小学校の卒業式の時にはもう8ヶ月に達していました
私も週に一度程度自分で処理しておりそんな生活にも慣れてきましたが
やはり妻を抱けないことに小さな不満が積み重なり
いつものように妻に優しく出来ない自分に自己嫌悪しつつも
妻の態度に段々と尋常では無いものを感じておりました。
長男の卒業式当日、出席する妻はスーツ姿でその凛々しい姿は
妻の魅力を余すところ無く私に伝えるものでした。
あいにく休日にもかかわらず私ははずせない仕事があったので妻だけでの出席でした。
「今日はご苦労さん、久し振りにスーツ姿見たけど凄く綺麗だったよ」
「ありがとう・・・貴方にそういってもらえると何か嬉しい」
と私の胸に顔をうずめるのでした。我慢できなくなった私のあそこは段々硬くなり
「諒子・・・」と妻の名前を呼ぶと唇に軽くキスをして妻をベッドに押し倒しました
「駄目!・・」と妻はまたしても拒否するのです。
しかし私も我慢の限界です、妻の言葉を聞いていない振りをして妻の上着を脱がそうとしました
「止めて!」一際大きく妻が叫びました、私はそれでも止めず
妻の上着を脱がせ、張りのある妻の胸を下着越しに愛撫しながら
妻の背中に手を回し下着をはずしました。そして妻にもう一度キスをしようとして
私は妻の様子がおかしいことに気が付き、少し上体を起こして妻の顔を見てみると
妻は天井を呆然と見ながら涙を流していました。
私ははっとして妻から離れ妻を見ました。妻は目を閉じて静かに涙を流し
そしてゆっくり私のほうへ顔を向けると小さな声で
「あなたごめんなさい・・・・」というと大粒の涙が頬を濡らしていました。
私もそのときは妻を傷つけてしまったことに罪悪感を感じ
「すまない・・・どうかしていた・・」と妻の涙を見ながら私もなぜか涙が出て来ました。
妻は私の目を見ながらゆっくり首を横に振ると
「ごめんなさい・・・お風呂に行ってきます」と衣服を直しながら出て行きました
私は拒否されたことよりも妻にあのような涙を流させてしまったことに
酷く落ち込みしばらく寝室から動けないでいました。
しばらくその場で呆然としていたのですが、妻がなかなか風呂から上がってこないので
心配になりそっと風呂場へ行くと浴室から妻のすすり泣く声が聞こえてくるのです。
私は風呂場の外で妻の泣き声を聞きながら、自分のした事に後悔し
今すぐにでも妻を抱きしめ謝りたいと思いました。
しかしここまで妻が私を拒絶する理由も分からないのです、私は妻への信頼が揺らいでいるのを
感じましたが私自身それを認めたくない気持ちもあり、結局その場から立ち去り
飲めない酒を飲んで現実逃避することしかできませんでした。
翌日妻に謝ろうと考えるのですが、私を拒絶する妻の態度に納得できない部分もあり
タイミングを逃したままどんどん日が経って行きました。
心に釈然としないものを抱えながら段々妻との間に見えない溝が深くなっていくような気がして
焦りはあるのですが、妻に理由を問いただすきっかけも掴めずまた更に日が経っていくのです。
この状態は私の体を確実に蝕んでいました。ストレスからか時々胸が痛くなり
段々食欲も無くなっていくのです。妻も私の体を心配しかいがいしく世話を焼いてくれるのですが
それ自体もストレスになりある日出勤前にとうとう私は倒れてしまったのです。
病室で目を覚ますと妻が私の顔を見を見ていました。頬には涙の後が見え
私が「心配掛けたな・・・・すまない」というと、妻はまた涙を流し首を横に振りながら私に抱きつき
「貴方が生きていればそれで十分です・・・・」と言い私もそんな妻をいとおしいと思うのです。
今回はただのストレスと疲労から不整脈が起こったことが原因との診断から
2,3日入院した後退院できることになりました。退院当日妻が迎えにくると言ってくれたのですが
妻の仕事のこともあるので断りタクシーで帰り一人の家を満喫しておりました。
その日仕事上がりの同僚達が私の家にお見舞いに来てくれました、その中に田中もいます
田中とは妻と結婚の恩もあり仕事上でもライバル関係でよき理解者であり親友でした。
夕飯前には田中以外は帰りましたが、田中は私が引きとめたこともあり久し振りに友人として
少しお酒を飲みながら話していました。妻は料理などを作ってくれた後
お邪魔でしょうからと子供達をつれて子供部屋へと引き上げました。
しばらく他愛も無い話をしていたのですが、やはり最近おかしい私を心配して
「最近ちょっとおかしいけど何か悩みでもあるんだろ?わざわざ俺に残れって言うぐらいだから
俺に話して楽になるなら話してみろよ」と私を気遣って聞いてくれました。
限界に来ていた私はその言葉に思わず涙を流しながら妻と上手くいっていないことを
田中に話しました。田中は黙って聞いていましたがしばらくして
「そんなことがあったのか・・・・でも、諒子さんに限ってお前を裏切ることは無いと思うんだが
あんなにお前のことを思ってくれる嫁さんなんてどこにもいないぞ。でも確かに不可解だな
一度俺のうちに夫婦で来いよ、ひょっとしたら俺の嫁さんになら諒子さんも訳を話せるかもしれないし
女の悩みなら俺達には分からないからな」
と提案してくれました。田中の奥さんも昔同じ会社で働いており俺達より一つ年上で
諒子の先輩にあたる人です、諒子も結婚前は彼女にお世話になっていて私に話せない悩みも
彼女なら聞き出せるかもと思い、田中の提案を快く受けて今度の日曜にでも行くことになりました。
田中が帰った後妻に週末田中の家に呼ばれていることを話すと
妻も乗り気で快く了解してくれました。
退院しても一応念の為と言うことでその週は休むことにしました
妻も今日は休みのはずなので、久し振りに2人で出かけようかと言うと
「ごめんなさい・・・ちょっと友人の所に行かなければならないの、夕方までには帰ってくるから
折角の休みに誘ってもらったのにごめんなさい」と言われれば引き下がらざるを得ません。
妻は朝から用事をてきぱき済ませ私の昼ごはんを用意していました
私が暇を持て余し庭で犬と遊んでいると、妻が昼ごはんの用意が出来たことと
もう直ぐ出かけると声を掛けてきました。
それから10分も立たないうちに少し動悸がして家にはいったのですが
まだ5月とはいえ外は意外に暑く昨日そのまま寝てしまったこともあり
風呂に入りたくなったので下着とタオルだけ持って風呂場へと向かいました。
その時妻の姿が居間にも寝室にも見えなかったのですが別段おかしいとは思わず
友達に会いに行くと言っていた妻が風呂に入っているなど微塵も思っていなかった私は
風呂場にいるかどうか確認もせずに風呂場の扉を開けました。
扉を開けると下着姿の妻がそこにいて私はその姿に驚きを隠せませんでした
上下黒の下着でしかも下はほとんど妻のあそこを隠すことが出来ないほど小さく
妻の下の毛が見えてもおかしく無いようなものでした。
妻はしゃがみこんで「いや〜出て行って、お願い見ないで〜」といって泣き出してしまいました
私は妻の先ほどの姿が目に焼きつき頭から離れません
呆然と妻を見て私は衝動的に妻を無理やり押し倒し下着を剥ぎ取りました。
私はあまりの光景に言葉を失い、ふと力が抜けると妻は私の手から逃れ風呂場から走り去りました
ほんの少し呆然としていましたが、妻に聞かなければとの思いで妻を捜しました
私が寝室の扉に手を掛けた時、妻は着替えたところで私を突き飛ばすと
捕まえようとする私を振り切り泣きながら玄関へと走りました。
私も直ぐに追いかけ玄関を出る前に妻に追いつき妻の手をとってこっちを振り向かせると
妻は涙で顔がぐちゃぐちゃになっていました。
私は先ほどのことを問いただそうと口を開きかけると、またしても胸が締め付けられるように痛くなり
その場に倒れてしまいました。
倒れながら妻が「いや〜!」と叫んでいるのが分かりました。私は自分の胸を両手で掴みながら
先ほどの妻の姿を思い出していました。
妻のあそこは綺麗に剃られていたのです。
また病室のベッドで目を覚ますと、両親が私の顔を心配そうに見ていました。
ベッド脇に医者が立っており
「ちょっと興奮したのかな・・・心配ないと思いますが
一応経過を見るということでしばらく入院してもらいます」と両親に話しています。
私が目が覚めたのに気が付き医者が
「大丈夫ですよ、ただあまり無理をなさらないでください。しばらく静養することです
お大事に」と立ち去りました。
私は上体を起こすと両親に
「諒子は?」と聞きました、両親は「分からない・・・ここに運び込まれたときは諒子さんも
一緒だったようだけど私達に電話をした後どこかに行ったみたい」
「そうか・・・」「お前諒子さんと何かあったのか?」と父親に聞かれましたが
私には何も言えません。
その日の夕方、田中夫妻が見舞いに訪れてくれました。
田中は心配そうに私を見て諒子がいないことに気が付くと奥さんを先に帰らせて
私に話し掛けました
「まさかとは思うが・・・・諒子さんどうした?」
私は何も言えず悔しさと悲しさで自然と涙が出てきました。
そんな私の様子を察してくれたのか田中は何も言わずに椅子に座っていました。
しばらくして
「取り合えず帰りお前の家に寄るわ、子供や諒子さんのことも心配だろ?」
といってくれて、私も「すまない」と言い田中に自宅を見てきてもらうように頼みました。
それから田中はほぼ毎日見舞いに来てくれました。
田中は「諒子さんのことは心配するな。家のが色々世話を焼いてくれている
子供さんもちゃんと学校に行ってるしな、とりあえずはお前は静養するんだ
お前は子供達の父親何だぞ、しっかりしろ」
と私を励ましてくれるのです。とにかく体を直すことを第一に考え
諒子のことはしばらく考え無いように努力しました。
しかし夜になり一人になると悪夢のように思い出してしまうのです。
なかなか不整脈が治まらず結局3週間ほど治療にかかってしまい
仕事に穴を開けたことを申し訳ないと思いながら
やはり妻のことが気になって仕方ないのでした。
退院の日わざわざ仕事を休んで田中は私を迎えにきてくれました。
田中は車の中で私に話し始めました。
「桂木・・・お前に言っておかなければならないことがある。
諒子さんは今日お前達の家から出て行った」
「え・・・ど、どういうことだ!」「落ち着け・・・」
田中は私が落ち着くのを待って続けました
「今のお前の状態では諒子さんに会っても悪化するだけだ
諒子さんも今は離れたほうがいいと言っている。悪いが俺もそう思う」
「しかし・・・俺は真実が知りたい。そうでなければ先に進めない」
「分かってるさ、だがお前は諒子さんの夫でもあり子供達の親でもあるんだ
お前がしっかりしないでどうする?諒子さんも自分のしたことは分かってる。
1年だ1年我慢しろそれまでしっかり体を治すんだ」
「納得できない!なんで勝手に決める!?俺の気持ちはどうなるんだ!」
「・・・・・お前の気持ちを分かってるから、今は会わせられないんだ!
・・・・分かってくれ、皆お前を心配しているんだ」
私はどうしても納得できなかったが、田中は頑として妻の居所は話さなかったし
妻の両親も私には悪いことをした、離婚されても仕方ないけれど
どうしても妻とは会わせられないと言うのです。
それから妻の両親や私の両親、田中夫婦の助けを借りながら子供2人と
私だけの生活が始まりました。
当初は妻のことをくよくよ考えていた私ですが
理由も分からず妻と引き離された子供の方が私を心配し
色々と気を使っているのを見ていると、私が何時までもくよくよしてるわけにもいかず
段々立ち直ることが出来ました。
半年もたてば田中達の判断が正しかったことが自分自身良く分かってきたのです。
相変わらず妻のことは考えているのですが、段々悪い記憶から良い記憶を思い出すことが多くなってきました。
年末も過ぎ、結婚して初めて妻と過ごさない元旦を寂しく思い
もう何があっても妻を許そうという気にすらなってきました。
1月1日昼頃田中夫妻が子供を連れて正月の挨拶に来たとき
私は思い切って田中に妻に何があったのか知ってることがあれば
教えて欲しいと頼みました。田中は渋っていましたが
私が今の心境を話し妻と会う前に妻に何が起こったのか出来るだけ知っておきたい
妻に会う前に心の整理をつけておきたいと話すと少しずつ話し始めました。
田中は3ヶ月ほどかけて私の様子を見ながら少しずつ話しくれました
—-田中の話—-
桂木には偉そうなことを言ったが正直あの諒子さんが桂木を裏切るとは思えなかった。
俺の家庭も決して不仲では無いが、彼らは魂が呼び合うといってもいいぐらいの仲で
正直うらやましいと感じていたのだ。
俺は病院を出ると急いで桂木の家に向かった。
時間はもう6時半を回っていた。
桂木の家には誰もいないような気がしたが、駐車場を見るとちょうど
諒子さんが子供を車に乗せている最中だった。
このまま放っておいたほうがよさそうなものだが、桂木の落胆振りを見ると
どうしても放って置けなく余計なお世話だと分かっていても
諒子さんに事情を聞かなければならないような気がしていた。
俺は車を降りて諒子さんに挨拶をし、ちょっと時間もらえないか?と話をすると
今から実家に子供を預けに行くのでと断られました。俺は
「桂木から全部聞いた、俺は桂木のあんな姿見たことが無い
俺には話せないなら、嫁でもいい。とにかく俺は君達夫婦に不幸にはなって欲しくない
俺達で力になれることがあるはずだ。このまま何にも手を打たなければ桂木が壊れてしまう
頼む!諒子さん桂木を助けると思ってとにかく家に来てくれないか?」
と俺が言うと諒子さんは動揺していましたが、とにかく両親に子供を預けるので
その後ならと答えました。しかし俺は嫌な予感がしていて諒子さんはこのまま
姿を消すつもりなのではないか?とも思い何が何でも連れて行くと諒子さんを説得しました。
諒子さんも追い詰められていたのでしょう。段々ヒステリックにどいて!と言い出し
車の中の子供が泣き出しようやく落ち着きを取り戻すのです。
諒子さんは車の横に座り込み泣きながら
「終わってしまった・・・・何もかも失ってしまった・・・・
絶対に失いたくないものを自分で壊してしまった」とまるで魂が抜け出たような様子です。
俺は嫁に連絡し諒子さんと子供をつれて自分の家に向かいました。
俺は諒子さんを落ち着かせて自分の子供達と一緒に桂木の子供達を寝かせました。
その間妻が諒子さんの話を聞き俺が部屋に入ると
「あなたも一緒に聞いたほうがいいわ」と妻に言われ、俺も話を聞くことになりました。
諒子さんの最初核心には触れず自分が主人を裏切ったと
しきりに繰り返し時々死にたいと言い出すと、妻がそれだけは駄目
貴方母親でしょとたしなめるのです。諒子さんは子供残し両親に後のことを頼み
どこか遠くへ行き一人で働いて子供達のためだけに生きていこうと考えていたようです。
やはり諒子さんも真実を話すことに抵抗があったのでしょう。
俺達も詳しく聞くことをせず、話したくなるまで待つ姿勢でした
しかし、妻が色々話しかけると少しずつ事情を話し始めました。
この時はもう諒子さんは桂木が退院するまでに姿を消すことを
決心していたのでは無いかと思います。
「私は主人を愛しています。こうなってしまって信用されないかも知れませんが
本当に心から主人を、桂木勇を愛しています。それは今でもずっと変わりません
でも・・・私は主人を裏切ってしまった」
「桂木から聞いているが・・・一体どういう?」
「私は・・・あの男に体を許してしまった・・・」
諒子さんは、両手をひざの上で握り締めぼろぼろ泣いていました。
「あの男?・・・諒子さん・・・」
「私は自分が分からない・・・・」
「もういいよ・・・諒子さん、もういいから」と妻の美鈴が言うと
「よくない!私は・・・私は・・・、私のせいで主人は倒れてしまった
ちゃんと話すべきだって分かってた・・・・本当はそうすべきだった
分かっていたのに、あの男にされたことをどうしても主人に話せなかった
・・・本当のことを話せば私は軽蔑されてしまう、それぐらいなら
誤解されたままのほうがまだましよ!。」
「諒子さん・・・」と俺が言うと諒子さんは、涙を拭いて私達に土下座をするのです
「お願いします。私はこのまま主人の前から姿を消します
せめてどこかで働いて主人と子供達に償いたい
ですからお願いです、私を探さないように主人を説得して下さい。
厚かましいと思いますでも頼る人がいないのです。どうか・・・・」
「でも子供さんは・・・」
「子供のことは両親に頼みます・・・」「しかし・・・・子供に一生会わないつもりか?」
「子供のことは・・・どうすればいいのか分かりません。私がいれば主人を苦しめます
また倒れてしまうかも知れません。私には子供達から父親までも奪うことは出来ない!」
「しかし、桂木は・・・」
諒子さんは顔を上げ頭を抱えて叫ぶように
「じゃ!どうすればいいの!?私がいるだけで主人を苦しめる。私が苦しむのは耐えられる
でも主人や子供達は・・・」
「諒子さん!落ち着いて」妻が諒子さんの両肩を抱き、「私たちが力になるから・・・ね?」
諒子さんはしばらくしゃくりあげるように泣いて、「もう死にたい・・・」と言いました。
妻が俺に席をはずすように合図すると、俺は子供達の寝顔を確認し一人
寝室でこれからのことを考えていた。
諒子さんは次の日子供達をつれて自宅へと帰っていった
「大丈夫、いきなり消えたりしないわ。ただかなり思いつめてるだけに
諒子さんの体のことが心配ね」
妻は諒子さんを見送りながら俺にそういった。
昨日の晩諒子さんを落ち着かせ寝たのを見届けると
妻は俺に
「諒子さんずっと自分を責めてたのね・・・自分が許せないみたいだわ」
「そうか・・・なんでこうなってしまったんだろうな」
「私にはお互いを縛ってるように思うわね。諒子さんは自分が
夫に対して一切曇ること無い愛情を持ち続けなければ
夫がいなくなると感じてるんじゃないかな?桂木さんも同じかもね・・・
お互いが相手のことを受け入れようとして無理して
相手に受け入れられる形になろうとしているようなそんな気がするわ」
妻はいつの間にか持っていたビールをぐいと飲むと
「人間なんてちょっと他所向いたり、寄り道したりしながら
生きていくもんだと思うんだけどね。」
「おいおい・・・怖い事言うな〜」
「あら?あなた心当たり無いの?」
「いや・・・・どうかな」と俺は苦笑いをしてしまった。
「ま〜どっちでも良いわ、それでも貴方と私は一緒にいる
頑張って一緒にいたいと思うこともあれば、鬱陶しいなと思うこともあるわ
私、桂木さんたちってお互い求めすぎて揺らぎがないと思うの
お互い堅物同士じゃない?私だって貴方に隠してることの一つや二つ
あるわよ、でも知られたって離婚になるとは思えない
そういうルーズさって結婚に必要だと思うの」
「お前さ・・・・こんなときにそんな告白しないでくれよ。気になるじゃないか」
「へ〜まだそういう気持ちあったんだ」
「なんだよ、そりゃ」と俺もビールを煽ると妻が続けて
「桂木さんも桂木さんよ、奥さんが怪しい行動してるのに
見てみぬ振りなんてさ、おかしいわよ。
妻を信じるって言えば聞こえがいいのかもしれないけど
馬鹿なことやってそうならひっぱたいても連れ戻すもんでしょ?
許す許さないは後の話しじゃない、本気で愛してるなら
ぐちゃぐちゃになるまでもがくべきよ、私ならそうするわ」
「でもさ、桂木は病気もちなんだし・・・」
「それよ!それが逃げ口上なのよ、そりゃ私は幸い健康だから
彼の気持ちは分からないかもしれないわよ?だからって
それに逃げて真実を知るのが怖いって言う訳?
それじゃ諒子さんが可愛そうじゃない、諒子さんは諒子さんであって
彼のお母さんでも保護者でもないのよ。
愛する男に母親を求められるなんて冗談じゃないわよ
男ならさ大事なものの為に戦って欲しいじゃない、例え諒子さんを許せなくて
離婚になったとしても、このままじゃお互い後悔するだけだよ。そんなの・・・悲しいじゃない」
「そうかも知れないな・・・」
と俺は最後に空になるまでビールを飲んだ。
「あなたそれでどうするつもりなの?中途半端に足突っ込んでも
余計に話がややこしくなるだけよ。本気で関わるつもりなの?」
「このまま放っては置けない」
「そう、なら止めないわ・・・でも離婚するかどうかってのは
本人達の問題よ。私たちが出来るのは冷静になる時間を与えることぐらいよ。
後は貴方が桂木さんのお尻を引っぱたくことぐらいね」
「まったく・・・頼もしいことで」
俺は笑いながら言ったが、確かにこのままやり直しても
上手くいかないだろうと思っていた。
妻はほぼ毎日諒子さんの所へ行っていた
諒子さんは子供のことが気がかりでありながらも
今のまま桂木と暮らすことは逆効果であると決意を曲げなかった。
しかし、子供には母親も必要であると俺たちが言うと
やはりそこが一番の問題であり、夫と同じぐらい子供を愛している
諒子さんにとって両方と離れて暮らすのはやはり耐え難い思いでしょう
このまま姿を隠し続けることが解決の道ではないことは
諒子さんも分かっています。しかし桂木の体のことを考えると
それほど迷ってる時間は無いのです。結局諒子さんのご両親と俺たちは
取り合えず1年間協力して諒子さんの居場所を桂木に教えないことを確認しました
諒子さんは始終頭を下げたまま、自分のしたことの愚かさを
全身で感じているように肩を震わせうつむいていました。
この間例のあの男から連絡があったのか分からないが
諒子さんは自分で何とかするといって聞かないので
俺たちからは何も出来ないでいました。
とうとう退院の日が決まって諒子さんは子供達に
「しばらく会えないけどパパと元気で暮らしてね・・・ごめんね、ごめんね」
と別れを惜しみ退院前日夜に出て行きました。
出て行くとき私達に礼をし
「ご迷惑かけて申し訳ございません、今までありがとうございました
ご恩は必ず返します」
と言って去って行きました。
俺が桂木を迎えにいき、このことを伝えると桂木は酷く動揺し
俺を責めました。俺と妻は諒子さんのご両親とともに
諒子さんの決意を伝えました。
しばらくは落ち込んでいた桂木も徐々に落ち着きを取り戻し
当初ほど諒子さんの居場所について聞くこともなくなってきました
妻は諒子さんと時々連絡を取っていたようですが
俺はあれ以来一度も話すことも無く、妻から近況を聞く程度で
詳しくは聞けないでいた、変に聞いてしまうとぼろが出てしまいそうで
あえて聞かなかったのです。
しかし半年を過ぎて正月に桂木と話をし、桂木の思いを聞くと
心が揺れ今の状態であれば少しずつ話しても大丈夫だろうと思い
俺は桂木に知っていることを話すことにしました。
田中や美鈴さんの話を聞きながら、私は妻の心境を思い
また私自身の甘えや不甲斐なさを感じ
私自身も変わらねばと思うのです。
私は妻にいつも変わらぬ愛情で私を守ってくれる母親を求めていて
桂木諒子という一人の女性を求めてはいなかったのかもしれません。
妻も間違いを犯す平凡な人間であることを許さなかったのは
他でもない私自身なのでしょう
今妻を一人の女性桂木諒子として愛せるのか、私には分かりません
しかし私の中にはいつも諒子がいて、このまま諒子のことを何も知らないで
諦めることはどうしても出来なかったのです。
私は、田中に今の私の気持ちを綴った手紙を渡し諒子に渡して欲しいと頼みました。
私は返事が来るまで何回も手紙を書きました
どんな事実があろうとこれから2人で乗り越えていきたいと
どれほど苦しくても絶対諦めないと
妻からの返事が初めてきたのは、妻が出て行ってから
もうすぐ1年経とうするころでした。
—最初の手紙—
まず最初に貴方にあのようなことをしてしまい、本当に申し訳ありません。
そしてあなたに謝ることも出来ないまま
あなたの前から姿を消してしまったことを私は悔やんでも悔やみきれず
いつか誠心誠意謝りたいと思いつつも弱い私はあなたに手紙を書くことも出来ませんでした。
そして日が経つにつれ美鈴さんから立ち直って行くあなたのことを聞き
嬉しく思うとともに、私がいなくても大丈夫だと言う事実に
自分勝手ながらひどく打ちのめされていました。
今更だと思われるかもしれませんが、本当にごめんなさい
あなたの手紙にお返事を書くことを今まで躊躇っていたのは
私自身あのことを貴方に知られるのが怖かったという思いもありますが
貴方が私を過去のこととして乗り越えるために、真実を知りたいと
思っているのなら私にはどうしても教えることが出来なかったからです。
最後まで自分勝手な女と笑ってください、それでも私はせめて貴方の記憶の中では
今までの良かった私のままでいたく、あのようなことをしてしまった女だと思われるのが本当に怖かったのです。
しかし貴方の手紙を読むにつれ貴方も私も真実を知って乗り越え無ければ
過去にとらわれたままで未来を見られないと感じました。
私は、あのことを知られるのが本当に怖い
真実を全て語り終える頃には貴方はきっと私を軽蔑するでしょう
それでも、真実を語るのが貴方に出来るせめてもの償いと思い
貴方の望むように私が犯した罪を告白したいと思います。
———
妻の最初の手紙は短いものでした。しかし次から送られてくる内容は
非常に驚くべきものでした。私は男との関係を知る段階になり
妻の告白を読んで行くともっと詳しく男とどういう行為をしたのか
知りたい欲求を抑えられません。妻は詳細な描写は出来るだけ省いていましたが
私は、妻がどういうことをされどういう風に男の手に落ちたのか
どうしても知りたかった。そして妻のされた行為を想像すると
嫉妬で胸が苦しく妻がされたことを知らなければ先に進めないと思っていました。
私は卑怯にも妻の私への負い目を利用し妻に行為の部部分の告白も要求しました。
しばらく返事が滞りましたが、妻も決心したのか
かなり詳細に妻と男の行為の内容からそのときの心境まで生生しく書かれていました。
私はその告白を読み、辛かった妻の心境と卑怯な男の行動に
怒りそしてやはり妻を取り戻したいと心から思うのです。
その夜も私は昨夜の恐怖を忘れられず
眠りにつこうとすると思い出され悪夢に苛まれていました。
夫の背中にすがりつき必死に耐えていると
あまりの疲れに次第に眠りにつきました。
いつものように目覚まし時計が鳴ると私はびっくりして飛び起き
あたりを見回しここが寝室であることを思い出し
一人胸をなでおろすのです。
夫と子供を送り出す間は忙しくなんとか思い出さずに済んだのですが
一人になるとまた思い出され、仕事に行くことなど考えられなくなっていました
そんな時電話が鳴り恐る恐る取ると店長からでした
店長は昨日の様子から無理であればしばらく休んでいいと言ってくれ
私は電話口で泣きながらありがとうございますと繰り返すのです。
また一人になるとあのときのことを思い出し恐怖と悲しみと
最後は男達のもので達してしまったという事実が
夫に対する罪悪感となって私に重くのしかかるのです。
その日の昼ごろ私を心配した店長が訪ねてきてくれました
店長は私が何をされたのか分かっていることでしょう。私はあのような目にあっても
夫に話す決心もなく、一人で耐えることが出来るほど強い人間ではありませんでした。
店長はあのような目にあった私を放っておけ無いといって
何かと面倒を見てくれました。そして頼るものを探していた私はすがってしまったのです。
あの事件があってから店長なりに探ってくれていて犯人が見つかれば
このことを公にしない変わりにテープを取り返せるかも知れないと言ってくれ
そのときの私にはそのことに望みをかけることしか出来ませんでした。
そして頻繁に店長と個人的に会っているうちに事件は起こりました。
ある日店長から話があると言われ喫茶店で待ち合わせをし
店長を待ちました、店長は少し遅れて店に入り
「すまない・・・まずいことになった」と言うのです
「何があったのですか?」と私が聞くと
私と頻繁に会っていることを奥さんに不信に思われ
興信所をつけられ何回も会っているところを写真に取られ
怒った奥さんが出て行ってしまったという話でした。
私もその話を聞きまさかこんなことになるなんてと思いました
考えてみると私だって夫が頻繁に他の女性と二人きりで
会い続けていれば、浮気を疑うかも知れません。
しかし店長は私を助けてくれようとしただけであり
私と浮気をしてはいません、私のせいで店長までも
辛い目にあってしまって私はあまりに申し訳なく思い
店長に私のことを正直に話し奥さんと仲直りしてくださいと頼みました。
しかし店長は妻とはもともと上手くいっていなかった
これはきっかけに過ぎないから、気にしなくて良いと言うのです。
私は店長にまで迷惑を掛け家庭を壊してしまったことに更に罪悪感を感じ
最早私は全てを夫に話し店長の奥さんに謝罪するしか無いのでは無いかと思いました。
私は店長に
「これ以上迷惑をかけるわけには行きません、誤解されるようなことをしたのは
間違いありません。でも、店長は私のことを心配して・・・
店長には感謝しています。でもこれ以上私と関わっては本当に離婚になってしまう。
私仕事やめます、辞めて夫に全てを話します。ですから離婚なんて言わないで下さい
奥さんからどんなお叱りを受けても構いません、私が浅はかだったのです。」
というと店長は私のせいではないというのです。
しかしこれ以上私にかかわると本当に離婚になってしまう
それだけは駄目だと何度も店長を説得しました
しかし、ある日いつもより落ち込んでいる店長から
とうとう離婚になったと聞くと私は何も考えられずどうお詫びすればよいのか
また、このようなことに巻き込んでしまって申し訳ないと
心から店長に詫びました。いくら上手くいっていなかったとは言え
店長の落胆振りは私をひどく動揺させました。
私は何か出来ることはないかと考えるのですが、私には何も出来ません。
しばらく話していると、店長は朝から何も食べてないんだと言うので
私はせめてと思い台所を借り食事の用意をし始めました。
店長は後ろから見ながら、
「桂木さんが嫁さんだったら良かったのにな・・・」
と言いました。私は戸惑い返事が出来ません
すると店長は私を後ろから抱きしめ
「諒子さん・・」と
私は戸惑いましたが店長の気持ちを思うと拒否することも出来ず
ただじっとしていました。店長は私から離れ
「すまない・・どうかしていた忘れてくれ・・」と力なく言いました。
私は店長のほうを見ました、店長も私を見ていました
しばらくお互い見つめあいとうとう店長はまた私を抱きしめました。
私はこの人を助けたいと思いました、いえ本当は私が助かりたかったのか知れません
私は卑怯な人間です、自分に様々な言い訳をしながら
店長の求めを断ることは出来ませんでした
店長は激しく私を愛しました、私は店長の気持ちを感じ
せめて今は店長を愛そうと思いました。そして私はあの事件以来
無理やりではなく初めて自分から男を求めそして夫以外のもので
達してしまったのです。
私は行為の最中は、店長のことを考え店長のことを求めていました
しかし、終わったあとふと我に返ると自ら夫を裏切ってしまった
罪悪感で私は心が締め付けられるように痛くなり
そしてシャワーを浴びながら心のなかで夫に詫び
しゃくりあげるように泣いてしまいました。
そんな私を見て店長は、「すまない」と謝って
私を抱きしめてくれました。私は店長を押しのけ
服を着るとそのまま家へと急ぎました。
家に帰り夫の顔を見ると私は自分のしてしまったことの愚かさと
浅はかさに吐き気をもよおしました。最早このまま夫と一緒には暮らせない
私は汚れてしまった、心までも一時夫を裏切ってしまった私はここにいる資格などないと
そう思いました。それから数日間店長とも会わず私は自己嫌悪と
夫を裏切ってしまった罪悪感から精神的に不安定でした。
私の様子がおかしいことに気が付いたのか自然と夫は
私を抱き寄せました、しかし私はあの時確かに夫を裏切ったのです
今の私には夫を受け入れる資格はない、私は穢れてしまったという
気持ちが湧き出て夫を拒否してしまうのです。
しかし夫の何時に無く力強い抱擁に次第に抵抗することも出来なくなり
私はせめて最後に夫に抱かれたいとまた自分勝手に思いました。
いつものように私にたくさんの愛情を与えてくれる夫の行為に
私はこのようなこともなくなるのかと思うと寂しく思い、そして激しく夫を求め
夫が果てると私は自然ときつく夫を抱きしめ、涙があふれ
やはり私の求めているのは夫なのだと心から感じたのです。
私はこのとき夫に真実は告げず、離婚する決意をしていました
夫や子供と離れることは私にとって死ぬよりつらいことかもしれません
しかし自分を守るため周りを傷つける事に耐えられず
夫や子供に対して自分の犯した罪の事を考えると
私には償いの人生しか残されていないと思いました。
あの事件のことも1ヵ月半何も無く幾分か安心していたと言うのもありますが
何かあったとしても一人なら自分が苦しむだけで済むと思ったのです。
仕事の昼休みの間に私は店長に仕事を辞め夫と離婚する事にしたと話しました。
私の決意が固いことが分かると店長は最後に家に来て欲しいと言い
私は決して夫を裏切るまいと心に決めて店長の家に行くのです。
今考えると私が店長の家に行く理由など
本当はありもしないのかも知れません。私は店長の家に行く道すがら
夫とのことを考えていました。
私は夫からの愛情を疑ったことはありませんし、私も夫への愛情を
自分自身疑ったことはありませんでした。しかし、先日の店長との
行為の中で私は今までになくお互い体を求め合うことに没頭しておりました。
私は自分自身が分からなくなり、夫を確かに愛してるとの実感を持っているにも
関わらず夫以外の男性のことを例え1時とはいえ求め
そして夫以外の男性で感じることを求めた自分自身のことを考えていました。
私が夫との行為で始めて女の喜びを感じたのは結婚してしばらく経った頃でしょうか
その時私はこれほど幸福感にあふれ、夫をいとおしいと思ったことはありませんでした。
私はそのときの幸福感が忘れられず、次の日もう一度あの快感を味わいたいという
体の奥底から湧き上がってくる欲求に抗うことは出来きず
軽蔑されてしまうのではないかという恐怖感を持ちながらでも
結婚してから初めて自ら夫を求めてしまったのです。
しかし夫は軽蔑などせず自分の体のせいで私を満足させられていないのではないか
と思っていたと言い、私のこのような淫らな変化をも受け止めてくれました
私は夫に抱きつき、夫のことだけを考えそして夫にこれからされることを考えると
最早ほかの事など考えることは出来なくなっており
自分の体の欲求の赴くまま夫を求めていました。
夫は私の求めに応じ私を何度も絶頂へ導き、そしてそのような私をやさしく見つめ
体全体で私を受け止めていてくれるのです。
私が夫を一晩に何回も求めたのはこのときが後にも先に最後でした
この時夫の何回目かの射精を体の奥に感じたとき、私はとうとう今まで味わったことの無い
快感を味わい、頭の中が真っ白になり気絶してしまったのです。
気がついたときはまだ夫と繋がったままでした、私はキスをしようとし夫の顔を見て
ふとわれに返ったのです。夫は苦しそうにそしてそれを出来るだけ悟られないように
優しく私に笑いかけてくれていました。
私は呼吸の合間に見える夫の苦悶の表情を見て、夫が私の求めに応じることが体の負担になると言うことを
改めて思い知るのです。
私はあの時初めて連続で絶頂に達し続けることで、今まで感じたことの無いような
快感を得られる自分の体のことを知りました。あの時の幸福感と一体感は
何物にも変えがたいものです、しかし同時にそれは夫の命を削ることになり
私はそれからと言うもの自分の体の欲求と夫を失う恐怖感の中で
ジレンマに陥り結果自分自身で夫との行為を抑制してしまうようになるのです。
しかし一度火がついた体は容易に私を解放してくれません
私は自分が行為に没頭すると夫を壊すほどの性欲を持っていることを恨めしく思いました
そして夫との行為では必ず夫が一回行けば終わるようにコントロールするようになってしまったのです。
それは夫のことを心配してのことではあるのですが
何よりそれ以上続けてしまうと自分自身もう我慢が出来なくなってしまうからなのでした。
夫がいなくなることは私にとって死よりも耐え難いことなのです。
ましてやコントロールしだしてから夫は私を満足させるべく前戯に時間をかけるようになり
こんな淫らな私を夫なりに愛してくれようとする心を感じ
ますます夫の体を第一に考えるようになりました。
そしてそれは同時にあの時感じたような幸福感を捨て去ることを意味していました。
店長の家に着く頃、私は店長や男たちの行為を思い出していました。
男たちの行為はもちろん店長であっても、あの時の夫との行為を
上回るものではないということに思い至り自分自身を納得させていました。
しかし今思い返してみると、それは一時とは言え体の満足を求めてしまった自分への言い訳なのかも知れません。
店長の家の呼び鈴を押す前私は玄関口で帰るつもりでした。
それは夫を裏切ることを自分自身が耐えられなかったこともありますが
何より例え無理やりされてしまっても、最後には屈服してしまうのではないかと
自分自身怯えていたのかも知れません。
玄関に入ると店長はいきなり私に抱きつき
「会いたかった・・」と私に言いました。
私はいきなりのことに戸惑いながら、店長の胸を押し
「このようなことは、やめてください・・・私はもう前のようなことは
夫を裏切ることはしたくないのです。」と言いました。
店長は、私から離れると俯き
「すまない・・・」と消え入るような声で言い続けて
「あのときから俺は桂木さんのことを愛してしまった・・・
貴女がご主人のことを愛していることは分かっている
しかし、例えしばらくの間だけでもいい・・・
私のことも愛してくれないだろうか、俺はもうこの気持ちを抑えることは出来ないんだ」
私は店長のこの告白を聞き動揺してしまいました。
店長はなおも私を抱きしめようとし私は必死に抵抗しました。
しかし男の力にかなう筈も無くとうとうキスをされると
私は店長の腕のなかで崩れ落ちてしまいました。
店長は私を抱きかかえるとそのまま寝室へと私を連れて行き
またキスをして私のブラウスを脱がし始めまたのです。
私は我に返り必死に抵抗しました、しかしいつに無く強引に店長は
私を押さえつけとうとう下着姿にされてしまいました。
店長は服を剥ぎ取ると、隣の部屋に投げ込みました
私は声を上げて止めてくださいと懇願するのですが
店長は「愛しているんだ・・・諒子さん」と私の名前を呼び
下着越しに愛撫を始めるのです。
私はまたあの時の恐怖が蘇り、子供のように泣きながら
「やめて〜お願いします、お願いします・・・」
店長に懇願していました。
しかし店長は愛撫をさらに強くしていき、私の体は徐々に反応してしまうのです。
私はこのような状況でも反応してしまう自分の体を呪い
そして最後にはまた求めてしまうかも知れない恐怖感から
嗚咽を漏らし無様に泣いてしまいました。
しばらくして店長が私の中に入り、店長が何度目かの射精をした時
私はまたしても絶頂を感じてしまいました。
そして私が達したことが店長に分かると店長は
夫以外の物で絶頂を感じた私をことさら強調し私の心砕いて行くのです。
私は夫との記憶にすがって、あの時の行為のことを思い出していました。
何度も何度も店長に貫かれ、いったん達してしまうと
何度でも達してしまう自分の体のことを呪いながら
それでも私は忘れることの出来ない幸せを思い涙を流すのです。
店長が最後の精を私の中に放出し終わり、私は絶望感を感じていました。
また感じてしまった、また達してしまった
決して求めてはいないのに必死に堪えているのに最後には負けてしまう。
もう夫には戻れない私は体の欲求に負けてしまった
夫を裏切ってしまったとの思いが心を支配していました。
シャワーを浴びながらひとしきり泣き、そして浴室からでると
店長が私を抱きしめました。私は始めてこの男に嫌悪感を抱き
振り払うと店長の頬を打ちました。
店長のこのときの顔は忘れられません、不敵であり
厭らしくそして私を馬鹿にしたような下劣な笑いです。
そしてこの男は私に
「さっきまで俺の物を咥えて喜んでた割にはずいぶんだな。
何も知らないのは亭主ばかりなりか・・・」
というとビデオのリモコンを持ち再生ボタンを押しました
そこには、最初に店長と交わった時の光景が映し出されていたのです。
私は何故このような物が映されているのかしばらく理解できないでいました。
店長は不適に私を見て、何も言わず少しずつ音量を上げて行きました
私は呆然としそしてこの事態を徐々に理解して行くのです。
声も出ず信じられない思いで店長を見ました、店長はこちらを見ることなく
じっとビデオを見ています。私は帰ることも出来ずただただ何が起こっているのか
それすらはっきり分からないまま崩れ落ちてしまいました。
店長はビデオを消すと何も言わず一枚の写真を私に渡しました。
それは店長との行為を写した写真でした。
店長はそのまま不適な笑みをたたえたまま、私を玄関口まで連れて行き
「それでは、さようなら・・・」とだけ言って
扉を閉めました。
私はいったい何が起こったのか、そして店長の目的は何なのか
店長はいつあのような写真を撮っていたのか?何も分かりませんでした
青ざめた顔で車に乗りハンドルに顔をうずめ
考えていると底知れぬ恐怖に襲われるのです。
何とか家に帰り着き夫が帰ってくるまでの間
私は枕に顔を埋め震えていました。
あの時、自分の弱さゆえ店長を求めてしまったこと
助けて欲しい人に助けを求めなかった愚かさ
そして最早夫に助けを求めることは出来ない絶望
何にもまして底知れぬ不気味さを持つあの男
私に待っているのはいったい何なのでしょう
これから起こることを思うと不安に駆られ
夜も寝られなくなり、そして私は家族の頼ることも出来ないのです。
あのときから1週間店長は私に一切接触しませんでした
しかし写真だけは毎日送られてきます。時には郵便で
時には社内メールでとうとう家の新聞の中に挟んであることもありました。
まるでじわじわ痛めつけるように私を追い詰めて行くのです
このままではいつか家族にばれてしまうその恐怖感で気が狂いそうでした。
これは罰なのだあの時店長に助けてもらいたいと思い
店長に抱かれた私に対する罰なのだ
そして何回考えてもこの地獄の終わりは夫との破局なのです。
どんどん具体的に夫との離別を考え始めました
必死にいい材料はないかと考え抜きました、たった一回の過ちであれば
夫は許してくれるのではないか?とも考えました
しかしこのようなことを夫に言って夫の体は大丈夫なのだろうか?
悲嘆にくれる夫を想像し、私はどうしようもない悲しみに襲われ
そして店長の家に行った時、私は夫のことを愛してると誰よりも一番と
自分に言い訳しながら、店長との行為を心の奥底で期待していたのではないか
夫が一番であることは間違いないということを自分で確かめて、いやそれによって
自分自身の罪悪感を軽くしたかったのかも知れません。
私は、私は・・・・
自分の心と向き合い私は自分の心が分からなくなってきます
しかし私は確かにあの時夫を確実に裏切っていました。
そしてとうとう私は自ら店長の家に行ってしまうのです。
最早あのようにじりじり追い詰められてこれ以上びくびくしながら
生活など出来ません。私がおかしくなってしまうか夫にばれるか
どっちが先かという状況です。
そして店長は自ら来た私を無言で迎え入れました。
私は結局ほとんど脅しに近い状況でまた店長を受け入れざるを得なかった
ひとしきり自分の欲望を満たした店長は私に
「今日から毎週日曜の午後と木曜日にここに来るように
嫌なら来なくていい、あくまで君の自由だ」
その日から私の地獄日々が始まりました。
しばらく店長は、私をただの欲望の処理道具のように扱いました
店長は行為に及ぶまでは怖いくらい無言で私は常に何をされるのか
びくびくしながら待っていなくてはなりませんでした。
この頃の私の心はぐちゃぐちゃでした。普段どおりの夫の態度にすら
影で涙を流すことも珍しくなく、情緒不安定の私の態度にも困惑しながら
気遣ってくれます。しかしそれが更に私の心を掻き乱し
私は夫に抱きしめられる度に全て話してしまいたい、楽になりたいと考え
次の瞬間にはこの人を失いたくないと思うのです。
店長の行為は更にエスカレートして行きました。下の毛を無理やりそられた時
店長は私に「これで旦那と出来なくなったな」と無表情に私に言い
私は、取り乱し泣き叫び初めて「この男を殺すしかない」と思いました。
ある日私はかばんに包丁をしのばせ店長を刺し殺そうと
店長の家に行きました。玄関を開け店長が後ろを向いたとき私は店長を刺そうと
しました。しかし運悪く店長に気付かれ
「俺をさすのは構わないが、あの写真は俺以外の人間も持っているぞ。
次は誰のおもちゃになるのかな?」
と薄ら笑いを浮かべ私に言いました。
そしてこの日から店長の私への残虐な行為が始まりました。
店長の行為はあくまで私を痛めつけることを目的としているようにしか
思えませんでした。
抵抗している私を無理やり組み敷き私が我慢できなくなるまで
じらし続けそして私は最後には店長にお願いするしかなくなります。
店長は私に屈辱感と罪悪感より体の欲求をとってしまった
ふしだらな女だと私に何度も言い聞かせるのです。
店長は私の心を砕くことに楽しみを見出している本当の鬼でした
私が店長に我を忘れさせられ何回も達している最中突然目隠しを撮り
ビデオをつけます。そしてそこには私たち家族の映像が流れているのです。
私は見た瞬間あまりのことに泣き叫び、その様子を見た店長は満足げに
更に私を激しく突くのです。
この様に心を砕かれると私は次第に何も考えたくなくなり、ただただ涙を流しながら
店長の体にしがみつき快感だけに集中してしまうのです。
行為が終わり我に返るとただただ体の快感を求めてしまう自分が情けなく
そして泣いている私に店長は、先ほどの泣きながら店長にしがみついている
場面を私に見せるのです。
そのように何回も心を砕かれそして快感だけを考えるような状況を与え続けられているうちに
私は店長に貫かれるだけで快感を感じ、そして確実に店長とする前とは
私が変わっていることを感じていました。
私はこの頃自分の事を冷静に考えることもできなくなり
夫を愛しているのか店長を愛しているのかも分からなくなりました。
この様なことをしていてはいつか夫にばれる、夫にばれれば全てが終わる
そんなことは分かっていました。
結局自分が辛いから問題を先延ばしにしていただけです
そして消えてなくなりたいと思っていたそんな時
夫に久しぶりに求められたのです。
私は夫に久しぶりに抱きしめられ、店長とは違う優しい抱擁に激しく動揺してしまいました
この様に優しく抱きしめられたことは店長との行為ではありません
そして求めてくれる夫を嬉しく思いながらも私は夫には答えられないことを
思い出し、心ならずも夫を拒否してしまいました。しかし夫はこの時
少し怒り止めようとしてくれません、そして下着に手が掛かったとき
私は抵抗するのをやめ天井を見ながら
「これで全てが終わる、私は夫に捨てられ店長に全てを奪われるんだ」
と思うと何も言えず涙があふれてきました。
夫が私の顔を覗き込んだとき、
夫は私が涙を流していることに気がつき私から離れ「すまない・・・」と言いました
この時私は忘れていたものに気がついたのです。
店長は私を愛してはいない、分かっていたはずなのに
何回も抱かれているうちにもう店長の物になったほうが楽なのではないかと
私は思い始めていたこと、そして夫は理不尽な仕打ちであるはずなのに
私を気遣ってくれたこと。そして裏切りを知らない夫は今でも誠実に私を愛し続けていてくれたこと
私はシャワーを浴びながら一人泣いていました。もう止めよう
こんなことはもう駄目だ、たとえ夫にばれてもこれ以上誠実な夫を裏切ることは出来ない
いえ自ら夫に話全てを告白し夫に許しを請おう、許してくれなくても
一生夫に償いながら生きて行こうそう思いました。
私は店長と決別するための行動を始めて開始しました
この時私は店長と決別することに迷いはありませんでした。
夫はいつでも誠実であったと思います。
私に向ける気持ちに嘘はないと感じれるものでした
私はどうなのでしょう?
先日の出来事があってから私は夫との関係について考えていました。
私は夫を愛していると自分では思っていました
しかしそれであれば店長に何故体を任せたのでしょう?
夫は私のことを責任感が強くて情が深いとよく言っていました
しかし・・・・
いつの間にか夫の存在が当たり前になっていたのではないか
私は・・・・本当に夫のことを愛していたのでしょうか?
考えてもなかなか答えは出ません。
いえ本当は分かっていたのかも知れない、しかし私は
自分でそれに気がつきたくなかったのでしょう
この頃ちょうど店長は新店を任されるかもしれないと
少し忙しくなり今までのように定期的に呼び出されることも
少なくなっており、決別の意思を伝えたときはもう
あれから2週間ほど経っておりました。
私がもう会わない例えばらされてもと言うと
「ふ〜んそうかやっと決心したわけだな」
「どういうことですか?」
「止めようと思えば今でなくても止められただろう。
本当に夫にばれそうにでもなったか?無理も無い話しだ」
「違います!私は・・・・例え私がどうなっても
これ以上夫を・・・」
「どっちでも一緒だ、止める気になれば止めれるってことは
今まではそこまで本気じゃ無かったってことだ。
ま〜どんなに貞淑そうな女でも自分にいくらでも言い訳できるうちは
人のせいにして上手く続けるもんだ」
「違います・・私は・・・」
と私が言うと店長は私を強く抱いて
「言い訳が欲しいだけだろ」
と言い私を押し倒しました。
この時店長という人間に始めて心から嫌悪感を感じました
私が本気で押し返そうとすると、更に強く抱き
「静かにするんだ、俺の言うとおりにしろ」
と言われた時、何故か体が動かず固まったように
抵抗できなくなりました。
怖いのです、厳しく命令されると体が動かなくなってしまったのです。
私は何よりこの事実にショックを受けました。
とうとう心までも店長に縛られこの時店長の行為では
ほとんど恐怖しか感じず、快楽に身を任せることもままならず
この事実が余計に今までの自分が店長を受け入れていたことを自覚させ
自分の浅ましさと店長の言った
「自分への言い訳が欲しいだけ」
という言葉が心の奥にとげのように刺さっていました。
私の迷いと呼応するかのように夫と私の間に
溝が出来て行くのを感じていました。
夫を大事に思う気持ちに嘘は無いと自分では思っていました。
しかしいつの間にかそれは家族としてのそれだけになっていたのかも知れません。
夫の体のことを考え、自分を抑制するようになってから
私は出来る限りこの家族を守って行こうと考えていました。
そうしているうちに自然と夫を一人の男として愛することを
少しずつ忘れていたのではないか・・・・
この様な考えが頭の中を支配しそして自分で打ち消すように
そうではない夫を愛している
とまた頭の中で繰り返すのです。
夫が倒れたのは店長に恐怖を感じてから数日後のことでした。
出社前に玄関口で崩れるように倒れる夫を見て
私は愕然とし、体の奥からわきあがってくる恐怖を感じました。
その後のことは無我夢中で仕事も休み夫が目を覚ますのを
じっと待っていました。
夫が目を覚ましたとき心のそこから安堵する自分を感じ
私自身ほっとする気持ちであるのと同時に
この感情が家族としてだけのものなのでは無いかと
考えてしまう自分にはたと気がつき
また自己嫌悪に陥るのです。
夫が退院する前の日私は意を決して店長に電話し、もう一度店長に
決別の意思を伝えました。しかし店長は
「俺は別にいいが、君が耐えられないんじゃないのかな?
何なら旦那の前でいつものようにしてやろうか」
「主人は関係ありません!」
「関係ないとはね・・・まあいい君が来ないならこっちから行くまでだ」
「・・・・それだけは止めてください」
「それじゃまた」
と電話を切られてしまいました。
私は恐怖で体が硬直し、頭の中で前のことが思い出されました。
また店長に抱かれるだけで体が動かなくなるのではないか?
もし夫がいる間に店長が家にやってきたら夫は興奮して
また倒れてしまうかも知れない、その時私は店長の呪縛から
逃れられるだろうか?
私に自信はありませんでした。
散々悩んだ末私は結局自ら店長の家に行くことを店長に伝え
いつまでこんなことが続くのかと思うと酷い絶望感に襲われるのです。
夫が退院した当日は、夫の友人達も訪れ夫も楽しく過ごしていたようです。
あのように笑顔を見せる夫を見て、最近私に笑顔を見せることが
ほとんどなくなったということに思い当たり
また激しい自己嫌悪に襲われました。
私はこの時からこの家族にとって今や私は必要ないのでは
いても悪影響しか及ぼさないのではと考え
私がいないほうがいいのかもしれないと思い始めていました。
しかし自業自得であると分かっていても今まで自分が
大切に育ててきた家族との絆を捨て去る勇気も無く
しかし店長との関係を切る勇気も無く
夫には知られたくないと思いながら、夫を愛しているのか悩む
このときの私は自分自身をもてあますほど
矛盾を抱えた中で生きていました。
自分の気持ちの確かであるはずの物が何一つ確かであると思えなくなっていました。
次の日夫は私に「久し振りに2人で出かけないか」
と言ってくれました。
夫は私が理不尽な態度を取っているにもかかわらず
それでもなお私に優しいのです。
どうして私は店長との関係を切れないのだろう?
これ以上夫を騙し続けていくことに何の意味があるのだろう
店長が飽きるまでずっと私は夫を拒否し続けて生きていくのだろうか?
それは夫を愛してるのではなく、私自身この生活を
無くしたくないだけなのでは無いだろうか?
今の生活を無くしたくないことと夫を愛していることは
同じことなのだろうか?だからと言ってこんなことを続ける理由なんて無いのに
私の中で答えの出ない問答が延々と繰り返されていました。
しかし夫が家にいるにも関わらず
無意識にお風呂に入って準備をしている私がいるのも
また紛れも無い事実です。
そのような自分の姿を鏡で見ながら私はどこで
間違ってしまったんだろうと考えていました。
体を拭き下着を履きドライヤーで髪を乾かそうとした
その時浴室の扉が開きました。
夫がそこに立って私の姿を見ているのです。
私ははっと気が付き「見ないで」と声を上げ泣いてしまいました。
夫は一時唖然とし、そして次の瞬間私に覆いかぶさり私の下着を
剥ぎ取ったのです。私の秘部は店長に剃られていましたから・・・
夫は私の秘部を見るとそのまま固まってしまい、その隙に
私は下着を手に取ると一目散に寝室へと向かいました。
何も考えられない・・・ただ何もかも無くしてしまった実感だけは
私の中に確かな事実としてありました。
『もうここには居られない・・・私は必要ない』
その言葉だけが頭の中を支配しています。
寝室から出るとき夫と鉢合わせし、一瞬夫の顔が見えました
その瞬間私は背中がちりちりと痛みそして
夫を突き飛ばし涙がこぼれるのが分かりました。
夫の手を振り切り玄関に向かう短い間ただここから逃げることしか
考えていませんでした。
私はこうなっても最後まで夫に向き合うことから逃げたのです。
玄関口で夫に捕まり私は何も考えられず、ただただ泣くことしか出来ないで
夫に何も言えず手を振り払おうとしていました。
その時夫が突然胸を押さえその場に蹲り何か言いたそうに口を開くと
そのまま倒れ、そして私は頭を抱え泣き叫ぶことしか出来ませんでした。
夫の呼吸が乱れぐったりした時、私はとっさに救急車を呼び
呼吸器を夫の口に当て、泣きながら必死に救命措置をしていました。
救急車が来て夫に付き添いながら夫の手を握っていると自然と
「ごめんなさい、ごめんなさい」
と言っている自分に気が付きました。そして夫がかすかに口を開いて
「諒子・・・諒子・・・」
と私を呼ぶのです。そして夫に顔を近づけたとき夫は
目を閉じながら
「すまない・・・愛しているんだ諒子・・・」
とうわごとのように言っているのです。
私はその場で崩れ落ち頭を抱えながら震え、救急隊員の人に抱えられなければ
車を降りることも出来ません、そしてしばらく椅子に座っていると看護士さんに
「大丈夫ですか・・・旦那さんは命に別状は無いようですよ。安心してください」
と言われた時私は人目を憚らず号泣してしまいました。
看護士さんは私の身を気遣いながら
「これだけ思ってくれる奥さんが居て旦那さんは幸せですね」
と言うのです。私は思わず「貴方に何が分かるの!」
と怒鳴ってしまいそしてすぐに自分がしてしまったことを思い出し
気が狂いそうになりました。
そこからは私もどうやって家についたのか憶えていません
ただ病院から夫の両親に連絡したのだけは憶えています。
家に帰ると玄関で夫が倒れたことが思い出され
もう自分自身でどうしたらいいのか分からなくなっていました。
しばらく玄関口で呆然としていると
「来ないと思ったら・・・旦那でも死んだか?」
と聞こえました。私が振り向くとそこに立っていたのは
店長でした。私は首を横に振りました
「じゃばれたって所か・・・・」
不思議と店長を見ても何にも感じません
憎いともすがりたいとも・・・感情自体無くなっていたかも知れません
店長はゆっくり私に近づき
「もう君に行く場所は無いだろ?今度私は転勤になる
なんなら君の面倒は俺が見てやるから一緒にくるか?」
と言い、そして私は肩を落とすように頷いてしまいました。
私は考えることを止めて淡々と家を出て行く準備をしていました。
しばらくすると子供が帰ってきたのが分かり
子供を両親に預けなければと思い、両親に連絡したのだと思います。
このときのことははっきりとは憶えていません
ただ子供達は私の態度に不安を抱いたのか泣いていたのだけは
なんとなく憶えています。そして車に乗り出て行こうとした時
私の前に田中さんが立っていました。
田中さんにも暴言を履いたと思います、しかしあの時田中さんが
私を止めてくれなければ私の末路は店長の慰み者になっていたのだと思います。
田中さんの家に向かう途中私は色々考えていました
これからのこと、夫とのことそして店長のこと・・・・
田中さんの家で美鈴さんと話しながらも私はどこか現実離れした感覚の中に
居ました。田中さんたちと話している間も現実感に乏しく
自分が何を言ってるのかよく分かっていませんでした。
夫を裏切ってしまった、でもずっと夫を愛していたはず
しかしそれが本当なのかと考えると・・・・
店長が憎い・・・でも関係を止められなかったのは私
夫の前からいなくなりたい・・・・私には夫の前に出る勇気は無い
じゃ子供は?でも私が居ては夫をもっと苦しめる
逃げたいだけ?そうかもしれない・・・
どうすればいいのか・・・私には全然分かりませんでした。
田中さんに「これからどうするの」と聞かれても
私にはちゃんとした答えなど無いのです。
このときも私は全ての責任を店長に押し付け
私は悪くないとそう自分に言い聞かせるのが精一杯でした。
次の日から私は結局店長の所へ行くことも無く、また仕事にも行かず
何も考えずただ子供の世話だけをしている状態でした。
私の様子を心配した田中さんが両親に連絡し
私を父の兄の元へ預けることが決まったときもどこか人事のように
感じていました。子供の前でだけ見せる正気の部分と
一度子供がいなくなるとまるで幽霊のような私を見て
このままでは夫も私も壊れてしまうと考えたのでしょう。
私は夫と一生会わないつもりで父の提案を受け入れ
夫が退院する直前私は夫の前から姿を消しました。
—–妻の最後の手紙—-
あの日貴方が玄関口で倒れた時、私は救急車の中で
貴方が言った愛しているという言葉を聞き
初めて貴方に愛していると言われた時のことを
思い出していました。
私が忘れていた気持ちを取り戻した時
私の前に広がっている絶望の淵に気がつき
自分の過ちを・・・どこで間違ったのかのかを
気がついたのかもしれません。
私の人生が狂ったのは決してホテルで乱暴されたからでは
無いのです。私は私自身で貴方を裏切ることを
選んだ時から貴方に平気で嘘をつける人間になってしまった。
貴方には謝っても謝り切れないほど酷いことをしました。
もう元には戻れません。
貴方の人生にご多幸があらんことを
              諒子
—————————————
手紙には離婚届が同封されていました。
私は何も言えず、ただ妻のことを考えていました。
それでも私は妻を愛しているのだろうかと
幾度も自問自答しました。
妻を取り戻したい、私の妻は諒子だけだ
何度考えてもそう思えました。
私は何としても妻に会うべく義両親に
妻に会わせてくれと詰め寄りました。
最初妻の両親は答えをはぐらかし
妻の居場所を教えようとはしませんでした。
私は「なら何としても調べてやる。興信所を使っても
妻の手紙から大体の場所は分かってるんだ
このまま離婚なんて納得できるか!」
と言い義父兄の住所が分かるものを調べ始めました
義父が止めるのも聞かず、電話帳を調べ
はがきを調べ義父兄の住所が分かると
とうとう義両親も観念したのか
肩を落としながら義父が
「勇君・・・すまないあの子は今兄のところにはいない」
「どういうことですか!?今諒子はどこに?」
私の剣幕に義母が驚き
「勇さん諒子は・・・」
というと義父が義母を制し
「あの子の行き先はおそらくあの男のところだろうと思う。」
「あの男?店長のことか!?」
「そうだ・・・あの男は、すまない私達が馬鹿だったんだ
私達があの男の脅しに乗ってしまったばっかりに・・」
「脅し?」
「私はあの子のことを思ってあの男と話をつけ様とした
このままあの男に証拠を握られたままでは、諒子は君のところへ
戻れない、だから私はあの男に金を・・・」
「お父さんまさか・・・」
「あんな卑劣な男がいるなんて・・・」
「お父さん落ち着いて事情を話してください」
「私はあの男を探し出し一切関わらないことを約束してくれと
話に言ったんだ。こちらから訴えないことと引き換えにと
そうしたらあの男は
『訴えるのはあなた達ではなく旦那さんでしょう?
そうですね旦那さんに訴えられたら仕方ないでしょう
でも旦那さんこのこと知ってるんですか?
知らないなら気の毒だから俺が教えてあげようかな』
とあの子の卑猥な写真を取り出し
『これがいいな・・・教えるだけじゃ信憑性無いから
これも一緒に送ることにしよう』と言うのだ。
私がそれだけはやめてくれ!と頼むと金を要求され仕方なく・・・」
「何故!何故ですか!私に相談してくれればこんなことには・・」
「もうこれ以上あの子を傷つけたくなかったんだ!」
「いくらです・・・全部で」
「積もり積もって500万ほど・・・」
「1回じゃなかったんですね?でも何でそれが諒子がいなくなる理由に?」
「あの子は知ってしまったんだ私達が脅されているのを・・・
それで私に隠れてあの男のところへ会いに行ってしまった。
そしてまた隠れてあの男と会っていたんだ・・・私達は元気を取り戻したと
思っていて・・・兄の店で手伝いをしていたからまったく疑ってなかった
まさか夜に抜け出して会っているなんて・・・そして気がついたらあの子は妊娠を・・・」
「何ですって!?」
私は目の前が真っ暗になるのを感じていました。
義父は呆然とする私に語りだしました。
「1年前あの子は本当に抜け殻みたいだった。やっと
少しずつ元に戻り始めたのに・・・あの男がいる限り
あの子は君の元には戻れないんだ。あの子は心底後悔していた
ずっと自分を責めて・・・私はそんなあの子を救ってやりたかった」
重苦しい沈黙の中私はふつふつと湧き上がる
黒い感情を抑えることは出来なかった。
「お父さん・・・あの男は今どこにいるんですか?」
「勇君もう止めてくれ・・・あの子のことは・・・」
「うるさい!諒子は私の妻だ!あなた達がもっと早く私に相談していれば
こんなことにはならなかったはずだ!諒子は、あの男は今どこにいるんですか!?」
私は怒りに心を支配されていました。
そして義父から無理やりあの男の居場所を聞くと
私は会社に一週間の休みを申請しあの男
【黒澤勇】
のところへ向かうのです。
黒澤の転勤場所は我が家から車で3時間ほどのところで
義父の兄の所からは1時間ほどのところでした。
私は真っ先に黒澤が勤めている店に行き、敵の顔を始めて確認した時
生まれて初めて人の命を奪いたい衝動に駆られました
いつも死を隣に感じてきた私です、私は人の死をも
自らに投影し死と言うものをずっと恐れてきました。
しかし、あの男だけはあの男だけは別なのです。
私の大切な物、ずっと失いたくないものを奪っていった男
私はあせる気持ちを押さえ黒澤が店にいることを確認すると
諒子がいるはずの家、黒澤と諒子が暮らしているはずの家に
向かいました。
黒澤の家はごく平凡なマンションの4階でオートロックも無く
進入するのは容易でした、しかし私は直前になって怖気ずいていました
諒子は私を選んでくれるのでしょうか?ひょっとして黒澤を愛してしまっているのではないか?
それに子供のことも気になります。義父の話からだとまだ3ヶ月
にはなっていないはずで私は降ろしているいるはずだと思っていても
心のどこかではまだ不安なのです。
部屋に諒子がいるのかどうか確認は出来ませんでした
私は道を挟んだところにある喫茶店でじっとマンションの方を見ながら
黒澤が帰ってくるのを待っていました。
1時間ほど外を見ているとずいぶんと露出の高い服を着た
女性がマンションのほうへと歩いてきました
何となしに女性を見ていましたが近づいてくるにつれ
その女性が誰か分かったのです。
間違いなく諒子でした。

【友達】はじめての【セフレ】

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私が露出願望に目覚めたのは中学一年生の時でした。
私の家は母子家庭で、母はスナックを経営していました。だから店が休みの日以外、夜はいつも一人でした。
母の目が届かないこともあり、夜にベランダで露出するのがひそかな楽しみでした。
露出といっても、下着姿になるだけのおとなしいものでしたが、その頃の私には十分刺激的でした。
自宅の向かい側は、今では廃屋になっていますが、当時は豆菓子を扱う商店でした。その隣は飲食店が入った雑居ビルです。特に2階の居酒屋は、階段を上がり渡り廊下を通って店内に入るので、お客さんの姿がベランダの私からよく見えました。そのたびに胸が高鳴りました。
でも同じことを繰り返していると物足りなくなって、すべてを脱ぎ捨ててしまいたくなりました。
かといって、自宅で裸になれるほどの勇気はなく、やり切れない日々を送ってました。
そんなある日、学校の帰りに立ち寄ったショッピングモールで、白いチュニック丈のワンピースに目を奪われました。
買えるほどのお金は持ってなかったけど、どうしても着てみたくなり、私は試着室に向かいました。
試着室に入ると、ワンピを壁のフックに掛け、カーテンを締め切った瞬間、ある考えが頭の中を駆けめぐりました。
胸元のスカーフをほどき、セーラー服の上着を脱ぐと備え付けのワゴンの上にたたみました。
でも次に私が手を伸ばしたのは、さっきまで、あんなに胸踊らせていたワンピではなく、スカートのファスナーでした。
スカートを下ろし、ブラジャーのホックを外そうと背中に両手を回したけど、指先が震えてなかなか外れません。
ブラを取ると、ショーツに手を掛け、カーテンの下から見えないように、慎重に抜き取りました。
待ち望んだ瞬間に、頭の中がとろけるような快感をおぼえました。

正面に貼付けられた等身大の鏡には、生まれたままの姿が映っています。
でも、そこに映った私はまるで別人でした。
よく小学生と間違われた幼い顔が淫らに歪み、まだふくらみかけの胸の先端は鋭利な矢じりのように尖っていて、中心に映る淡彩な茂みが余計いやらしさを強調していました。
自然と右手がふとももの間に滑り込み、それと連動して左手が、敏感な先端部分をつまんでいました。
たくさんの人達がショッピングを楽しんでいるフロアから薄いカーテン一枚隔てただけの場所で、自分はこんな恥ずかしいことをしてる。そんな罪悪感がさらに快感を押し上げていきます。
指を動かすたびにいやらしい音が響いて、私は全身の血が愛液に変わっていくような気がしました。
どうしても耐え切れず、乱れた声を上げてしまったのです。その時、
「お客様、いかがなさいました?」
背後からかけられた声に、心臓が跳ね上がりました。
鏡ごしにカーテンの下から黒のパンプスと細い脚が見えました。
不審に思った店員さんが、すぐ後ろに立っていたんです。
返事しなきゃと思うけど、緊張しすぎてなかなか声が出ません。
「お客様、大丈夫ですか?・・・失礼致します。」
マニュアル通りの丁寧過ぎる声の後で、鏡の中のカーテンが揺れました。
私はあわてて振り返り、カーテンを押さえようとしましたが、手が届いたのはカーテンが僅かに開いた後でした。一瞬ですが、切れ長の美しい瞳が確実に私を捕らえていました。
最悪な未来がいくつも頭に浮かびました。
警察に通報されたらどうなるのか・・・学校に連絡されてしまうのか・・・
そんなことになれば、イジメられてしまう・・・
お母さんにどれだけ叱られるだろう・・・
早く逃げなきゃ・・・!
ようやく冷静さを取り戻し、できる限りの早さで身なりを整え、試着室から飛び出しました。
帰宅した私は、後悔するあまり涙が溢れていました。それのに、身体が疼くような感覚は残っていました。
私は制服のままで泣きながら、ショーツの中の手をいつまでも止めることができませんでした・・・・・。

【学校で】クラスメートが…【エッチ】

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S…クラスメート
   イケメン
Y…クラスメート
   学校1イケメン
R…クラスメート
   不細工
私の行っている学校には、
物凄く生徒に舐められている数学の先生がいるんです。
私のクラスもその先生の授業を受けているんです。
でも、授業になるはずも無く…
皆お喋りしたり、ケータイいじったり…
私は窓側の1番後ろの席なんだけど、隣がY、前がS、斜め前がRなんです。
その3人は授業中にもかかわらず、オナニーしちゃうんです///
それも私に見せ付けるように///
そんなの見たら私も我慢できなくなっちゃって、

即効トイレに行ってオナニーしてしまうんです。
なぜか、3人にトイレでオナニーしてる事がばれて、昼休みに呼び出しを喰らい、付いていくと男子便でした。
Yが私と1つの個室に入り、鍵をかけました。
2に続く…

【友達】コンビニで【セフレ】

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それでは、昨日のまちゃの露出を報告します。
昨日は、露出課題が無かったので自分で考えて露出の行動をしました。。。
昨日は、まず会社からまっすぐにお家へ帰り、デニムのミニにノーパンでも
今日から生理が始まっちゃったので・・・タンポンを入れて上はノーブラに
ハーフコートこんな感じで露出場所を探しながら
歩いていて、あまり過激なことは出来ないので・・コンビニで露出をするこ
とにしました。。。
まずコンビニで、いつもどおり、成人コーナーで立ち読みです。
でも、コンビにないにはお客さんが一人もいなかったのでハーフコートの前
のボタンを外して全開にしてみました。。。
そこから、まちゃの露出本気モードが出てきて、Hな本をレジまで持って行き
レジで精算する
ことにしました。もちろんコートの前ははだけたままです。。。とっても恥
ずかしい・・・その反面
レジの男の子には見られたい・・・ドキドキしながらお金をレジで支払いそ

のおつりをもらうときに
また、お金をわざと落としました。。。すると店員さんが拾いに来てくれて
まちゃはM字開脚のまま
その店員さんの方を向くと店員さんは、はっとした顔でまちゃのあそこを見
ていました。。。
まちゃは、タンポンを入れてることも忘れて店員さんに見せてたんです
ね・・・店員さんは、まちゃに
お金を渡してくれると同時にタンポンの紐を引っ張ってきました。。。
そこで、はっとまちゃは我に返りそういえば・・・生理、、タンポン。。。
店員さんが引っ張ってる。。。
そう思って、びっくりして立ち上がりタンポンは店員さんが持ったままスポ
ンと抜けてびっくりした
まちゃは、その場を走って逃げてきました。。。
そのあと、店員さんがそのタンポンをどう使ったかはわかりませんでも、お
家に帰ったまちゃの小股を見てみると血とお汁でぐちゃぐちゃに濡れ太もも
を伝い足のふくらはぎの方までたれていました。。。
玄関で、我慢できずに汚いのを承知でオナしちゃいました。。。
その時は、今までにない興奮でブルブル痙攣しながらいっちゃいまし
た。。。
とっても気持ちよかったです。。
でもそのコンビニにはもう行けません。。。
なんか、汚いお話でごめんなさい。。。。。

【友達】露出歩行【セフレ】

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先日投稿したあの時から露出歩行にはまってしまい、あれから何度かやって
います。いつもは一人でするのですが、昨夜は私と同じ趣味を持った友人
(A子)と一緒にすることになりました。A子はまだ露出経験が短く、大胆
な事をしたことが無いのですが、私の話を聞いてやりたくなったらしいで
す。夜8時に私の部屋に来てもらい、2人とも全裸で部屋を出て車まで走り
ました。その時点でA子はかなりの興奮状態になっていました。私がいつも
利用する自販機が5つ並んでいる所がある脇道に向かいました。今回は車を
ちょっと遠めに50メートルくらい離れた場所に止め、2人で車を降りまし
た。周りを警戒しながら、手をつないでゆっくり歩き自販機の前にたどり着
いた時、ちょうど一台の車が来て「ヤバ!」って思ったけどどうする事もで
きないまま、自販機の灯りで照らされた私たちの後ろを走って行きました。
私は固まってしまい、A子はしゃがみ込んでいました。あったかいコーヒー
を買い車に戻るとA子が興奮してて「オナニーしたい」って言うので「シー
トが汚れるから外でして」って言い、歩道の真ん中でしてもらいました。
そして場所を移動して、今まで行ったことの無い自販機に行き50メートル

くらい離れて止めました。車通り,人通りなど分からないのですが、A子が
「今度は一人で行く」って言うので私は来るまで待ちました。街灯が明るく
A子の姿がよく見えました。A子がジュースを持ってこっちに歩いている
時、私の車の横をランニング中のジャージおじさんが走って通りすぎまし
た。このままではA子とばったりです。A子が慌てているのが分かったの
で、いたずらしたくなって立ちすくむA子に向けてヘッドライトを付けて照
らしました。さらに意地悪くハイライトにしたので片手でおっぱいを隠し、
もう片方で股を隠す姿が私からも丸見えでした。ジャージおじさんがA子の
前で止まり何か話しかけています。ジャージおじさんが邪魔でA子の様子が
よく分かりません。その姿に私は色々想像し興奮してきたのでオナニーをし
逝ってしまいました。約10分後A子が帰ってきて、少し長かったので聞く
と濡れてるアソコや胸を触られたらしく、おまけにジャージおじさんのアレ
を握らされたみたいでした。部屋に戻り二人でオナニーをした後、A子は全
裸ドライブをして帰ると言い、服を手に持って裸のまま帰って行きました。
今は自販機以外の露出スポットを探しています。

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